※ソウルクレイドルをクリアした人向けです  
※ちょっとした捏造アリ  
※リタリーさんが何の前フリもなく女体化してます。あと、公式よりも弱気です。  
※クラスター様が軽く結構鬼畜です。仕方ないね。  
※調教&時々暴力表現注意ッス  
※後半台詞の割合が多いかも…  
※色々把握しきれていません  
 
 
「リタリー。この間の仕事のことで少し話がある。後で私の部屋に来てくれ。」  
「…了解しました。」  
商業の中心街、オステカ。  
彼女は、この世界の中心ともいえる街を統べる組織のもとで働いている。  
主な担当は、門番と、療術による負傷者の治癒。  
そして、今や彼女の最大の特徴ともいえる  
存在感の無さを十二分に活かした、諜報活動だ。  
至る他組織や敵の施設にさりげなく潜入し、敵サイドの人物に何気なく接触し、  
国家機密にもなろう情報を度々持ち帰っていた。  
彼女が仕事を失敗することはなかった。  
 
雇い主のクラスターの部屋へ向かう廊下を歩いていると、  
どこからか異様なまでにうるさい、しかし聞き慣れた足音が館内響く。  
「おーい、リタリー!」  
セプー族の青年が、凄い勢いでこちらに駆けてきた。  
彼も二年程前からこの屋敷で働いている。仕事以外ではあまり  
人と接することのないリタリーの、数少ない友人のひとりだった。  
彼は明るい性格で、一緒にいると色々問題が起こることもあるものの、  
大概の嫌なことは忘れることが出来るようなムードメーカーだった。  
彼がここに来てから、随分と楽しくなったと、クラスターも言っていた。  
「さっき階段で転んじまってよ…ケガ治してくねぇか?」  
「あなたという人は…。  
階段は落ち着いて上り下りしなさいとあれほど言ったでしょう?」  
「そんなこといわずにさぁ…そうそう、特に右足がひでぇんだ。…ほら!」  
注意を促したにもかかわらず、反省の色全く無しに無垢な笑顔を浮かべ、セプー族特有の、  
変わった形の右足を差し出してきた。確かに酷い怪我だ。  
―…よくもこんな怪我をしてあれだけのスピードで走れるものだ。  
まぁ、それでこそ頼りがいがあるのだが。  
「楽にしていて下さい。すぐに済みますよ。」  
「わかった。」  
 
すぐ終わるかと思えば、  
思いの外時間が必要で、7〜8分もかかってしまった。  
そして、友人の治療を終えた直後。大切なことを思い出した。  
―…クラスター様からの呼び出し。恐らく、前回の失敗のことだろう。  
噂に聞くと、彼は諜報活動においての失敗にはうるさいらしい。  
リタリーは、彼に叱られることだけは避けたいと思っていた。  
彼の期待に、完璧に答えたかったからだ。  
クラスター様に、叱られる。  
そう考えただけで、自分のなかの何かが崩れてしまいそうになった。  
それだけ、彼女にとって大切な、尊敬する人間だった。クラスターという男は。  
「…どうした?顔色悪いぞ?」  
どうやら、やるせない気持ちが不覚にも顔に出ていたらしく、友人に感づかれてしまった。  
 
青年の慰めや労いは、いつも素直で心にしみる。  
正直、少し弱くなっていた心には十分過ぎるほどの優しさだった。  
涙腺が緩みかけたので、彼に「気をつけて」、と一礼し、そそくさとその場を後にした。  
 
ノックした扉を開け、軽く会釈をする。  
失礼します、と、そう言う彼女の声は少し震えていた。  
「やぁ。随分と遅かったじゃないか」  
いつもの穏やかな声色と、張り付いた笑顔。今は、それが妙に悍ましく感じ取れた。  
カタカタと情けなく震える歯根に苛立ちを感じ、唇を噛み締め、ひとつ息を吸う。  
「申し訳、ありません…」  
謝罪を聞く男の目は、笑わずに彼女の桃紫の双眼を見捉え、  
煙草をふかした。煙を吐くその行動は、溜め息にも見えた。  
「しかし…珍しいものだね。君が任務を失敗するだなんて…。」  
「……っ」  
圧倒的な威圧感にたじろぐ。 ただ一声、返事をしたら良い。  
それだけのことに、どっと冷や汗が吹き出しそうになる。  
―…怖い。  
 
「リタリー」  
「……は、い…」  
怖い。優しく名前を呼ばれただけなのに、恐怖に身体が竦み上がる。  
「怖がる必要は無い。…何故失敗したのか、教えてくれるね?」  
頭が混乱している。  
いつまでも答えられずにいると、まるで問い詰められるかのように  
後ろに追い込まれ、遂に逃げ場はなくなった。  
「答えられないのかい?」  
混乱が頂点に達した。  
人間としての本能が脳に指令を出し、脳が全身に警戒体制を取らせた。  
 
やめろ。  
私を追い詰むな。  
私を解放しろ。  
 
行き過ぎた警戒は、攻撃へと移行した。懐から、短剣を取り出す。  
 
「――っぐ…!」  
「………!!」  
気が付けば、私を責めたその男は、  
振り翳されたナイフで肩を負傷していた。  
 
続く  
 

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