ガタガタ……ごとごと……
ラハールの寝室。その中央に置かれた棺桶が、黄泉路につけぬ死者の
蠢動を暗示するように物音を立てていた。
ガタガタ……ごとごと……
ガタガタ……ごと…ガパッ!
「なぁんだ居るんじゃないですか殿下〜!返事してくださいよぉ!……
あっ」
やっべ……!。エトナがそう思うのも無理はない。棺桶の主人が全裸
だった、と言うだけでなく、もう一人入っていたのが特にマズい。金色
の髪、上気した白皙の肌。
ラハールが上、フロンが下で、きゃっきゃうふふのギシ々々アン々々
真っ最中だったのだ。
「……お」
お?
「お邪魔しましたぁー!!」
バタン!たったったったっ(駆け足)
逃げた。
「? なんの用だったんだアイツは?」
「さぁ〜? ていうかラハールさん怒んないんですか?」
「見られたって減るもんじゃないからな」
「ですよね」
ウブなのはエトナだけであった。
「ふぅ、危なかった……」
未成年なナリしといてパコパコやってんじゃないわよ……。
エトナは、自身にも理由のわからない、名状しがたい気分を抱いた。
なんだか無性にムシャクシャするのだ。それでいて原因の所在が判然と
しない、悪感情だということだけがハッキリしている、掴み所のないイ
ライラ。
……あたし、いったい何にむかついてんだろ?
むくむくと夏の入道雲のように膨らむ、鬱憤と焦燥と嫉妬が綯い交ぜ
になったような、何か。エトナは俄かに戸惑っていた。
「だぁー!なんかムシャクシャする!弟子1号!経験値稼ぎに行くよ!……あ」
「え?」「ふニャ?」
エトナが蹴破るようにして飛び込んだ弟子1号(戦士♂)の部屋には、ネ
コマタと経験値稼ぎ(性的な意味で)に励む弟子1号の姿があった。
「……名無しキャラの、分際で、何を、やって、いるの、かな?」
一語ずつ区切って発する言霊に憤怒が滲む。目が血走っている。握っ
ていた槍の把がぎりぎりみりみり鳴っている。怖い。
「い、いやあの、ですね!エトナ様!これには訳がありまして!猫とい
うのは長日性周期という発情期がひでぶ」
「ギニャー」
エトナの一撃で弟子1号とネコマタは骨も残さず消し飛んだ。