僕のハネムーン。ずっと憧れてた人と、幸せ絶頂のハネムーン。
…の筈だったのに。
「はぁ…」
「どうしたのじゃ?」
「…何でもありません」
「最近冴えぬ顔ばかりしておるではないか?」
あなたのせいです。…とは言えないけど、せっかく色々な苦難を二人で(この際マオ達は置いといて)乗り越えて、元の世界に帰れて、憧れの夫婦にまでなれたのに。
未だに、誓いのキスだけで姫様とそれ以上の事が出来てなかったりして。
「姫様…?」
「む?」
「僕達夫婦なんですよね?結婚してるんですよね?」
「そうじゃな。ワシが嫁でおぬしが夫じゃ」
「…はぁ」
「こら!また溜め息をついておるではないか!」
これじゃ結婚前と変わってない気さえしてきた。姫様の御心は相変わらず解らないし。
新婚の称号は悪くない。ある意味憧れの称号。…称号に意味が無いのは知ってるけど。
「アルマース!」
「は、ハイ!」
「元気が無いぞ?気分でも悪いのか?」
「い、いえ!大丈夫です!」
「…?」
かと言って野獣になる勇気も無いし…はぁ…。
もっと色々な事がしたいよー!
「と言うことなんです。ベリルさん」
「へぇ…それにしてもマジで恋の相談を受けるとは思わなかったよ。これもアタイの日頃の行いのおかげだね」
「…ベリルさん?」
「悪い悪い。貴重な体験すぎて取り乱しちまった」
この人に相談したのは間違いだったかも。いや、人じゃないけど。
でも人間界に戻っていない以上、少しでもマシに話せそうなのは…
「要するになんだい?あの姫さんの体が欲しいのかい?」
「ちょっ、ちょっと直接過ぎますよ!僕はただ、もう少しいちゃつけたら良いなとか…」
「…アンタも難儀だね。素直になれば良いのに。そういう事が出来るに越した事は無いだろ?」
「ぅ…」
こういう容赦ない所。悪魔らしいと言えば悪魔らしいかも。やっぱり人選ミスだったのかな。
「まあ、マオからもアンタはヘタレって聞いてるからね。一肌脱いであげない事も無いよ」
「え?」
「適当な理由を作れば良いんだ。あたしに任せときな!」
「え?はぁ…?」
そう胸を反らされましても。逆に不安になるよ。悪い悪魔じゃないのは解ってるんだけど…
あ、行っちゃった。…大丈夫かな?
結局今日も進展は無かった。ベリルさんがどんな行動を起こすのかも解らないけど、正直期待出来ない気がする。
ハネムーンの期間はまだまだあるけど、姫様は僕より魔界に興味があるみたいだからなぁ…人間界に戻ったら色々窮屈になるだろうし。
…眠くなってきちゃった。
「…姫様、お休みなさい」
せめて隣に居たらな。
トントン
…うん?誰か来たのかな?鍵なら開いてる筈だけど。
結構遅い時間だし、誰だろ?
「はーい」
あれ?この香りは…
「アルマース?」
「ひめさ…ま!?」
ね、寝間着!?始めて見たような気がしますよ!?…と、とりあえず落ち着かないと。
「どうされたんですか?こんな時間に?」
「…うむ」
なんか深刻な感じ。こんな時間だし。…髪が湿ってるのを見るとお風呂上がりみたいだ。色っぽいかも。
「?」
「ベリル殿に気付かせて頂いてな。思い立ったらすぐ行動はワシのモットーじゃ」
「気付く?ベリルさんに何か言われたんですか?」
「うむ。ワシは大きな過ちを犯しておった。アルマース、お主にも色々迷惑をかけたな」
「…話が見えないんですけど…」