「む…」
「…」
なんなのじゃこの男は?余が直々に出向いてやっと言うのに。
外は良い月じゃ、灯りはいらんな。…余まで緊張してしまうではないか…
もうあれ(ニセゼノン討伐)から一週間は経ったか?なんだかんだであの時の事を、しっかりと話せなかったのう。
この男の余に対する気持ちがわからぬ。余を助ける為、とは言っていたが…あれはないであろう…。
そ、その…キスなどと言う…だからわざわざ、皆が寝静まった頃を見計らいこの男の部屋に確かめに来たのじゃが…
「アデル、答えよ」と言った後、俯いたまま顔を上げぬ。余は沈黙が嫌いなのじゃが…余も何故か話せぬ。
赤い髪、鋭い碧眼、鍛えられた体。熱血バカをのぞけばこの男は良い男であるし…余も嫌いでは無い。むしろ…
「なあ?アデルよ?」
「…なんだよ」
「おぬしは誰とでもするのか?」
「何をだ?」
「その…キスじゃ」
「違う!」
取り乱して、勢い良く立ち上がる。…余はそれほど気に障る事を言ったのか?
「いいか!キスってのは最愛の人だけにするもんだ!」
両肩を掴まれ、いつもの、熱血バカの瞳が余を覗く。
…む?アデルが言っている事は…
「両親とか、兄弟にする場合もあるだろうが、最初ってのは…」
アデル?おぬし余が最初と言っていたような…
「家族愛とは違う好きで…って」
「ア、アデル?」
「なんだよ!」
「おぬし、余がその…ふぁーすときすの相手では無かったのか?」
「そうだ!」
「おぬし、自分の言ってること…」
「あ…」
こ、このマグナム阿呆め!勢いにのせてなんてことを!余に…余に…
「アデル、そんな言葉では余は納得出来ん!」
「何がだよ!」
「はっきり申せ…余に…どんな気持ちを抱いているか…」
余も…精一杯答えてやろう。
やっと落ち着いて、咳払い一つ。
「好きだ。ロザリンド」
「余もじゃ」
「…」
「…終わりか?」
「…ああ」
むぅ…突っ込みたくなるではないか。
そんな空気では無くなってきていると言うのに。
「アデルよ」
「…なんだ?」
「他になにか無いのか?」
「他に…なにを?」
「もっとする事があるじゃろう?」
「もっとする事…ってアレか?!」
「そうじゃ」
「まだ…早いような…」
「何を言う。余はいつでも良いぞ?」
「そうか…じゃあ」
こやつ、何を勘違いした。