ヴァルバトーゼはフーカの下着両端をもち一気に引き上げたのだった。  
突然のことに足を折り曲げることも出来ず、イカの皮でも剥くように一気に下着が取り去られる。  
「きゃ、きゃああああ!!」  
一瞬遅れて何をされたか気づいたフーカは悲鳴をあげて太ももを閉じ、局部を隠そうとする。  
だが、完全に閉じきる前にその足をヴァルバトーゼが掴み、無理やり開く、結果として陰部をヴァルバトーゼ  
の前にさらけ出すことになる。だが、羞恥を感じる前に次の行動に驚愕する。  
ヴァルバトーゼがそこに顔を近づけ始めたのだ。  
 
その行動の意味を推測し、まさかそんなことはしないだろうと思い、そしてそんな思考を打ち消す。  
今までの行動だって予想もしないことばかりだった。ならこれは間違いない。  
そう判断したフーカは必死に叫ぶ。  
「お願いヴァルっち!もう、もうやめて!!わ、わかってるの!?そこはお、オシッコする所なんだよ!?  
 こんなの絶対におかしいよ!お願い、何か怒らせたなら謝るから…だから許し、ひゃう!?」  
許しの言葉を最後まで言い終わる前に陰部を舐め上げられる。  
そして休む事無く舌での愛撫が続けられる。  
「ひゃう…くふう…はあぁっ」  
怖くて気持ち悪くて仕方がないはずなのに、それなのに  
何故か口からは甘い声がもれ出る。  
(どうして…どうして…?今舐められてる所…オシッコする所なのに…そんな所舐められてるのに)  
舌を這わせている所からぺチャぺチャと犬が水を飲むときのような音が聞こえてくる。が  
その音フーカをさらに興奮させる。  
「くふう…ひうん!」  
(なんで…こんなに気持ちいいの!?)  
「きゃうん!」  
(アタシ…変態に…なっちゃたの?)  
そんな思いが次々と溢れ出て、同時に口からは嬌声が止まらない。  
 
 
そんなことがひとしきり続き、  
そして突然何かに歯が当てられる感覚が有り、続いて今までの物とは比べ物にならないほどの快感が押し寄せてくる。  
「ひぃああああああ!!」  
もう思考も何もかもが頭から消し飛び、ただ快楽だけが体を駆け巡る。  
口からは嬌声以外出せない。体も痙攣して動かせない、顔を離すときにスカートも剥ぎ取られるが、  
もう、何も出来ない。  
荒く息を吐き呆然と宙を見るフーカに  
「ふん、これぐらいなら十分だな」  
と言うヴァルバトーゼの声が聞こえてくる。  
(十…分…?何が?)  
混乱するフーカの耳にさらにカチャカチャと言う音が聞こえてくる。  
音の出所を確かめようと首をなんとか持ち上げ、そしてそこにある物を見た時フーカは息を呑んだ。  
「そ、それって…」  
ヴァルバトーゼはズボンから取り出されそそり勃つそれは、フーカが一度も見たことの無いほど大きかった。  
そのそれをヴァルバトーゼはゆっくりとフーカのじっとり湿った陰部に近づける。  
その意図がわかっても、もうフーカには抵抗する力が無かった。  
そして、読み通りそれはフーカの陰部にあてがわれる。  
「やらぁ…やらぁ…やめれよぉ…そんなの入んないよぉ…」  
かろうじて口で拒絶の言葉を吐くが、無駄なのはとっくにわかっていた。  
ただ唯一の希望は今までの行為はどれも異常に見えて気持ち良かった。  
だからきっと今回も同じだ。  
 
そんなフーカの望みは陰部に突きこまれた途端砕け散ることとなった。  
 
「〜〜〜〜!!!」  
痛い、想像すらし得なかった痛みだった。今まで快感ばかり感じていただけによけいにそれを鮮明に感じ、  
声すら出せない。  
(痛い痛い痛い!!)  
今までどれほどのことをされても我慢できたのはそこに快楽が伴ったからだ。  
だが今はそれが微塵も無い、ただ体を裂かれるような痛みだけ。  
目からは涙が溢れ出てくる。  
その様子を見て始めてヴァルバトーゼの表情が変わる。  
「おい、そんなに痛むのか?」  
「あたり…前でしょ…ひどいよ…ひどいよヴァルっち…」  
痛みにつっかえながらも、涙声で訴える。  
「信じてたのに…どんなことしても…痛いことだけはしない…って、それなのに」  
こんなことを言ったら、もっとひどいことをされるかもしれない。  
けれど言わざるをえなかった。  
キスの相手にヴァルバトーゼを選んだのもひょっとしたらそんな信頼が心の中にあったからかもしれない。  
そう、信じていたのに。  
涙目でヴァルバトーゼをにらみつける。ヴァルバトーゼもその目をじっと見つめ、  
そうしてしばらく黙って見つめあう。  
 
そして次の瞬間  
「スマン!」  
ヴァルバトーゼが沈黙を破った。  
「へ?」  
恐らくはさらなる痛み、もしくは辛辣な言葉を受ける覚悟をしていたフーカはあっけに取られる。  
だがそんな彼女の思惑などお構い無しにヴァルバトーゼはさらなる衝撃の言葉を吐いた。  
「く…やはり、初めての事を書籍だけの知識をもとに性急に進めようなどと無謀だったか…」  
「はえ?」  
その言葉の意味が一瞬わからず、そしてわかった瞬間驚愕の叫びを上げる。  
「ええええ!?あんたこういうの初めてだったの!?」  
「当然だ」  
「だ、だ、だったらあんたも大人じゃないじゃん!!」  
「馬鹿物!言ったはずだ、学べる者が全てでは無いと!こんなことをせずとも俺はとっくに大人に  
 なっている!!」  
あまりのことにフーカは言葉を失う。貫かれた痛みもあまり感じ無くなっていた。  
だが、ヴァルバトーゼはそんな気持ちなど知ってか知らずか喋り続ける。  
「だが、お前が大人の営みたる物を学びたいと言うから、本屋に走りそのテの本を購入し  
 何度も何度も読み返したのだ!だが、あの書物め役に立たん!何が甘い快感が走った、だ!!」  
あまりの事実に完全に脱力しながらも、もう一つの気になってることを尋ねる。  
「じゃあさ、なんでこんなことしてる最中あんな張り詰めた顔してたのよ?もっとリラックスしたら良かったじゃん」  
「愚か者!頭の中で手順と方法を何度も暗唱しているときにリラックスなど出来るか!!」  
「じゃあ、始めから怒ったりしてなかったの?」  
「何故怒る?確かにお前が条件を満たしたのは予想外だったが、いざ教えるとなれば話は別だ。私情など挟むか」  
「ハ…ハハハ…アハハハ…」  
あんまりにもあんまりな事実に、虚ろな笑いしか出てこない。  
考えてみれば、あの目は鬼気迫るいうよりも真剣な感じだった。その他の強引な行動にしたってあせってたと考えれば  
納得がいく。  
「だが、よりにもよって教育の前に恐怖を与えてしまうとはな、学ばせるつもりがとんだ誤算だ  
 お前にしっかり教えようと思い根を詰めすぎたのが仇となった…スマン」  
「ヴァルっち…」  
自分の上で苦渋に顔を歪めるヴァルバトーゼにフーカは胸に熱い物が込みあがってくるのを感じた。  
今の言葉はつまり今の今まで興味を無かった物をフーカのために勉強し、慣れない行為をフーカたった一人のために  
してくれたと言うことでもある。その意味が理解できると顔が熱くなってくる。  
 
「ところでだ」  
「ひゃ、ひゃい!?」  
そんな状況で突然声をかけられ思わず変な声をあげるフーカに怪訝そうな顔をしながらもヴァルバトーゼは言う。  
「まあ、ここまで来てしまえば後少しだ。ひょっとしたら痛むかもしれんが…先に進んでもいいか?」  
そう聞かれてもフーカに迷いはもう無かった。  
「当たり前でしょ!!けどさ、この手のなんとかしてくれない?もう暴れないから」  
「わかった」  
そう返事をすると同時に手の枷が掻き消える。  
「ふう、全くひどいことするわね、確かにアタシだって最初はあんたを殴ろうとか思ったけどさ  
 言ってくれれば」  
最後まで言い終わる前にヴァルバトーゼは腰を動かし始める。  
「くう…」  
陰部の中が擦れるような感覚がして鈍痛が走る。  
けれど、さっきほど痛くない。痛みに慣れたからか、それとも  
(ヴァルっちの気持ちがわかったからかな…)  
今まではただ乱暴にされてるだけだと思っていた。けれど、本当の気持ちがわかった今痛みはそれほど気に  
ならなくなってきた。いや、それだけではない。  
(何…この感じ…)  
痛みの中に、わずかにではあるが快感が生まれ始めていた。  
 
 
そしてその比率は突きこまれるたびに快感のほうが大きくなってくる。  
「はぅっ……はんっ…あんン…はあぁ……」  
気づけば口からはさっきと同じような嬌声が上がり始めている。  
「ヴァルっち…アラシ、アラシ、なんか変らよぉ…ひぃあああ!!」  
せっかく戻っていた言葉も呂律が再び回らなくなる。  
だが、異変はフーカだけには起こっていなかった。  
腰を動かすヴァルバトーゼも顔を何かに耐えるように顔を歪め、  
「中に出すな、中に出すな…」  
と自分に言い聞かせるように何かを呟いている。  
その言葉の意味はわからない。  
けれどその苦しそうな顔だけが目に焼きつく。  
(ひょっとして、ヴァルっちも痛かったりするの?それなのにアタシの為に…)  
実際は全く違うのだが、フーカにはそんなことわかるわけも無く、ただこう思う。  
(アタシだけこんな気持ち良くなるなんてやだ!ヴァルっちも一緒に)  
そう考え、本能的に手をヴァルバトーゼの頭の後ろに回し、口を一気に押し付ける。  
「んむぅ!?」  
ヴァルバトーゼが戸惑ったような声をあげるが構う事無く舌をねじ込み、さっき自分がされたのと同じように  
ヴァルバトーゼの口の中を嘗め回し、舌を絡める。  
(ヴァルっちも気持ちよくなって!)  
ただそれだけの思いで唇を貪る。  
「んむぅ…んん…んちゅっ、んんん!!」  
下半身がぶつかり愛液が擦れる音と唾液の出すそれの区別がつかなくなるほど、フーカは激しく舌を絡める。  
(な、何…何なの…何か、何か来てる)  
快楽が留まること無く高まっていき、頭がボンヤリしてくる。  
(アタシ、どうなっちゃうの、こ、怖いよ…)  
経験したことの無い境地に恐怖していたその時、突然ヴァルバトーゼが唇を離し、体を離そうとする。  
「やらぁ!離れちゃやらぁ」  
何かに掴まってないとおかしくなりそうでフーカは必死でヴァルバトーゼの首にかじりつき、足を腰に絡みつかせる。  
「馬鹿…やめろ」  
そんな声がするが聞くつもりは無かった。  
「ヴァルっち…ヴァルっち…ヴァルっち!!」  
ただそれだけをうわ言のように繰り返し、しがみつく。  
そして、ついにその瞬間が訪れた。  
「っああああああああああああああ!!」  
頭の中が真っ白になり、それと同時に何か熱い物が体の中に広がるような感覚が襲う。  
そしてフーカの意識はゆっくりと無くなっていった、  
 
「ん…」  
フーカはゆっくりと目を開ける。どうやらベットの上で寝ているらしいことがわかり、まだよく回らない頭で考える。  
「…夢?」  
「だったら良かったと今ほど思ったことは無いな」  
何気なく呟いた独り言に答える声がして、そちらを向くとベットの端に苦虫を噛み潰したような顔をした  
ヴァルバトーゼが座っていた。  
その顔を見た途端、一気にさっきまでの記憶が蘇り、顔が真っ赤になり、続いて下半身が剥き出しになっている事に  
気づいた。  
「ちょ、み、見ないでよ!!」  
と慌ててシーツで隠す様子にヴァルバトーゼは呆れたように言う。  
「あれだけのことをしておいて今更な気もするが」  
「あ、あれだけのこと…」  
該当しうる全てのことを思い浮かべ、ただでも赤い顔がさらに赤くなる。  
「じゃあ、やっぱり全部夢じゃなかったんだ…」  
「む!?認めたな?今コレは現実だと認めたな!?」  
「夢だけど、夢じゃなかったんだ!!」  
「…動転してても取り繕えるその姿勢だけは感心する」  
とそこでヴァルバトーゼは空気を変えるように咳払いをする。  
「とにかくだ。これで大人の営みのレッスンは終わりだ!まあ、上々だった…と言いたいところなのだがな」  
最初は意気揚々と言いかけ、最後が急に尻すぼみになり、  
「取り返しのつかん事をしてしまった…」  
ついには頭を抱える。  
その様子があまりにも痛々しく見えたので、たまらずフーカはフォローをかける。  
「そんな事無いって、ヴァルっちは一生懸命だったじゃん!なんか失敗したとしたらアタシのせいだって!」  
その言葉を受け、ヴァルバトーゼは恨みがましそうな目でフーカを見た。  
「ああ、そうだな、明らかにお前のせいだな…」  
「ちょ、何よ〜そういう返しで来る?ってか、何ミスったってのよ!」  
「下見てみろ」  
とヴァルバトーゼはフーカがシーツで隠している部分を顎で指す。  
「下?」  
その言葉にフーカは視線を下げ、隠してる陰部を見る。そこからは何か赤と白が混じりあったような  
ドロドロした液体が流れ出していた。  
 
「何コレ?」  
説明を求めるようにヴァルバトーゼを見ると、ヴァルバトーゼは微妙に視線を反らしながらボソボソと説明する  
「あー…赤いのは処女膜を破った時の血でな、初めてこういうことをした女はみんなそうなる、で白いのが  
 男が興奮した時に出るものでな、精液と言うのだが…」  
「ええ〜!?じゃあコレ、ヴァルっちが出したの?」  
「ええい最後まで聞け!その精液と言うのがだな、ちょっと面倒でな…本来は安全性を考え外に出すのだが…」  
「中に出しちゃったと…」  
「ああ…そういうことだ…スマン」  
そう言ってヴァルバトーゼは深く頭を下げる。その姿をフーカは黙って見つめ、  
「いいよ」  
とポツリと言う。  
「別にいいって、元々アタシの為にやってくれたんだしね。それでどうこうなってもヴァルっちに責任は無いって」  
嘘偽りの無い本心だった。  
自分の我が侭の為だけにここまでしてくれた。それなのに恨むことなんて出来るはずが無い。  
もし、コレが有害な物で体に影響があろうともなんら構わない。  
(むしろ、ヴァルっちのでどうにかなるなら本望かも…)  
そんな考えが一瞬頭をよぎり慌ててその思いを振り払う。  
「だからさ、ハッキリ言って。アタシどうなっちゃうの?」  
そう言ってもヴァルバトーゼは顔を伏せたまま黙っている。そんなにひどいことになるのかと思ったその時  
「…が出来る」  
ボソボソとヴァルバトーゼが何かつぶやく。  
「ん?え?何聞こえない?」  
そう問い返され、意を決したようにヴァルバトーゼは顔を上げ、その言葉をはっきりと言った。  
「子供が、出来る」  
「ふ〜ん、そっか子供が出来ちゃうんだ。でもしょうがないよね…って、えええええええええ!?」  
あまりの衝撃的な言葉に一瞬そのまま流しかけ、そしてその意味が租借出来た瞬間フーカはパニクった  
「こ、子供!?つ、つまり赤ちゃん?」。  
「ああ、お前が昔言ってた愛の結晶とか言う奴だよ。というかお前中三にもなってそんなことも知らんのか  
 保健体育とかあっただろ」  
「うっさいわね!アタシはね、あんな大人の裏側を見せるような授業は聞いてないの。大人になるまで封印してんの!」  
呆れたようなヴァルバトーゼにフーカは半ギレ気味に返す。  
「ってか、何が教育よ!始めからコレが目的だったのね!!女の子を強制的にママにさせようなんて最低よ!!  
 この変態バンパイア、略して変態ア!!」  
「変な言葉を作るな!!大体最後にお前があんな真似しなければタイミングを間違わないですんだんだ!!」  
「あ、あんなこととかいやらしい言い方すんなー!!」  
そうやってしばらく大声で言い争い、  
「とにかくだ!」  
ヴァルバトーゼが肩で息をしながら切り出す。  
 
「孕んだかどうかは時間が経たねばわからん!これからしばらくは体調に気を付けろ!!何かあったら  
 すぐにヒーラーの所に行け!そして考えたくは無いがもしもの時は…」  
「も、もしもの時は?」  
「俺のところに来い」  
その言葉に思わずフーカは赤くなる。  
「そ、それって」  
「二人で考えれば何か突破口が見つかるやもしれん!!」  
「だよね」  
予想通りの解答にフーカはガクっと肩を落とす。  
「じゃあ用は済んだし俺は部屋に戻るぞ」  
そう言うとヴァルバトーゼは立ち上がり、扉に手をかけ出て行こうとする。  
「ねえヴァルっち」  
その背中にフーカが声をかける。  
「あのさ、初めてってことは…アルティナちゃんともしてないの…こういうこと」  
「な、なんでアルティナがそこで出てくる?」  
振り向かずとも動揺してるのがわかるほどの声がその答えを物語っていた。  
「ふ〜んヴァルっちシャイだねえ、ひょっとしてチューもまだとか?」  
「ア、アルティナもそんな真似しなくても十分大人だ!だから、そ、そんな行為など必要無い!」  
そう赤らめた顔で振り返ると、言い忘れていたようにヴァルバトーゼはフーカに指を突きつけ言う。  
「というかだ。俺の教育を受けた以上、コレが夢であれなんであれお前はプリニーだからな!  
 これからは徹底的に指導してやるから覚悟しておけ!!」  
と言い残し、慌しく部屋から出て行った。  
 
 
ヴァルバトーゼが出て行った後、フーカはベッドの上に寝転び、目を閉じ、さっきの出来事を思い起こす。  
(アタシ、ヴァルっちと初めてのことしちゃったんだ…アルティナちゃんでもまだのこと…)  
それが、何故か嬉しくてたまらない。  
(それでアタシもヴァルっちの初めて…奪っちゃたんだ)  
そのことが誇らしくてたまらない。  
そして、ヴァルバトーゼとの口付けを思い出す  
(アルティナちゃんがしたことも無いキス…ヴァルっちとしちゃったんだ…)  
ヴァルバトーゼに胸を揉まれ、そして嘗め回されたことを思い出す。  
(アルティナちゃんが揉まれたこと無い胸を揉まれて舐められたんだ)  
陰部に手を当てる。  
(アルティナちゃんが舐められたことない場所も舐められちゃったんだ)  
そこから漏れ出す精液を指ですくい目の前にかざす。  
(アルティナちゃんより先にヴァルっちの子供の種取ったんだ)  
そしてそれをほぼ迷う事無く口に入れる。  
ドロっとして苦いそれをゆっくり口の中で味わい飲み込む。  
(これでまた一個、アルティナちゃんがしてないことしちゃった)  
胸の中にドロドロと黒い物が湧き上がってくる。  
(確か精液って男の人が興奮した時に出るんだよね)  
さっきのヴァルバトーゼの言葉を思い出す。  
(ってことは、ヴァルっちアタシとしてて興奮してたんだ…)  
その事実を知り、嬉しくなりながらも同時に罪悪感も出てくる。  
(コレって略奪愛に、なるのかな?)  
とっくにしていると思ってたことを、先にしてしまったことはやはり後味が悪い。  
(けど…コレは教育ってヴァルっち言ったよね?)  
そう、コレは教育だったのだ。だったら何の問題も無いはずだ。何よりコレは自分の夢なのだから。  
そう自分に言い聞かせる。  
(だったら…教育なんだったら…)  
そうしてまた別の考えに行き着く。  
(一回だけじゃ…覚え切れないよね)  
一度覚えた快楽を、たった一度で終わらせることなど、フーカにはもう出来そうも無かった。  
 
   
「アクターレ大統領奇跡の復活…全くしぶとい男ですね。あのアホも」  
フェンリッヒが新聞を開きながら忌々しげにそう言う。  
「確かに閣下からすればなんでもないことでも、私にとってはあのようなアホが閣下より高い地位にいること  
 自体が不愉快です」  
「…ああ、そうだな」  
力説するフェンリッヒとは対照的にヴァルバトーゼはダルそうにそう返す。  
「あの閣下、どうかなされましたか?ここ数日、なんだか具合が悪そうですが…」  
「ああ、かもしれんな…今日はもう休む…」  
そう言うとヴァルバトーゼはヨロヨロと部屋から出て行ってしまう。  
「なんだ?ここ数日の閣下は様子がおかしいような…」  
仕事はキチンとこなすのだが、時どき今のように疲れ果てた様子を見せたり、いきなり頭を抱え始めたりしている事が多々ある。  
「ひょっとしたら、なんらかの病かもしれん調べてみねば」  
そう思い執務室に取り付けられている本棚から病気に関する本を探していると、なんだかピンクな背表紙の本が紛れている。  
「なんだこれは?」  
何気なくその本を手に取り、そのまま固まった。  
「ハハハ…疲れてるんだな俺は…まさか閣下がこんな本を読むわけが無い」  
そう言って本を一旦机に置き思いっきり目をこすりもう一度机の上を見るが、もちろん本が消えるはずも無く。  
“これぞ必勝!彼女をイカせる百八のテク!!”はそこに存在していた。  
「な、な、なぜこんな本が閣下の本棚に?い、嫌、カバーがそれっぽいだけで、中身はまたイワシの本かも…」  
そんな希望を抱きながら、震える指で中身を確認するが、当然ながら、男と女がアレコレしてる絵が目に飛び込んでくる。  
「ど、どうなさったのだ閣下は!?ま、まさか、まさかあの泥棒天使がいないから欲求不満に!?  
 そ、そこまでの関係になっているとはますます許せん!!もう閣下には近づかせんぞぉおおお!!」  
あの憎い天使に届けとばかりにフェンリッヒは天に吼えた。  
 
「あら不吉ですわね」  
手に取ったコーヒーカップが真っ二つに割れたのを見てアルティナは思わずそう呟いた。  
そんなに古くもないカップである、こんな割れ方をするはずも無いのだが、その考えていた矢先デスコが部屋に  
飛び込んできた。  
「大変デス、大変デスよ!アルティナさん!!」  
「どうかしたんですか?確かフーカさんの顔が早くみたいからって先に魔界に帰ったはずでは?」  
「それどころじゃないんデスよ!お、おねえさまが!!」  
「フーカさんがどうかしたんですか?」  
さっきの一件から不吉な物を感じていたアルティナは嫌な予感がして急いで先を促させる。  
「おねえさまが、部屋にちょっと口では言えないような危ない本を所持していたのデス〜」  
その言葉にアルティナは脱力したようにガクっとよろめく。その様子を見てデスコは泣き声をあげる。  
「ああ!!その顔は、なんだそんな事かって顔デスね!」  
「い、いえ…そういうわけでは…」  
顔に出てたかと慌てて謝るがデスコは収まりがつかないように地団駄踏んで泣きわめく。  
「デスコの知らないところでおねえさまが大人になっているかもしれないんデスよ!?」  
「ま、まあ気持ちはわかりますけど…」  
そう言って、なだめるように言う。  
「フーカさんくらいの年頃の女の子には、そういう物に興味を持つのは普通のことですよ」  
「ふ…普通…デスか?」  
「そう、そうやって少しづつ大人になっていくものなんですよ」  
諭すようにデスコにアルティナは優しく語り掛ける。  
「じゃ、じゃあ、デスコは妹としてその成長を喜ぶべきなんですか?」  
「ええ、逆にそうやって今のうちの勉強して置かないと、将来軽はずみな気持ちで間違いを犯しかねないでしょう?」  
「間違い?」  
首をかしげるデスコに、アルティナはごまかすように咳払いをする。デスコに詳しく話して聞かせるような内容ではない。  
「と、とにかく、今のうちにそういうもので学ばないと、将来フーカさんが男の方との関係で悲しい思いをしたら嫌でしょ?」  
「確かに!もしそんなことになったらデスコはその相手の男の人を抹殺してしまいかねないのデス!」  
「だったら、今のフーカさんのことも受け入れてあげてください。将来のためと思って」  
「わかったデス!!デスコおねえさまの妹として、全力で受け入れるデス!!」  
エイエイオーと掛け声を上げるデスコをほほえましそうに眺めていたアルティナは、  
次の言葉で凍りつくこととなった。  
「それにしてもおねえさまの持ってる本って、どれも『寝取り』って言葉が入ってるんデスけど…どういう意味なんデスかね?  
 …アルティナさん?どうしたデスか、顔がゾンビ色になってるデスよ?」  
「い、いえ…なんでもないのですよ…」  
と、取り繕うが、頭の中に恐ろしい考えが浮かぶ。  
ありえないとは思うが、不安がぬぐい切れない。  
(ま、まさかそんなことありませんよね…吸血鬼さん…?)  
 
 
「うう、なんだ…今一瞬寒気がしたような…」  
自室に向かいながら、ヴァルバトーゼは一瞬感じた寒気に震える。  
「まあ、実際体調が悪くなってるのやも知れん…」  
そうあの一件以来、どうも体調がおぼつかない。  
「まあ当然か…」  
あの後部屋に戻ったヴァルバトーゼをまず襲ったのは屈辱感だった。  
始め、本を読んだときあんな小娘に欲情などするわけがないと思っていた。  
だから小娘だけをイカせてやるつもりだったのに、あろうことかコッチも勃たせてしまった。  
そして、次に来たのは罪悪感だった。  
まさか中出しなどと言う暴挙におよんでしまうとは、思いもよらなかった。  
万一身重にでもしてしまったらどうすればいいのか全くわからない。  
たかがプリニーの心配などしてやる必要は無いと言い聞かせても、罪悪感は消えてくれない。  
 
いや、この二つはまだいい、勃ってしまったのは教育熱心だからで片付け。  
孕ませてしまった心配はそんな簡単に妊娠しないだろうと言う予想で抑え付けた。  
 
そう一番の問題は  
 
(あ、頭から離れん…)  
あの時の行為の余韻が未だに頭と体から消えてくれないのだ。  
目を閉じれば、乱れ悶えるフーカの姿が思い出される。  
静かになれば、耳の奥にあの嬌声が響く。  
口の中にはフーカと舌を絡ませた時の感覚が残っている。  
 
あの一件を思い出すたびに体が熱くなる。  
(マズイな…もうすぐアルティナが帰ってくるんだぞ…)  
こんな邪まなことを考えていたらアルティナの顔を間違いなくマトモに見れない。  
(落ち着け…あんな小娘の体、忘れることは容易い…はずだ!)  
そう考えてしまって再び思い出しそうになって慌てて頭を振る。  
そういえば、アレ以降フーカの顔を見ていない。  
(当然か…)  
なんせ身重にされる危険性にさらされた身だ。  
そんなことをした男の顔など見たくないのだろう。  
それにコチラとしても都合が良かった。考えただけでも思い浮かべてしまうのだから、  
顔など合わせたらさらにヒドイことになるだろう。  
このまま離れていれば落ち着く時間の短縮にもなる。  
そんな目論見は、  
「ヴァ〜ルっち遅かったじゃん!」  
またしてもあっけなく崩壊することになった。  
「な、何故お前が俺の部屋にいる!?」  
「いや〜ちょっとね、でもやっぱりヤった男の部屋ってのはなんか興奮しちゃうね!」  
「ヤ…」  
「アレレ〜ヴァルっち〜どうしたの〜顔赤いよ〜」  
あまりに率直的すぎる言葉にうろたえるヴァルバトーゼをフーカがすかさずからかう。  
「ひょっとして〜あの後以来、忘れられなくなってたとか〜」  
そう言いながらヴァルバトーゼにもたれかかる。  
その拍子に胸元が見えそうになりヴァルバトーゼは慌てて目をそらす。  
「そ、そんなわけがあるか!」  
ズバリ図星をつかれ、なんとか主導権だけでも握り替えそうとヴァルバトーゼは必死に威厳を保ち言い放つ。  
「大体忘れたのか!お前はもうプリニーなのだ!!語尾にちゃんと『ッス』をつけんか!!」  
「そのことなんだけどさ」  
と、フーカは何やら大きいカバンを取り出し、  
「確かヴァルっちは大人の営みについて徹底的に教えてくれんのよね?」  
中身をぶちまける。  
「な、なんだ!?」  
ぶちまけられたそれは大量の本だった。それもただの本でなく、ヴァルバトーゼが勉強に使った本、ようするにエロ本だ。  
「世の中にはさ、色んなプレイがあるってことよ。それをあんな程度で徹底的とはいえないでしょ」  
散らばった本を手で示す。  
「ま、まさかお前…最近姿を見なかったのは!?」  
「そ、こういう本を探してたってわけ!」  
「お、お前と言う奴は…」  
言葉を失うヴァルバトーゼにフーカはねだるように言う。  
「お願い、ヴァルっち!アタシ、ヴァルっちに教わりたいの!ホラこんなのとか!」  
「み、見せんでいい!!」  
目の前に突き出された本からあわてて目を反らす。  
だが確かに自分は徹底的と言った。ならば、フーカの言うとおりなのかもしれない。  
何より、もう一度あんな事をしてみたいと言う願望もあるにはある。  
けれど、これ以上やったら、アルティナと顔が合わせられなくなる気がする。  
それになんだか泥沼に片足を突っ込んでいるような感覚が消えない。  
悩むヴァルバトーゼにフーカは駄目押しの一言をかける。  
「教育!でしょ?」  
その言葉に意を決したように、というか半ばやけくそになったように叫ぶ。  
「いいだろう!!一度交わした約束だ!!徹底的に教え込んでやろう!!」  
そうだ。これは教育だ。だったら問題は無いはず。と自分に言い聞かせる。  
と言うか、そう言い聞かせないとどうしようもない。それほどに体が疼き始めていた。  
「やったぁ!!さすがヴァルっち!!」  
そう歓声の声を上げるフーカの目が一瞬妖しく光ったのにヴァルバトーゼは気づかなかった…。  
 
その後、この事実が露呈し、世にも苛烈な争いが繰り広げられることになるのだが、  
それはまた別の話…  
 
 
 

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