「ターカート君!おはよ☆」  
「わあっ!!加藤さん!…おはよう//」  
(…えへへ...早く加藤さんが作ったチョコ食べたいなぁ……)  
 
今日は2月14日。女の子が男の子に甘いチョコレートやプレゼントを添えて気持ちを伝える  
"バレンタインデー"である。  
現在啓人と樹莉は区立中学校に通っており、まだ小学生であった啓人が樹莉に告白をして  
OKをもらった時以来2人は付き合いを続けてきている。クラスが別々になったりと環境が  
変化しても2人の仲は相変わらずで、順調に生活を送っているのであった。  
「ねえ、啓人くん、私のチョコ期待してるでしょ??あはは//顔に出てるよ〜」  
「……!えっ!?うん‥まあ…」  
「そんな顔しないでよ。大丈夫☆ちゃんと【本命】があるからね。  
それに、前から言ってあったし…」  
「…うん。」  
樹莉の言葉に啓人は照れくさそうに返事をする。実際、何日も前から啓人は胸を躍らせて  
樹莉のチョコレートを待っており、事実今朝からは顔の表情がゆるみっぱなしである。  
「えっと、今日は一緒に帰れる??」  
「うん!大丈夫だよ。今日は帰りも早いし…」  
「じゃあ…とりあえず昼休みにメールするね。」  
「待ってるね//」  
昇降口から2人はそれぞれの教室へ向かう。  
 
「おう、啓人!朝からニタニタしてんじゃねーよ。どうせもう加藤から本命のアレ  
もらったんだろ?」  
「何だよ博和… まだもらってないよ!」  
(ほんとは博和、チョコもらいたくてしょうがないくせに!)  
啓人は引き続き博和と同じクラスである。博和にとって啓人はやはり身近な存在であり、  
付き合いの長い親近感のわく友達であった。  
それ故うっかり樹莉とデレデレしている啓人を見ると歯痒く思い、ついからかってしまうのだ。  
初めは啓人の反応を見るのがおもしろく、またそれが可笑しくもあったため、一興として  
楽しんでいた。だが啓人と樹莉にバカップルぶり見せつけられれば突っ込みを入れたくなるのも  
当然である。  
博和も啓人同様、樹莉と小学校の頃から関わりがあり、デジモンを通じて距離の近い  
存在になった。鈍感な啓人でもそれを薄々感じたのか、樹莉に好意をもっているから博和は  
いろいろと自分に冷やかしを言うのではないかと思うようになった。  
本当の博和の気持ちは不明であるが啓人は、博和は気持ちが態度や行動に出やすい、  
ということを何となく理解しつつあった。  
 
 
やはり男子の間ではバレンタインデーの話題でもちきりであり、"チョコ"という言葉が  
何度も飛び交う。しかし、何より啓人にとって1番の女の子である樹莉からチョコをもらえる  
という事実が目の前にあるためか、他の事や他人の話はどうでもよくなっていた。  
(僕は…加藤さんからもらえるんだ...えへ。加藤さんからもらえるだけで十分・・・)  
「おい、博和去年何個だよ?」  
「去年かぁ…去年は3個だったっけ…?」  
「3個!? 結構やるじゃん。」  
「バカ。そうじゃなくて…多けりゃいいってもんじゃねーよ。量より質だろ?去年のは全部  
義理だよ。あ〜あ!誰かみたいに本命がもらえたらなぁ...」  
博和はクラスの男友達が囲む中で精一杯啓人に嫌みを吐き出したつもりだった。目線を  
ふっと啓人の方にずらす。博和の目線の先には頬杖つきながらにやけている啓人の姿があった。  
(…チッ!あいつ……)  
周りに聞こえないほど小さな舌打ちをし、顔をしかめた。  
「博和… どうした?あ‥‥啓人か...朝からだろう?」  
「小学校のときからだけど、あの顔見るとほんとむかつくんだよな!"もうチョコは予約済みだよ"  
みてぇな…うかれた顔しやがって...」  
「確かに…まあ、うらやましいけどほっとけよ。気にしすぎなんだよ、博和は。…もしかして、  
加藤のことが好きだったり?」  
「…‥ち、違ぇよ!!バカ!」  
(‥‥確かに加藤はかわいいけど…)  
頬杖をつき妄想をまるで泡を膨らませるかのように広げている啓人には博和たちの会話は  
聞こえる由もなかった。  
1時間目、2時間目…と午前の授業は足早に過ぎ去っていく。そして業間にはいつもより  
にぎやかな男子の声が響き、あいだに割るように女子の声が入る。ほとんどの人は何かしら  
今日を期待していたに違いないのではないだろうか。口には決して出さない人もきっと  
心の奥ではわずかなのかもしれないが、何かを望んでいるのかもしれない。  
4時間目が終了すると、給食の時間になり、その後は昼休みとなる。そそくさと給食を  
食べ終えた博和たちは外に遊びに出る。  
「おい、啓人!外行かねーの?」  
「あ、先に行っててよ!後ですぐいくから……」  
「何だよ…先に行ってるぜ!」  
(…へっ...どうせまた加藤と…)  
啓人は博和たちが教室から出ていくのをぼんやり見つめていた。そしておもむろに  
ロッカーからかばんを取り出し、携帯を開く。  
(あ…加藤さんからだ.....)  
 
受信  
2/14 12:59  
FROM 加藤樹莉  
件名  
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  
一緒に帰れる??HRが終わっ  
たら昇降口のとこで待ってる  
ね☆  
あ…あと、来るときに博和く  
んも連れて来て!v(>∪<)  
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  
受信  
2/14 01:04  
件名  
FROM 松田啓人  
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  
大丈夫だよ(^∪^)終わったら  
博和と一緒にすぐ行くね!  
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  
樹莉と何通かメールをやりとりをし、再びロッカーにかばんを入れると啓人は博和たちの  
ところへ急ぐ。啓人の頭にはただ一つ、どうして博和を連れていくかが疑問として  
引っ掛かっていた。先程メールでどうしてか樹莉にたずねたのだが、教えてもらえなかったのである。  
 
 
5時間目も終わり、1日の最後であるHRの時間を迎える。早く終わってほしい、と啓人も博和も  
身もだえしているのは言うまでもない。  
そしてクラスであいさつをし、ようやく1日の日程が終了する。  
「啓人!行こうぜ」  
「うん。他のクラスは終わってる?」  
「ああ… っつーか、もう先におわってるんじゃねぇの?」  
「それじゃあいこうか。」  
 
2人が昇降口まで降りると、そこには樹莉の姿が見えた。  
「加藤さん!」  
「あ…きたきた。」  
「じゃあ、ちょっと啓人くんは先に行ってて。」  
「ええっ…? うん...。」  
樹莉の言葉に戸惑うものの、言う通りにその場所を離れる。そう、博和が予想していた  
通り、樹莉は博和にチョコレートを渡したかったのである。  
「博和くん。これ…作ったから食べてほしいな...」  
「えっ‥あ…ありがとう」  
「博和くん、いろいろと頑張ってるでしょ?だからつい応援したくなっちゃって。それに  
小学校の時からのお付き合いだしね。」  
「加藤…ほ、ほんと、ありがとう!」  
「うん// 良かったら感想聞かせて。それじゃあ、先に帰るね//」  
「おう、じゃあ。」  
(良かった…博和くん喜んでくれたみたい//)  
 
「啓人くん!帰ろ?」  
「ねぇ、加藤さん…博和とどうしたの?」  
「え...えっと…チョコ渡して来たの。博和くん、最近頑張ってるでしょ!?だからそのご褒美  
にね…それに小学校はクラスおんなじだし…」  
「そっかぁ…博和喜んでたんじゃない?今年は0かぁ、なんていってたから」  
「喜んでたよ// 嬉しそうな顔してた……」  
2人はゆっくりと帰路へつく。いつも通りに会話をするが、今日はいつもより話題が多いようだ。  
誰が誰にチョコレートをあげたのか、もらったのかを教え合う。2人の顔には絶えず笑みが浮かんでいた。  
 
「啓人くん。」  
「うん?なあに?」  
「今日、6時に中央公園に来てくれる…?あの、ほら!渡したいものがあって...えーっと、すべり台  
のとこで…」  
「えっ…う、うん。」  
「今日はみんなからにらまれると思って不安で…。。だから誰もいない時間がいいかなって  
思って、、」  
「うん//わかったぁ。えへへ...楽しみにしてるね。それじゃあ、また後でね」  
「うん//またね」  
樹莉の家の近くまで行き、啓人は樹莉と約束をかわしとりあえず2人は別れる。  
(6時かぁ…加藤さんのチョコ楽しみだなぁ…)  
心が今にもはじけそうな啓人は軽やかに家路へついていった。  
 
 
(加藤さん、もういるかな…)  
啓人の目にはその場所で渡すのであろうものを手に提げ、立って待っている樹莉の姿が映った。  
「加藤さん!はぁ...待った...?ご、ごめんね。」  
「ううん//…啓人くんお待ちどおさま‥‥受け取ってほしいな。これからも、私と仲良くして  
ください...」  
「あ、あの…ありがとう//ほんとに、ずっと楽しみに待ってたんだ。僕こそ…こんな僕で  
良かったら、これからも仲良くして下さい//」  
樹莉の言葉に狼狽の色が心に、身体にあらわれる。顔も紅潮し、赤く染まっていたに違いない。  
しかし胸の何処からか愛しさが込み上げてくるのだ。  
啓人は告白し、樹莉からOKをもらったときから自分が樹莉を守ると決心した。苦渋の選択で  
あったが、自分の総てを樹莉にさらけ出し互いの身体を求め合った。溢れる想いをぶつけ合い  
優しさを見せつけ合ったのである。かつては手の届かない憧れであった少女が今、自分と  
強い信頼で結ばれている。それを心から実感していた。常に樹莉を気遣い、喜んでもらうための  
力が足りないと自覚していても出来るかぎり樹莉に尽くしてきた。また樹莉も素直であり健気に  
自分のために頑張ってくれる、そんな啓人を信頼し、尊重してきたのである。  
そして何より啓人は樹莉のことが好きであった。言うまでもなく樹莉も同じ気持ちを抱き  
続けている。胸から込み上げてくるこの愛しさは優しさでもあり、温もりでもあるのだろう。  
気持ちに身体を委ねた啓人はそのまま樹莉を抱きしめる。  
「加藤さん…僕、加藤さんが大好きだよ//ありがとう...」  
「あ…私も…大好き// 啓人くんあったかい‥‥」  
「そうだ!加藤さん、この後なにか予定ある?なかったら‥僕ん家に..」  
「何もないよ? 啓人くん家に…いいけど...」  
「このままだと寒いから、うちにきてあったまっていってよ。」  
「うーん。じゃあお言葉に甘えて…。」  
(ちょっとでもいいから、加藤さんをあったかくしてあげよう…!)  
 
暖かい日があっても当然ではあるがまだ季節は冬であり、寒さが身体にしみわたる。まさに  
三寒四温を繰り返しているといってもいいほどだ。さらに日没を過ぎると日中以上に気温が  
下がる。今日の日中は暖かい風が吹き、小春日和ともいえる陽気であったが、今では気温が  
大分下がり冬であることを痛切に感じさせるほどの冷たい風が吹いているのである。啓人は  
とにかくこの寒さから逃れようと自分の部屋へ樹莉を招き入れた。  
「寒くない?大丈夫?無理矢理連れて来てごめんね。なんか、いろいろ話したくなっちゃって…」  
「うん。大丈夫Vv あ…チョコだけど、後で一人のときにあけてね」  
「あは。わかってるよVv 下いって何か持ってくるね」  
(…なんか啓人くんもずいぶん大人っぽくなったなぁ...)  
中性的な顔立ち・華奢だった後ろ姿。今でもそれを樹莉は鮮明に記憶している。そしてどこか  
頼りなく、口べたであった少年。今ではその時の面影は多少残っているものの、啓人は一年一年  
成長し精神的にも大分たくましくなった。啓人自身はあまり気付いていない変貌に樹莉は目を  
見張るほどだ。その成長には樹莉の存在が大きかったとも言えるのだが。なんでこんな男の子が  
好きなんだろう、と思ったときもあったが、啓人との時間を過ごすにつれそんな疑問が解けていった。  
いつでも自分に一生懸命尽くしてくれる純粋で素直な優しさと心の温かさに樹莉は心惹かれたので  
あった。ベットに腰掛け、笑みを浮かべながら樹莉は恋人のことを考えていた。  
「紅茶でも大丈夫?あと、うちの店で出してるクッキー持ってきたんだけど…良かったら  
食べてってね」  
「あ…わざわざごめんね。ありがと//」  
戻って来た啓人は樹莉の隣に腰をおろす。そして2人でいつものように話を始めた。  
 
(…今日の加藤さん、なんでこんなにかわいいんだろう...)  
樹莉からチョコレートをもらい、今日という日にこうして2人で過ごすこともできた。  
互いに忙しい中、このような時間がもてるとは啓人も思っていなかった。  
幸せなんだと実感する。今日の啓人の心は溢れるくらいに普段以上の樹莉の優しさで一杯に  
なった。そしていつも以上に樹莉を愛しく思った。  
 
溢れ出してくる満ち足りた想いは啓人の理性へとベクトルが向く。気が付くと次の瞬間、  
啓人は樹莉を自分のベットに押し倒していた。  
「加藤さん・・...今日の加藤さんほんとに、優しくて、かわいくて…」  
自分でも驚くほどストレートな言葉をためらいもなく口にしてしまった。我にかえりそれを  
自覚した瞬間頭に血が昇ってくる。1年以上の関係であっても啓人には恥じらいがあった。  
…目の前にいる少女は想い焦がれた憧れの存在であったから・・・  
 
樹莉にとって5年生の頃、啓人が自分に想いを抱いているのを気付いてあげることが  
出来なかったのが心がうずくほどの傷みであった。最初はクラスメートでも特に親しいという  
わけでもなかった。冒険をし、啓人の人柄を感じたとき同時に初めてそれに気付いたのだった。  
だからその分今は啓人のあらゆる面での総てを受け入れたい。気付いてあげたい。そう樹莉は  
願っていた。  
 
啓人の気持ちを感じ受け入れると同時に安心感が込み上げる。以前と変わらず自分をしっかり  
見ていてくれる。他の友達は気付かない内面も的確に悟ってくれる。それに何より愛してくれる。  
本当に、本当に、啓人が愛しい。思わず樹莉は啓人に強く飛びつくと精一杯の力で身体を寄せる。  
それに啓人も応じるように強く樹莉の身体をかきこんだ。  
「ありがと。優しい啓人くん//」  
 
ちゅっ……  
 
(我慢できないや…!加藤さん!!)  
「加藤さん!ぼ、僕…加藤さんの身体をあっためてあげたい…!」  
何を言っているのかが一瞬把握しきれなくなった樹莉は不意に表情をかためるがすぐに啓人の  
本意をくみとることができた。  
(・・そういうことなのね...こう言われちゃうと、かなわないのかな…)  
真摯な瞳。何の嘘偽りもなくただ純粋に自分のことを考えてくれているのだろう。そんな彼を  
見ているとどんな願いでも受け入れてしまいたくなるのである。また、樹莉の心の中には  
啓人に思い切って自分から甘えてみたい、自分から気持ちをぶつけたいという欲もあった。  
キスをしたり、抱きついたりすることはどちらからというわけでなく愛情表現として日頃から  
求めあってきたのだが啓人から、という場合が多いため(それはそれで安心なのだが)樹莉は  
自分という存在を確立してはいるものの、ほとんど引き気味になり受け身という形にまわって  
しまうのである。  
今日こそは…自分も頑張らなくては。樹莉は決心すると同時に啓人の懇願を受け入れた。  
 
「うん・・// 」  
 
自分から…自分から…。一枚一枚と服を脱いでいき、樹莉は自らの裸体をさらし出す。啓人をまさに  
虜にした肢体が視界一杯に映える。しかもその肢体はさらに、ほぼ"大人の女性"という言葉が  
似合う程に成長していたのだ。きめ細かな白く透き通る柔らかな肌は蛍光灯の光を反射させて  
いるかのよう。そして今啓人の目に立体的に映る大人の女性に変容しつつある優美な身体はこれから  
幾度も啓人を感服させ、魅了することであろう。  
(加藤さん…前よりももっときれいだ……普段は布の下に隠れてるけど、その下でさらに  
進化してたんだね)  
 
僕だって。しばし樹莉の裸体に心を吸い込まれていた啓人もようやく樹莉と同じ姿になる。  
(啓人くん…また大きくなったのかな・・・)  
自分とはつくりが異なる身体。そう、樹莉の視線の先には一人の"男"がいる。身長も高くなり後ろ姿も  
少し大きくなったのではないかと樹莉も感じていたが、こうも間近で見てみるとさらに驚くものだ。今だ  
少年のようなあどけない笑顔を振りまき、時には照れ隠しをするようなこともあるが、啓人の身体も樹莉と  
同様に大人に向けて大きく進歩していたのだった。  
 
今の2人には辱めなどは存在しない。はにかみ屋である啓人もそんな気持ちはとうに押し殺した。  
目の前には強く信頼しているひとがいるのだから。啓人は僅かに笑みを浮かべると、樹莉の  
身体をふわりと包み込んだ。  
(裸で抱き合うのって、こんなに気持ち良かったんだ…)  
まるで樹莉と一つになれたような感覚。一日中、いや、このままずっとこうしていたい。  
そんな欲にかられる。  
(…私からじゃなきゃ・・・)  
「待って!啓人くん」  
啓人が樹莉の身体へ視線を下げたとき、樹莉は突然声をかけた。  
「考えてみたら今日は…バレンタインデーだよ?女の子が男の子に幸せをプレゼントするんだ…  
だから、まず私が啓人くんに奉仕しなくちゃ...」  
啓人の返答も待たずに樹莉は啓人の下のものへ口を近づける。啓人は慌てて両手でそれを隠した。  
「‥や…ダメだよ…」  
「…もう...こんなに大きくなってるのに。啓人くんは何も言わないの!」  
強く言われてしまい、返す言葉が見つからない。ただただ、樹莉に従うしかなかった。  
樹莉の一糸纏わぬ全貌を見てしまったため啓人のそれは上を向いて自己主張を始めていたのである。  
樹莉からパワーをもらったんだぞ、と言わんばかりに。啓人自身も下のものが暴発しないように、  
と日頃から飼い馴らす訓練を積んでいたが、樹莉の前では全く歯が立たなかったようである。  
血液の鮮やかな真紅できれいに色づいているそれを樹莉は若干小柄な両手で握ると抵抗なく口の中に  
おさめた。  
「!ぃやあっ……」  
(ふわあぁっ!! 気持ちいいっ… このままじゃ、あんまりもたないよ・・・)  
小刻みに甘い吐息がもれる。敏感な神経が集中するその切っ先に柔らかい舌が纏わり付き、絶妙に  
快感のつぼをとらえ刺激する。まるでその刺激が啓人の背中を快楽の海へ否応なく突き落とすように。  
溺れそうな理性はその海の激流に揉まれ、ひたすら水しぶきをあげながら水面をかくことしかできないのだ。  
もう何も考えることさえできなくなっていた。啓人の顔には苦悶の表情が浮かぶ。何とか自分の意識を  
繋ぎ止めるため、この全身を襲う快楽の激流と必死で戦っていた。  
(啓人くんの…口の中で生きてるみたい‥びくびくしてる・・・もっともっとよくしてあげるからねっ!)  
樹莉の愛撫に拍車がかかる。呼吸を乱し、目にはうっすら涙を浮かべている。顔もほてっているかのように  
紅潮していた。  
「!!...はぁっ、はあぁっ…ぃ、ああっ…か‥とうさあぁん‥いいっ‥!」  
 
(もうそろそろイくのかな…啓人くん)  
薄らぐ意識の中で大量の白濁液が怒涛の如く迫ってくるのがはっきりわかった。  
 
この快楽の激流からやっと開放されるときがきた。それを示唆する電流が下腹部から脊髄を走り、  
全身へ伝わっていく。  
「…加藤さぁん!! ああっ...はァあっ! 僕… もうだめ‥‥イくっ…あああぁっっ!!」  
 
ドビビュッッ!ビビュリリュッ!ドピピュュッ…ビュッッビュビュッッ・・・  
 
苦とさえいえるほどの状況から解放されたのと引き換えに樹莉の口内に収まりきれないほどの  
白い粘着質の証左が注ぎ込まれる。啓人のタイミングを予想していた樹莉は(あまりにも大量で  
多少驚いたが)それをこぼさず飲み干した。  
 
ゴクン・・・  
 
解放後の余韻に浸っているのだろう、啓人はほぼ放心状態ともいえるほどぼんやり遠くを眺めていた。  
「いっぱい、出たね。」  
樹莉の一言でやっと目が覚める。  
「…あ...ご‥ごめんなさい!またいっぱい出ちゃって…。加藤さんの、すごく気持ち良くて、、、」  
「私もびっくりしたよ? でも…啓人くん、すごく良さそうにしてたし...つい頑張っちゃった//」  
微笑みをつくるその顔はどこか違う面での女性らしさが垣間見えるのだ。涙で潤いをもった瞳が  
光を反射している。  
(僕に精一杯がんばってくれたんだよね…次は僕の番だ!)  
 
「…加藤さん、次は僕の番だよ!」  
「えっ!?」  
樹莉の二の腕を掴み、身体を横にさせると両手を膝にかけ、ゆっくりと開いていく。目の前に広がる  
絶景に啓人は唾を飲んだ。  
(はああっ!!何度見てもすごい…!みてて加藤さん…頑張って奉仕するからね!)  
そう心に誓うと、樹莉の膣口に舌をあてがい直ぐさま攻撃を始める。既に溢れている樹莉の愛液を  
残さずなめ回し、舌を丸め込み器用に愛撫する。  
「っはあぁ……ああぁんっ!はああぁ、た、かとくんっ!」  
(もうこんなに、濡れてる… 僕ので興奮したんだね...)  
自分が樹莉を興奮させたんだ、と思うと啓人は実に嬉しいのである。一人前の男として見られている、  
と実感が沸き、普段樹莉から恩恵を受けているためか、自分に興奮した樹莉を見ると何となく優越感に  
浸れるのである。…とにかくそのシチュエーションが啓人に劣情を抱かせるのだ!  
 
愛撫をすればするほど、樹莉の秘部からは愛液が溢れ出してくる。さらにそれが啓人の理性を  
きりきりと締め付けていくのだ。さらに右腕を樹莉の乳房に伸ばすと優しく揉みほぐす。その頂にある  
ピンクの果実には指先で軽く引っ張ったり転がしたりしながら慎重に、慎重に、何か大切なものを  
扱うようにしながら愛撫に没頭する。  
(…加藤さんの、チョコレートなんかよりもずっと甘いよ! もっともっと吸わなくちゃぁ!)  
啓人の愛撫に一層力が入る。樹莉の愛液を一滴も残したくない。そう思うと自然に舌が動く。すると、  
必然的に激しく卑猥な音がもれだすのだ。  
(啓人くんっ...やあぁっ!! ‥‥)  
 
じゅるじゅるズュじゅっ……クチュグチュっグジュ、ピチャピチャッぴちゅゅっっ!!  
 
霞ゆく意識の中でじわじわと身体中を痺れさせていく快楽が蓄積しているのを感じた。それが許容範囲を  
超え、今溢れようとしている。部屋に響き渡る淫響がより盛大になってきた。  
(ああっ…!たかと、くん・・・イくっ!・・・)  
「…ああああーーっ!!」  
 
 
真っ白になった意識の中大きく呼吸をしながら息を整える。ふと視界に啓人が入ってきた。  
「加藤さん、大丈夫??」  
「うん// 気持ち良くて身体中が痺れちゃって…」  
「あはは//よかったぁ…」  
照れくさくなりぎこちない笑顔を啓人は見せる。樹莉に喜んでもらったのは何よりも嬉しい。  
 
(…あ、やっぱりね。)  
ふと啓人の下半身に一瞥を与えた。見事?いつもの通りの予感的中である。あれだけ大量にぶちまけた  
のにもかかわらず、再びそれは反り立ち、上を向いていた。  
「啓人くん」  
「えっ?」  
「まだ欲しいんだよね。」  
「!・・・・うん//」  
簡単に(バレバレな)本心を見破られた啓人は恥ずかしながらも今日の樹莉には従順になること、そうする  
ことしか出来なかった。鈍感な啓人も樹莉の想いに気付きはじめてきたのである。  
(今日は特別な日なんだよね…だから加藤さんは…)  
積極的な樹莉と向き合えるように自分も頑張って、樹莉を幸せにしたい。もっともっと樹莉の新しいことを  
知りたい。もっともっと樹莉を好きになりたい。それが自分の責務だから。  
――僕は、加藤さんに感謝してるんだ。だからいつだって頑張らなくちゃ。応えてあげなくちゃ――  
啓人は決心した。  
 
「啓人くん、仰向けになって。」  
「う…うん」  
天を仰ぎ見る啓人のものがあたかも自らの存在を誇示しているように感じた。啓人に近づき、それを  
片手で握り押さえると樹莉はそのまま啓人の上に腰をしずめていく。啓人の硬いものが樹莉の秘境へ  
垂直に侵入する。  
(今日は恋人にとって大切な日だから...啓人くんにも幸せな気持ちをプレゼントしたい……)  
「わっ!!加藤さん…」  
「こんなことするの、初めてだね…」  
ゆっくりと樹莉の身体が上下に動き始める。初めての感覚に目眩すら覚えた。締め付けがかかる上に  
上下運動で揉みほぐされるのだ。仰向けになったまま、啓人はただただ縛り付けられるようなその  
未知の快感を享受する。  
「はぁっ..はああ...はァっ・・・」  
「あぁっ…はああっ...か、とうさん‥‥」  
樹莉の息も荒くなると比例するように啓人への快感も強まっていく。さらにベットのスプリングの音が  
結合部から発生する淫響に呼応する。  
 
(次は僕から・・・)  
「かとうさん…次は僕からいくよ!」  
樹莉の身体を包み優しく倒し、準備をととのえる。これから最後の段階に踏み出すのだ。息を荒げている  
樹莉の状態を気遣い、もう一度声をかける。  
「加藤さん、大丈夫??」  
「ううん。気にしないで…//」  
「加藤さん…いくよ!!」  
 
啓人の熱い瞳の奥には樹莉の姿が映っている。自分のことしか考えていないのが手に取るように樹莉には  
わかった。だからこそ樹莉は啓人を厚く信頼できるのだ。精一杯リードし、ひっぱろうとする。付き合いを  
始めて初めての頃は形にならないこともあった。しかし、責任感を強く持ち、努力をしてくれた啓人。  
そして今、着実に成長した啓人は頼もしく樹莉を導く。こんなにもたくましくなるとは誰が予想できたの  
だろうか。  
「うん//きて……」  
 
啓人はゆったりとした速さで腰を動かし始めた。自制心などはふっ切り、本能のまま樹莉を突いていく。  
格別の悦楽が2人を包み始めてきた。2人をつなぐ部分は樹莉の甘露の液と啓人の肉棒の先端から  
噴き出してくる純色の雫でこてこてになると、2人の敏感な性感帯へ熱く甘い激震が刺激を与える。  
 
「はあっ!はぁあ…あぁッ!はあ…んぁああん!」  
「ゃっ...はあんっ!はあああ!た、たかと!くんっ....」  
樹莉を安心させるように啓人は腕を背中へまわす。そして微かに笑みを浮かべて樹莉に一瞥を  
与えるとより強く腰を動かしはじめる。最大級の快感のビッグバンが2人を飲み込む中で、  
抵抗はできず、もがくこともままならない。一瞬でも気を抜くと意識を失いそうなのだ。  
 
「…あああっん!はぁんっ!はあぁ....た…たかとっ!!あ、たしもうだめっ.....」  
(ああっ!加藤さん!僕も…もうだめだ…!)  
「…樹莉!!はあっっ....ああっ、、僕も! 僕もだめっ…イくよぉぉっ!!」  
多量の熱い想いが迫ってくる。既に痺れている背筋に再び高圧電流が走る。  
「樹莉!樹莉…樹莉っ!!あああああああーーーっっ....大好きっっっ!!!」  
「っ!!た、かとッ!はああぁぁぁぁーーーっっ!啓人!!!」  
 
啓人の熱い、熱い総ての想いが放たれる。倒れ込む寸前のところで啓人は樹莉の身体を拾いあげ、  
強く抱きしめた。樹莉の色で染まった啓人と啓人の色で染まった樹莉の姿がそこにはあった。  
(あったかいプレゼントありがとう。加藤さん…大好きだよ//)  
余韻の波が消え行く中、啓人と樹莉は深い口づけをかわす。  
 
「あ…ありがとう。加藤さん。僕のために頑張ってくれたんだよね// 暖かいプレゼントを  
ありがとう...」  
「うん// 啓人だって、いつもいつも頑張ってくれるんだもん☆私だって…ねっ?? 何か  
すごいあったかいなぁ… あ、あの…今日は名前で呼ばせてね?」  
「うん...。な、名前で呼んだの、初めてだね!」  
「ふふっ...そういえばそうだね」  
 
2人だけの空間が2人の色に染まる。また一つ、大切な日に思い出ができた。そう2人は  
心から幸福を実感していた。2人でいられること、それがどれ程喜ばしいことか。どれ程  
幸せなことか。また新しいお互いを知り、もっともっと好きになることができたのであった。  
 
 
 
「おじゃましました」  
「家の近くまで一緒に行こう?」  
「ありがとうVvv」  
 
街灯に照らされる歩道にふと笑い声が洩れる。夜の寒空の下で2人の恋人が手を繋いで歩く。  
より確かな想いを抱きながら……  
 
「今日はありがとう。ほんとに嬉しかった//今までで一番のバレンタインデーになったね。  
…あはは。」  
「僕こそ、急に、ごめんね。もちろん、さ、最高のバレンタインデーになっただよ!  
えへへ....幸せ//」  
のろける啓人を見て樹莉も一杯の笑顔を見せた。ぼんやりとした光が照らす下で再び  
口づけをかわす。  
 
「バイバイ…啓人☆」  
「バイバイ…樹莉...☆」  
 
 
家に着いた啓人は早速樹莉からもらったチョコレートを口にする。さっきまでの2人が  
リプレイするほどの純情な甘さを今日見た新たな樹莉の姿とともに包んで胸の奥に  
しまいこんだのであった。  
 
 
                 〜〜〜E N D〜〜〜  
 
 

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