コンコンコン・・・  
 
その音に起こされ俺は眼を覚ました。  
枕元に置かれたデジタル時計を見ると  
"AM5:28"と表示されていた。  
 
「うぅ・・・。  
 こんな朝早くから、誰?」  
 
「私だロードナイトモンだ。  
 一緒にお茶をしないか?  
 ・・・入るぞ?」  
 
「あぁどう・・・待ったぁあぁあぁ!!!」  
 
そうだった俺は退化してシャコモンになってたんだった。  
こんな姿をあいつに見られるわけには・・・  
 
ガチャ・・・  
 
オートロックでもないこの宿は  
宿泊者が鍵をかけていなかったため  
すんなりと侵入者を許してしまった。  
 
「ほら、茶菓子も持ってきた・・・。  
 あれ?デュナスモンは?」  
 
するとこの退化した俺に気づいたようだ。  
俺と目線を合わせる為にしゃがむと  
片手で俺の殻をガシッと掴み  
邪悪にニッコリ笑いながら言った。  
 
「どうしてここにいるのかなぁ僕ぅ?  
 デュナスモンの知り合い?  
 デュナスモンは何処にいるの?」  
 
俺はそんなロードナイトモンに恐怖しながら答えた。  
 
「お、俺がデュナスモンだ・・・」  
 
「えっ?えぇえぇえぇえぇ!!!」  
 
俺はオメガモンが薬を酒に混ぜた事  
今元に戻る薬をオメガモンが調合中の事  
皆が被害を受けた事を全て話した。  
 
「ふ〜ん、なるほどぉ・・・  
 じゃあ、明日まではこんな状態な訳だ。」  
 
そう言うとロードナイトモンは  
意味ありげに薄ら笑いを浮かべた。  
 
「な、なんだ・・・その笑いは!?」  
 
「ふふふ、なぁに  
 いつもの様に上から身長差で  
 見下ろされなくて済むからさぁ・・・」  
 
そう言い『ふふふふふ』と不気味な笑いを漏らしている  
俺は小さくなった身体で逃げ出そうとした。  
が、再び殻を"ガシッ"と掴まれ  
すんなりと押さえ込まれてしまった。  
 
「それにしても綺麗じゃないか!  
 私程ではないがな、  
 この艶と光沢、円らな瞳、可愛いなぁ、  
 このままテイクアウトしちゃいそうだよ」  
 
薔薇を口に付けながら口元が攣り上がっている。  
 
「何を言ってるんだ!  
 ち、ちょっと待って、怖いって」  
 
「阿呆だ、阿呆だ、と思っていたが、  
 頭まで退化してしまったのか?  
 そんな美しい体を手に入れといて  
 楽しまない貴様の意図が分からん」  
 
そうだ・・・  
ロードナイトモンはこういう奴だった。  
"美しければそれで良い"  
美しいと感じたものは勿論、  
『美』と付くものはあらゆる物を嗜んでいる。  
|美味学《ガストロノミー》、茶道、|美音学《ヒーラーソング》、武道、|美談《ナルシスト》、|珍品収集《コレクター》、・・・etc  
その為この俺が美しいとなると、  
あいつの持病の|美品大好き病《ビューティーコンプレックス》が・・・  
残念ながら俺の勘は的中してしまった。  
ロードナイトモンは、俺の見てる前で  
|鎧《つなぎ》のホックを外し始めたのだ。  
 
「シャコモンかぁ・・・  
 その貝殻の中はどうなっているのかな?  
 少し潤ってて、宝石のように光を放ち  
 あぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ  
 |シャコモン《デュナスモン》!私と や ら な い か ?」  
 
何故だろう・・・。  
強い既視感を覚える。  
それに何だか凄く危ない気がしてならない・・・。  
しかし、ロードナイトモン自体は嫌いではないし  
寧ろ、どちらかと言えばかなり好きな部類に入ってしまう。  
普段は抱きしめやすかったので後ろから抱きついたり  
そんな事をしていたが、逆に言えば、そんな事止まりなのだ。  
これは一体何軒飛びなのか・・・。俺の貞操が・・・。  
それにこの身体で一体どうやってすると言うのか・・・  
考えていても仕方ないか、ロードナイトモンに任せる事としよう。  
 
「ロードナイトモンの好きにしたら良い・・・  
 俺はこの身体だから何をして良いか分からないしな」  
 
小さい身体の俺はロードナイトモンにヒョイと持ち上げられ  
目線(?)を無理矢理合わせられると、少し声を荒げて言い放った。  
 
「こら!そんな言葉遣いは美しくない!  
 もっと語尾を揃えるとか、私の事をハニーと呼んだり  
 きちんと正しい言葉を使いなさい!」  
 
"ハニー"なんて正しい言葉なのか?  
そもそも、ロードナイトモンの性別って・・・?  
しかし、反論したら酷い事をさせられそうだ。  
俺はロードナイトモンの言う事に素直に従う事にした。  
 
「ハ、ハニー?」  
 
自分で言っといて自己嫌悪に落ちてしまいそうだったが、  
ロードナイトモンは自分の世界に入ってしまっていて  
全く聞いていない・・・。嬉しいような悲しいような・・・。  
しかも、ロードナイトモンは  
ブツブツと呪詛のように独り言を呟いている  
 
「・・・貝殻の・・一通り愛でてから  
 反応を見て虐め・・・フフフ・・・」  
 
朝早くから俺は又疲れそうだ・・・  
そう心の中で考えつつこのまま妄想が現実化しない様に  
祈りながら朝食の時間を待つ事にした。  
 
「はっ・・・!」  
 
私は一体どれくらい寝ていたのだ?  
壁にもたれた状態で|ギルモン《デュークモン》は目を覚ました。  
確か何も食べていないだろうから  
|アグモン《オメガモン》に夜食を持ってきて・・・  
そうだ!|アグモン《オメガモン》は一体・・・  
そう考え身体を起こそうとすると  
誰かが、かけてくれたであろう毛布がハラリと落ち、  
急に寒さが襲ってきた。私は反射的に毛布を拾い身体に纏った。  
|アグモン《オメガモン》は此方を振り返りもせず言った。  
 
「寝ていたいのなら寝ていても良いぞ?  
 朝食の時間になったら起こしてやるから。  
 俺は使わないからそこのベッドで休むと良い。」  
 
そう言いつつ|アグモン《オメガモン》は  
試験管に入った黒い液体を別の試験管に移す。  
ずっと起きていたのであろうか・・・?  
 
「あぁ、後夜食はありがたく頂いたから  
 ・・・できれば、お茶を入れてくれないか?」  
 
私は言われるがままに部屋に置いてるポットのお湯を急須に注いだ。  
『ヴ〜』と言う音と共にお湯が出てくる。  
お湯が入ったのを確認するとそのまま茶葉を|一匙《ひとさじ》入れた。  
お湯に触れた瞬間にフワァと茶葉が広がる・・・。  
蓋を閉め、急須を軽く回すと、|アグモン《オメガモン》のマグカップに注いだ。  
 
コポコポコポコポコポ・・・  
 
良い音だ・・・。何故かこの音に癒されてしまう。  
私はそう感じながらも緑茶を並々と注いだマグカップを  
|アグモン《オメガモン》の元へ差し出した。  
先ほどの事のようにならないように  
マグカップを置くと私は後ろへさっさと下がっていった  
 
「何をビビッているんだ?」  
 
「五月蠅い!私はもう一眠りするからな!  
 もぅ起こすんじゃないぞ?!」  
 
そう言い毛布を頭まで被ると大して時間をおかずに  
|ギルモン《デュークモン》の方から静かな寝息が聞こえてきた。  
可愛い奴だ・・・。  
盟友である|ギルモン《デュークモン》になら  
この体をあずけてもかまわないのだが、  
如何せん、|之奴《コイツ》は恥ずかしがり屋なのだ。  
それとも、鈍感なだけなのか?  
この俺がキスまでしてやったというのに・・・  
 
「ふぅ、たまには盟友から襲ってきてもらいたいものだ」  
 
そう呟くと入れてもらった緑茶を啜り、  
何かの木の根らしい物を磨り潰し試験管に放り込んだ。  
 
 
温泉宿の玄関先で|ブイモン《マグナモン》は軽く身体を解していた。  
ラジオ体操に近い動きで尻尾の先の筋肉までも動かしていたそれを  
玄関ロビーから微笑ましく|ガブモン《ドゥフトモン》と|クダモン《スレイプモン》が見つめていた。  
その内に身体が温まったのだろう|ブイモン《マグナモン》が旅館内に戻ってきた。  
 
「朝から元気な事だ」  
 
|クダモン《スレイプモン》に声をかけられ|ブイモン《マグナモン》は笑顔で返す。  
 
「某はそのような体操は苦手也」  
 
「思うままに身体を動かせばいいんだよ。  
 決められた動きをするから苦痛に感じるんじゃないかな?」  
 
そう元気よく|ブイモン《マグナモン》が答えた。  
 
「某はあれがやりたいのだが、朝食まで付き合ってくれぬか?」  
 
そう言い|ガブモン《ドゥフトモン》は、少し奥に設置してある卓球台を指した。  
それを見て|クダモン《スレイプモン》が機嫌悪そうに顔をしかめる。  
 
「私は部屋に戻るぞ」  
 
そう言い動き出した|クダモン《スレイプモン》を掴んで|ブイモン《マグナモン》が引き止めた。  
 
「なんで?一緒に遊ぼうよ?」  
 
「私は小型すぎてラケットで打ち返す事が出来ん!」  
 
「某はそんな事気にはしない也」  
 
「僕も気にしないよ?」  
 
二人に迫られて渋々一緒にいることを承知した。  
卓球台の両端には網に入ったピンポン玉と  
赤黒のラケットが二組ずつ置かれており、  
|ブイモン《マグナモン》と|ガブモン《ドゥフトモン》がそれぞれ構えた。  
因みに、|クダモン《スレイプモン》は完全に傍観者になってしまっている。  
 
「いっくよ〜☆」  
 
気の抜けた声で|ブイモン《マグナモン》はサーブを打った。  
リズミカルにコンコンと規則的に  
|打ち合い《ラリー》が続くかと予想していたのだが、  
最初のサーブの玉を|ガブモン《ドゥフトモン》はスマッシュで打ち返した。  
 
スコォン!!!  
 
かなりの威力を持った弾丸スマッシュは  
卓球台の端を強く叩いて|ブイモン《マグナモン》の背後に消失した。  
 
「い、いやだなぁ、  
 |ガブモン《ドゥフトモン》、本気出しちゃってぇ」  
 
その瞬間|ガブモン《ドゥフトモン》はニヤリと笑みを浮かべると  
言ってはならないことを口にしてしまった。  
 
「某は本気を出してはいないのだが、  
 |ブイモン《マグナモン》には強すぎた也か?」  
 
プチッ・・・  
その瞬間私は何かの切れる音と共に空気が凍るのを感じた。  
その雰囲気に怯えていると不意に|ブイモン《マグナモン》が私に声をかけた。  
 
「|クダモン《スレイプモン》・・・?  
 ちょっと隣に来て手伝ってくれないかなぁ?」  
 
「わ、私はラケットを持てな・・・」  
 
「手伝って・・・くれるよね?」  
 
軽い脅しの入ったその言葉と共に引き攣った笑みを向けながら  
問いかけてきた。駄目だ・・・断ったら、殺される  
私は卓球台の左半分に登るとラケットを身体全体で抱えた。  
 
「二対一か・・・某は全然構わない、  
 寧ろ、本気を出してくれると某は嬉しい也」  
 
相変わらず|ブイモン《マグナモン》は笑っているんだが  
その笑みには何故か邪悪なものを感じてしまう・・・  
 
「大丈夫だよ☆  
 完膚なきまでに叩きのめしてあげるから♪」  
 
うわぁ珍しく|ブイモン《マグナモン》が無茶苦茶怒ってらっしゃる  
相手に移ったサーブ権で此方に玉が放られる・・・。  
身体の大きさから言って私には卓球と言うよりテニスなのだが、  
(英語ではテーブルテニスと言うだと?そんなのは知らないな)  
身体全体を使うようにしてそれを相手の方向へ打ち返す。  
一応私が小さいから手加減してくれているのであろうな・・・  
サーブとは言え比較的打ち返しやすいその球を返すと  
その玉は放物線を描いて相手の台へと着地・・・  
したその瞬間強烈なスマッシュを|ブイモン《マグナモン》方向へ打ち返した。  
しかし、今度は|ブイモン《マグナモン》も今度はスマッシュで返す、  
明らかに次元の違うその戦いに私は参加できるのだろうか…?  
|ブイモン《マグナモン》と|ガブモン《ドゥフトモン》の間を一往復したその玉を  
|ガブモン《ドゥフトモン》が軽く踏み込みながら打ち返す、私の所に…  
その玉が台に触れた瞬間不自然な加速がかかる。  
|所謂《いわゆる》、ドライブと言う奴か・・・?  
本当に本気を出しているらしい、私にまでそれを使わなくても・・・  
しかし、仮にもロイヤルナイツ動体視力の良さは引けを取らない。  
私は辛うじてその玉を打ち返した・・・  
|ガブモン《ドゥフトモン》がその玉を今度は|ブイモン《マグナモン》へ打ち返したその瞬間、  
|ブイモン《マグナモン》はニヤリとし、不自然な動きで球を返した。  
玉の下方向を擦る動きは・・・カット?  
その玉はネットをスレスレで越え、  
台についた瞬間強烈なバックスピンがかかる。  
慌てて|ガブモン《ドゥフトモン》が腕を伸ばし捕ろうとするが  
如何せんガブモンの短い腕では玉に届かず一点を奪い取った。  
 
「ふ、ふふふふふ・・・」  
 
「は、ははははは・・・」  
 
|ブイモン《マグナモン》と|ガブモン《ドゥフトモン》は不気味に笑いを共鳴させながら  
再びラケットを構え、ガブモンがサーブを打つ。  
それを見つめながらいつもより疲労感を感じ、  
早く朝食の時間になることを切に願った。  
 

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