男子トイレと女子トイレの中間地点で立ち往生している間抜け面の天使が一人。  
「なにやってるのよ、フロンちゃん?」  
「あ、エトナさん」  
 間抜け面が微笑む。  
 眼前に突き出されたその屈託の無い笑顔をちょっと可愛いなーとか思って、思わず顔が熱くなる。  
 って、なに考えてる、アタシ。そんな趣味ないっての。    
 そんなアタシの思いを他所に、フロンちゃんが聞いてきた。  
「なんで魔界の便――お手洗いって、二つに分かれているんですか?」  
「へ?」  
 前々から思ってはいたが、天界の住人、いや天界そのものってのは頭のネジが何十本か足りてない。  
 性知識のない、人間界で言う小学生低学年の年頃だって、男と女が違うことがわかるだろーに。  
 しょうがないので幼児にするようにわかりやすく説明してあげる。   
「ついてるのとついてないのじゃ、やり方も使う器材も違うでしょ?」  
「え、なにが」  
「…トイレで使うっていったらわかるでしょーが」  
 これで思い当たらないとカマトトぶるのならさすがのアタシも怒る。  
 フロンちゃんはそれでも小首をかしげ、聞いてきた。  
 アタシの予想だにしないコトを。  
 
「『ついてない』っていうのがよくわかんないんですが」  
 
 その科白を聞くや否や。  
 アタシはフロンちゃんの腕を掴み、女子トイレへまっしぐら。  
 使用中の個室の鍵を抉じ開け、隅の砂トイレでしゃがみこむ猫娘を蹴りだすと。  
 壊れた鍵をむりやり引っ掛け、茫然自失のフロンちゃんに一言。  
 
「――ついてるの?」  
 
 ついてた。  
 
 付いてますと小さな声で告げるのを聞き入れず、「見なきゃ信じない」と頑なに言い張った結果。  
 フロンちゃんがスカートをたくしあげ。   
 フリル付きの可愛いパンティの下に、確かな突起。  
 まじまじと見つめる。  
「エ…エトナさん、い…息が荒いです…」   
 フロンちゃんの言葉に自分が異常に興奮していたことを知る。  
 知ったからといってどうなるものでもない。止まらない。  
 フロンちゃんの羞恥に歪む顔。フロンちゃんのおパンツ。フロンちゃんのもっこり。  
 クリチェフスコイ様、申し訳ありません、エトナはこっちの趣味の悪魔でした。自覚しちゃいました。  
 開き直ったからには、アタシやるとこまでやっちゃいます。  
「ナマモノ見なきゃ納得できない」  
「へ」  
「見せて」  
「え…あの…?」  
「見せなさい」  
「ええええエトナさん?」  
「いいから脱げーっ!!」  
「んーまッ!?」  
 スカートを下から持ち上げ、スポーンと脱がす。  
 その勢いで転んだフロンちゃんのパンティもスポーン。  
 慌てて身をよじり、大事なところを手で隠そうとするフロンちゃんの股間には。  
 手のひらでは隠し切れないほどにいきりたったモノが。  
 思わず叫ぶ。叫びます。叫ばざるを得ないっ!!  
 
「フロンちゃんのぉぉおちんちんっっっ♪♪」  
 
「エトナさんが壊れたぁぁっ!?」  
 
 涙目で這いずるように逃げようとする全裸のフロンちゃん。その姿がまたそそる。  
「あーら、逃げちゃ駄目よフロンちゃん♪」  
「もっ、もういいじゃないですかぁっ! 確かにあるってわかったからもういいですよね!!」  
 泣きわめくような声で許しを乞うフロンちゃんの足首をしっかりと捕まえる。ゾクゾクしてきた。  
「だめよ〜♪ それが本物のおちんちんかどうか動作確認しなきゃ〜♪」  
「ななな何を――はうっ!?」  
 股間を覆う手を払いのけ、フロンちゃんのおちんちんを握ると――違和感。  
 自分の口元が緩んでいくのがわかる。  
「あっれー、フロンちゃーん、もうぱんっぱんに張り詰めちゃってるじゃなーい♪」  
「ち、ち、ち、違いますっ!!」  
 顔を真っ赤に染めてかぶりを振る姿。あああ、可愛すぎるぅ♪  
「フロンちゃんってば虐められて感じちゃうタイプなのね♪ さすが、献身的♪」  
「違う、違うんです…あああっ!?」  
 反論の言葉も言い終わらせないままに、張り詰めたおちんちんを上下に擦る。  
 数回の上下運動で、じゅくじゅくといういやらしい音がしてくる。あー、先走ってる先走ってる♪  
「濡れやすいんだねー…こーの淫乱早漏娘めっ♪」  
「やっ、いやっ、ちがっ、あはぁっ!」  
 耳元で吐息とともに囁くと、否定の意思と共に嬌声が漏れる。  
 布を噛み締めて股間から送られる快楽に耐えようとするフロンちゃん。  
 噛み締めているのが脱ぎ捨てた自分のパンティということにも気付かないくらい必死だ。  
 それにしても反応のいいこと、天界で調教でもされてたのかしら?  
 でも、それにしては本当に性に無知だったみたいだし、天使の体質かしら。  
 痛そうなほどに勃起したおちんちんの下には女性器も見える。二つついてるから感覚も二倍ってことかな?   
「えっちな体よねー」  
 なんとなく漏らす。  
 
 その言葉にフロンちゃんは必死に反論する。  
「ち…ちがっ、ちがうっ、フロンはっ、えっちっ、ちがうですっ、ひゃううっ!!」  
 せいいっぱいの途切れ途切れな否定。必死な姿も可愛くて思わずおでこにキス。汗の味がする。  
「違わないわよー、えっちじゃない子がこーんなに感じちゃったりしないって♪」  
 裏筋をつつっと責めると、背骨が折れるのではないかというくらいに背筋をそらして喜ぶ。  
「ちがっ、うんっ、ですぅはっ!! そこっ、だめぇっ…」  
 何処までも反抗を続けるフロンちゃんにちょっとした意地悪を思いつく。  
「…違うのならイっちゃったりしないよね?」  
「えっ、えっ!?」  
 焦るフロンちゃんも可愛いっ♪  
「無理矢理されてイっちゃったりしないよね♪」  
「そっ、そんなっ、むりっ」  
 反論するわりには弱気な態度が嗜虐心のセイフティデバイスをリリースする。  
 よーし、それじゃ本気出しちゃうぞ、と。  
 やけどしそうなほど熱いソレを口の中へと誘い。  
 そして口をすぼめ吸い――  
「やっ、もうだめっ、くるっくるっくるっくるっきちゃいますぅっ!!」  
「へ?」  
 その絶叫を聞き終わるか否か、大量の白濁液を感じた。  
 魔界さくらんぼの茎を結べるほどの舌技を見せる暇もなく。  
 口内の温もりだけで達してしまったのだった。  
 熱い白濁液をむせながらも飲み込みつつ、フロンちゃんに告げる。  
「想像以上に淫乱っ娘だねっ♪」  
 その言葉にも反応せず俯いたまま荒い息をつくフロンちゃん。  
 怒っちゃったかな、と顔を覗き込もうとすると。   
 
「そう…です…」  
 フロンちゃんがなんか言った気がした。  
 
「え、なんか言った、フロンちゃん?」  
 聞きかえしてもフロンちゃんは顔を上げようとしない。  
 そのままの体勢でまたぼつりと。  
「フロンはえっちな天使です…」  
 今度は聞こえた。 思いもしない言葉。  
「…フロンちゃん?」  
「えっちな天使はいけない天使なんです… だからフロンは罰をうけなくちゃいけないんです…」  
「…へ?」  
 そして顔を上げて一言。  
「だからフロンをもっと虐めてください…」  
 淫蕩な顔。 発情期の雌の顔。 堕落への道を歩む聖女の中の魔性。  
 アタシは、アタシの中の本能にプログラムされた純粋なまでの性欲がドライヴしたのを感じた。  
 迷うことなくスポーンと全裸。  
 本番行くぞーっ!!  
 
「あ、でもお尻だけね」  
「な、なんでですか?」  
「前のほうは、いつか先代魔王様より素敵な男と出逢ったときのためにとっておきたいの…」  
「…いまさらなにを…あてはあるんですか?」  
「んー、将来的にはどうだかわかんない奴ならいる、かな?」  
「…ラハールさんじゃないですよね」  
「んー、どーだろ♪」  
「だ、駄目です! ラハールさんはダメです!」  
「あーら、フロンちゃん、かーわいー♪ 燃えるわー♪」  
「ん…んーまっ!?」  
 
 ということで、アタシとフロンちゃんの非生産的な夜は燃え上がったのでした。  
 
 
 後日談。  
 経験を積み、えっちにも自信がついたフロンちゃんは大本命の殿下に逆ナンを仕掛けたそうだ。    
 
「う〜トイレトイレ」  
 今 トイレを求めて全力疾走しているオレ様は魔界を収めるごく一般的な超魔王。  
 強いて違うところをあげるとすれば天使に興味があるってとこかナ――  
 名前はラハール。  
 そんなわけで魔界のトイレにやってきたのだ。  
 ふと見るとトイレ前にアホ面の天使が立っていた。  
 ウホッいい天使――  
 そう思うと(略)  
「やりませんか」  
 
 どーせ殿下、女性経験なんて皆無だろーからおちんちん見たってそういうこともあるのかで済ますだろう。  
 晴れて天使と魔王は結ばれました。 ハッピーエンド。 ちゃんちゃん。 どっとはらい。  
 なんか予定調和っぽくて気に入らない。  
 
 …あー、でも、フロンちゃん。  
 自分がいつだって突っ込むほうだって思ってたりして。  
 お尻しか教えてない上に、いつもタチ役だし。  
 だとしたら。  
「ま、それなら面白いか♪」  
 遠くで、殿下の悲鳴が聞こえた気がした。  
   
 
 オマエ、オレ様のことバキュームカーと(略  
 
 
<完>  

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