***  
 
遥か昔、暴君と恐れられる吸血鬼がいた。  
悪魔からも人間からも畏怖される吸血鬼を変えたのは、一人の人間の少女との約束だった。  
これは、そんな二人が永い時を超えて約束を果たした先のお話。  
 
***  
 
薄暗い部屋。  
静寂に満ちた室内で二つの影が揺らめいた。  
影は二つ。  
男と女…青年と少女だった。  
夜が溶け込んだような闇色を全身に纏った青年は痩せ細り、不自然なまでに青白い肌をしていた。  
その漆黒の髪から覗く燃え盛る炎のような深紅の瞳は、目の前の少女しか映していなかった。  
彼の腕に抱かれた少女はその視線に気付いてにっこりと笑う。  
そんな少女の姿もまたこの闇の中では一際異彩を放っていた。  
純白の翼と天を包む澄んだ青空の色の瞳。  
闇の眷属とは真逆の光の眷属を象徴するものを持つその姿は、  
まさしく天界の住人そのものだった。  
 
「さあ、どうぞお飲みになって」  
 
柔らかな声音に誘われるように、青年は少女の首筋に顔を寄せる。  
そして鋭い牙でためらいなく少女の首筋へと喰らいついた。  
「……っ!」  
皮膚を裂いて肉を抉り深々と突き刺さる牙の痛みに少女は僅かに苦痛の色を浮かべる。  
だが抵抗する様子はなく、それどころか青年の背中に腕を回してその身体を優しく抱き締めた。  
貪るように血を啜る青年の熱を帯びた吐息と、それを喉の奥へと流し込む音。  
天使が吸血鬼による吸血行為を受けるという異様な光景の中、  
少女はただ幸福に満ちた笑みを浮かべていた。  
 
どれくらいの時間が経っただろうか、青年は少女の首筋からようやく顔を上げた。  
牙により抉れた傷痕から血が幾つか筋を描いて鎖骨まで伝い落ちていく。  
青年はそれを名残惜しそうに舐め取ると、味わうように喉の奥底へと流し込んだ。  
「もう、いいんですか?」「…大丈夫だ」  
少女の問いかけに、青年は意外なほど穏やかな声音で答えた。  
「今回もお役に立てて嬉しいですわ」  
安堵して笑みを浮かべる少女を青年はいとおしむように見つめた。  
自然と二人の視線が重なり、どちらからともなく惹かれ合うように口づけを交わす。  
同時に少女は音もなく組み敷かれ、当然青年に見下ろされた態勢になる。  
少女はその行動の意図に気付き、覆いかぶさる青年の首の後ろにしなやかに腕を絡ませた。  
 
それは吸血後の情事の合図だった。  
 
「暴君ヴァルバトーゼ。私の愛しい吸血鬼さん…  
…どうか…私を愛して」  
 
「アルティナ…」  
 
少女の名を呼び、ヴァルバトーゼはゆっくりと唇を重ねた。  
何度も唇を重ね、熱を増すようにそれは次第に深いものへと変わっていく。  
「んっ…」  
アルティナの閉じた唇がほんの少し開くと、ヴァルバトーゼはその隙間から舌を差し入れて彼女の咥内へ侵入する。  
生温くぬるりとした舌の感触と共に流れ込んでくる唾液に交じった血の味が口の中に広がり、  
アルティナはそれをこくりと飲み干した。  
「んっく…ふ」  
頬肉を突き上げ歯列をなぞり、舌を絡め取り何度もそれを繰り返す。  
アルティナが苦しさに顔を背けようにも、ヴァルバトーゼは逃すまいと側頭部を押さえ付けてしまい逃れられい。  
アルティナがヴァルバトーゼと口づけを交わすことも、咥内を蹂躙されることも初めてのことではない。  
 
吸血後に身体を重ねるようになってからどれくらい刻が経ったのだろうか?  
 
数えようがないほど繰り返してきたというのに、血を請われた後はいつも緊張で胸が高鳴ってしまう。  
吸血後のヴァルバトーゼを襲う魔力の高まりによる破壊衝動を沈める為に始めた行為だが、  
アルティナも今ではすっかり魅了されてしまった。  
唾液と熱が入り交じり頭の芯まで溶けそうな感覚に意識が混濁する中、本能のままに求め合う。  
 
飲み込みきれなかった唾液が口の端から零れ、アルティナの胸元を這いながら濡らしていく。  
彼女の口元をヴァルバトーゼは指先で拭い、先程吸血したばかりの首筋に視線を落とした。  
牙によって生々しく抉れた傷痕に眉根を寄せ、深紅の瞳に複雑な感情が宿る。  
「すまん…辛くはないか?  
予想以上に加減が出来てなかったな」  
「良いんです。…これは証ですもの。  
私だけにしか与えられない、特別なもの」  
気遣うヴァルバトーゼにアルティナは笑みを零す。  
皮膚を裂き、牙を突き立て血を啜る時は獣のように容赦が無いのに後で必ず労ってくれる。  
その姿がたまらなく愛しかった。  
 
髪飾りを外され、編み込まれた髪が解けると桃色の髪が散った。  
続いて胸元のリボンを紐解かれると、支えるものを無くした服は簡単にアルティナの身体から滑り落ちる。  
「手間が省けるが…相変わらず脱される為に着てきたような服だな」  
「…か、からかわないで下さい」  
感心したように呟くヴァルバトーゼにアルティナは真っ赤になって反論する。  
「まぁ、そういうことにしておくか」  
ヴァルバトーゼはアルティナの胸元を覆っていたブラジャーに手を伸ばすと、慣れた手つきで中央のホックを外した。  
締めつけからの解放と共に二つの膨らみがヴァルバトーゼの眼前に晒される。  
力加減を図るように乳房に触れ、ゆっくりと揉みほぐし始めると  
やがてアルティナの唇から自然と甘ったるい喘ぎが漏れ出した。  
「ぁ…っん」  
豊かな乳房はしっとりと吸い付くようにヴァルバトーゼの手に馴染み、  
膨らみの中央の突起を親指で撫で擦るとやがて固く立ち上がる。  
「ひゃんっ!」  
固く敏感になった突起をきゅっと摘まれ、アルティナから上ずった声が飛び出した。  
柔らかな乳房の感触を楽しむように揉みほぐし、突起に歯をたてて甘噛みしてたかと思えば  
舌で転がして吸いつき舐め上げる。  
「ふぁっ、んっ…う」  
上半身ばかりを攻められ、アルティナは無意識のうちに太ももを擦り合わせていた。  
その変化に気づいたヴァルバトーゼは下腹部へと手を滑らせて下着の上から割れ目をなぞる。  
「ああっ!」  
アルティナが痺れたように痙攣した直後、下着の布地はうっすらと湿り気を帯びていく。  
下着を脱がされ、潤いをたたえた柔らかな茂みの中の秘部を探られる。  
くちゅ、とした水音と共に愛液がヴァルバトーゼの指に絡みつく。  
「んぁっ…あ、っふ」  
「…少し慣らした方がいいな」  
ヴァルバトーゼはそう呟くと、アルティナの太ももの間に顔を寄せた。  
「っ!?」  
内股にくすぐったさを感じて視線を辿った先に見た事態に、アルティナは声にならない悲鳴をあげた。  
顔を埋められた先にあるもの、深紅の瞳が今何を映しているのかを自覚した途端  
身体全体に羞恥心が駆け巡った。  
抵抗する暇なく、ぴちゃりと音をたててヴァルバトーゼは舌でアルティナの秘部を舐め上げる。  
「ひぁっ…!」  
背筋がぞくりと強ばり、アルティナは与えられた刺激に身を捩る。  
「やぁ…っ!それは嫌ですっていつも…止めてくだ…っあ!」  
「身体はこちらの方が反応がいいからな。  
何か問題でもあるのか?」  
「そ、そういう話じゃ…あああっ!」  
ヴァルバトーゼはアルティナの願いを却下すると再び行為を再開する。  
動物のような行為が恥ずかしくてたまらないから嫌なのに、  
皮肉なことに身体はさらなる刺激とその先に訪れる快楽を欲しがっている。  
結局どんなに嫌がっても逆らえないのだ。  
ぷっくりと充血して剥き出しにされた肉芽を押し潰すように舐められ、  
アルティナはたまらず身体を仰け反らせた。  
「ふあぁっ!あっ、やぁああああっ!!」  
目の前に火花が散り、電流が身体中を駆け巡る。  
アルティナは一度目の絶頂に達した。  
 
「…っ」  
カチャリとベルトが外されると猛々しく反り勃ったモノが、アルティナの蒼くとろけた瞳に映る。  
アルティナの身体を慣らす間、ずっと彼女の痴態を見せ付けられて色香に煽られていたのだ。  
ヴァルバトーゼも限界寸前だった。  
腰を落とし、熟れてとろみを帯びた割れ目に自身を押しあて慎重に挿入する。  
「ひゃああああんっ!」  
今までとは比べものにならない圧迫感と快楽の波にアルティナは悲鳴をあげた。  
大量にあふれ出た愛液が潤滑油となり挿入自体は容易かったが  
中はやはりまだキツくヴァルバトーゼのモノを押し戻そうと締め付けてくる。  
ヴァルバトーゼは無理矢理貫きたくなる衝動を押さえて腰を動かし、  
何度か出入りを繰り返してアルティナが過剰に反応する場所を狙って攻めたてる。  
「あっ、あう!っああ!」  
一度絶頂に達したことで感度が上がっていることもあり、アルティナは身悶えしてよがり狂った。  
始めは侵入者を押し戻そうとしていた肉壁が徐々に絡み付いてまとわりつくものに変わる。  
ヴァルバトーゼはギリギリまで腰を引くと、一気に最奥まで突き上げた。  
「っ、あああああああっ!!!」  
激しく打ち付けられて結合部からはぐちゅぐちゅと卑猥な音が絶え間なく響く。  
汗と愛液でぐっしょりと濡れた下半身、それらが入り交じった情事特有の匂いと空気。  
逃げ場のない快楽の波にアルティナは壊れたように嬌声をあげるしかなかった。  
それでもヴァルバトーゼをもっと近くで感じたくて、夢中で抱きついた。  
「ヴァル…バ…トーゼ…さんっあああ!」  
まるで存在を確かめるようにアルティナはヴァルバトーゼの名前を呼んだ。  
普段は「吸血鬼さん」と呼ぶ彼女がヴァルバトーゼを名前で呼ぶのは身体を重ねる時だけだった。  
ヴァルバトーゼはアルティナを力を込めて抱きしめる。  
「んぁっ、あっ、あ、あぁ…!」  
締め付けられた反動で自身の先端に熱が先走るのを感じて  
ヴァルバトーゼはアルティナを膝の上に抱えたまま大きく突き上げた。  
アルティナもまた限界を感じ、ヴァルバトーゼの首に絡ませた腕に力をこめる。  
「あっあああああああああっ!!」  
甘い嬌声と共にアルティナの身体が大きく揺さ振られる。  
突き抜けていく快感と同時にヴァルバトーゼから放たれた白い欲がアルティナの中に弾けていく。  
頭の中まで真っ白に塗り潰され、アルティナはゆっくりと意識を手放した。  
 
 
「…ん」  
「起きたか?」  
温もりと共にアルティナが目覚めたのは暫らく時間が経ってからだった。  
ヴァルバトーゼの肩にもたれかかって眠っていたらしく、  
ぼんやりとしていた意識が徐々に収束して視界がクリアになる。  
「あ、あら?」  
アルティナは状況の把握に一瞬混乱する。  
部屋は何事も無かったかのように綺麗に片付けられ、脱がされたはずの服もいつ間にか身につけていた。  
「裸のままだとまた押し倒す危険があったからな。  
悪いが勝手に着替えさせてもらったぞ」  
「!!?」  
あんなことをした後なのに平然と言ってのけるヴァルバトーゼに思わず絶句してしまうが、  
いつも最後は気を失うことが多いせいでアルティナは何も言えなかった。  
「アルティナ、その、だな…」  
押し黙るアルティナにヴァルバトーゼはぽつりと語り掛けてくる。  
 
「…すまん、また無理をさせたな。  
その、お前の血を飲んだ後はどうも抑えが聞かなくなるというか…  
これでも努力はしてるんだか」  
毎回同じような謝罪を律儀に繰り返すヴァルバトーゼに、  
アルティナは苦笑し「大丈夫ですから」と告げる。  
「それに、私以外の方に吸血されることの方が嫌ですわ」  
「それはありえん!」  
ヴァルバトーゼは断言するが、アルティナの言葉が昔とは違う意味を持つことには気づかない。  
「ふふっ、わかってます。  
大好きです、愛してますわ。  
…ヴァルバトーゼさん」  
 
唐突にアルティナから愛の言葉を直球で受けて、ヴァルバトーゼは耳まで真っ赤になる。  
「…お、俺も、同じだ」  
言葉に出さない代わりに、想いを返すようにヴァルバトーゼはアルティナの顎を上向かせて唇に触れるだけのキスを落とした。  
「嬉しいですけど、いつかちゃんと言葉で言ってくださいね?  
そうなったら…もっと嬉しいですわ」  
「うぐっ…」  
ダメ出しされヴァルバトーゼはバツが悪そうに目を逸らしたが、思いついたように切り返す。  
「…ならばお前も普段から俺を名前で呼ぶんだな  
そうしたら言ってやる」  
「ふふっ、分かりましたわ。“約束”ですわよ?」  
「う、うむ、約束だ!」  
 
言質を取られたことにヴァルバトーゼは気づかず、  
アルティナは楽しそうに笑った。  
 
ついさっき名前で呼んだことに、ヴァルバトーゼは何時気づくのだろうか?  
アルティナはすぐ果たされるであろう約束の言葉を思う。  
 
その時のヴァルバトーゼを想い、アルティナは頬を淡く染めてはにかむように笑った。  
 
《END》  
 
 

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