「ふぇー、今日の仕事やっと終わったよー」  
クタクタになったタカトが部屋に戻ってきた。ここは京都のホテルの一室。6年生の修学旅行にやって来たのだ。  
「おーす、お疲れ」「お疲れー、タカト」友人のケンタとヒロカズが出迎える。  
「点呼の報告、僕らのクラスがビリだったよ。もう、うちのクラス集まり悪いんだから!」  
各クラス、男女2名が実行委員として旅行をサポートする。しかし、タカトのクラスの男子は羽を伸ばすのが大好きな奴らばかりのようで、  
自由時間が終わり、ホテルの集合予定時間を過ぎても帰ってこない者が続出したのだ。そのツケは実行委員であるタカトに飛んだ。  
「ふーん、でもおかげで加藤と長い時間一緒にいられてラッキーだったんじゃねえの?」ヒロカズがからかう。ジュリは女子の実行委員なのだ。  
「え!?な、何言ってんだよバカ、そんなこと……」  
とたんにタカトは赤くなる。去年までのタカトならこの後狼狽し、何も喋れなくなるか照れ隠しで暴れるかといった所だろう。ところが………  
「……あるかも……てへへ……(はあと)」  
(否定しないのかよ!)ケンタは心の中でつっこんだ。小声でモジモジしながらではあるが、ハッキリと言ってのけやがった!しかも心なし誇らしげに!  
実はタカトのこういう態度はこれが最初ではない。ジュリに告白し、OKの返事をもらって以来(女子の噂話で知ったのだが)、彼女絡みの話題になると  
幸せそうにのろけるばかりなのだ。「なーんかからかうネタが一つ減ったってカンジだよなー、つまんねーの」と胸中でぼやきつつ、にやついている  
タカトを見て「馬鹿面下げて」ってのはこーいう顔なんだろうな、とケンタは思った。  
「チッ」  
一瞬、ヒロカズの口から舌打ちのような音が漏れた。しかしすぐに笑顔になって「早く大浴場に行けよ。男子で入ってないの多分お前だけだぜ」と促した。  
その笑顔は妙にニタニタとした下卑たものであった。タカトは一瞬、ヒロカズに違和感を感じたが、すぐに気を取り直すと  
「早く入らないとしまっちゃうもんね。じゃあ行ってくるよ!」そう言って駆け去った。  
 
「どうしたんだよヒロカズ?」タカトが去った後もまだニヤニヤしている友人を不審に思ったケンタが言った。返事は無かった。  
 
「うわー、貸し切りだー!!」思わずタカトははしゃいだ。早々に体を流すと「タカトモン、着水!潜行!」と、湯船に飛び込む。  
心地よい暖流にその身を委ねながら、てんてこまいだった今日一日を回想する。かつての英雄も、責任者には向いていないようだ。  
(でも加藤さんと、いっぱい一緒にいられた!)二人で声をそろえて点呼の報告をしてみたり。自由時間に合流して家族に買うおみやげの  
相談してみたり。何気ない触れ合いが、タカトの胸を熱くする。明日はもっと楽しい旅行にするんだという、希望と活力が沸いてくる。  
「明日も実行委員がんばるぞー……オーー!」と、決意表明してみたその時。  
ガラガラガラー。引き戸が開く音がした。(ボク以外に、こんな遅くに入る人がいるなんて。湯気でよく見えないや。誰なのかな?)  
「うわー、貸し切りだー!!とっても広いんだワンッ!」  
        か、か、かか、加 藤 さ ん ! ! ! ? ? ?  
 口から魂が漏れ出さんばかりの勢いで、慌ててお湯の中に潜り込む。じっと息をひそめ湯の中に身を潜める。流石は新宿を救った英雄、  
この突然の超・衝撃的体験においても最小限の防御は出来てらっしゃる。だが頭の中は今だ混乱と激震の嵐が吹き荒れていた。  
「?誰かいるのかな」 バクバク。落ち着け。落ち着くんだタカト。まずはこの心臓の鼓動をどうにかするんだ。  
「まいっか、体洗おーっと」 バック。そう、それでいい。考えろ。考えるんだタカト。  
何で。どうして加藤さんが男湯に。確かに「男湯」の表札のある浴室に入ったはずなのに。表札が間違ってでもいた?なぜ。  
 誰かが女湯の表札とすり替えた?悪趣味な。でも誰が?タカトはそこで、先刻の友人のニタニタ笑顔を思い出した。  
ヒロカズだ!!あいつ、よりによって何てイタズラするんだ!!タカトは怒った。その身を隠す周りの湯よりも熱く。でも半泣き。  
 とにかく、ジュリに気づかれないように浴場から抜け出さなくては。つーかそれ以前に、長い間潜っていては生命の危機にも関わる。  
(やってやる)タカトの心に闘志が湧き起こった。(せっかく加藤さんとラ、ラ、ラブラブな関係になれたんだ!こんな所で嫌われるもんかー!)  
 
幸運なことに、タカトが来た当初から浴室は湯気で満ちていた。隠密活動(?)にはうってつけなのだ。  
(脱出方法は一つ!加藤さんが体を洗っている隙にお風呂から出るんだっ!)  
つーか最初からそれしか選択肢は無いが。(よ、よーし、出るぞ!) タカトが決意したその瞬間!  
(はっっ!) タカトの体は再び動から静へと戻ってしまった。一体彼に何が起こったのか!?  
(そ…そうだ……ビックリしちゃって忘れてたけど、今僕と加藤さん、裸同士で同じ部屋にいるんだ……)  
 
 この時期の小学生の身体の発達・発育には目を見張るものがある。タカト自身も身長が去年より5センチも伸びた。  
自分の体が大人へと近づいたことを実感するのは、たまらなく新鮮な感動だった。だがタカトには、もう一つたまらなく  
気にかかることがあった。それがジュリの「女性」への変容だったのだ。  
 この一年で彼女の身体はめっきり女らしくなった。胸も腰も、徐々にふっくらとした丸さを描き始めたのだ。  
他の男子は気に留めていないかもしれない。だが以前から深く熱い眼差しを注いできた自分の目に狂いはなかった。  
 
 前に彼女がルキの隣に座って談笑していた時などは、ふっくらとペッタンコのあまりの好対照ぶりに驚いてしまい、つい  
「ルキも頑張らないと別のクイーンの座を加藤さんに取られちゃうかもね、テヘヘ!(笑)」と軽口を叩いてしまった。  
   ……その後大泣きマジギレしたルキにしこたまぶん殴られ、危うく病院騒ぎになる所だった。(しかも理由を知ったジュリは  
「女の子にそんな失礼なコト言うだなんて、タカト君サイテー!」とルキ以上に怒り出し、危うく絶縁宣言を受ける所だった)  
 
 とにかく、同じクラスの、しかも憧れの女の子が今やすぐ横で(大分距離あるけど)裸になっていることが衝撃的なのだ。  
 
(スカートからぱんつがチラッと見えたり、運動服からブラが透けて見えるだけでもドキドキだったのに…  
 今この部屋には、ブラもぱんつも脱いだはだかんぼの加藤さんがいるんだ…加藤さん……はだかんぼ…はだか…  
 っ て さ っ き か ら 何 考 え て る ん だ よ 僕 は ! ! ? ?)  
何という愚行、何という愚挙!背徳的状況に痺れるがあまり、湯船から抜け出す時間を浪費してしまった。  
(早くここから逃げなくちゃ!女の子は体を念入りに洗うはずだから、まだ時間はある!湯船のヌシ・タカトモン、  
今こそ浮上の時だ!)カードバトルで鍛えたタカトの戦略的分析が冴える!!         ……意味ないけど。  
 だが何故か彼の体は三度止まってしまった。絶好の機会なのに、今度は何が起こったというのか。  
 
(バ…バカ〜、何でこんな時に……………………膨らんじゃうんだよ……………………!)  
 嗚呼、男とは何と悲しい生物なのか!あの純真爛漫なタカトですら「オトコの性」の呪縛からは逃れ得ないとは。  
下手に意中の異性のことを考えてしてしまったがために、下の方のタカトモンの暴走を許してしまったのだ。  
 タカトの頭に再び嵐が吹き荒れる。タカトは頭の嵐と手飼いの獣を止めようと、我を忘れてお湯の中で暴れた。   
落ち着け。自分はいやらしいことなど考えていない。性器が大きくなったのは何かの間違いだ。とにかく落ち着け。  
 しかし気を静めようとすればするほど、ジュリの裸体が頭に浮かんでしまう。さっき自分で言った「体を念入りに」という言葉が  
ツボに入ったようだ。自業自得である。挙句、「逃げる時に加藤さんの背中やおしりが見れるかも?」などと内なる悪魔が  
囁いてくる。もうメチャクチャだ。…………と、不意にタカトはスイッチが切れるような感覚に襲われ、意識が遠のいた。  
 
 エロイ妄想してる内に、息が続かなくなったのだ。  
途切れた意識を呼び覚ましたのは、「…タカト君!?・!」というジュリの声だった。  
 
「ん…」 目を覚ましたタカトの身体は、湯船の端(斜面状になっていて、端ほど浅くなっている)に移されていた。  
 気を失っていたのはほんの数分である。しかし事態はタカトが最も恐れていた結果に終着していたのだった。  
「気がついた?…バカトくん…」 少し距離を置いてジュリが湯船につかっていた。  
 タオルを胸元に置いて、タカトからは局部が見えないようにしている。  
(はっ) タカトは気づいた。あおむけに寝かされていた自分の身体を。身に纏う物など何もなく、しかも下の獣は  
今だ自己主張を続けているではないか! (ダ・ダメー!!こんな所見られたら……)  
「隠さないの!この、ヘンタイ!」  
 ジュリに怒鳴られて、再び肉棒を外に晒してしまった。本当は出している方が変態なのだが、今のタカトにそんなことを考える  
余裕はない。自分の失敗がただただ恨めしく、情けなかった。  
(嫌われた)  
 まさかこんなことになるなんて。加藤さんは明らかに怒っている。説明して許してもらえるだろうか。  
説明?タカトは思い出した。(そうだ、最初に僕が男湯に入って、それから加藤さんが来たんだ。間違えたのは加藤さんの方だ!)  
自分に正当性が見つかると、途端に勇気が沸いてくる。うつむきながらではあるが、タカトの顔に笑みが戻った。  
 一方ジュリは丸出しになったタカトの肉棒をじっと見つめていた。その目に微かに熱がこもる。しかし「加藤さん!」という  
タカトの声に、慌てて我を取り戻した。怒鳴ったのは自分なのだ。自分が先手を切らなければ。  
「タカトくん…ここ女湯よ?どうして入ってるの?」  
「ち、違うよ加藤さん!僕は男湯の表札がある方に入ったんだ!間違えたのは加藤さんなんだよ!」  
「タカトくん、ちゃんとしおり読んだ?女湯は左側って地図に載ってたじゃない。それがわかれば表札なんて見なくてもすむわ」  
自爆だ。  
 
「ふーん…じゃあやっぱり間違ってたのはタカトくんなんだね」  
「ご、ごめんなさい…」  
 「正当性」の牙城がガラガラと音を立てて崩れた今、残された城主は再び罪悪感にひれ伏すしかなかった。  
「本当に間違えて入っちゃったの?わざとやったんじゃなくって?」  
「ち、違う、絶対違う!誰かがイタズラしたんだってば!」 動揺するあまり、「ヒロカズ」という名前が出てこない。  
「でも女湯に入ったのは事実だよね?あたしだったから良かったものの、もし他の女の子が入って来てたらタカトくん、  
すぐチカン扱いされておまわりさんに連れて行かれたかもしれないんだよ?」 もうグウの音も出ない。  
「加藤さん…お願いだから、おまわりさんは呼ばないで……」 小さく小さく縮こまる。ところが。  
 (バ、バカー!何でお前は小っちゃくなんないんだよー!)   
視界に入った下の獣は、少しも萎える事無く隆起しているのだ。そしてそれを見て目を細めるジュリに、やはりタカトは気づかない。  
「いいわ、通報はしないであげる。でも女湯とわかったんなら、どうしてすぐ逃げなかったの?体を洗っている時、チャンスだったのに」  
「そ、それは……」 痛い所を突かれた。タカトの頭に再び嵐が立ち込めようとしている。どう切り抜けよう。  
「もしかして、エッチなこと考えてたんじゃないの?…お湯の中に潜って、あたしが入るのを待ち伏せしてたとか!!」  
 ちがう!タカトはそう叫ぼうとした。だが何故か声が出ない。今喋らなくては疑いが晴れないのに。そんな悪巧みはしていないのに。  
何故動けない。それはジュリの裸を妄想してしまったから。待ち伏せなどは企まないが、「エッチなこと」を考えたのは事実だからだ。  
「答えてタカトくん!どうして溺れてたのかを!」 ジュリの問いかけが迫る!  
 “お湯が口に入った”とでも言えてれば上手く切り抜けられただろう!だがタカトの答えはあまりに愚直で赤裸々なものだった。  
「最初はすぐ逃げようと思ったんだ…でも、すぐ横で加藤さんが体を洗っていると思うと、僕すごいドキドキしちゃって……も、もちろん  
覗こうなんて企んでないよ。でも早く逃げようって急げば急ぐほど、加藤さんが気になっちゃって…そしたら息が続かなくなって」  
 
「…!」  
「あ、さっきは企んでないって言ったけど、逃げる時加藤さんの背中とか見れるかもって一瞬思っちゃったから同罪かも…お、お、おち、  
 オチ、オチン…チンが勃っちゃたのも興奮したからだし…と、とにかく、ごめんね!」 しどろもどろになって答える。  
「ぷっ」 ジュリの口から小さな音が漏れる。彼女は後ろを向くと、背中を震わせた。  
(やっぱり嫌われちゃった!もう僕の顔なんて見たくもないんだ!)悲嘆にくれるタカトには彼女の白いうなじすら目に留まらなかった。  
   
だが実はタカトの絶望は全くの徒労であった。終始伏し目がちだったので気づかなかったろうが、ジュリは笑いをこらえていたのだ。  
 元々、気がついたらタカトが湯船で倒れていたのだ。女湯にいた理由は聞き出したかったが、実際に覗かれたワケでなし、彼に軽蔑感は  
それ程持たなかった。それなのに、言わなくていいような恥ずかしいことをベラベラ吐露して言い訳するタカトが、あまりにも滑稽だったのだ。  
 (タカトくんったらおっかしー……面白いからもうちょっとからかっちゃえ!) ジュリのイタズラ心に火が点く。  
 
「あたしでエッチなこと考えてたの?ホントはもっと別の、グラビアアイドルとかで興奮してたんじゃないの?」  
「ち、違うよ!僕…加藤さんにオ、OKもらった日の夜…内緒で持ってたエッチな本は全部捨てたんだ!う、浮気したくないからね!」  
「…(やだ、タカトくん)…でもタカトくん、あたしまだ発育途上だよ?そんなあたしで…………興奮するの?」  
「興奮するよ!あ、で、でもオ…オ…オナニィ…はしないよ!好きな人でそんなコトするなんて最低だもん!ここ1年封印してるよ!…あ、  
今の無し今の無し!それに加藤さん、去年はかわいい印象あったけど今年はきれいって感じだし!それに去年はスポーツブラだったけど  
今年は後ろで止めるブラして…あ、い、今のも無し!」 聞いてるこっちが赤面するような内情までブチまけてくる。  
   
 実際ジュリは呆れていた。しかし同時に、自分にそこまで本音を言ってくれるタカトが、どこか愛しく思えてきた。  
 
人にいえないような恥ずかしい私事まで喋ってくれるのは、ある意味信頼されている証拠かもしれない。  
それに少々不純な内容であっても、自分の変化を的確に悟ってくれるのは、やはり嬉しいことであった。  
(きれいって感じ、か…) この言葉は素直に嬉しい。大人への成長を認めて欲しいのはジュリだって同じなのだから。  
 ふとタカトの方を見る。彼はすっかり元気を無くして床を見ている。  
だが彼の分身は今だ天井を仰ぎ見ている。主人の元気を吸い取ったかの如く。  
(…すごい…) ジュリは唾を飲んだ。タカトの話が本当なら、この樹には1年近くもの精分がたまっているのだ。  
(1年もいじらないなんてあたしには出来ないな…だってあたしはいつも…) そう思った瞬間、彼女は自分の軽率さを知った。  
(タカトくんはあたしに操を立てて、でもあたしをおかずにするのはいけないことだと自戒して、あんなパンパンにしちゃったんだ。  
 なのにあたしは、したくなったらすぐタカトくんで…)  
 その分身を隠さず今も晒しているのは、やはり自分の命令によるものだった。タカトを質問攻めにしたこと自体、彼のをじっくり  
見たかったという想いの反動だったのかもしれない。  
(恋人同士は…フェアじゃないといけないよね…) ジュリの瞳に淡い炎が宿った。  
(あたしは修学旅行の実行委員だもん……タカトくんにも……最高の思い出をプレゼントするんだ……)  
 
 一方タカトは相変わらず湿っていた。(ああ〜加藤さんにセクハラ発言しちゃった…もう僕、口も聞いてもらえないんだ〜!!)  
 
「タカトくん」 ジュリの声にビクッと反応する。今度は何を聞かれるのか。ただただ恥ずかしく、恐ろしい。  
「こっち向いて。タカトくん。」 その声は質問攻めの時よりも、高く…近い所から響いてくるようだった。恐る恐る顔を上げる。  
 それ以降、タカトの目は二度と下を向くことはなかった。視線の先には生まれたままの―全裸のジュリが立っていたのだ。  
 
 「あ…あが…はゎあぁ……」  
ジュリの裸を見たタカトの第一声である。目を開けて全く姿勢を崩さない状態で、そのまま十数秒ほど意識が飛んだようだ。  
 以前のタカトならそのままショック死したかもしれない。意識が戻った彼を迎えたのは、先刻と同じ彼女の肢体だった。  
(なんで) 自分はさっきまで怒られていたのに。  
(どうして) 見下されて然るべき存在なのに。  
 だがそんな疑問は頭の片隅で微かに浮かぶ陽炎でしかない。タカトは目の前の光景から目が離せなかった。  
 ずっと憧れていた少女の、一糸纏わぬ姿がそこにあるのだ。  
 
 (加藤さんの…おっぱい…)  
直線をゆがませるその膨らみは、女性への萌芽の証であった。まだ小さな、しかし確かに自己主張を始めた  
温かい小山の中心には、もっと小さな穢れなきピンク色の芽が咲いている。  
 (加藤さんの…おへそ…)  
白い肌の中心で黒点のようにコントラストを浮かばせている。丁度その黒点の横の辺りから、肢体の輪郭線が再び  
深い曲線を描いている。そして…………   
 (加藤さんの……加藤さんの……)  
初めて見る生の女陰は、タカトの視線を恥ずかしがるように薄く汗をかいている。まだ毛も生えていない女の子の大事な所は  
割れ目が丸見えであった。足元の湯気ですら、それを隠すことはできない。  
 
 タカトはジュリから一秒も目を離せずにいたが、その一方で、これは何かの夢ではないか、本当の自分は未だ、湯船で気絶して  
いるのではないかという理性が、ようやく頭の中で動き出した。  
 はだかんぼで顔を赤らめながら、微笑んでいる加藤さん。毎晩のように夢に出てきた幻影と、あまりにそっくりな光景だったから。  
しかし夢なら、機関銃のように胸を打ち鳴らす心臓のこの鼓動は何なのか。一瞬も瞬きが出来ぬがために乾いてゆく、眼球のこの  
痛みは何なのか。……火のように熱い肉棒から垂れる、一筋の雫のこの冷たさは何なのか。  
 
「か、加藤さん、何を!?」 タカトはそう言って、彼女の真意を訊ねようとした。これが夢なのか現実なのか、自分のいるべき場所を  
見出そうとした。だが声が出ない。身体も動かない。彼女を見ることにしか、身体が働こうとしない。  
 かすかな理性だけがその異変に気づいた。タカトはこのまま、夢幻の世界を漂うのか。しかし、答えはすぐに出た。  
           ちゅっ!  
タカトに重なったジュリの唇の感触は、紛れもなく現実のものだったのである。    
 
「あ…、か、かとう・さん!」 やっと声が出た。  
 ジュリは再びお湯に飛び込むと、「うふふ…」と言って口まで沈んでしまった。  
タカトは我に返った。やっぱりこれは現実なんだ。何度も重ねてきた、重ねる度に心が幸せで満たされた…  
この唇を忘れるものか。でもどうして?それは聞かなくては。  
「加藤さん…どうして…」   
 やっと理性に従うことができた。やっと瞬きすることができた。だが心臓の高鳴りはまだ全然止まない。  
「あたし、元々あんまり怒ってなかったんだ。でもタカトくんが面白かったから、ついからかいすぎちゃって。  
 タカトくんの裸、い、いっぱい見てたのに。だから…」 目を伏せてはいたが、耳まで赤くなっている。  
「あ!」   
 そう言われてタカトはやっと放置していた自分の野良犬を隠す。(恥ずかしい…)  
「だからこれでおあいこにしようかなって……ね?」   
 静かに首を傾げて見せた。  
「か、加藤さんそれじゃ…もう怒ってないの?」   
「ないよ(はあと)」  
「やったぁ!あ…ご、ごめんなさい」   
 喜びのあまりついバンザイしてしまった。恥ずかしそうにお湯につかる。  
「ふ…うふふふ…」「え…えへ、えへへへ…」 ぎこちなかった若いカップルに笑顔が戻る。  
 お互い裸を見せあいっこしたからだろうか。男子と女子が一緒に湯船に入っている状況にも、もう抵抗はない。  
もちろん二人とも顔までお湯につかって、身体が見えないようにしていたのだが。  
 しかしジュリにとっては、ここからが本番であった。  
 
「…ねぇタカトくん。あたしの裸、どうだった?」   
「エ!?」   
 タカトの声が裏返る。そうだ。自分は加藤さんの裸を見たんだ。スッゴイものを見てしまったという事実が、改めて突きつけられた。  
ふとジュリを見る。彼女の目は真剣だった。照れるな。ありのままを話せ。  
「すっごいきれいで…魅力的だったよ。僕、本当にさっきは夢の中にいるんじゃないかって思ったんだ。雪でできた女神さまが  
 溶けずにお湯の中で輝いてるみたいな…いつもの加藤さんも勿論きれいだけど、僕、今日ほどきれいな加藤さんは初めてだった。」   
「湯船の中で妄想したのよりも?」  
「うん…ううん、毎晩妄想してたどの加藤さんよりも…ってあ、ご、ごめんなさい!」 また口を滑らせた。思わず視線を反らせてしまう。  
 
「タカトくん」 視線を戻した先にジュリはいなかった。いつの間にか、彼女はタカトのすぐ脇にいたのだ。  
「か、加藤さんどうしたの!?」   
 驚くのも当然だ。お湯の揺らぎでよく見えないが、先刻タカトを気絶させたあの肌色がすぐ側にあるのだ。  
「タカトくん…オチンチン、まだ固い?」   
 耳元でジュリが囁く。その息の熱さに、タカトは思わず目眩を起こしそうになる。  
「あ、あ、あの、僕あの、その!」「正直に答えて…」「は…はい…今までで一番固いです…」「素直でよろしい」  
「タカトくん、一年もオチンチンいじってないって本当?」   
 意地悪くジュリが聞く。間近に見える彼の耳が赤い。  
「ほ…ホントです…あっああ!か、加藤さん!?ちょっ!」   
 タカトの下半身に異変が走る。いつの間にかジュリの手が肉棒を掴んでいる。  
カウパーでじっとり濡れた亀頭を、包皮から剥くのは簡単だった。湯に触れた刺激が、タカトの脳を揺さぶった。  
「タカトくんの久々のオナニーは…このあたしのワンちゃんが手ほどきするワン!」 ジュリの右手が蠢いた。  
 
「か、加藤さん!いいよ、そんな…」   
 ジュリの右手は果たして機関車の車輪の如くゆっくりと動き始めた。  
「加藤さんに…そんな僕のなんて持たせるなんて…ァァうっ!」   
 懐かしい快感が、タカトの身体を痺れさせる。  
「タカトくんのオナニーは…彼女であるあたしがサポートするんだワン!」   
 顔を赤らめつつ、しかし誇らしげにジュリが囁く。  
「加藤さん…ダメ…ぅあっ!僕もう裸見ただけで満足だから…ひゃああ!」「あっ!あ!はわえああ!」  
 握るだけで満足だった憧れの人の指が、いやらしい自分の肉棒をしごいている。  
タカトの頭からは嵐が消え去り、新たに快楽の雲が空を満たす。  
「遠慮しなくっていいよ。…あたしもいつもタカトくんでしてたから…」   
 小声でジュリがつぶやく。  
 (え…加藤さん今なんて?…あ、あっ、なひゃうぅ!) 小さな疑念など、快感の波に飲まれてしまう。  
 
「タカトくん…端っこに上がって。」   
 不意にジュリは手の動きを止めた。性の麻薬にやられたタカトは、言われた通りにする。  
「加藤さん?…え?えぇ!?ダメッやめてぇ!!」   
 ジュリはタカトの股間に顔をよせ…肉棒を口に含んだのだ!  
「ダメー!ダメダメ!!そんな…きたないぃいぃぃ!!」   
 タカトはジュリの行為が信じられなかった。いや、確かにフェラチオという性戯自体は本で読んで知っていたのだが、  
女性の口に男性器を入れてしごかせるという行為そのものに嫌悪感を抱いていたのだ。  
(だって男のオチンチンなんだよ…た、確かにせ、せせ、精液が出る所だけど、おしっこを出す器官でもあるんだよ!) そんな汚い  
ものを恋人にしゃぶらせるという神経が理解できなかった。ましてや顔に降りかけるなど。軽蔑すべき所業だと。  
 だから自分にもし好きな人が出来て、いずれ身体を交えることになっても、フェラだけはさせないと心に誓っていた。の、だが。  
 
「あっあっああっ…あン!はうっ!はあああ!!」   
切っ先に絡みつく、温かい舌の感触には全ての決意が溶かされてしまう。  
ジュリはそんなタカトの嬌声に満足しつつ、懸命に愛撫する。目に涙まで浮かべながら。  
(タカトくんの喘ぎ声…女の子みたい) タカトの悲鳴はすっかり濡れたものに変わっている。元々、中性的な外見をしている少年なのだ。  
しかし、今自分が咥えている太く硬い一物は明らかに男のモノだ。ジュリはそのアンバランスさに不思議な魅力を憶えた。  
 
(あぐう!き…キちゃう!!このままじゃ僕…加藤さんに…ぶっかけちゃう!!!!) それだけは避けなければ。彼女の美しい顔に  
自分の汚らしい汁をかけてたまるか。しかし、時限爆弾のカウントは既に直前まで迫っていたのだ。  
3秒前。  
(ダメダメダメダメ絶対ダメッ!!早く…止めさせないと…うっ!)   
2秒前。  
(あふうう…ん?タカトくんの、何か今ドクってなったような)   
1秒前。  
ゼロ。   
 
どビュルビュルびゅるびゅるるるるるうううぅぅぅぅ〜〜〜〜〜っ…………  
 
ジュリの口の中に、尋常でない量の白濁液が飛び出す。  
「………あ………(ケホケホッ。)」 声を揃えて放心状態に入った。  
 
「…ああう…」   
1年分の妄執を開放し果てたタカトは、今だ微かに続く快感の中で意識を取り戻した。  
下を見るとジュリが、小さくなったタカトのを優しくしごいている。遊び終わってクタクタになったペットを労わるように。  
    ―やっちゃたなタカト。―  
 (うん…やっちゃった…) 囁いたのはタカトの本能であった。今までなら彼の心に囁くのは、もっぱら「理性」の役目だった。  
しかし、既に性行為という一線を画す行為をしてしまった今。理性など出てきた所で何の意味もないのだ。  
  ―ぶっかけちゃったなタカト。―   
 (うん。かけちゃった。加藤さん怒ってないかな)  
 ―心配はいらないさ。加藤さんはこうなることを望んでいたんだから。―   
 (そ…そうかな?)  
 ふとジュリを見る。彼女の顔は真っ白でベタベタに塗りつくされている。こんなにしてしまって本当に怒らないのか。  
タカトの視線に気づき、笑顔を見せる。 「…いっぱい出ちゃったね」と、微笑んで見せる。  
 ―(か、加藤さん!!)―   
 その笑顔に驚愕される。男の性器を口に含むのには、きっと相当の覚悟が必要だったろうに。  
苦い性液を飲んでしまって、きっと大変だったろうに。愛しくもいじらしい笑顔を向けてくれたのだ。  
 そして同時に、タカトが忌避していた「白濁液にまみれた女性」の笑顔は、たまらなく淫らで美しいものであった。  
 ―きれいだね、加藤さん。―   
 (う、うん…) 心から頷いた。  
 ―ねえ。―   
 (え?)  
 ―このまま、加藤さんを押し倒しちゃおうよ。―   
 
(ば、ば、ば、バカー!何調子のってんだよお前はー!?) タカトは自分自身を一喝する。  
―今がチャンスじゃないか。据え膳食わぬは男の恥、だろ?―   
 (何変な諺言ってんだよ!そんなことしてみろ、許さないぞ!)  
―自分に言ってどうすんだよ。…加藤さんとエッチな関係になるの…ホントはずっと夢見てたハズだろ?―   
 (ぐっっっ!)  
―女の子がここまでしてくれたんだ…恋人同士なんだろ。タカト、今度はお前が加藤さんを気持ちよくするんだ!―  
 言うだけ言って内なる声は消える。確かに今夜の一件で、加藤さんともっと親密になれた。でもそこまでしてしまっていいのか。  
迷惑じゃないのか。自分達にはまだ早すぎるのではないか。そう思い再びジュリを見る。  
   
彼女はもう愛撫の手を休め、タカトの胸元を見ていた。少し前まで同じだった、異性との身体の差を不思議がるように。  
「加藤さん…」  
「タカトくん?……うふふ、あたしのお口の中、気持ちよかった?」   
無邪気に微笑む。  
「え!?あ、うん…とっても…」   
彼女の前ではいつだって本音がでてしまう。  
「うふふ、よかったぁ……ねぇタカトくん、これからも…その…したくなったら…言ってね。あたし、いつでも力になってあげるから」  
 
そう言った瞬間、タカトはジュリを湯船に押し倒していた。  
「タ、タカトくん!?」   
タカトの豹変ぶりに、今度はジュリが驚く番だ。  
 ふと、彼女は太ももに当たる何かの変調を感じ取る。さっき自分の口の中でパンクしたはずの風船が、再び膨らみ始めたのだ。  
「うそ…タカトくん…」  
「…する…」   
 ジュリの耳元で、今度はタカトが囁く。  
「裸の加藤さんを前にして“今度”なんて待てないよ!僕今すぐ加藤さんを抱きしめるんだー!!」  
 
 フェラまでは計画通りだった。タカトの精を開放することで、自分と相手をフェアな立場にできると思ったから。  
しかし、その先のこととなるとさすがのジュリも覚悟が鈍る。一発出したすぐ後で、また欲しがられるとは想定していなかったからだ。  
(タカトくんの息、熱い。熱くて、荒い。)   
ジュリは今、タカトに心の底からドキドキしていた。この優しくて純粋な彼に「男は狼」なんて言葉は最も似合わないと思っていたからだ。  
キスはよく欲しがられたものだが、まさか自分がここで受けにまわるとは。  
(でもその優しい狼さんは、今欲しがってる。あたしの身体を味わいたいって、舌なめずりして待ち構えてる)  
 狼さんが相手じゃあたしのワンちゃんは敵わないよね…。ジュリは覚悟を決めた。     
でも、その前に。  
 
「いいよ……タカトくん……。でも、する時はあたしの好きな…いつもの優しいタカトくんで、ね?」  
 (ハッ)  
 なだめるように背中をさすられて、獰猛なタカトモンは我に返る。  
そして返事代わりとでもいうかのように、ジュリの白い首筋に顔を埋めた。  
 
 顔を埋めた白い首筋に、タカトは舌を這わす。  
「あ…ん…」  
 クラスでは、いや二人っきりの時でさえ聞いたことのない音が彼女の口から漏れる。  
それが始まりの合図であった。愛しい少女の嬌声に奮わされた狼は、そこを起点に彼女を汚していくのだ。  
 
 首筋付近を今だ舐めたまま、胸板に当たる二つの膨らみの左房をさわる。包んだ手を吸い込むかのような柔らかな弾性が返ってきた。  
「はぁ…んっ!!」   
(や・やわらかいよ!) あまりの感動に思わず叫びそうになった。柔らかくって、あったかい。この世にこの二つの条件を同時に満たす  
ものがあるなんて。見た目にはまだ小さな乳房だが、その感触ははるかに充実したものであった。たまらず、揉みまわす。  
「あっ…や…ああ…タカトくん…」  
 そして、まだ発育途中であるがために、愛撫の快感はより強くジュリの心を痺れさせるのであった。タカトは首筋から顔を離し、  
右乳房にも手を伸ばす。左乳房とは違う向きに、手のひらでまわし弄ぶ。  
「あっ、あっ、あっ、やぁ…!」  
 ジュリの喘ぎ声がさっきより激しくなる。手の中の柔らかいものをいじる度に奏でられる音色。ああ、何と淫らな楽器なのか!  
そしてその音色を奏でれば奏でられるほど、ますますタカトの劣情の炎は燃え滾るのだ。  
 ふと、タカトは手の中に固い何かが混じっているのを感じ取る。指の隙間を開けて見てみると、ピンク色の宝石が顔を見せた。  
(加藤さんの……乳首) タカトに揉まれた快感で、眠っていた芽はすっかり目を覚ましたのだ。  
          
 勃ってる。女の子なのに、勃ってる。自分の乳首ではそういう経験がないせいか、ドキドキしながらジュリに聞いてみる。  
 
「ね…加藤さんの乳首…固くなったよ…」 耳元で囁く。  
「い…いやっ、言わないで!」  顔をさらに赤くして首を振る。  
 そっか、とっても恥ずかしいんだ…お互い今でも十分ドキドキしているけど、彼女がこれほど狼狽するならきっと余程のことなのだろう。  
そう考えると、タカトはこの小さなジュリの分身がとても可愛いく思えてきた。指先でつまみ、押す。小さな膨らみの中に顔を隠す。  
 切ない吐息をもらす彼女の鼓動が聞きたくて、タカトはジュリの胸に顔を寄せた。柔らかい。温かい。いいにおい。  
そしてその柔らかな小山の向こう側で、彼女の心臓の息遣いは確かに聞き取れた。両胸に顔をすりつけてその感触を楽しむ。  
「うっ、うん…」   
 ジュリはくすぐったそうに身をよじらせる。ふと、タカトの目の前に先ほど勃起したばかりのジュリの乳首が顔を出した。間近で見ると、  
甘い果実のようにおいしそうに実っている。大人になるとあそこからミルクが出るんだ。女の子が赤ちゃんを育てる大事な器官なんだ。  
    ―かとうさんの おっぱい いちばん さいしょに のみたい。―  
 そう思った瞬間、タカトはジュリの右乳首に吸い付いていた。口の中で転がし、舐めまわし、吸い込む。左胸には右腕を添えて。  
「あっあっダメェ!!そんなぁ……赤ちゃんみたいなことっっっっ!!」  
 ジュリは激しく身を捩じらせて、未知の快感を拒んだ。舌による愛撫は、一人では出来なかったから。  
タカトはここで初めて目を閉じ、触覚の世界に浸った。ずっと目を瞑っていたジュリと違って、憧れの少女の裸体から目を離すことなど  
出来なかったのだ。  
   
 同じクラスの男の子に、乳首を吸われている。  
 同じクラスの女の子の、乳首を吸っている。  
   
(ふあ…!…くす、タカトくんの、甘えんぼさん) 引き離そうとタカトの後頭部に乗せた両腕で、逆に強く抱きしめる。  
 背徳的行為をしているという自覚が、より一層二人の心を高ぶらせた。こんなのはまだ序の口だ。これからもっと「いけないこと」に  
踏み込んでいくのだ。両乳首の味をたっぷり満喫したタカトは、再び目を明けへその方角に舌を進めた。  
 
 熱く、冷たくぬめつけていく舌の感触が気持ちいい。誰かに、ううんタカトくんにしてもらう快感がこれ程のものだとは思わなかった。  
へその穴を唾液で浸したタカトはさらに下に埋もれて行く。まだ毛も生えていない割れ目に、その顔を近づける。  
(つるつるしてて…とってもきれい………僕が……………想像してたのよりも)  
 今のタカトは丁度顔だけ出してお湯につかっている(ジュリは例の湯船の端であおむけになっている)状態なのだが、何やら甘い香気が  
立ち込めるのを感じた。つかっている湯気すらかき消してしまいそうな芳しい淫靡な匂い。それは―  
「タカトくん…ここ…」   
 ジュリがタカトが迷わないよう、好きな人にしか見せてはいけない秘所を、自分で拡げて見せたのだ。  
「!!!!あっ、あっああ……ハァハァハァハァハァハァハァハァっっ…!!」   
 タカトは、ますます荒い息を上げた。最上のご馳走を前にしたかのような興奮。香気は正にそこから滴っている。  
以前持っていたHな本にすら載っていなかった神秘の領域。どうにかなってしまいそうだった。  
ピンク色の媚肉にタカトの息が当たるのを感じて、ジュリは恥ずかしさでいっぱいになる。  
「やさしく…やさしく…、お願い、ね?」   
 薄く目を開けてジュリは懇願する。目に涙をためたその顔にゾクッとする。常日頃から、ジュリを絶対に泣かせはしない、彼女を泣かせる  
障害から守ってやると心に誓っていたタカトだ。想像することすら禁じて来た、彼女の泣き顔を今見てしまった。  
 その禁忌の表情が持つ艶っぽさに生唾を飲む。この気持ちは何?一度たりとも考えなかった―彼女をいじめたいという心の現われなのか。  
(ち、違う、僕は―)  
加藤さんを、幸せにするんだ。喜ばすんだ。それだけだ。  
 微かな疑念を振り払った狼は、甘いにおいで誘う下の果汁を啜り始めた。  
 
「あっああああ!!かはっあっ…あーーー!」   
 やさしく。やさしく、やさしく舐めて。ジュリの頼みを愚直なまでに反芻する。  
「ひあっ、あ…ひゃあ…うっ、あ…く…」  
(おいしい。おいしいよ、加藤さんのここ…。)  
 とめどなく流れる蜜を、残らず啜り上げる。1時間でも、ううん1日中でも、舐め続けたいという衝動にかられる。  
「…あっああタカトくん……きもち、いい……もっと…もっとジュリのそこ……舐めて…!」  
 切ない声でジュリがはしたなくおねだりする。いつもの、いやさっきまでの彼女からはこんなセリフは想像できなかった。  
卑猥な彼女もまた扇情的で愛おしい。  
(こんなおいしい蜜を持ってるだなんて、加藤さん…いいな。そうだ、このおいしさを加藤さんにも伝えなきゃ。)  
 そう思ったタカトは、『ズジュるジュルジュルジュジジューーーーッ』と思い切り美味そうな音を立てて吸ってみた。  
「いやああぁぁ!!そんな…音立てちゃダメェ!!」  
 いやらしい自分を見透かされた気になったのだろうか。より一層ジュリを羞恥心で悶えさせることになった。  
その声に煽られて。その味に満たされて。舌の進撃はなおも続いた。  
触れるものは残らず舐めまわす。唯一、固くなったクリトリスだけはやさしく転がして。  
(上も下も勃つ所があるなんて…女の子って、すごいな)   
 変な所で感心する。尽きることのない少女の果汁にも。  
 
 タカトの舌の中で、ジュリはすっかり正気を失いかけていた。  
彼氏の扱いには慣れていると思っていた。そう言うと傲慢に聞こえるかもしれないが、自分とタカトが楽しい時間を過ごすのに当たり、  
最後の最後で手綱を取っているのは自分だと自負していた。勿論タカトはいつも気遣ってくれるし、つきあっていて困ったことなど一度も  
無いが、予想外のことで困惑しないよう、自分を見失わないように常にペースを保って来たのは事実だ。  
 しかし今のジュリはタカトにされるがままであった。「かっこいい」というより「かわいい」に近かった彼氏に獣のように犯される。  
ペースを完全に崩されてしまった以上、ひたすら快楽の波に任せて踊り狂うしかなかった。  
 
 あたしの、知らないあたし。  
 あたしの、知らないタカトくん。  
   
 触られれば触られるほど、舐められれば舐められるほど、新しい顔が剥がれ出していく。それは同時に、どんな姿でもタカトには  
見せることが出来るという信頼の証でもあった。そして。  
「んぁっっ……ぁはあああ!!(ビクンッ!!)」 舌だけでイッてしまった。ジュリの異変を肌で感じ取り、タカトは顔を離す。  
ジュリは身体を横にして、はぁはぁと肩を上下させる。タカトは心配そうに彼女に話しかける。  
「かっ加藤さん!大丈夫!?」  
「うん…タカトくんの舌が…あんまり気持ちよくって…あたし、一度イッちゃったみたい…」 汗を流して微笑んでみせる。  
「ほ、ホント?よかったぁ…」 好きな人に気持ちいいと言われて本当に嬉しそうだ。しかし一方で、ジュリの身を今だ案じている。  
そして、本人の真摯な気持ちとは裏腹に、タカトの欲棒は未だ物足りないという風情で勃ち続けていた。  
 
 息を切らせながらも、ジュリはだんだんと心を落ち着け始めた。やっぱり男の子と女の子では体力が違うんだ。いつもならここで  
満足してしまう所だ。でも今日はお客様がいるから頑張らなきゃ。タカトくんをもっと喜ばせてあげるんだ。  
「ね…タカトくんまだ続き…したい?…正直に…答えて…」 途切れる声で尋ねる。  
「え!?……し、したい…よ。でも加藤さんがもう止めたいのなら終わりにする…だって、加藤さんに無理させたくないもん」  
「あたしは大丈夫。…ただ…………」  
「…もうちょっと休憩してから、ね?」 今だけは彼女のペースだ。  
 
 未だ舌の余韻に濡れる心と身体を落ち着け、呼吸を整える。  
このままだと最後まで行ってしまうんだろう…後悔はない。しかし、その行為におよぶには、もう一度自分のペースを保たねば。  
 これからする行為は、二人の関係をフェアにするどころか、一気に何段階も飛び越えた処まで押し上げるものなのだから。  
そんなことを考えながらジュリは休んでいた。ああ、だが自分の置かれている状況を忘れてはならない!憧れのクラスメイト、  
加藤さんの裸を前にして、タカトの理性がそう長く持つものか!  
「きゃん!」  
 不意にくすぐられたような感覚に襲われ、驚きの声を漏らす。振り向くとタカトが自分のお尻を撫でていた。  
「タカトくん…やだ、もう!」   
 保とうとしていたペースを早速崩されてしまった。  
「あ、ご、ごめん加藤さん!…あ…あんまりきれいで柔らかそうだったから、つい…てへへ」   
 顔はにやけたままモジモジする。どうやら半ば無意識的にさわっていたようだ。  
「もう、エッチなんだから…タカトくんってクラスの男子じゃ一番純情そうに見えたけど、実は一番いやらしい人だったのねっ!!」  
 叱るように言って笑う。実際、記憶をよっぽど幼い頃まで遡ってみても、異性にこの手の性的イタズラをされたことは無かった。  
とはいえ、臀部ならさっきほどの強い刺激は無いだろうと思い、「でも大分落ち着いて来たから…さわるだけなら、いいよ?」と促す。  
 言うが早いか、ジュリの後ろにムズムズとした違和感が巻き起こる。これ位なら大丈夫…とペースを戻すことに専念するジュリで  
あったが、果たしてそれだけで済むのやら。  
   
(加藤さんのお尻…)   
 私服の時も、ブルマを穿いている時も。全く健康的なようでいて、その緩やかな曲線は明らかに女性の証であった。  
(すべすべ…)   
 胸が膨らむ以前から、タカトの心に小さな雲を作り、ずっと惹きつけて止まなかったのだ。健康な小学生男子の身からすれば、  
女性器の味よりも胸や尻の柔らかい感触の方がある意味ずっと興味を惹かれるのだろう。恍惚とした表情でさわり、こね続ける。  
 ジュリは後ろを向いてはいるが、時々「んっ…」「やんっ」などと小さな声を漏らしては、身体をよじらせてみせる。その動きが腰を  
振って誘惑しているようで、タカトの心を再び狼に変えてしまうのだ。それ所か、少し顔を上げれば、痣一つないきめ細かな肌が背中や  
うなじを作り出して待っている。これだけの至宝を前にして、タカトは改めてジュリの魅力の程を思い知った。そして同時に、それら全てに  
自分の印をつけたいという征服欲が沸いた。  
 (おいしそう…たべちゃいたい…)  
 動物的本能に導かれるがままに、タカトはジュリの尻にかぶりついて舌を這わせた。  
「ひゃん!?ちょ、ちょっとタカトくん、さわるだけだって!」  
 急に新しい刺激が来て、ジュリは慌てる。だがもう遅い。タカトはがっちり腕を組んで、白く美しい柔肉を貪っている。次は腰を。その  
また次は背中を。うなじを。脇を。舌はジュリの体液を残らず味見するかのように、全身を這い回って行く。  
 
「あっあっあ!た!タカ…トくん、ちょ、まっ…ああああーーー!?」  
 おかげ様でジュリの体力は回復した。しかし、心の準備を律儀に待ち続けるほどには、今のタカトは穏やかではないようだ。  
「は、あは!…ん、ん…ぃやああん…」  
 そして再び嬌喜の唄を歌いだす。少年の腕は細く華奢だが、可愛い彼女を捕まえて離さずにおくのは充分容易なことであった。  
タカトの舌は脇を通って再び右乳首をしゃぶり出す。左腕は尻をがっしりと掴んで揉み続け、右腕は股間に沈んでジュプジュプと  
いやらしい音をジュリに聞かせてみせる。少年は少女を淫靡な檻に閉じ込めて、全身で彼女の女体を味わっていた。  
(ふあああ…あ、あたし…エッチなことになると、タカトくんにかなわなくなっちゃうのかも…)  
 抱きしめられて体中をさわられていく中で、ジュリは自分と彼の立場がいつもと逆転しているのを改めて実感した。  
 
 二人っきりで過ごす時間の中で、何かたまらなく嬉しい気分になると、いつも決まって抱きついて来たのはジュリの方なのだ。  
それは彼女にとって一番の愛情表現であり、驚き照れる彼氏のリアクションを眺めるのは楽しみの一つでもあった。  
 
 (でも…タカトくんからはいつでもこうやって…あたしの身体を犯せる距離にあったのね…あああっ!)  
 去年より5センチも背が伸びた彼氏は、ジュリの全身を造作もなく弄んでいく。しかも最初は無我夢中で貪っていたはずの指や舌が、  
だんだん正確に彼女の弱い所を攻めてゆくのだ。流石は彼女だけをいつも見てきた男だ。自分が柔肌を楽しむだけでなく、彼女に  
もっと感じてもらおうという意識が芽生えてきたというのか。裸同士で繰り出す抱擁は、かくも猥らで妖艶なものであった。  
 このまま身を任せていれば、「最後の」行為も決して怖くないのではないか。乱れ乱れる只中にあって、ジュリは何だか安心した。  
時には甘く、時には荒く。抱擁の時間はゆっくりと流れていく。一呼吸しようと、タカトの動きがふと止まった瞬間。  
   
 ジュリは最後の決意と共に、ゆっくりと開いてみせた。その瞳には、雨に濡れた子犬のような、無垢でひたむきな魂が宿っていた。  
眼前のタカトもぴたりと動きを止めた。これから何が起こるのか、いや起こすのか。彼も一瞬で理解したようだ。  
お互いの荒い息遣いと、激しい心臓の動悸だけが世界を包み込んでいく。  
その中でただ心だけは、静かに、静かに次の言葉を唱えさせた。  
「タカトくん……………………お願い………………………………」  
   
「…………………………か、……………加藤さん…………………………」   
 
           ゴクリ。 タカトは生唾を飲んだ。  
 
(わわわー…、ぼ、僕…とうとう…やっちゃうんだ…こ、これから加藤さんに…僕の…お……オチンチン……を…いれちゃうんだっっ!!!!)  
今一度、帰ってきたタカトの理性が、そのことの重大性を彼に認識させる。  
 不安だったのはジュリだけではなかった。実はタカトも、「最後の」行為に行ってしまうか否かで、内心かなり悩んでいたのだ。  
あれだけジュリの肢体を貪った後で言うのも説得力に欠けるが、当初は「最後の」行為にまで行く予定はなかった。  
 ジュリも自分もいい気持ちになりたいと思って、勢いよく押し倒してはみたが、それは女の子の身体の柔らかさに対する憧れ―  
あくまでさわり合いにとどまる衝動であったのだ。好きなだけ女体と触れ合えれば、それで満足だった。  
 その先の「最後の」行為は―いくらなんでも小学生である自分達には早すぎると思うし、その行為はジュリを「気持ちよく」するだけで  
なく、「傷つける」ことにもなる―そういった一抹の恐れが心の片隅にあったため、望まなかったのだ。他人の痛みを誰よりも気にする  
タカトのこと、一番大事な人を自らの手で傷つけるなど考えたくも無かったのだろう。  
 
 タカトはジュリを見る。その肢体は至る所に自分の唾液や精液で蹂躙された跡があった。欲望に正直になった自分が、これ程に  
凶暴だとは。一旦理性を取り戻してから振り返ってみると、改めて驚くべき事態であった。  
 勿論そのことを否定したり、後悔する気は無かった。最後の行為をする前に、少し自分を客観視して心を落ち着けただけだ。  
そして、タカトだからこそ、ここまでさせてくれたということも。ともすれば忘れがちになってしまう「彼氏」という権威を、今こそ自覚する  
時なのだ。そして行動に移すのだ。実際の所、ジュリに懇願された後、タカトが彼女の足に手をかけるまで10秒もかからなかった。  
 
「あ…」   
 期待と、不安と、信頼の目でジュリは彼を見つめる。真剣な眼差しで、彼女の視線に応える。  
(最後の最後まで、いくんだ) 僕が、加藤さんをこんなに熱くしたんだから。  
(加藤さん…なるべく痛くしないように、僕、頑張るから) だから君も受け止めて。  
 お互いの行動に驚いたり、驚ろかしたりの連続ももう終わりだ。ここから先は二人一緒に、未知の世界に踏み込んでいくのだ。  
無垢な子どもである証―純潔とひきかえにして。  
 
「加藤さん……いくよ……」   
 
                                                      ………ブツンっ………  
   
 湯船の端に横たわって。覆い被さったタカトの下の方で。何かが、とても大切な何かがジュリの膣で破れる音がした。  
「ッッッック……!」  
 音につられて自分まで張り裂けてしまいそうな衝撃に襲われる。破瓜の痛み。どれだけ自分を鼓舞してみても、どれだけ快感で  
自分の心が麻痺するよう下準備してみても、やはりその痛みからは逃れられなかった。  
(いたい!)   
 タカトに遠慮して封じていた言葉。その言葉を実際に漏らしてしまいそうになったが、それすら叶わなかった。それほどの苦しみ。  
 タカトはジュリの苦悶の表情を瞬時に感じ取る。彼女が苦しまないよう、じっくり濡らしてゆっくり挿入したつもりだが、やはり苦しめて  
しまったのか。「加藤さん!」と叫び、彼女の頬に手を寄せる。  
 だがジュリは首を振って、微笑んでみせる。痛さで声が出せない今できる、精一杯の意思表示だ。彼に心配をかけたくない。  
そう思って捧げた美しい笑顔も、瞳には苦しみの跡たる大量の涙が溜まっている。  
 (加藤さん……!!)  
 タカトは彼女の涙を、指で拭い払う。それにジュリが反応する隙も与えず、熱い接吻をする。  
彼女が我慢していることぐらいわかっている。にも拘らず気丈な笑顔を見せた彼女の想いに、激しく突き動かされたからだろうか。  
確かにそれもある。今のでわかった。例えどんなに艶を含んだ魅力を持っていようとも、やはり彼女の泣き顔は見たくないと。  
 しかしそれだけが理由ではなかった。タカトはジュリの唇に、自分の舌を入れた。  
 
「……!!」  
 ジュリはタカトの行動に驚いたが、されるがままに自分の舌とからめた。舌も、息も、炎のように熱い。  
(ほんの少し…ほんの少しの足しにしかならないかもしれないけど、これで痛みを和らげて。僕…頑張るから…加藤さんも一緒に…)  
    
 奥手そうに見えて(事実奥手だが)、相手にキスを求めた数は実はタカトの方が多かった。ずっと憧れていた女の子と、自分はつき  
あっている。タカトにとってキスとはその事実を再確認するための儀式であり、彼氏である自分に与えられた最大の贅沢であったのだ。  
 
 その清らなる儀式は、今や世にも淫らな愛の遊戯へと変貌していた。お互いが舐め取った相手の性液を、舌をからめて再び混ぜ合う  
とは。何と卑しき、しかし甘美な光景なのだろうか!だがそれは「彼女の痛みを和らげたい」という、一途な想いから生じた遊戯なのだ。  
 「んっ、ふうふうふぅっ……んふぅうっっ!!」「ふむ、ふううぅ……あうう!!」  
濃厚なディープキスの最中に、ゆっくりと進行していったペニスがついに根元まで挿入された。ついに。ついに辿り着いたのだ。  
 同時に、キスでごまかしていた下からの快感が一気に二人を襲う。一つになった二人を祝福するかのように身体を走る衝撃は、  
あまりに激しすぎて息が出来なくなりそうだった。実際、唇を重ねたままの二人は、その祝福のおかげで危うく窒息しそうになった。  
   
 タカトには、膣内の温かさと花孔の締め付けという祝福が。  
 ジュリには、固くやわらかく温かい異物が、自分の腹の中で脈打ち、息吹いてゆく祝福が。  
 
「「あ…ぅあっふああああぁぁぁあああぁぁああーーー!!!!」」  
 ぷはっ、と唇を離すと同時に声を揃えて悲鳴をあげる。そして、もっと悲鳴をあげたい、この快感を享受し続けたいという本能に  
突き動かされた二人は、どちらともなく腰を動かし始めた。  
 最初はお互いを気遣うように控えめだったその運動が、直に激しいリズムを刻んで上下していくのに時間はかからなかった。  
 
     じゅぱっ、じゅぱっ!ザバッザバッ!じゅぱっ、じゅぱっ!ザバッザバッ!  
 
 二種類の音響が、もう湯気も薄まって静かになり始めた湯船の端で景気よく反唱されている。  
前者は、男女の関係を結んでいるまっ最中にその接合部から湧き出てくる淫響で、後者は、その行為によって出来た  
波しぶきの音であった。  
 そしてその音響とは別に、まだ小学生と思しき男女二人の悲鳴が浴場にこだましている。だが人を呼ぶ必要はない。  
それは悲鳴ではなく、歓喜の嬌声であるのだから。  
「ああっ、ハァ、…加藤さん!加藤さん!かとうさんっっ!…気持ちいいよぉっっ!!!!!」   
「ああ、あ、あ、あた…しもあっ!ひあ!っあっ、あはぁーーーー!!」  
 今。二人の身体を走り抜ける快感の波は、その身にたゆたう湯波よりも、はるかに激しいものであった。さらに近づいてみると、  
上下運動によって出来る「パスパスパスパスパスッ…」という肌のぶつかり合いの音も聞き取ることが出来る。  
―(や、やったよ!!!!僕、加藤さんの…初めての人に…なれたんだようっ!!!!)―  
 前後不覚の快楽の竜巻の中に飲み込まれていた自我が、ようやく戻ってきた。そして今だ押し寄せ続ける激しい波の中で、  
タカトの脳裏にまず浮かんだのは、「男」になれた喜び。しかも憧れのクラスメイトとなのだから、正に至上の幸福感であった。  
あまりの嬉しさに、思わず涙さえこぼれてしまう。  
   
 女性の裸に興味を持って、初めてHな本を買ったのは3年生の時。当時はまだ性教育を習っていなかったので、だらしなく獣じみた  
男女の性交の写真を見た時は興奮も起きず、むしろ嫌悪感に近い感情しか持てなかった。  
 今ならわかる。その意味が。その素晴らしさが。写真で眺めるのではなく、自らの実体験として。  
 
―(夢…みたいだ、あっくああ!ぼく…が、憧れのクラスメイト加藤さんと、してる、だなんて…ああっあ!)―   
勿論こんな激しい感覚は夢では感じ得ない。薄目を開けて見えるジュリの上気した肢体と、口を開けてよがり続けている乱れ顔が  
今という現実の証だ。  
「きもち…いっ・あたし、気持ちいいのぉぉぉ!!!!」  
目に涙を溜め鳴く彼女に一瞬不安を感じたタカトだが、ジュリも自分同様この激しい快感を味わっていることがわかると、心から  
安心した。そして、  
(気持ちよくって喘いでる加藤さんなら…このまま近くでじっくり眺めててもいいよね…)  
と思い立ち、大好きな少女の痴態を存分に鑑賞する。  
「はあはあ、かとう、さん…、とっても色っぽくってすてき…だよっ、はっはっ!」  
「あ…やらっ、よだれ、たれちゃう…ダメっ、見ないでぇぇ!!」  
 タカトに貫かれたことですっかりだらしない表情になってしまった自分を恥ずかしがる。女の子が、しかもいつも可憐で明るい加藤さん  
がこんなはしたない顔をしているのだ。積極的なようでいて、やはりこういう所は男の自分よりよっぽど繊細なんだなとタカトは思った。  
 (加藤さんの、こんな顔を知っているのは僕一人だけ)  
 彼氏としての優越感に酔うと同時に、ジュリに顔を近づけてよだれを舌で舐め取る。  
その感触でタカトが近づいたことに気づいたジュリは、タカトに腕をからめてしがみついた。押し寄せては打ち続ける快感の津波を一人  
で渡るのは、やはり不安だったのだろう。自分が頼られていること。抱きしめられたことで改めて感じる少女の柔肌の感触。鼓動。  
 それら全てに突き動かされて、タカトは一層激しく腰を動かしていく。背中に立てられた爪の痛みなど、この媚薬の前では何の  
所為も無いのだ。  
 
自分の膣の中でピクピクと蠢き続ける、タカトくんの息づかい。  
それを受け容れる度に、あたしの全てが見透かされていく。そして彼も、曝け出されたあたしの本質を全て受け容れる。  
内に秘めたいやらしさも、はしたなさも、一片のこぼれも無く表出して誰かに見せてしまうということ。  
処女を捨てるということは、それほどの重大性を持つ行為なのだとジュリは実感した。  
(あたし、あたし、タカトくんに…女の子の大切なものを捧げたのね…)  
 その意義と重さをしかと受け止めて、タカトはジュリを離さずにいた。目を閉じながらであるが、その力強さを確かに感じ取る。  
少年の華奢な身体は、少女がその想いをぶつけ、寄り添う止まり木としての役目を立派に果たしていた。  
(タカトくんの胸が、こんなに広く、大きいだなんて。こんなに優しい気持ちで、安心できるだなんて。)  
 タカトの成長に改めて驚かされる。勿論、彼の内に秘めた勇気や情熱の深さは去年起きた幾多の出来事の中で誰よりも知っている  
(そしてそんな彼だから告白にもOKした)のだが、平穏な日々での彼は、やはりつい世話を焼きたくなってしまう、母性本能をくすぐられる  
かわいい男の子であった。  
 
 それが今や、快感の津波の中で迷いそうになる自分に力強く胸を貸し、先導しているのだ。今日ほど彼を頼りに思ったことはなかった。  
(あたし…タカトくんと……ひとつになれて……) その気持ちはそのまま口に出た。  
「タカトくん……好き……」 (よかった…!!)  
「…加藤さん!ぼ、僕も!好き!大好き!大大大大大好きだよっっ!!」  
 つきあう中で何度も繰り返した台詞は、一向に色褪せることはなかった。腰に力を込めて、その想いを伝える。  
「あ・あ・あ・はげしっっ!!たかとっ…く、あ・あーー!!」  
 恥ずかしい声を漏らしつつも、それを発する開放感にジュリは酔う。びちょびちょになった股間に、更に激しい突き上げがかかった。  
 
 ジュリを抱き上げたことで、肌と肌がぶつかる音も、接合部から鳴り響く粘着質の淫響も、より盛大なものとなった。  
この細い身体のどこにそんな力があるのか、タカトは彼女を抱え上げた状態で、一途な愛を伝え続けたのだ。  
―(彼女を)―  
「あふ、くう、くぅうん、うん……!」  
―(離したくない)―  
 タカトの腕の中で、ジュリは子犬のような喘ぎ声をあげている。かつては手の届かないほど遠くで輝いていた憧れの少女を、  
今や自分と同化するまでに引き寄せたのだ。  
 そうだ。全てを取り払ってしまえ。つきあっていてなお感じる、「憧れ」という名のある種の隔たり、それすらも。  
―(…僕だけの女性(ひと)にしたい。いつでも僕の、一番近くに…)―  
 この純真で優しい少年の心が、今日ほど独占欲で満たされた日はなかった。  
―(おかしいね……、僕、とってもエッチなことしてるのに…加藤さんのこと、とっても真剣に考えてる…)―  
 体と体をぶつけあう。ぶつけて気持ちを深め合う。  
―(だから赤ちゃんが生まれるのかな?男の人と女の人の幸せの証だから、あんなにもみんなに祝福されるのかな?)―  
 もしジュリが今夜の行為で妊娠してしまっても、タカトは何の迷いも無く「親」としての責務を果たすのだろう。  
 
 行為の最中、タカトの頭には常に嵐が吹き荒れていた。しかし、それはもはやタカトの心を乱し焦らせる嵐ではなかった。  
快楽の雲から生まれた雨が呼んだ嵐だ。タカト自らが使役し、吹き荒らし続けるのだ。  
 やがて雲は冥い色に変わり、ゴロゴロと唸り声を上げる。それと同時に、タカトの快感もついに絶頂に達しようとしていた。  
「あっ、は、かとう…さん、加藤さん!ぼく、もう、でちゃう……」  
「はぁっ、あっ、あ、……た、し……、も!!ッカッ…く…い、いっしょに…」  
 
最後の雄叫びを上げるかのように、タカトの腰が激しく動き、ジュリの締め付けもきつくなる。  
                                 
                             終焉の刻だ。  
 
「かとうさん!かとうさん!かとうさんかとうさん加藤さん加藤さんかとうさんかとうさん…………ジュリーーーーーーッ!!!!」  
 
「タ…カトッ!!…………んあはっあはあぁあぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」  
 
 
 空から落ちた一閃の落雷が、二人の脳裏にだけ降り落ちた。瞬間、世界は真っ白になり、ジュリの子宮に出来たての熱い白濁液が  
注ぎ込まれる。  
 今日という日の思い出を、刻み込むように。  
 今日という日に生まれた想いを、忘れないように。  
 
 
 
「……すっごいこと、しちゃったね…………」  
 朦朧としていた意識の中でジュリが「……呟いた。快感に浸された満足感で、その顔は今も紅潮している。  
気づけば自分の身体は湯船の端にあおむけに置かれていた。その上にはタオルが敷かれている。  
絶頂の後、タカトがしてくれた配慮のようだ。溺れた彼を解放した時は寝そべらせただけなのに。何気ない気配りに嬉しくなる。  
「……うん……」  
 返事の主は自分のすぐ横でうつぶせになっている。背中の爪痕を見て、不意にジュリは心配になった。  
「た、タカトくん!その傷、痛くなかった!?…ごめんね、あたしったら、こんなに…」  
「ううん、大丈夫だよ。こっちこそ…あ、あの、その……下の方……大丈夫?」  
 口ごもりながら、破瓜の痛みを気にかける。疲れた身体を起こしてタオルをめくると、股間部にうっすらと血の跡がある。  
「うん、あたしは大丈夫だよ。タカトくん、痛くないよういっぱい気を使ってくれたもん」  
「よ、よかったぁ!あの後拭いたんだけど、結構出てたから…」  
「ふ……拭いた……の…?」   
 股間に手を伸ばして?カアァッ…とまた身体が熱くなり、恥ずかしさでいっぱいになる。  
「あ、ご、ごめんなさい!」   
 またも墓穴を掘る。  
とはいえジュリは怒るわけもなく、むしろその優しさに感謝して「いいよ…」とタカトに微笑む。タカトの顔にも笑顔が戻った。  
 激しい交情の後だからだろうか。二人とも「いつもの彼(女)」がそこにいることに、より強い安心を覚えた。  
「ね……最後、あたしのこと……名前で呼んでくれたよね」  
「えっ!?そ、そうなの?…僕、無我夢中で…迷惑、だったかな…」  
「ううん、嬉しかった。それに、あたしを一生懸命抱きしめてくれて…………カッコよかったよ」  
「ほ、ホント!?加藤さん…あ、ご、ごめん、戻っちゃった」  
「うふふ、いいよ…あたしも、まだ…タカト…くん、って呼んでたいし」  
 心も身体も一つになった今でも、やはり慣れ親しんだ愛称は簡単には変えられないようだ。  
それでいい。前途はまだまだ長い。楽しむ時間はたくさんある。二人がお互いを名前で呼び合うのは、まだ何年も先の  
ことなのだろう。  
 
 
「…なぁヒロカズ、もう大浴場がしまる時間だぜ」  
 タカトたちの班の部屋で、不安げにケンタが言う。あの後、ヒロカズから表札を取り替えたイタズラを教えられて、  
「オイオイ、性格悪いな〜お前〜」と最初は苦笑していたのだが、あれから1時間以上経ってもまだ帰ってこないとあって、  
タカトのことがいい加減心配になってきた。  
「…」 ヒロカズは答えない。  
「やばいことになってたらどーすんだよ…加藤以外の客が入っていて、…ケーサツに連れて行かれたとかさー」  
 やはりヒロカズの返事は無い。じれったくなったケンタが問う。  
「そもそも何でこんなイタズラしようって思ったんだよ。…もしかしてお前、加藤のこと…好き、だった…の?」  
「バ、バカヤロ、違う……俺は…ただ…」  
   
 別に二人の仲をどうこうしようという気は最初からなかった。命がけの戦いの果てに結ばれた二人だ。むしろ全力で応援する  
のがダチの務めってもんだ。  
 だがしかし、ヒロカズは見てしまった。公園でみんなでかくれんぼをして遊んでいる際、そのダチ二人が物陰でキスしている  
のを。しかも、タカトの方から加藤にしたのだ。  
 その時のタカトからは、何かこういつもと違う、近寄りがたい雰囲気が―陰ながら応援する気にも、後でからかう気にもさせなく  
してしまうような―狼のような気迫が漂っていたのだ。  
 
 ジュリとつきあうことで、自分の知っているタカトそのものが変わってしまうのが怖かった。だからちょっと懲らしめて、いつもの  
情けないダチの顔を拝みたかったのかもしれない。  
 まぁそう深く考えなくても、鼻の下伸ばしてアホ面さらしてるタカトは見ていて普通にムカつく。  
それに、修学旅行の実行委員のアイツなら、女湯と男湯の場所が代わっていることぐらいしおり見てれば簡単にわかるのに。  
こんな深刻な事態を招いてしまうなんて。  
「タカト…加藤……すまねぇっ!」  
 ヒロカズは悔悟の念で一杯になった。そんな友人の心情を理解して、ケンタは彼の肩をたたく。  
 
   
 入浴前より3倍もにやけきった馬鹿面をひっ下げて帰って来たタカトが二人を悶絶させるのは、この2分後の出来事である。   
 
 
                                                                     おしまい  
 
 
 
 

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