「フフフー、ジェーン♪」
「うわなにすンのさテリアモン」
テリアモンが頭に乗っかってくる。
短く切りそろえられたジェンリャの頭につかむようなところはないけど、
テリアモンは頭の上でうまくバランスをとって、腹這いの姿勢で安定する。
髪の毛をつかむとジェンリャが痛がるので、それはしないように頭の上に小さな手を置いて
楽しそうに大きな耳を揺らす。ぱたぱた。
「どうしたのさテリアモン、今日はご機嫌だなぁ。」
「なーんでーもなーいさー♪」
そう歌うようにテリアモンはいい、またぬふふーと笑う。
「それよりさぁ、ジェン。」
「ん、なに?」
「ジェンは、好きな人とかいるの?」
「っ!?」
びっくりして、思わずむせた。
世界を救ったと言っても、ジェンリャはまだまだ小学生。
わりと、人と距離を置くタイプのジェンリャはそういう色恋沙汰とは無縁だけど、でも興味がないわけでもない。
「ど、どうしたのさテリアモン急に」
「えー?べーつにー」
そう言うと、テリアモンはえいやっと、ジェンリャの頭から飛び降りて彼の前に華麗に着地して見せた。
高層マンションに住んでる彼らには床に響くような大きな音を出すことはご法度だが、そんな心配はテリアモンには無用だった。
こっちを見るテリアモンと目が合う。
「…、なんなのさテリアモン…。」
「ふふーん。あーやーしーいー」
テリアモンがニヤっと笑う。
「ジェンは、『こい』をしてないの?」
「『こい』、って…、誰にそんな言葉習ったのさ…」
「だれでもいーじゃんー、そんなことより、どうなの?」
テリアモンの目が輝く。心底楽しそうだ。
「べつにぼくは『こい』はしてないよ…。あ、じゃあテリアモンはどうなのさ」
「えー、ぼくー?ぼくはねぇー…」
そうもったいつけると、テリアモンはまたえいやっと床を蹴って、ジェンリャの頭に飛び乗った。本日2回目。
「ふふーん、ぼくはやっぱりジェンかなー。ジェンはぼくのこと好きー?」
あぁ、やっぱりなにか良いことでもあったのかな、とジェンリャは思った。
そういう日のテリアモンはただでさえ普段から高いテンションがさらに高くなるのだ。
「…あぁ、ぼくもテリアモンのこと好きだよ。」
そう返して、頭の上のテリアモンを撫でてやる。
ジェンリャの愛撫を気持ちよさそうに受けるテリアモンは、
「ほんとー?じゃあぼくら『そうしそうあい』だねー。」
と言った。
ほんとにどこでそんな妙な言葉覚えてくるんだ…、とジェンリャは思った。