姉さんとクロワさんの仲もあれはあれで進展しているようです。  
 そのことも弟としてなんだか煮え切らないものがあるわけですが、当座の最も重要な問題は別にあるのです。  
 自分の女性を意識しだしたことはむしろ喜ばしいことだと思います。殴られる回数も減りましたし。  
 問題は。  
 どこから手に入れたのか、教会で禁止されてるはずのあんな本やこんな本を読み漁っているわけで。  
 変な知識を仕入れちゃった姉さん、今まで男女の仲という物から縁遠かった反動もあって。  
 ええと、その。とどのつまり。  
 
「ねぇキュロット、姉さんの服も洗っておいてね」  
 いままでは絶対に押し付けなかった下着類。  
「ねぇキュロット、ちょっとホック留めてくれない?」  
 よせあげブラ。  
「ねぇキュロット、姉さんの装備も鍛えておいてくれない?」  
 脱ぎたてせくしぃぱんつ。  
 
 最近、姉さんのセクハラが酷いんです。  
 
 ボクの告発を真摯な態度で聞いていたアルエットさん。  
 ボクの話が終わるや否や、静かに席を立つ。  
「それは由々しき事態ですね」  
 早速注意しましょうと、姉さんの元へと向かおうとする。  
 慌てて止める。 姉さんをお説教してもらっても後でボクが逆ギレに合うだけなんです。  
 暴力ならともかく、これ以上のセクハラだけは勘弁してほしい。   
 慣れてないだけに抵抗力がまったくないんです。  
 ボクの制止に不思議そうな表情でこっちを見るアルエットさん。  
 では、何故相談を?と問う。  
 あぁ、小首を傾げたその仕草も可愛いですアルエットさん! …じゃなくて本題、本題。  
「え、ええとですね、ボクの代わりに…その…せくしぃぱんつのLV…上げてくれないかなぁって」  
 ぴきり。アルエットさんの表情が笑顔のまま凍った。  
「履け、と?」  
「あ、いや、あの、け、結局はそういうことになっちゃうのかもしれないですけど、あの」  
「浄化したモンスターにお願いするのは駄目なんですか?」  
 柔らかい物言いにも、見えない刺がびしびしと刺さっている気がするなぁ。  
「とんでもない! モンスターに履かせたことがばれちゃったら姉さんに何されるかわかったものじゃ!」  
 あのふっとい太腿に挟み殺されるのだけは――しばし悩んだけどやっぱりゴメンだ。  
「…エクレールさんは?」  
「王族にそんなことしたら不敬罪で去勢されちゃいますよ」  
 無論オマールさんにバレたら個人的制裁も待っていることだろう。  
 予想では尻を掘られる。 あの人両刀使いだし。  
「では、やっぱりキュロットくんが頑張るしかないんじゃないのかしら」  
「履け、とおっしゃいますか?」  
 
「ボクだって男ですよ!? 男としてのプライドだってあるのに、履けとおっしゃるんですか、アルエットさん?」  
 八つ当たりぎみに捲くし立てるボクから視線を逸らすアルエットさん。 そんな後生な。  
 だけど、急にはっといた表情になり、こっちを向いたかと思うと、まじまじとボクの顔を見た。  
 そして何故か、空に懺悔。なんかちょっとやな感じの笑顔を浮かべておっしゃいました。  
「大丈夫、まかせて」  
「はい?」  
 言ってる意味がよくわからなかったけれど、ボクはその時点で理解すべきだったんだと思う。  
 これから起こりうる、最低最悪で蕩けるように甘美な体験に。  
 
 
 ゴン。  
 
 
 聖女会本部。  
 アルエットの自室。  
「で、一つ質問してもいいですか、アルエットさん」  
「はい、なんですかキュロットくん?」  
「なんでボクは手足を縛られて吊るされているんでしょうか」  
 あの「大丈夫、まかせて」の直後、予期せぬ経典の一撃がボクの意識を奪い、目が覚めたらこの惨状。  
「良い質問ですキュロットくん」  
 微笑んでアルエットさんは答える  
「さてキュロットくんの抱える問題、一番邪魔になっているのはなんでしょう?」  
「邪魔って…邪魔されてるといえば縛られている現状でしょうか」  
「そう、キュロットくんの無駄な男のプライドです」  
「酷ッ!?」  
「そんなものが無くなればキュロットくんも堂々とプリエさんの下着を履いてそのLVを上げられますね。  
 むしろ大奇跡しに来たミシェル様たちに白い目で見られることを快感にまで覚えることができればモチベーションも上がります」  
 諭すようなその言葉に、思わず呟く。  
「悪魔ですか貴方は」   
「それに私もキュロットくんの女装姿、一度は見てみたかったですし。 あわよくば弄ってもみたいですし、趣味と実益というやつです」  
「悪魔だ貴方」  
「心配しなくても大丈夫、ポワトリーヌ様には先に懺悔しちゃいましたから。 思い咎めることなく楽しみましょう」  
「大魔王クラスだ」  
 見回せばアルエットさんのベッドの枕もとにどこかで見たような本が山積みに。  
 姉さんからそういう本没収してたのは知ってたけど、まさか読んでて、更に姉さんよりも影響されてたなんて。  
 ショックですアルエットさん。  
「さて、問答よりも実践です。 始めましょうか、キュロットくん」  
 信じられないほど淫猥な笑みを浮かべてアルエットさんがボクの服に手をかける。  
 あちらこちらに不浄点。 魔界化するほど邪念を溜め込まないでくださいよアルエットさぁん…  
 
「まぁ、キュロットくんったら、へっぽこキノコねぇ」  
 全裸に剥かれての第一声がそれ。 胸に秘めていたコンプレックスを抉られる。  
「お子さまキノコでももうちょっと立派よ? ほら、頑張って」  
 笑いながらアルエットさんがボクのキノコの先端を指で嬲る。  
 情けないことに、嫌だって気持ちより気持ちいいってほうの気持ちが強くて。  
 初恋の人にキノコを馬鹿にされ、弄ばれて喜んでるボクって…  
「あら、もう大きくなってきた。 なまくらキノコ、ダメダメキノコねぇ」  
 そういいながらもアルエットさんの顔は桃色に染まり息も荒む。  
 半勃ちのボクのキノコに舌を近づけ――って、なにしようとしてるんですか!!  
「だ、ダメです、そこは汚いです、アルエットさん!?」  
 憧れの、ボクの聖女が自ら穢れようとしている。 実際にその瞬間がすぐソコな現状に慌てる。  
 アルエットさんは上目づかいにこちらの顔を見上げ。  
「女の子みたいなこと言うのね?」  
 クスリと微笑んで、ボクのキノコを包む皮を舌で掻き分け――!!??  
 あ、ああっ!! に、尿道を舌で――ッ!? 背筋に寒気のような感覚。き、気持ちイイ――!  
 潜り込むほどにその寒気は脊髄に突き刺さる。禁忌感が興奮を呼ぶ。ああ、ダメです――ッ!!  
 アルエットさんが唐突に頭を引く。ボクのキノコからアルエットさんの舌へと唾液の糸が伝う。   
 唐突な喪失感。だけど助かった。初めての感覚。あのままだったら自分が自分じゃなくなる気がした。  
 ボクも魔界化したこの部屋の邪気にあてられてきているんだろうか。頭がボーっとする。  
 アルエットさんはまるで味見をするかのように口の中で舌を転がし、そして告げる。  
「凄い匂い、それにとってもしょっぱい… お風呂に入ったときはちゃんと洗わなきゃダメですよ?」  
 聖女の顔で、ボクの大好きな優しい微笑みで諭すアルエットさん。  
 背筋のゾクゾクが頭の後ろまで来る。 マトモな思考も凍りつくほどの寒気。   
「でも、キュロットくんの匂いも味も、私は大好きですよ…」  
 初恋の人からの『大好き』。 不浄点に染められた『大好き』だけどこれがボクの理性に止めを刺した。  
 さらに追い討ちがかかる。 アルエットさんが再度ボクのキノコへ舌を、口を寄せたのだ。  
 
 今度は、舌で尿道を責めるのに加えて、皮ごと、キノコが、唇で、扱かれるっ!  
 唇に触れる皮の感触が、キノコを扱く皮の感触が、尿道を犯す舌の感触が、ああっ、ああっ!!  
「出ちゃいます、アルエットさん、なにかわからないけど出ちゃいますよう!」  
 叫び、もはや制御不可能なキノコの要求のままにぶちまけようとする、でも!  
「だぁめ」  
 アルエットさんの舌が、優しかったその舌が、楔となってボクのキノコに突き刺さる!  
「う、うわぁぁぁぁっ!? 出ない、でないよう、ださせてくださいアルエットさぁん!!」  
 ボロボロと涙を流しながら懇願する。このままじゃボク、おかしくなっちゃう!  
 でもアルエットさんの優しい笑顔と冷たい視線は語っていた。男の子なら我慢できるはずでしょう、と。  
 そしてキノコを塞いだまま、更にねちっこいぴすとん運動を繰り返す。  
「うわぁぁぁぁぁぁッ!? だめ、おねがい、なんでもしますからおねがいしますぅぅぅッ!!」  
 発狂するほどの凶悪な快感。  
 限界を遥かに通り越し半分白目になりながらただ叫ぶ。プライドなんで一握りも残ってやしない。  
 アルエットさんはそんなボクにとても冷ややかな視線を送るとあっさり口を離した。   
 アルエットさんが顔を引く、そんな一瞬すらも我慢できなかった。 我慢する気もおこらなかった。  
「でる、でりゅ、でりゅぅぅぅぅぅーッ!!」  
 びゅ、びゅ、びゅっと情けない音をたてながらボクのキノコから白いどろどろした液体が溢れ出す。  
 公園の水飲み場のように噴き出すソレはアルエットさんの顔だろうとかまわずに汚す。  
 だらしない笑顔のまま、最後の一滴すら絞りだすようにキノコが痙攣する。  
 想像を絶する排泄の快楽に放心するボク。  
 アルエットさんは顔にかかった白濁液を嫌そうに払いのけながら。  
 あざ笑うかのような冷たい笑みを浮かべると。  
「ポンコツキノコ」  
 確かにそう言った。  
 
 あは、あはは、とボクは笑う。自分が笑ってる意味も十分に理解できないけれど笑う。  
 そしてボクの意識は自らが吐き出す白濁液のように白く染まっていったのだった。  
 
 キュロット(検閲)歳。 それが初めての精通だった。   
 
 
 気絶したキャロットを見下ろし、アルエットは満足げに微笑む。  
 キャロットの男としてのプライドは砕いた。  
 次はメインディッシュである。  
「聖女会に伝わる『聖女のキノコ』でキュロットくんのケツマンコを開発してあげる…  
 追加効果は経験値UPだからすぐに可愛い女の子の気持ちになれるわ」  
 デザートに女装したキャロットに服従の奉仕でもさせれば完璧だろう。  
 めくるめく倒錯の世界を想像し、アルエットは聖女のキノコを装着した。  
 
 
 キャロットの意識は真白い世界にあった。  
 真白い闇の中で泣いていた。自分の聖女を快感に負けて汚したことはキャロットを激しく打ちのめしていた。  
 すすり泣く。そんな情けない自分が男として失格だと思う。またそれですすり泣く。堂々巡りである。  
 そんな絶望の中。キュロットは姉さんの後ろですすり泣いていたころの自分を思い出していた。  
 
 
 小さいころ苛められていたボク。  
 パンツを剥かれてよくからかわれてたっけ。  
「キュロット、ちっちぇー! みじけー!」  
「プリエのあしはあんなにふっといのに、きゅろっとのはほっせーでやんの!」  
 次の瞬間には必要以上に姉さんに殴り飛ばされていたいじめっ子たち。  
 ボクは泣きながら姉さんに聞いたっけ。  
「なんでねーさんのあしはあんなにふっといのに、ぼくのはこんなにほっそいんだろ… ぼくもふといほうがよかったよう…」  
 青筋立てながらも笑って言ったんだ。  
「男の子の価値は大きさじゃなくてね――」  
 
「――!?」  
 気絶したはずのキュロットの身体が光り輝いている。眩しさに目が眩む。  
 光に遮られる視界の中、アルエットは信じられないものを見た。  
「アルエットさん、ボクのキノコはたしかにダメダメでポンコツかもしれない…」  
 立ち上がるキュロット。先ほどの情けない有様が嘘のように雄雄しく立ち上がる。  
「でも男の価値はどれだけの苦難も、泥を啜りながらでも立ち上がることにあるんだと思います…」  
 言葉どおり立ち上がるキュロット。そして立ち上がるキノコ。  
 大きさは変わらないお子さまキノコ。 だが何故か自信に満ち溢れた姿は見るものを引き付けてならない!  
「そしてこれが絶望を乗り越えたボクの――せくしぃキノコだ―――――ッ!!」  
 追加効果は浄化! 見よ! 破邪の先走り汁が不浄点を浄化する!  
「そ、そんな!? 一体キュロットくんに何が!?」  
「男子三日あわざれば即ち活目して見よ――ですよ、アルエットさん!」  
「三日立ってないどころか別れてすらいないのに!」  
「問答無用!」  
「キュロットくんから喋りだしたのに!?」  
 もはや言葉は不要とばかりに飛び掛るキュロット。  
 教義的に強引な性交は禁忌なので狙うはアルエットの菊門!  
 尻なら何やってもいいのか聖女会!  
 
 一面浄化されたアルエットの部屋。  
 せくしぃキノコの嫌がらせのような浄化能力は大奇跡を連鎖したのだ。  
 ミシェルが、メルカヴァが、エリツィンが、マ・オーが、そしてポワトリーヌが咲き乱れるように召還された。  
 神々に肛姦の真っ最中を目撃されたわけだ。  
 だがしかしせくしぃキノコをもつキュロットは怯まない、胸を張る、キノコも傘を張り続ける。  
 初恋の人を魔界の悪の手から救った達成感も張りにツヤを与える。  
「ありがとうキュロットくん…」  
 すっかり浄化されたアルエットさんが恥ずかしそうに感謝を述べる。  
 そりゃもう信仰する神にすらあんな所を見られたのだ。 恥ずかしいとかそういうレベルでもあるまい。  
「でも…その…」  
 顔を真っ赤にしながら口篭もるアルエット。 照れる姿も可愛いです! キュロットはそう思う。  
 しかし、アルエットは勇気を出して思いを言葉にした。  
「ちょっと…早すぎる…かな…?」  
 しおしお。せくしぃキノコが少々萎れるも。  
「つ、次は『早い』っていう苦難から立ち上がります! 立ち上がってみせます!」  
 血の涙を流しながらもどうにかポジティブなキュロットだった。   
 
 
 
 さて、問題は。  
 当初のせくしぃぱんつ問題は微塵の進展も見せていないことである。  
 
 
 
 後日。  
「キュロットぉ、装備育った?」  
「も、もちろんだよ姉さん」  
「え、育ったの?」  
 意外そうな表情の姉さん。やっぱりセクハラな無理難題で困るボクを見たかっただけか。  
「あんた、まさかモンスターとかに履かせたんじゃないでしょうね」  
 殺気が篭った目でこっちを見る姉さん。  
「ま、まさか、ちゃんと別の人に頼んだよ」  
「んー、ならいいけど…結局アルエットやエクレールが履いたってのも面白くないなー…」  
 姉さんがブツブツと呟いているうちに目的地へと着く。  
 そこに居たのは。   
「オゥ、来たかお前ら」  
 サラド神父だった。  
 
「姉さんもモンスターよりも自分の師匠のほうが万倍マシでしょう?」  
 黙して語らない姉さんを尻目にボクはサラド神父に問い掛ける。  
「神父、せくしぃぱんつの調子はどうですか?」  
「まかせな、よォく育ってやがるぜェ?」  
 そう言うとサラド神父は帽子を脱ぐ。  
 その下には。  
 見まごうばかりにLVアップを果たした神々しいせくしぃぱんつが。  
 サラド神父の頭に反射する光に彩られ、見るもの全てを魅了せんばかりの輝きである。  
 
「凄いや! やったね姉さん、これでクロワさんも悩殺だね!」  
「太腿圧死の刑」  
   
 
 
<完>  
 

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