閉店時間が近い酒場のカウンター内で、ヒューイットは薄い笑みを浮かべながらグラスを磨いていた。  
客は完全に帰っており、店の中にはヒューイットと、各テーブルの整頓をし歩くリナリー(こちらもバイト)しかいない。  
 
時折、泥酔した悪魔が入ってくるものの、「いらっしゃいませ」と言いつつにっこり笑って愛用の弓、ドレイクハンター(Lv200、弓マスタリー等々イノセントぎっしり)を向けると、顔色を変えて店を飛び出る。・・・なかなか物分りがいい。  
店長すらさっさと帰っている。悪魔らしくて大いに結構、ヒューイットとしてもレジの中身という臨時ボーナスが入って助かる。  
 
不意に、ヒューイットの笑みが深くなった。  
少々邪悪さも垣間見えるそれは、正確に分析するならば「ほくそ笑み」だ。  
曇り一つなく磨いたグラスを棚へと収め、ヒューイットは布巾を畳んでカウンターに置く。  
 
「ねぇヒューイット君、アリアのお酒に・・・何か盛った?」  
テーブルの処理を終わらせて戻ってきたリナリーがカウンターの中へ入りつつ訪ねる。  
ヒューイットはそれに対して、躊躇も表情の変化もなく即答した。  
「えぇ、意思は残して理性を一時的に飛ばす薬を。ついでにジョナサンの酒には性欲がかなり旺盛になる薬を盛りました」  
「・・・優等生なのね、自分の姉さえ弄ぶなんて」  
「・・・えらく誤解されてるみたいですね」  
非難の視線を向けるリナリーに対して、ヒューイットは珍しく眉間にしわを寄せてみせた。  
マオの脇を固める者達の中で最も真意を図りかねるポーカーフェイサー、そのヒューイットの表情がここまで崩れることは珍しい。  
軽い驚きを覚えたリナリーは、戸惑いながら問い返す。  
「え、え・・・? 楽しんでるんじゃないの?」  
「それも2割ほどありますけどね、僕にだって姉さんや親友のために何かしたいって気持ちはあるんですよ?」  
 
ヒューイットの言葉に嘘はない。  
事実、ヒューイットは敵はおろか仲間さえ軽妙に手玉に取り、下手すりゃ「僕に釣られてみる?」などと言いかねない男だ。  
だが、それ故に幼い頃からの付き合いがあるジョナサンや姉のアリアは、ヒューイットにとって心の安息所とも呼べる、掛け替えのない存在なのである。  
 
人差し指で眼鏡をくいと持ち上げたヒューイットの表情は、リナリーが始めて見るものだった。  
普段の軽妙さも、戦いの時の覇気もない、穏やかな表情。  
「あの二人は、お互いがお互いに依存してるんです。幼いころは姉さんがジョナサンを守り、ジョナサンは守られることで姉さんを守っていた」  
昔を懐かしむように頬を緩めるヒューイットの顔を見て、知らずリナリーの表情も綻ぶ。  
「今は逆ですけどね。ジョナサンは大事なアリア姉さんを守るためだけに、望まない戦いを繰り返して強くなった。下手な魔界ひとつくらい簡単に統治できるくらいの力は持ってるでしょうね」  
「・・・・・」  
「だからこそ、僕はあの二人に上手く納まってほしいわけですよ」  
「魔界一ステキな依存ね・・・憧れるわ」  
 
まるで恋する乙女のように頬を赤らめてはにかむリナリー・・・・だったが、  
彼女は気付いていなかった。話を終えたヒューイットの表情がまた普段の軽妙さを取り戻し、それどころか妙な邪悪さを湛え始めたことに。  
 
「まぁ、不良の依存ですよ。ですから僕達は、悪魔らしい相互依存関係でいましょうね」  
 
 
 
「えっ・・・・?」  
リナリーが振り返るより早く、ヒューイットが背後から彼女を抱きすくめて動きを封じる。  
「リナリーさん、あなたが初めてなんですよ・・・・」  
「ひぁ・・・!」  
耳のすぐ傍で声がする。生暖かい息が耳朶を撫でて、リナリーの肩が跳ねた。  
ヒューイットはその様を見て笑みを深くし、そのままリナリーの耳をちろりと舐め上げる。  
「は、初めてって・・・・何が」  
リナリーは表情の窺えないヒューイットに問うた。  
返答はすぐに返ってくる・・・実に・・・・  
「僕が手加減せずに犯せるくらい淫乱な女性です」  
実に・・・・  
「僕に抱かれるまでは処女だったっていうのに、最後の方なんか自分でおねだりしてましたよね」  
実に・・・・  
「リナリーさんは僕が全力で可愛がっても壊れないたった一人の女性」  
実に・・・・  
「僕は全てを受け入れてくれたリナリーさんを、全力で愛しますよ」  
 
 
実に・・・・・・・・・楽しげに。  
   
「さ、こんなもの邪魔ですね」  
そう言ったヒューイットの手が、リナリーの纏うローブの胸ぐりにかけられた。  
まるでキャンディーの包み紙を剥がすかのような気軽さで、それをずり下げる。  
――ぶるんっ  
「きゃ・・・!」  
そして姿を現す、キャンディーよりも男を喜ばせる甘い果実。  
リナリーが生まれ持った、夜魔族のものに匹敵するほどに大きな乳肉は、ローブの襟元で下から支えられ、凶悪なほど刺激的なフォルムで突き出していた。  
「あれ、前よりちょっと大きくなりましたか? リナリーさんと同じで節操のないおっぱいですね」  
声だけで楽しそうと分かるヒューイットの手が、リナリーのローブの襟から乳房へと移る。  
・・・だが、すぐに喰らいつきはしない。  
触れるか触れないかの微妙なラインで、薄い空気の膜一枚を隔ててリナリーの乳房をいじり始める。  
まるで大きさを測るように、全体を包み込んで、ぴくぴくと肩を震わせるリナリーの反応を楽しみながら・・・  
「ふぅ、ん・・・・ぁ・・・・ぃゃ・・・」  
だが弄ばれるリナリーはたまったものではない。  
首筋にあたるヒューイットの息だの、ちろちろと執拗に耳を責める舌だの、半端も半端な刺激で、すでに気分は半分蕩けている。  
だからこそ、リナリーにとってはこの決定的な快感が欠落した状況が、拷問にしかなりえなかった。  
リナリーは肩越しにヒューイットを見やる。下手すると泣きそうな表情だ。  
「どうしました?」  
だが、それに答えるヒューイットは実に涼しい表情。  
「・・・・・触って、ちゃんと・・・・おねが・・・」  
「こうですか」  
――ぎゅむ  
「ひぁ!」  
懇願するリナリーの虚を計って、ヒューイットが思い切り掌を握りこむ。  
ヒューイットの手に収まりきらない淫らな乳肉は、指の間からこぼれて卑猥に歪みヒューイットを喜ばせた。  
――ぐにゅ、きゅ、ぎゅうぅ  
愛撫というにはいささか強い刺激だったが、それでもリナリーの心は奮え、身体も共に昂ぶっていく。  
次第に呼吸も乱れ、華奢な肩は上下し始め、顔には朱が差す。  
「あぁ、そんな・・・・ん、ぁ」  
リナリーが出来上がっていくのを認めたヒューイットは、見計らったように手をリナリーの顎へと添えて横を向かせ、その唇へと喰らいついた。  
舌を差し入れ、唾液を交換し、わざとジュルジュルと音を立てて吸い上げる。  
――ちゅ、ちゅるちゅる、ずじゅじゅるるる  
卑猥な粘液をすすりあう音は、口内を犯されるリナリーから確実に理性を削り落としていった。  
「あ、ぁ・・・・ヒューイット、くん」  
テロリ、と唇が離れて、唾液の糸が引いた。  
 
(そうだ、このキスで・・・・私、変えられちゃったんだ)  
身体の火照りを感じながら、リナリーは思い出す。  
弓の手ほどきを受けるという名目で、ヒューイットへ想いを告げにいった学級界。  
第一階層の悪魔達を殲滅し、ヒューイットの方を振り向いた矢先にこのキスを見舞われた。  
ヒューイットも学級界にきた目的にうすうす勘付いて、先んじた返事をされたのだと思った。  
それはとても嬉しいことだった・・・・・だからこそ、あのキスの凶悪性に気付けなかったのだろう。  
別に媚薬を含まされたわけでもないのに、口腔内全てが性感帯になったかのような、背筋をのぼる快感。  
顔が熱っぽくなり、吐き出す息が熱く荒くなっていくのを止められない、そんな感覚だった。  
唇が離れて、ようやく呼吸がまともにできるようになった頃には、身に纏うローブを剥がされていくことに何の抵抗も覚えなくなって・・・  
(こんな・・・こんなエッチな身体に、されちゃった)  
 
自分の淫乱さに驚きはあっても、それでもヒューイットが愛してくれるという喜びが勝って、処女も捧げて彼が望むこと全てを受け入れた。  
それをまたヒューイットは喜び、自分を求める。  
初めてヒューイットに抱かれてから今日までの短い期間、そのむせ返るような濃い愛の無限連鎖の果てにあったものは、ヒューイットに開発し尽くされた自分の姿だった。  
もう、今ではキスが『スイッチ』になる。  
(ヒューイット君・・・はやく、はやくイジメて)  
リナリーの蕩けきった瞳の懇願を感じ取り、ヒューイットは満足そうに微笑む。  
そして、艶やかな宴は始まった。  
 
「それじゃあ、いつもみたいに」  
ヒューイットは乳房への愛撫を中断し、リナリーを抱え上げた。狭いカウンターの中では都合がよろしくない。  
比較的大きな客席のソファまで移動したヒューイットはそこでリナリーを床へと下ろし、自分はソファへと腰を下ろした。  
床にへたりこんだリナリーは何かを求めるように、ヒューイットの脚の間へ入り、しなだれかかる。  
鼻先にはズボンを押し上げる膨らみ。そこからうっすらと漂う雄の匂いに、リナリーは身体を奮わせた。  
「あ、あぁ・・・・」  
「だめですよリナリーさん、ちゃんと言うべきことがあるでしょう」  
だがヒューイットはそれを許さない。まだ焦らす。焦らして焦らして、その後で乱れるリナリーを存分に楽しむために。  
「あ、あ、・・・・ぅ」  
言うべきこと、それはヒューイットがリナリーに最初に仕込んだことだった。  
リナリーの、そして自分の気分をさらに昂ぶらせる、淫猥な言葉。  
「ヒ、ヒューイットくんの・・・・」  
リナリーが、羞恥と恍惚感の入り交ざった表情で、ゆっくりと喋りだす。  
「ヒューイットくんの、ぶっといおちんぽ・・・私にちょうだい。おくちまんこで、フェラさせて・・・・しゃぶりたいの」  
熱に浮かされたように言うが、ヒューイットは薄く笑って見下ろすだけで、許してはくれない。  
すでにスイッチの入っていたリナリーは、次に自分の乳肉を鷲掴みにしてゆっくりと動かす。  
「お、おっぱいでもいいの。ヒューイットくん、パイズリ好きだよね・・・・好きなだけ、おちんぽ挟ませてあげるから」  
「へぇ、「あげる」・・・・?」  
「あぁ、ごめんなさいぃ・・・ほんとは私がおっぱい犯してほしいの、パイズリしたいのぉ・・・!」  
問い返すヒューイットに、慌てたように訂正するリナリー。  
もはや恥も外聞もない痴態に、ヒューイットはようやく満足し、頷いた。  
「いいですよ、ちゃんと悦ばせてくださいね」  
「は、ぃ・・・・・・・あ、んむ」  
リナリーのとろんと垂れ下がった目が嬉しそうに細まる。  
もどかしそうにヒューイットのズボンのジッパーを下げて、肌着ごと引きずり下ろす。  
そしてリナリーの眼前に、彼女を狂わせた肉の凶器が姿を現した。  
「あぁ、ヒューイットくんの・・・・おちんぽ、おちんぽぉ」  
レジェンド馬チンさえ比較にもならないような、太く長大な肉の幹を目にして、リナリーの恍惚感は頂点に達した。  
   
うわごとのように繰り返しながら口を大きく開き、その巨根を喉まで使ってくわえこむ。  
「んぐ、ぅ・・・・」  
幾度も仕込まれたとはいえ、この規格外れのサイズにはまだ慣れない。  
だがそれでもリナリーは、ヒューイットの男根を必死に根本まで含もうとする。  
その健気な姿勢に、ヒューイットの背筋をぞくぞくと快感が貫いた。  
「上手に、なってますね・・・・気持ちいいですよ」  
リナリーは、技術はといえば最高のレベルとまではいかない。だが心の底から自分のために奉仕せんとするその様は、テクニックを補って余りある快感となり、ヒューイットを楽しませる。  
ヒューイットは作り物ではない嬉しそうな笑顔で、リナリーの金髪を梳くように、頭を撫でてやった。  
ヒューイットの巨根を咥えたままのリナリーは、それだけで恍惚感をさらに増し、彼を上目遣いに見上げる。  
「さ、動いてください」  
「んぶ、ちゅ・・・・ふぁい」  
リナリーの顔が前後に動き始め、肉感的な唇の間をヒューイットの肉棒が出入りし始める。  
――ずじゅじゅ、ちゅば、じゅるるる、ぬちゅ  
ヒューイットに教えられた通り、下品な音を立てながら勃起した肉棒を根本まで飲み込む激しいフェラチオ。  
そして次の瞬間には、飲み込む時よりもさらに淫靡な音と共に、唇が唾液にまみれた肉棒を吐き出しつつずり上がる。  
 
『貪る』。その表現が一番適切だろう。  
今のリナリーには、清廉な癒し手としての神聖さも、戦場で皆を鼓舞する凛々しさもない。  
ただ、ヒューイットへの愛と肉欲にまみれた「オンナ」としての本能だけがあった。  
――もっと、ヒューイットを愛して、そして愛されたい。  
その淫らな行為に没頭しながら、リナリーは幸福な自分を感じ取っていた。  
 
 
〜続く・・・・うん、続く〜  
 

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