(義理チョコなんだから)
(義理は大切にしなさいって、お婆ちゃんも言ってたんだから)
ルキは頬を赤く染めながら、こころもち早足で目的地へと向かっていた。
下ろした髪と久しぶりのスカートが少し鬱陶しいけれど、我慢する。
片手には紙袋。
(特別な意味はないんだから。タカトなんかただのト、トモダチだもん。ジェンにもあげないとだし、せっかく買ったんだから)
ちなみに、ヒロカズとケンタの分はあげるかどうかで迷ったあげく、チロルチョコにした。
ジェンにはラッピングされたウィスキーボンボン。自分は酔っ払ったけど、大人びたジェンなら、これもちゃんと普通に食べられるのだろうかと、興味半分冗談半分で選んでみた。そしてタカトには…。
(深い意味じゃないんだから私のトレードマークなんだからハート型だからって好きって考えるのなんか子供の考え方なんだからトレードマークは大切なんだから)
耳まで赤く染め、同じような考えを何度も何度も繰り返しながら、ほとんど競歩の早さになって目的地へ向かう。
(も、もうすぐタカトの家だ。えっとお父さんとお母さんには、お久しぶりです。牧野留姫です。啓人君居ますか?って言って…)
昨晩から何度もシミュレートした言葉。部屋で口に出してお辞儀の練習までしていた様子を、母と祖母にこっそり覗かれていたのを、ルキは幸いにして知らなかった。
(大丈夫、何度も練習したんだから間違えない!)
気を落ち着かせるために深呼吸する。大きく息を吸って吐く。
その時、目の端になんだか見慣れた二人の姿が入った。
(あれって…ジュリと…タカト)
後姿だが、それは間違いなくタカトとジュリだった。
(なんであの二人が一緒に歩いてるのよ…)
ジュリの右手の手提げ鞄から少し覗いている可愛らしいラッピングから、その答えは容易に推察できるのに、ルキは他の理由を探そうとした。
(確かにタカトはジュリの為に一生懸命だったし、ジュリもそれが嬉しかったんだと思うけど)
暗く沈んでしまったルキと対照的に、タカトとジュリは時折楽しそうに横を向いて話しながら並んで歩いている。
(タカト、頬真っ赤にして照れてる)
傍で見ていても仲の良さそうな二人から目を背けたい、逃げ出したいのに、それが出来ずにずっと後をついていく。
(こっちって、ギルモンホーム?)
タカトと心通わせ、そして自分の世界へと帰っていったデジモン。その住処に二人はどんな用事があるんだろうか?
(もしかして、ギルモンの事が恋しくなったのかな…)
そして自分もまたレナモンのことを思う。思い出すだけで、胸が痛くなる別れ。自分でさえ、時々寂しくて泣きたくなるのだ。ならタカトはもっと寂しがってるのだろう。
(それなら、声かけても平気…かな?)
だけど、やはりそれは出来なかった。こうなったらどんな話をしてるか聞いて判断するしかない。
ルキは自分がこっそり尾行してることを意識して、見つからないようにするのだった。
「タカトくん、はい」
ギルモンホームに入るとすぐ、ジュリがタカトになにかを手渡した。茂みの中からこっそり覗いているルキにはそれがなにか判らなかったが、恐らくチョコレートだろうと思った。
(あんなにあっさりと渡すんだ…やっぱり義理チョコかな?)
少しだけ安心するルキ。
「あ、うん」
少し恥ずかしそうに受け取るタカト。ちょっとムッとしたルキだったが、タカトが受け取ったものを広げて下に敷いたことで、それがチョコではなかったことが判った。
そしてその上にくつろいで座る二人。
「一瞬、チョコレートかなって期待した?」
ジュリのちょっと澄ましたような声。
「うん、期待しててねって昨日言ってたから…」
「昨日からずっとドキドキしてた?」
「うん、加藤さん、どんなチョコくれるのかなって」
その言葉に少し頬を膨らませるジュリ。
「チョコあげるのやめよっかなぁ」
「えええ! そんなぁ〜」
世にも情けなさそうな声を出すタカト。
「だってマツダくんが約束守ってくれないんだもん」
つんと横を向くジュリ。
「あ、ご、ごめん。僕、ジュリのチョコレート凄く欲しいなぁ」
「もう、そんなに欲しい?」
少し照れながら嬉しそうに笑うジュリ。
「うん、ものすご〜く!」
「どうして?」
期待に満ちた眼差しでタカトを見るジュリ。
「その…ジュリの事大好きだから…」
照れながらそう答えるタカトに、ジュリはとびきりの笑顔でを浮かべて頷いた。
一方ルキは、決定的な光景を前に呆然とへたりこんでいた。タカトの最後の言葉が聞こえた瞬間、頬を涙が伝った。嗚咽が漏れそうになる口を手のひらで必死に抑える。
(なんで泣いたりするのよ…タカトなんかなんでもないのに…ただのトモダチなのに、これじゃまるで私がタカトのこと…)
ルキはそう考えつつも自分が今まさに失恋したことを悟っていた。
ハートのチョコも、1時間かけてセットした髪も、ママのをこっそり借りて薄く引いたルージュも、とっておきの可愛らしい服も、すべてはムダになった。
しかし、ショックに打ちひしがれているルキを現実は更に追い詰めていった。
「じゃ、チョコあげるね」
そう言って取り出したトリュフチョコレートを、ジュリが自分の口にくわえて差し出したのだ。
(う、うそ…)
その意味を瞬時に理解して叫びだしそうになるルキ。
(やめてよ…)
しかしタカトはジュリの肩に手を置き、唇を重ねてチョコを受け取った。
「召し上がれ♪」
嬉しそうに言うジュリ。タカトが食べ終わるのを待って感想を聞いた。
「美味しい?」
「うん、まだあるかな?」
「うん!」
嬉しそうにチョコを取りだし、再び口にくわえるジュリ。また肩に手を置き唇を重ねるタカト。しかし今度は、すぐには離れずキスを続けながらチョコを食べている。
「ん…」
ジュリの吐息が少し漏れる。と、ピチャピチャという舌を絡めあう水音がルキまで届く。
永遠に思える長いキス。どうやら時折チョコレートをお互いの口で行き来させているらしく、その度に二人の口からチョコレート色の唾液がこぼれ落ちる。
「もう、タカトくんまたおっぱい触ってる」
ジュリがキスを中断し、少し恥ずかしそうな声で言った。確かに、タカトの手がジュリの胸を柔らかく揉んでいた。
(キスだけじゃないんだ…)
ルキは、二人がキスよりももっと先に進んでいることを知り、驚きを通り越してしまった。
そして、タカトが触ってるように自分の胸を少しまさぐってみる。
くすぐったいような、変な感じがした。
「だって、もうくすぐったがらないで気持ち良さそうにしてくれるから、嬉しくって」
本当に嬉しそうに言いながら、服越しではなく直接触ろうとジュリの上着をめくって下から手を入れた。
「タカトくんがくすぐったいから止めてって言ってるのに、ん、毎日触ったり吸ったりしたから」
直接胸をまさぐられ、ジュリの声が次第に甘く喘ぐような声色へと変わっていく。
「あ、もう乳首がかたくなってるよ」
タカトがそう言うと、ジュリは誤魔化すようにキスを仕掛けてきた。タカトはそれに応えながら、そっとジュリを押し倒していく。
「ねえ、ここにチョコレート入れてみようか?」
そう言うとタカトはスカートをめくり、パンツの上からジュリの割れ目をそっとなぞった。
「ダ、ダメだよ…そんなの」
「中で溶けるまで舐めようかと思ったんだけどなぁ」
「もう、タカトくんのえっち」
そう言いながらもその様子を想像したジュリの割れ目から、更に愛液が溢れ出す。
「でも、わたしもう…」
そう言ってタカトの膨らんでいるズボンをそっと撫でる。
タカトはその仕種に興奮して、急いでズボンを下ろした。
(嘘、あれがタカトの?)
デジタルワールドの時に何回か目撃したそれと違い、覆っていた皮は剥かれている。
それは、父親がいないルキが初めて目にした、子供のものでない男性器だった。
(あれを今からココに入れるんだ…)
そう考えながらルキは自分のソコをスカートの上からそっと撫でた。胸よりももっと、心地よい感覚が走る。
目の前ではタカトが自分のソレを使ってジュリの割れ目を弄くっていた。
「ううん、も、もう悪戯しないで早く入れてよう」
すっかり欲情して上ずった声でジュリが催促する。
「うん」
タカトはその言葉に素直に応じて、肉棒をジュリの膣内へとゆっくりと挿入していく。
「あ、は、入ってきたぁ…タカトくんのオチン○ン」
挿入されることによって、貯まっていた愛液が外へとこぼれ、にゅぷりという小さな音を立てる。
「今日で35回目だね」
そう言って自分の上のタカトにしがみつく。脚はしっかりとタカトの脚へと絡みつかせた。
タカトはゆっくりと回すように腰を動かす。
「あ、あぁ」
気持ち良さそうにジュリは喘ぎ声を漏らし、タカトの頭を掴んでキスをする。
舌が戯れあって出るピチャピチャという水音と、結合部から時々漏れ出るニチャリという音。
それにジュリがキスの合間に漏らす喘ぎ声。
ルキはそれを聞きながら、ひたすら自分の割れ目を弄くっていた。
スカートの上からではなく、パンツをずらして直接に。
自分をジュリに重ねて、タカトに愛撫されているつもりで割れ目を自分で愛撫する。
それは悲しい行為だったが、ルキは今はそんなことは考えずに始めて見る猥褻な光景にすっかり興奮していた。
と、タカトがキスを止めてジュリの髪をそっと撫でた。それが合図だったようにジュリはタカトにきつく絡み合わせていた脚をほどく。
タカトはその脚を手で受け止め、ゆっくりと上下運動を開始した。
「ん、ん〜ん、うぁ」
次第に激しくなっていく動きに抑え目だった喘ぎ声が次第に大きく、高くなっていく。
ジュリの顔は快感で緩み、歪んでいる。タカトの動きが激しくなり、ジュリもそれに応じて腰をもぞもぞと動かす。
「ん、すごいよぅ、ああ、いいよぅ、ん、んん〜」
言って、ジュリは感極まったように左右に振った。タカトがそれをつかまえて唇を何度も軽く重ねる。
「ん〜ふぅ」
唇を重ねているのに声が漏れる。
「も、もうすぐ出るよ!」
「んん、うん、う、出していいよ、いい!」
ジュリがうめくように言いながら首を何度も縦に振る。
「出る!」
タカトが一際大きく打ちこむと、ジュリの体が小刻みにプルプルと震えた。
「ああ! ああぁ…」
ジュリが一際大きく高い声を出し、脱力した。タカトは放出したあと少し腰を揺らして残滓まで出して、引き抜いた。そしてジュリの横にころがる。
「んんぅ」
ジュリがひどく甘い声を出し、気だるげな、しかし嬉しそうにタカトへ話かけた。
「また一緒に気持ち良くなれたね」
「うん、ぼくだけ気持ち良くならないように、がんばって我慢したんだ」
「えらいえらい」
ジュリが愛おしそうにタカトの頭を撫でた。
「ちぇっ」
大人ぶったその態度に拗ねた風を見せながらも、頭を撫でられるままにする。
ルキは、自分の割れ目を弄くるのをやめて、その光景をぼんやりと見ていた。
タカトが射精する辺りで、もの凄く大きな快感の波が来たけれど、その先がなんだか怖くて自慰をやめてしまったのだ。
そして行為が終わった後の二人を見て、強く思った。
(わたしも、あんな風にタカトと一つになりたい)
認めなくなかったけれど、自分はアイツが好きらしい…こんな光景を見せられても諦められないくらいに。今の自分は惨めだ。でも、いつかきっとタカトと結ばれてみせる。
運命は変えられるのだから。