キャナリー「くそ!あいつらめっ!
希少モンスターの保護という崇高な使命をバカバカしいなどぬかしおって…。
畜生クロームめ!あほレイブンめ!
どいつもこいつも犬に食われて死んじまえでござる。
こうなったらもう噂の悪霊憑きの娘さんに協力してもらうことにするでござる。
おおっ!あれがオバケ島でござるな」
上陸したキャナリーさんは、さっそく島に唯一立っている小屋に向かいました。
コンコン(ドアノブを叩く音)
しーーーーん
キャナリー「おかしいでござるな…?
留守でござろうか?………ん…んん?
ななな、なんでござる!?この強烈な腐臭はッッッ!」
テクテクテク
キャナリー「腐臭の出所はどうやらここでござるな…。
なにやら物置小屋のようでござるが…まあいい、空けてみるでござる!
ん?中から鍵がかかってるでござるか?
こんなもので拙者の進行を止められるものかでござる!!!」
バキベキバキ
キャナリー「!!!」
ナレーション「キャナリーさんは思わず言葉がつまりました。
中にあったのは、両腕を拘束されたまま全裸で吊るされているマローネの姿だったのです。
かわいそうに、その全身は青や赤に腫れ上がっており、
どこからか沸いてきた虫たちがマローネの体にうごめいていました。
足元はマローネの垂れ流した糞尿だらけ。
異臭の原因はそれだったのです」
キャナリー「どどど!どうしたでござるか!!!?
しっかりするでござる!!(これって、犯罪じゃないのか?)」
ナレーション「キャナリーさんはマローネの体から虫を払うと
すぐに手首の縄をほどいて開放してあげました。
マローネに時の感覚はありませんでした。
体はすっかり衰弱しきり、その目に光は一片も無く、口は半開きのまま何かをずっとつぶやいています。
キャナリーさんはおびえきったマローネの、その小さな声に耳を傾けました」
マローネ「ごめんなさいアッシュもうしませんゆるして。ごめんなさいアッシュもうしませんゆるして。ごめんなさ
いアッシュもうしませんゆるして」
キャナリー(アッシュ!?)
ガラガラガラ
キャナリー「!!」
ナレーション「マローネの体がびくっとしました。
やってきたのはDark値70アッシュ。
キャナリーさんはアッシュとは初対面ですが、
すぐにこの男がアッシュなんだと本能的にわかりました」
マローネ「ごめんなさいアッシュもうしませんゆるして。ごめんなさいアッシュもうしませんゆるして。ごめんなさ
いアッシュもうしませんゆるして」
キャナリー「マ、マローネ殿!?」
ナレーション「マローネは、キャナリーの腕を払いのけると
満身創痍の体を押してふらふらとアッシュの方へと近寄っていきました。
しかし、1週間も吊るされていたマローネの体に、
もうそんな力が残されいるはずもなく…途中で倒れてしまいます。
それでもマローネは床をはいずりながら進みました。
木片が足に突き刺さり、肉が裂け血がでようとも進みました。
もう全身の感覚はありませんでした。
アッシュはそんなマローネに手を貸そうともせず、
ずっと氷点下のような冷たい視線で見下していました
そうして這いずること十数分。
やっとマローネはアッシュの足元までたどり着いたのです」
マローネ「ごめんなさいアッシュもうしません。
私が悪かったです。だからお願い捨てないで…
アッシュに捨てられたら私もう生きていけないヨぉ…」
ナレーション「本心でした。
マローネのすがりつくような必死な姿に
ようやくアッシュが重い口を開きました」
アッシュ「わかればいいんだよマローネ。
吊るしたりして悪かったねマローネ」
ナレーション「アッシュの優しい言葉に、マローネの乾燥しきった目が潤っていきました」
マローネ「ううん………!ぜっんぜん平気だヨぉ(丸文字)」
ナレーション「アッシュは優しくマローネを抱きしめてあげます」
アッシュ「僕、ヘイズとジャスミンの代わりだからマローネがいい子になるよう厳しく躾けなきゃいけないんだ。
これも全部キミのためなんだよ。分かってくれるよなマローネ?」
マローネ「うん!」
アッシュ「そっか、。よぉし今日は好きなモノ、ドンドン頼んでいいからな!」
マローネ「ホントぉ?じゃあねぇマッカス(丸文字)」
アッシュ「アハハ…マローネはマッカスが大好きなんだな」
マローネ「でもね、でもねぇ。いっちばん大好きなのはアッシュだヨぉ(丸文字)」
キャナリー「………」
ナレーション「キャナリーさんは足音を殺しながら、こっそりと小屋からでると
全速力でボトルシップまで駆けていきました。
その夜、
キャナリーさんはいたたまれない気持ちになりました
アッシュのマローネに対する暴挙。
救いを求めるようなマローネの瞳
アッシュに何も言えなかった自分自身のふがいなさ
それらが一度にのしかかってきたのです
かわいそうなキャナリーさんにそれらを支えきれるはずもなく
ただただ小さな胸を痛めるしかなかったのです」