「…加藤さん、早く来ないかなぁ..あぁ‥ドキドキする...」  
実は今日、啓人の家に樹莉が泊まりにくるのだ。ジェンと留姫の二人が  
お互いの家にしばしば泊まりに行ったりしていることをジェンから聞き、  
夏休みに啓人は思い切って樹莉を自分の家に招待してみたのである。  
 
二人の関係は“付き合っている”とは少し言い難い関係ではあったが、  
お互いに両想いであることには自惚れや思い込みではなく確信している。  
学校帰りで一緒になったり二人で会うこともしばしばあった。  
 
啓人にとって樹莉は憧れの異性であり、いつも目で追ってしまうような  
とても気になる存在だった。  
クラスメートであることに喜びを感じていたし、普段の何の取り留めのない  
話をするときでも大切な時間だと思えてくるようにもなった。  
いつしか樹莉への感情を抱いてしまった。  
 
もともと啓人はあまり気が強いほうではなく、好きな異性に自分の気持ちを  
伝えることが簡単に出来るような器用な性格ではなかった。  
それは啓人自身も分かっている。しかし啓人ははっきりと樹莉への自分の気持ちを伝えた。  
 
樹莉は一年間で見違えるほど逞しくなった啓人をいつの間にか意識するようになっていた。  
6年生になり、去年よりもぐんと身長が伸び、心も成長したのか、少し大人びた  
雰囲気を感じるようになった。  
 
相変わらず純粋で明るい彼。しかも去年と変わらぬ柔らかい微笑みを見せるのだ。  
だから恋せずにはいられなかった。  
 
啓人からの突然の告白。  
樹莉には多少の戸惑いもあったが啓人に好きだと伝えた。“付き合う”ということではなく…  
 
 
「啓人! 樹莉ちゃんがきたわよ」  
「はあい! 今行くよっ!」  
(つ、ついに加藤さんが僕ん家に泊まるんだ…ど‥どうしよう..なんか恥ずかしいよ……)  
樹莉のことを考え緩んでいた顔が引き締まる。そう、これは夢ではなく、現実なのだ。  
「こんにちは啓人くん。よろしくね」  
「…うん。こちらこそよろしく//」  
 
早速啓人は家を案内してあげた。啓人の部屋、お風呂、トイレの場所であったりだ。  
一つ空き部屋があり、そこを樹莉に使ってもらうことにしたのだが、  
樹莉は啓人と同じ部屋で構わないというので啓人と同じ部屋に寝ることになった。  
 
(なんで加藤さんは僕の部屋でいいって言ったんだろう..なんか…嬉しいな♪)  
 
憧れの異性が自分の家に泊まりに来る。誰でもドキドキすることではないだろうか。  
誘っても断られるだろうと予想していた。二人の関係もそんな関係ではなかったし、  
いくら松田ベーカリーのパンを無料で食べられるっていっても・・・  
それに小学6年生が男の子の家に泊まりに行くなんて、抵抗があるのではないかと思っていた。  
 
そこで樹莉が啓人と同じ部屋でいいと言うとは……全くの予想外だった。  
 
 
啓人の部屋にはテレビがなかったが、啓人のお父さんが二人のためにと  
倉庫においてあった小さいテレビを持って来てくれた。  
 
いつもより少し豪華(?)な夕食をとり、二人別々にお風呂に入った後、  
啓人の部屋で二人はいろんな話をしたりしながらテレビを見ていた。  
去年の冒険の話、学校のこと、家族のことなど、普段から話題になることだ。  
あっという間に夜11時を回り、二人はテレビを消して布団を敷くことにした。  
 
「啓人くん」  
布団を敷き終えたところで突然樹莉が啓人に声を掛ける。  
「…うん!?」  
「…キス‥して..いい..?」  
「・・えっっ!?」  
啓人は耳を疑った。こんな言葉を聞くのは初めてだからだ。  
「‥イヤ…??」  
「う、ううん。…大丈夫だよ...」  
 
ちゅっ!  
 
啓人は少し動揺していたが、優しく樹莉は口づけた。もちろん啓人にとって  
樹莉とのキスは初めてではない。もう何度もしているが、いつも啓人から求めていたため  
樹莉から、というのはこれが初めてだった。  
 
啓人にとってキスは樹莉との関係は独りよがりなものかもしれない、という不安を抑えるものであり、  
一番の愛情表現だった。する度に幸福を感じ、多幸多福なんだと実感できた。  
キスをされると啓人は樹莉が愛しくてたまらない衝動にかられ、たまらず樹莉を強く抱きしめる。  
 
(こんな風になるの‥初めてかも…あぁ..加藤さん・・大好きだよ!)  
(…啓人くん‥私をこんなに強く…うふふ..甘えんぼさん)  
樹莉はもう一度啓人の頬にキスをした。  
(・・?!い、いつもの加藤さんじゃこんなことしないのに…)  
この一連の行動に今日の加藤さんは何かおかしいな、と啓人は首を傾げるのであった。  
 
ほんの数分、沈黙が続いたが突如樹莉が沈黙を破る。  
 
「ねぇ、啓人くん」  
「うん?」  
「こんなこと、聞いていいていいのかな…啓人くん..啓人くんはオナニー‥してる?」  
樹莉からの何とも言えない質問に啓人は驚くのと同時に戸惑いをみせる。  
こんなことを樹莉から聞かれるのは初めてである。  
「…へっ!?..。いきなりなんで‥‥そんな...どうしたの!?」  
「あ、ごめんね// ちょっと聞きたかっただけだから…。 啓人くんでもするのかなって思って…」  
「…そ‥それは..///でもね、こ、ここ最近はしてないんだ!」  
動揺してか、語尾に力が入った。  
「…どうして??」  
「僕‥僕がこんなことしてたら…すごく汚いことだし加藤さんに知られたら‥嫌われると思ったから…!」  
 
啓人がオナニーを覚えたのは6年生になる前。啓人も男である証拠に、  
エッチなことに少なからず興味はあった。エッチな本も見たことがあったし、   
アダルトビデオも見たことがあった。いろいろなものに影響されてか、いつしか  
自慰行為を覚えてしまったのである。  
 
(啓人くんは‥私のことを思って、嫌われるかもしれないって不安をずっと抱いて…ずっと我慢して…。)  
樹莉の心から啓人への申し訳ない気持ちが溢れようとしていた。だが自分の力で‥  
好きな彼に元気を与えてあげたい…喜ばしてあげたい…‥  
その想いがついに彼女をつき動かした。  
 
(私…私が啓人くんに元気を与えなきゃ・・・!)  
 
「…啓人くん、私は絶対啓人くんを嫌ったりなんかしないから‥  
もう我慢しなくて‥いいんだよ。啓人くんに元気を与えるのは私の役目だから……」  
 
樹莉は啓人のズボンの中に手をいれると、じかに啓人のものを弄り始めた。  
 
「えっっ!!か、か、加藤さん…何を...あっ‥はぁっ…」  
突然、自分のものを樹莉に触れられ、声が裏返ってしまった。  
びっくりするのは当然だろう。しかし啓人のものは過剰なほどに  
手の刺激に反応してしまった。  
 
(・・啓人くんの‥オチンチン…おっきい..それにすごく固くなってきてる…//)  
樹莉は大きく膨らんだ啓人のものに顔を近づけ、口に含んだ。  
「・・いゃ…!か、加藤さん…何を‥!やぁあっ!‥駄目っ!そこ..き、汚いよ…」  
 
啓人は強引にでも樹莉の顔を離そうとした。樹莉に自分のものを  
舐めさせるという行為だけはなんとしてでも避けたかった。  
しかし初めて体験する快感の波に飲み込まれ身体が思い通りに動かせない。  
まるで自分の身体が溶かされていくような感覚が襲う。  
それは理性をも溶かしていくのだった。  
 
樹莉は舌を器用に使い、先端部分、括れている部分を集中的に刺激し、  
根元までくわえ込み上下運動を激しくする。息を荒くしながら。  
 
「‥あぁッ…!はァ..んんっ・・うぅ‥んあっん・・・」  
 
(啓人くん、気持ちいいのかな‥かわいい声…少し身震いしてる…)  
啓人が声変わりをしていないとはいえ、こんな声を出すとは樹莉も全く思わなかった。  
啓人の喘ぎ声が樹莉の気持ちを駆りたてる。  
 
(こ、ここで止めないと‥加藤さんの口の中に出しちゃう!それだけは…絶対‥嫌だ!)  
 
溶け出していた啓人の理性がようやくブレーキをかけはじめた。  
 
「か…かとうさ‥あ‥ん!..も、もう・・あッ! はァっ...いっ、い、いいよぉっ!出ちゃう…」  
 
頂点はもう目前に迫っている。何とかして樹莉の顔を離さなくては!  
そう考えたときはすでに遅かった。  
 
ドクン  
 
(・・ああっ!も、もう間に合わない!!)  
 
ビュッッ‥…ドピュツドビュッッュツ‥ビュッビュッッ……  
 
樹莉の口内に啓人の溜まりに溜まっていたドロドロの濃い液体が発射された。  
樹莉はとてつもない勢いに驚き、顔を離してしまったため思いっきり顔にもかかってしまった。  
 
「・・ケホッ‥ケホッ…ゴホッ!」  
「…か、加藤さん!ご、ご、ごめんね! あぁ、、どうしよう...何か拭くもの‥持ってくるね…」  
 
(加藤さんに‥あんなことして…僕の馬鹿‥馬鹿!)  
後悔先に立たずとはこのことだろう。すでに樹莉に自分のをかけてしまったのだから…  
啓人は急いでタオルで樹莉の顔についた液体を拭き取る。  
 
「本当に‥ごめんね… 加藤さんにあんなものをかけて・・  
それに..飲んじゃったんだよね…」  
「…大丈夫だよ啓人くん。私は啓人くんに気持ち良くなって‥  
元気になってもらえるだけで嬉しいから・・それより…気持ちよかった??」  
 
正直に答えていいのだろうか。迷いが生まれる。しかし樹莉の好意に答えなくては。  
「うん‥// すごく気持ち良かったよ。身体が溶けるような感覚になって…  
あ、頭が真っ白になって何も考えらんなくなるくらい・・・」  
「…そっか// くすっ」  
樹莉は啓人にそっと微笑んだ。  
 
満足そうな樹莉の笑顔。見ると、何と言うのだろう‥  
疑問が啓人の心に少しずつ沸いて来る。  
(でも僕だけ‥僕だけこんなことしてもらっていいのかな… それじゃあ、加藤さんに悪いし‥  
できれば僕も・・加藤さんを喜ばしてあげたい...)  
 
啓人の思いが膨らんでいく。 しかし、樹莉に嫌われないだろうか、という不安が残る。  
 
――でも…加藤さんが好きだから…――  
 
樹莉への気持ちが不安を消していく。  
 
――僕は加藤さんが‥大好きだ!――  
 
「加藤さん!!」  
「た!啓人くん!?」  
不安を振り切り、啓人は樹莉を布団の上へ押し倒した。  
「…今度は‥僕の番だよ。僕だって‥加藤さんを喜ばして・・元気にしてあげなくちゃ…」  
 
啓人はまず樹莉の首筋に顔をうずめ、耳を甘噛みする。  
(加藤さん‥いい匂い…)  
彼女自身の香りとシャンプーの香りが調和してとてもいい匂いを放っている。  
舌を使い、首筋を上から下へ舐めていく。  
「はぁっ…ん・・・」  
少しくすぐったかったのだろう、樹莉は思わず声を漏らした。  
そして啓人の右手は樹莉の右胸・左胸交互にじかに触れ、愛撫を始める。  
(か、加藤さんの‥おっぱい…白くてきれいだ‥それに…やわらかい)  
 
樹莉の身体も啓人同様、一年間で著しく成長し、胸も膨らみ女性らしい体に  
なってきている。そんな樹莉の変化を啓人も少なからず気付いていたのだろう。  
「かとうさん‥脱がしても大丈夫?」  
「うん‥」  
啓人は樹莉の上半身の服を脱がすと左胸の桜色に色づいた小さな蕾に口を付けて舐め回した。  
 
くちゅ‥ちゅっ‥ぱっ..くりゅくちゅ…  
 
「・・あんっ! はぁあっ…た‥かとくん・・」  
樹莉の喘ぎ声を聞き、今度は右胸を口で愛撫する。  
 
(・・加藤さん、気持ちいいのかな…乳首がたってる.....おいしいよっ!かとうさんの‥おっぱい)  
 
これからもこの二つの小さな山はさらに大きく成長するのだろう。  
その成長をこれからも見ていけるのかなと思うと、少し喜ばしい気持ちになった。  
 
目の前の光景は果たして現実なのだろうか。最初は‥手を繋いだりしただけで  
啓人は紅潮し恥ずかしがっていたというのに。初めてキスをしたときも  
頬を真っ赤に染めてたっけ…。  
そんな啓人が自分を押し倒して今、喜ばしてあげたいという想いだけで  
自分の胸を愛撫している。  
(普段はもちろん明るくて純粋な少し大人しい性格だけど…今の啓人くんは‥  
私の知らない啓人くんなのかな・・・)  
 
――もっと啓人くんを知りたい――  
 
樹莉の気持ちは風船のように上昇を続けた。  
 
徐々に啓人の舌は下に降りていく。臍の一帯にじわりと舌を転がした後、  
啓人の手は樹莉の秘境の地へと入っていった。  
まず下着の上から割れ目の上をなぞってみる。  
「‥ぁぁっ…。」  
樹莉は少し身震いし、啓人はそこが濡れていることに気付いた。  
(・・加藤さんの‥‥湿ってる...これが“濡れる”っていうことなのかな…?)  
 
「啓人くん‥じかに触って…」  
樹莉の懇願をうけ、下着の中へ手を伸ばす。 割れ目に沿って  
指を動かすと啓人の指はクリトリスをとらえた。 ぐりぐり優しく刺激する。  
 
ビクッ!  
 
「…あはっぁ‥はぁん!はぁぃ‥ぃ‥」  
(…加藤さん‥もっと気持ち良くするよ...!)  
啓人の指はついに樹莉の秘部に触れる。そこはまるで洪水のように  
愛液が溢れていた。  
樹莉は自らズボンと下着を脱ぐと自分の秘部を広げてみせた。  
「…たかとくん、、ここだよ……」  
言われるがままに啓人はそこに指を二本挿入し、ゆっくり動かしはじめた。  
(あんまり広げたり奥に入れると・・痛いんだったよね....かとうさんのここ‥  
手を繋いだ時よりも…あったかい・・・)  
 
くちゅくちゅ‥ぐちゅっ…ちゃぷちゃぷっぬちゃ……  
 
とめどなく樹莉の愛液が流れ、何とも卑猥な音が漏れる。樹莉の顔は弛緩し、  
だらっとした表情になり、はぁはぁと呼吸が荒くなる。啓人同様、すっかり理性が  
溶けてしまっていたようだった。  
(・・こんな‥こんな加藤さんの顔見るの‥初めてだ・・・。)  
 
気付かぬうちに啓人も樹莉を気持ち良くすることに夢中になっていった。  
自分の罪を償うかのように・・・  
 
(…次は舐めてあげなくちゃ....)  
そして白くて細いきれいな足の間に顔をうずめ、舌を使って最大限愛撫する。  
割れ目に沿ってじんわりと舌をかよわせたり膣の中へも舌を進入させる。  
「はぁ...はあっ...ハァぁ…はあはぁッ・・・・」  
啓人の呼吸のリズムが狂い、早く、激しくなってきた。目の前にある  
樹莉の毛も生えていないきれいな割れ目、勃っているクリトリス、そしてもっともきれいな  
桃色をしている樹莉の膣。もう啓人はショートしそうなくらい思考が  
めちゃめちゃになり、我を失った。  
樹莉も啓人の激しい愛撫による嵐のような快感で意識が遠のいていくように感じた。  
自慰行為では絶対に得られない感覚である。  
 
「……っはぁあっっッ!あんっっ…ひゃぁあん...はあんっっ...!たかと・・くん‥  
気持ち、いいよぉっっ」  
 
じゅぱっ…ジュルるッじゅるっじゅるじゅる・・・  
 
樹莉の溢れ出る愛液を残さず吸い尽くすかのように啓人は今まで以上に大きな音をたてて愛撫する。  
「はぁああっ!んあぁっはん…ひゃああん! た、か、と…くぅ…ん....  
も、う…はぁっ・・あ‥たし・・もうっ、ダ……メっ‥‥イっちゃうよぉぉっ!」  
 
ビクッ、ビクッビクっ・・ぴしゃっ  
 
樹莉の身体が痙攣して強張り、のけ反った。啓人はそっと顔を離す。  
樹莉は快感の頂点に達した。 啓人の顔に樹莉の透明な液体が多量に飛沫した。  
(…か、とうさん……すごい・・・もしかしてこれが“潮吹き”っていうのかな...?)  
 
啓人は樹莉に声を掛ける。  
「か、加藤さん!?」  
啓人の顔が視界に入り、遠のいていた意識がはっきりしてくる。  
 
「・・・私…あんまりにも気持ち良くって...啓人、くん…かからなかった??」  
「だ、大丈夫だよっ// さっきは僕がかけちゃったから…。。 これでおあいこだね」  
樹莉は息が少し荒いまま急いでタオルで啓人の顔を拭く。啓人はゆったりした表情でにこっとした。  
 
啓人の目には一糸纏わぬ樹莉の姿が映っている。これでは不公平だと思い、  
啓人は服をすべて脱ぎ、樹莉と同じ姿になった。下のほうはまだ欲望が満たされてないぞ  
と言わんばかりに自己主張を続けていたが。  
 
裸になって樹莉と向き合う。  
 
本来の人間のありのままの姿を他人にさらすということはとても勇気がいることだろう。  
相手を信頼しないとできることではない。樹莉が啓人に、啓人が樹莉に、互いの身体を  
さらし合っているということは信頼し合っているという一つの証なのだ。  
 
(…加藤さんの身体・・やっぱりすごくきれいだ...白くて細くて・・・)  
もう一度啓人は大人に近づいている樹莉の身体を見つめて思った。  
 
(啓人くんの身体…華奢なんだけど・・・やっぱり男の子の身体してる....)  
やはり小学6年生の男の子と女の子の身体では差が出はじめてくる。初めて啓人の身体を見て樹莉はそれを実感した。  
 
(そういえば啓人くん…中学に入学したらサッカーをやりたいって言ってたかな・・・)  
いつか啓人が中学に入学したらサッカー部に入りたいと話していたことを思い出す。  
この華奢な身体もいつか筋肉がついて今よりもさらにたくましくなるのだろうか、  
樹莉は終始そんなことを考えていた。  
 
ゆっくり時間が流れていく。 これが夜の静寂というのだろう、とても静かだ。  
唯一、遠くのほうで救急車のサイレンの音が聞こえた。  
 
(…来年、中学に入ったら啓人くんは‥‥部活や勉強で忙しくなっちゃうのかな・・・。)  
啓人と樹莉は来年、区立の中学校に入学する。中学に入れば、部活もあるし、勉強も大変になると聞く。  
もちろん自分だって忙しくなるとは思う。でも‥啓人も忙しくなって自分の手の届かないところに  
いってしまうかもしれない…。私を好きでなくなってしまうかもしれない…。  
そう考えていると突如不安と悲しみが押し寄せ、樹莉は涙を流していた。  
 
「え……?か、加藤さん!? ど…どうしたの??」  
突如樹莉が涙を流したことに啓人は戸惑いを隠せない。理由が見つからないからだ。  
 
「かとう、さん…どうしたの??」  
もう一度啓人は問い掛ける。  
「・・ぐすん…ぐずっ....あの、ね、来年中学に入学したらたかと‥たかとくんが…  
忙しくなると…思って・・わた、わたしをっきらいに‥好きじゃなくなるのかなって思ったら..  
急にね...悲しくなって…」  
 
(加藤さんは……こんなことを・・・。)  
啓人は完全に言葉を失ってしまった。  
(…加藤さんを、安心させるんだ.....)  
気が付けば啓人は樹莉を抱き寄せていた。そして耳元でそっと囁く。  
「心配しないで加藤さん//僕も同じように思ってたよ。加藤さんが  
僕を好きでいてくれなくなるかもって……だけど、僕は加藤さんを信じているよ。  
お互いに忙しくなるかもしれないけど…僕はずっと加藤さんだけを好きでいる...!  
どんなことがあっても...。」  
啓人は自分の言葉で精一杯樹莉を励まし安心させたつもりだ。  
「・・・ありがとう…ありがとう啓人くん...」  
 
少しずつ樹莉の感情は落ち着きを取り戻していく。  
 
(啓人くんに…‥!)  
…‥落ち着きを取り戻すと同時に最大の決心が今ついた。  
 
それは――自分の初めてを啓人に捧げる――ということ  
 
前々から樹莉は本当に好きな人に自分の初めてを捧げたいという考えをもっていた。  
その“本当に好きな人”が今、目の前にいる。この少年ほど、  
異性を好きになったことがなかった。その想いは現在も膨らみ続けている。  
(啓人くんに… 私の初めてを捧げるんだ。)  
 
「あのね、啓人くん…私ね、啓人くんに初めてを‥あげたいと思っているの。  
啓人くんがよかったらでいいから・・・今私と‥お願い・・・」  
「‥えっ!?そんな・・・【しばしの沈黙】僕は、大丈夫だよ。加藤さんが‥大好きだから・・・  
で、でも、、本当に僕でいいの??上手くできないかもしれないし...」  
樹莉に後悔はしてほしくないと思ったのか、もう一度問いただす。  
「……うん…お願いします//」  
伏し目がちに樹莉は答えた。  
 
(僕が‥僕が加藤さんの初めてになれるんだ…上手くできないかもしれないけど....  
僕の総ての想いを‥加藤さんに見せるんだ。)  
これから自分も、樹莉も知らない領域へ二人三脚で踏み込んでいく。啓人の心臓の鼓動が激しくなってきた。  
 
啓人のものは今だ自己主張を続けている。そして、樹莉を楽な姿勢にして啓人は足に手をかけた。  
「……加藤さんいくよ…優しくゆっくりするけど、痛かったら‥すぐに言ってね」  
 
啓人はゆっくり自分のものを挿入していく。  
 
「ぅ‥っあぁっっ!!」  
「加藤さん!!」  
樹莉の身体の中で何かが破れるような音が響いた。避けられない激しい痛みに樹莉は身体をよじり、  
目にはうっすらと涙を浮かべる。布団を汚さないようにと敷いていたタオルが鮮血で滲んだ。  
 
「‥だ‥いじょうぶ…た、かとくんが…気持ちいいように・・動いてっ....」  
詰まるような声で樹莉は啓人を促す。  
ついに啓人のものが根元まで挿入され、啓人はゆっくりと腰を動かしはじめた。  
 
(・・僕が…僕が加藤さんの初めてを...加藤さんに男として‥認められたんだっ....)  
樹莉が初めてを自分に捧げてくれた… 今だこれは幻想なのではないかと思う。  
樹莉を想い焦がれ、張り裂けそうな夜を幾多も自分の手で受け止めてきた。  
今日、それが報われた。恋は叶わぬことばかりだという考えが覆されたのだ。  
おそらく樹莉も同じように思っているのではないだろうか。  
幻想や夢だったなら樹莉から伝わってくるこの温もりは何なんだろう…  
どうしてこんなにも胸が温かいのだろう…  
 
最初はぎこちない動きだった啓人も、少しずつ慣れてきたようで、動きがなめらかになった。  
二人の結合部から出る音も部屋に響き渡るほど盛大になる。  
 
ジュプ‥ジュプッ…ぐちゅっぷっ‥ぬちゅちゃぷっ..ジュプッジュプッっ.....  
 
「・・はっ…はあっハァァッ…はぁはあっ」  
(かとうさんの、なか…熱いくらいにあったかくて…本当に気持ちいいよぉっ....)  
呼吸が早くなり、失神しそうなくらいの快感が啓人を襲う。  
もう、身体がどうにかなってしまいそうな感覚。  
 
「っはあぁあっ、あぁッ‥はぁ‥ん!ぁん!はんっ...ぁあっはァ・・んっ!  
ぃ・・ぃいよおっ…た‥かと..くぅん…もっとぉっ……」  
痛みも大分おさまり、味わったことのない激しい快感に変化していったようだ。  
樹莉はその激しい快感に溺れ、必死にもがくことしかできなかった。  
 
……パンパンッ…ぱんっぱん‥‥くちゃぐちょっちゃぷっ...ちゃぷちゃぷっっ・・・  
 
ピストン運動により皮膚どうしがぶつかり、独特な音が発生する。  
啓人が腰の動きを早くするとそれに合わせて大きく響いた。  
 
ぼんやりする意識の中で樹莉は自分と繋がれて必死に腰を動かしている啓人に眼差しを注ぐ。  
(啓人くん…私のために・・こんなにも必死になって...)  
何事にも一生懸命で、優しさも持ち合わせている啓人。少し頼りなく  
見えたりしたときもあったけれど、いざとなれば勇気をしぼりみんなを明るくリードできる。  
冒険を通じて樹莉は啓人の真の内面に気づいたのだった。  
そしていつも自分に一途な想いを抱いていた啓人。愛されるということが  
これほど嬉しく感じたのは生まれて初めてだった。  
どうして自分は啓人に好きだと伝えたのか、その疑問の“解”を今見つけることができた。  
 
(…こんな‥こんな僕が、、加藤さんと初めてを…できるなんてっ...  
これからもっと加藤さんとの距離を‥‥縮めたい…! もっと加藤さんに‥‥触れていたい・・・)  
啓人は樹莉の後頭部に手をやると、樹莉の顔をぐいと近づけて唇を奪う。貧るように  
樹莉の口の中に舌を入れた。樹莉は啓人の舌と絡み合わせ、啓人を今まで以上に欲しがる。  
快感で啓人の頭の中も支配されていたが、大切な樹莉のことは一生懸命考えられる。  
かつて自分より遥か遠くにいた憧れの少女と今こうして繋がれている。  
それは紛れも無い事実だ。事実であるからこそ、“現在”を大切にしたい。互いの優しさを  
見せつけあった今日という日を忘れたくない。これからもずっとそばにいたい。  
――僕らの現在が途切れないように―――  
 
「か、かとうさぁん! ぼく…もう・・限界っ... いっちゃうよおっっ!!」  
「‥はぁっ、わ‥わたしもぉっ! ああんっ...た、かとくん! ぃぃよっ……きてっっ・・・!!」  
 
啓人の腰の動きがさらに激しくなり速く、樹莉の奥まで貫く。樹莉の膣も反応したように  
今まで以上にきつく締め上げていく。  
 
啓人の脳から脊髄・下半身へと強烈な電流が流れた。  
「はああっ!かぁっ...かと、うさんっ! かとうさああぁん!!」  
「!‥‥た‥か‥とくん!! はあぁぁん……あああぁっ....!!」  
 
ビクビクッッ...ドクンドクッ‥‥ドビュドビュっどびゅっっ! どびゅっっっ! ドビュ....  
 
樹莉の膣に総ての啓人の想いが注ぎ込まれた。樹莉の膣はその想いを  
受け止めるかのように膣の奥へ奥へと送り込む。  
ついに樹莉は絶頂の爆発的な快感に痺れ、倒れてしまった。啓人も絶頂の快感によって  
全身の力が奪われてしまい、気が遠くなった。  
啓人は倒れた樹莉に気付き、そっと自分の胸に樹莉を寄せた。そして優しく、強く抱きしめる。  
少しずつ遠のいていた樹莉の意識もはっきりしてきた。啓人の胸の上にいることを  
理解した後、想いに答えるかのように強く抱いた。  
 
(……啓人くんの‥胸‥温かくて…優しい・・・)  
(加藤さんのこと・・僕、大大大大大好きだよ...死んじゃうくらい‥好き...)  
啓人の思ったことはすぐに口に出た。  
「か、加藤さん… 僕、加藤さんのこと‥‥大大大大大好きだよっ! 死んじゃうくらいに‥好き...//」  
「…私も、同じだよ。啓人くんが‥大大大大大好き!死んじゃうくらいに‥ 大好きだよ・・・//」  
樹莉の言葉に啓人は頬を赤らめる。  
「・・・・えへへ…‥// あ、ありがとう...」  
少し照れたように微笑むと樹莉に深く口づけた。  
 
 
あれからどれくらいの時間が経ったのだろう。時計の短針は  
すでに“1”の文字を指そうとしていた。  
 
「啓人くん、おやすみなさい//」  
「うん//おやすみ‥加藤さん」  
二人は着替えて元の姿に戻ると電気を消して抱き合って眠りについた。  
 
 
抱き合って眠った次の日の朝は快晴であった。太陽の光は眩しいくらいに  
降り注いでいたが気温はそれほど高くはない。時折、涼しい風が吹き抜ける。  
先に起きた樹莉は隣で気持ち良さそうに寝息をたてている恋人を起こす。  
私のために、頑張って…… きっと疲れてしまったのだろう。  
「啓人くん…啓人くん....朝になったよ。そろそろ起きないと‥‥お母さんが起こしにくると思うけど…。」  
啓人は目を開け、寝ぼけ眼で樹莉を見つめる。少し寝癖もついたままである。  
「……あ...加藤さん…おはよう//」  
「うん//おはよう啓人くん。」  
樹莉は優しく啓人に微笑みかける。  
 
「啓人と樹莉ちゃんもう起きたのかしら…」  
啓人のお母さんが階段を昇ってきた。樹莉は部屋のドアを開く。  
「あ…おはようございます。」  
「あら…おはよう樹莉ちゃん。啓人と同じ部屋だったけど、よく眠れた?」  
「はい// よく眠れました」  
「それならよかったわ。朝食は下にあるから準備が出来たら降りておいで。朝食といってもいつもパンなんだけどねえ‥‥ごめんね」  
「いいえ// またごちそうになります」  
 
 
二人仲良く朝食を食べ、一度部屋へ戻る。  
すると突然啓人が樹莉にこんな提案をした。  
「か‥加藤さん!」  
「うん?」  
「…今日....すぐに帰らなきゃならなかったりとか・・・何か予定はある?」  
「えっと……特にないよ。今日は・・・ゆっくり啓人くんと一日過ごしたいな…」  
「え、えっと、、じゃ、じゃあ...どこか二人で遊びに行きたいな・・・」  
「うん!いいよっ! ナイスアイディアだワン!」  
樹莉は嬉しそうに答える。早速啓人は母に了解を得てくるため、急いで階段をかけ下りた。  
実は…博和やジェンたちみんなと遊ぶということにしてあるのだが・・・  
 
これまで何度かあったけれど、また二人だけの時間が取れる。今日もまた一緒にいられる。啓人の鼓動が弾み出した。  
 
―どんな時も加藤さんと肩を並べて歩いていきたい。どんな場面も二人で笑っていたい―  
 
二人がどこに行くのかは誰も知らない。二人っきりしか知らない。  
これが啓人にとって樹莉との初めての正式な“デート”になるのだった。  
 
〜〜〜END〜〜  
 
 

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