「暇だのぅ・・・」
一人の侍がベースパネルの中で呟いた。
彼女の名前は「ユキ」
新参者でLVも低いため、ベースパネルでお留守番をさせられている。
ちなみにここは「あやしい触手」レジェンドの50階。
敵キャラとLVの桁が違う彼女が出撃を許可されないのは仕方のないことだった。
せめて、他のキャラが残っていてくれればよかったのだが、全員出払っていて今は彼女一人しかいない。
「暇だのぅ・・・」
もう一度呟き、寝転がる。
「暇だの〜・・・」
ゴロゴロゴロ・・・
そのまま転がる。
「・・・何やってんだ?お前」
と、頭上から声。
「あ・・・」
いつの間に戻ってきたのか、ユキの師である戦士(♂)がそこにいた。
顔を赤くし、起き上がるユキ。
「な、何だ、もう戦いは終わったのか?」
焦っているらしく、軽く声が裏返っている。ぶっちゃけ彼女はこの戦士(♂)に惚れていた。
が、この二人の絡みはないので期待しないように
「まだ。ようやくベースパネル周辺の敵を倒し終わったところだ」
そう言いながら、うはうはハンドを数個取り出し懐に入れる。
「なんだ・・・まだ終わらないのか」
軽い失望がユキの声に混じる。すでに1時間も一人で暇を持て余しているのだから、仕方がない。
「もう少し我慢しろ。これが終わったら練武の洞窟に連れてってやるから」
どんな諭しかただ
「む・・・なら、いいだろう」
諭されるんかい
納得した(らしい)ユキに頷いて戦士(♂)が外に出ようとし、
「あ、それと。気を付けろよ」
「?」
それだけ言い残し出て行く戦士(♂)。
「・・・何に気をつけろというのだ・・・?」
師の言葉に疑問を覚えつつも、深くは考えずに、ユキは再び寝転ぶ。
そしてそのままウトウトとし・・・寝入ってしまった。
しかし、彼女はもう少し師の言葉を深く考えるべきだった。
確かにここは完全無欠、難攻不落のベースパネルだ。敵に攻め込まれる可能性など、皆無に等しい。
・・・ただ一つの場合を除いて・・・