「ブラッディ・ストリーム!」
「きゃぁ!」
「リリモン!」
ヴァンデモンは強敵だった。
完全体とは言え、リリモンはまだ進化したてで、しかも連戦。
一方のヴァンデモンは長い間闇の中で力を蓄え、
しかもここはヴァンデモンによる結界の中。勝負は見えていた。
「ククク、貴様のような弱いデジモンが、この私に敵うとでも?」
ヴァンデモンのブラッディ・ストリームがリリモンをきつく締め上げる。
その度にリリモンは声にならない悲鳴をあげ、悲痛の表情を浮かべる。
「もうやめて!」
ミミの声が響いた。
リリモンは彼女のパートナーだ。
そしてミミは、自分のパートナーが苦しめられるのを黙ってみていることはできなかった。
「やめて、だと?ふん、そんなお願いを、私が聞くとでも思うのかね?」
ヴァンデモンは冷たい台詞を放ち、さらにリリモンを締め上げる。
リリモンはすでにほとんど意識を手放していたのか、
ぐったりした表情を見せるだけでもう声はほとんどでていなかった。
「お願い、もうやめて・・・。なんでも言うこと聞くから・・・。」
ミミの瞳から涙が零れた。自分のパートナーを苦しめられたくない彼女の必死の願いだった。
「ほう・・・、なんでも言うことを聞く、か。その覚悟はあるんだな?」
ヴァンデモンがサディスティックな笑いを浮かべる。
ミミは黙って俯いたまま小さくうなずく。
「ミミ・・・、だめよ・・。」
「大丈夫、リリモンのパートナーはあたしなんだから、リリモンはあたしが守る!」
必死に声を振り絞ってミミを止めようとするリリモンの声に顔をあげ、ミミは力強くそう返事した。
しかし、
「お前は黙っていろ!」
ヴァンデモンの冷たい声が響き、再びリリモンは締め上げられる。
「ぁぁぁ・・・」
「やめて!言うこと聞くからもうやめて!」
ヴァンデモンの口からふん、という小さい笑いが漏れた。
「そうか、ならばまず、こちらへ来てもらおうか。」
なによ!リリモンを苦しめるやつは、このミミちゃんが許さないんだから!
そう心に秘めてミミはヴァンデモンに歩み寄る。
「さぁ来たわよ。早くリリモンを放して!」
「ククク、そうだな。」
「!?」
そして次の瞬間ミミは頭の中が真っ白になった。
いきなりヴァンデモンがミミの唇を奪ったのだ!
キス自体を未経験の上、唐突に唇を奪われ、
さらに自身の口の中にヴァンデモンの舌(と呼んでいいのだろうか、ミミにとってはなにか恐ろしい蠢くもの)
がいきなり侵入してきて、ミミは完全に考えることができなくなった。そして
「ミミ・・・」
なんと、リリモンがパルモンに退化してしまった!
そのままその行為は数十秒間(ミミにとってはその何倍もの時間に感じられたが)続き
そしてヴァンデモンが唇を離したとき、ミミは理解した。
自分は純真を失ってしまったのだと。
「ククク、どうやら初めてだったらしいな。どうだ?私にファーストキスを奪われた感想は?」
「そんな・・・、ひどい・・・。」
「どんな言うことでも聞いてもらう約束だ。まだまだお楽しみはこれからだぞ。」
今やミミの中は怒りも失われ、ただ絶望に満たされているだけだった。
彼女の本当の地獄は、まだ始まったばかりだった・・・・。