2003年バレンタイン ヤマ空中二の冬 愛情(おふくろ)の紋章は友情よりはるかに強いらしい。  
 
 
 
夜道を一人歩く少年がいた。  
名前は石田ヤマト。地元では名前の売れ始めているバンド、ティーンエイジウルヴスのベース&ボーカルで、  
彼にはこの冬、晴れて正式に交際しだした彼女がいた。  
が、いたにも関わらず、バンドのメンバーの一人が何をトチ狂ったか  
「バレンタインライブやろうぜ!」  
などと言い出したために、せっかくの大事な日を彼女とはぜんぜん関係ないところですごすことになってしまった。  
もちろんライブに彼女を招待してはみたものの、  
「そういうのは、興味ないから」  
と、そっけなく断られて、イマイチ身のはいらないライブになってしまい、  
寒い夜道を心身ともに疲弊しきった状態で、  
もう午後10時も回ろうかという時刻に一人家路を急ぐはめになってしまったのだった。  
 
(空のこと、怒らしちゃったかなぁ。)  
 
ふと、考えてみる。  
心優しい彼女のことだから(なにせ愛情の紋章の持ち主だ)、これぐらいで怒るようなことはないだろうけど、  
それでも申し訳ない気持ちになる。  
そんなことばっかりを考えながら、ようやく自分と父の二人で暮らすマンションが見えたとき、  
ヤマトの視界に一人の人物が飛び込んできた。  
 
「遅かったね。お疲れ様。」  
 
まさにヤマトが今考えてた人物、武之内空だった。  
 
「・・・空!どうしてこんなとこに!」  
「だって、会いたかったから。」  
 
会いたかった。  
そうだ。ヤマトも空に会いたかったし、空もヤマトに会いたかったのだ。  
 
「そんなこと言ったって!今何時だと思ってるんだよ」  
「だって、、だって、今日はバレンタインだし。。バレンタインは今日だけだし。。」  
俯いて、上目遣いで空は答える。まさか怒られるとは思っていなかったので、空も畏縮してしまったのだ。  
それに気づいてヤマトが、  
「あ、あぁ、、そうだよな。ごめん。とりあえず、ウチ入ろうか。」  
と行って、空を家の中へと促した。  
 
鍵をさし、ノブを回して、ドアをあける。  
仕事の都合上不規則な生活を送っている父親はまだ帰ってきていない。  
というより、ここ3日は帰ってきていない。  
ヤマトがこの家に引っ越してきてからずっとそうなので、そのこと自体はもう当たり前だった。  
 
「・・おじゃましまーす。」  
「そんな気にすんなよ。誰もいないし。」  
「そうだけど。。やっぱ他人の家にあがるときは言うものでしょ。」  
そう言って空は、脱いだ靴もちゃんと揃えて(武之内家の躾はきびしいのだ)石田家にあがった。  
 
「とりあえず、なんか飲みもんでも持ってくるから、あっちで待ってて。」  
「うん」  
そう言って電気をつけ、ヤマトは台所へ行き、空をリビングへと促した。  
台所には、ここのところのバンドの練習等にかまけてたせいで後回しにされていた食器類が残っていて  
それを目の端でとらえつつも  
(なんかあったかなぁ、コーヒーでもいっかなぁ。)  
などと考えながら、リビングにいる空にコーヒーでもいい?声をかけようとしたとき、  
   
「きゃあぁ!」  
 
突然空の悲鳴が響き渡った。  
 
「どうした空!」  
空の悲鳴を聞き付けて、リビングの向かいの脱衣所に駆けつけたヤマトの目に飛び込んできたのは、  
 
「な、な、、な、、なによこれ!」  
「あ、あ、いやこれは。。」  
 
洗濯物の山。  
雑然と脱ぎ捨てられた衣類が、武之内家の常識ではおおよそ考えられない山となってつまれていた。  
なにせ男二人所帯だ。おまけに父親はほとんど不在で、たまに帰ってきたと思えば大量の衣類を残し、  
また会社へと行ってしまう。  
しかたなく家事全般をこなすヤマトだって、ここのところバンドの練習に追われていたため、  
やはり後回し後回しにしてしまったツケをこんなタイミングで空に目撃されるハメになってしまった。  
 
「洗濯!しないの!?」  
空の怒声が飛ぶ。  
「いや、、普段はするけど。。ちょっと溜まってて。。」  
「掃除は!?」  
してなかった。洗濯物がこれだけたまっていて、台所も大変な事態になっているのだ。  
掃除などしているわけがない。  
「いや、してない、です。。」  
「するわよ!大事な喉をホコリにでもやられたらどうするの!」  
と、空は一声あげ、さらに  
「洗濯物は自分でやって!」  
と言い、脱衣所から出て行ってしまった。  
内心その言葉に安堵してしまったヤマトは(自分や父親の下着を彼女に触れさせずにすむ)その場にへたりこみ、  
しかし自らを奮い起こしいわれた作業をやり始めた。  
 
   
そうしてしばらく作業をして、あらかたやり終えたころ空が再びやってきて  
「ヤマトくん、ちょっといいかしら。」  
と、やたら笑顔で(その笑顔にヤマトはなにか恐怖のようなものを感じた)ヤマトを呼びにきた。  
「あ、ああ。なに空?」  
「ヤマトくんの部屋も掃除させてもらったんだけど。」  
「あ、ああ。ありがとう。えっと、それで?」  
「こんなものが出てきたんだけど。」  
 
ヤマトは後悔した。なんでもっと早く処分しとかなかったんだろう。  
空の手にあったそれは、いわゆる中学生男子の大好物、エロ本だった。  
 
「あ!いやそれは!えっとさ、ほらあれだよ!」  
「どれよ!」  
ボーカリスト・石田ヤマトをはるかに上回る声量でヤマトに詰め寄る空に、  
ヤマトが抵抗できるわけがなかった。  
「ち、ちがうって!あの、それは、えっと。。」  
「なによ!言いたいことがあるならちゃんと言いなさい!」  
「えーっと、あ、そうだ!太一だよ!太一のヤツがおいてったんだよ!俺のじゃないって!」  
半分ウソで、半分ホントだった。  
つまり太一が置いてったものではあったが、それはヤマトが太一にくれと頼んだもので、  
今はヤマトのものだったが、それはこの際どうでもいい。  
 
「太一!?太一がこんなの持ってきたの!?」  
「う、うん!そうだよ!太一のやつが勝手に置いてくんだよ!家だとヒカリちゃんに見つかるとか言って!」  
太一、スマン。  
そう心の中で親友に謝罪しつつ、今はこの状況をどう切り抜けるかで頭がいっぱいのヤマトに選択肢はなかった。  
「そう・・、太一がね。そうわかったわ。とりあえずこれは私が預かります。ヤマトくんは洗濯の続きをして頂戴。」  
「はい・・・。あ、とりあえず洗濯は終わったんだけど・・・。」  
「あら、そう。」  
一通り大声を出して満足?したのか、空は急に静かになって  
「じゃあ一息つきましょうか。」  
と行って、ヤマトとともにリビングに落ち着いた。  
 
「はぁー、でもねぇ。まさかヤマトくんがあんなものを持ってたとは。」  
やはりまだ少々怒りが残ってるのか、空はそうつぶやいてヤマトがいれたコーヒーをぐいっと飲んだ。  
「だからちがうってー。。俺じゃないってば。」  
「太一のものでもヤマトくんの部屋にあったから一緒です。」  
「はい、、すいません。」  
そんな会話をしばらく続けたが、突然空が、  
「あらもうこんな時間!帰らなきゃ!」  
と言った。すでに日付が変わる寸前だった。  
もともと門限にはきびしい武之内家であり、空は今日は12時までに帰るという母親との約束のもと  
石田家にお邪魔していたのだ。  
 
「あ、そう。じゃあ送っていくよ」  
「引き止めないの?」  
一瞬、ヤマトは空が何を言ってるのかわからなかった。引き止める?  
「え?えっと、引き止める?」  
「・・・ふふふ、冗談よ。」  
「え?」  
ヤマトはすこし考えて、それから空にからかわれたことに気づき  
「いやいや、今日は親父帰ってこないけど!明日も休みだけど!でもそれはまだ・・・」  
「そうねー。スケベなヤマトくんちには泊まれないわよね〜。」  
「だーかーらー、、そら〜。。」  
「ふふふ、わかってるわよ。それじゃあ、送ってもらおうかしら。」  
「はい。。」  
 
 
後日、学校にて  
 
「ヤマト!お前にやったエロ本がなんで空経由で俺に回ってくんだよ!」  
太一につかみかかられた。しかし、ヤマトには反撃するような元気も資格もなく  
ただ、スマン。と言うだけで、  
なんとなく察した太一も、気をつけろよ。と声をかけるだけしかできないのでった。。  
 

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