私の居場所は小さなロッカーの上段です。  
 ここでいつも待っています。  
 それは授業であったり、掃除であったり、給食であったり、様々ですが、物音立てずに静かにしているのは今ではメンバーの誰よりも上手になりました。ぬいぐるみのフリだって慣れたものですから、京さんを困らせた事など一度も有りません。  
 これはちょっと自慢ですが、奥ゆかしい私は黙っています。  
 時々パタモンあたりがいい子ちゃんぶってると痛い目に遭うよと言っているそうです。ま、私別に気にしませんけど。  
 「ねぇピピモン」  
 「京さん!」  
 誰に何と陰口を叩かれた所で、私は京さんさえ居れば痛くも痒くもありません。  
 「わっ!……また飛んでー。誰かに見られたらどーすんのよ!?」  
 「平気ですよ!ぬいぐるみゴッコなら任せてください」  
 えっへん。無い胸を張って威張ってみる。  
 「今から賢くんがこっちの中学校来るんだって。まだ待ってもらわなきゃだけど、いい?」  
 京さんはいつの間にか一乗寺賢のことを賢くん、と呼んでいる。  
 いけ好かない奴だけれど、私は京さんの味方なので、メンバーの(特にパタモン辺り)矢表に立たされることも吝かではありません。  
 でも正直な話、ちょっとうんざりします。  
 ピヨモンやパルモンに女性パートナーを持つデジモンの苦労話という名の愚痴をこぼす事もあります。テイルモンはあまり取り合ってくれないので。  
 全員それなりに苦労はあるみたいですが、やはり誰一匹として私の苦労を分かち合える人は居ません。だって全員相手のデジモンと仲いいんですもん。  
 「……一乗寺さんが来るってことは」  
 「来るわよ、ワームモンも」  
 私が思わず顔を顰めると同時に……相当嫌そうな顔をしたんでしょう……京さんがため息付いて「じゃあロッカーに居たら」と私を元の位置に戻しました。  
 「鳥型デジモンと虫型デジモンだとやっぱ相性悪いのかしら」  
 それは違います。  
 だって植物型デジモンのパルモンと昆虫型デジモンのテントモン、鳥型デジモンのピヨモンと狼型デジモンのガブモンは仲いいじゃないですか。  
 仲がいいかどうかはともかく、猫と鼠のテイルモンとパタモンも別にお互い敵対なんてしてませんよ。  
 単にあいつが嫌いなだけです。  
 一乗寺がいればあとは全部どーでもいいって態度が気に入りません。  
 友達がひん曲がったら殴ってでも矯正するのが友情ってもんでしょう?それをデジモンたる者がパートナーを甘やかして陰に篭るのを手伝ってどーすんですか。  
 だいたい成熟期もなんか凶悪なフォルムしてるし声も怖いし緑色でキモイし幼年期が植物っぽいのに成長期が芋虫って所も納得行かないし……ともかく気に食わないんですよ!  
 ――――――とかは京さん(とブイモン)の前では決して口に出しません。  
 私は良い子ですから。  
 ロッカーのドアが閉められて、京さんがなんか泉先輩たちも来る重大会議らしいから遅くなるけど待っててね、と声を掛けて、軽やかに教室を出てゆかれました。  
 
 
 ずいぶん眠っていたような気がします。  
 ウトウトとしていた目が覚めたのは、聞き覚えのある声がしたからです。  
 その声は聞き間違えるはずもない、京さんのものでした。  
 「うっ……うっ……」  
 「京さん、落ち着いた?」  
 「……なんでぇ……なんでゲート閉じちゃうなんて大事なことあたしに一言も相談してくれないのォ……」  
 ひぃーん、という飛行機が離着陸する時みたいな高いかすれた声が、ロッカーの通気口から微かに見える夕闇に溺れた教室に響いていました。  
 私は慌てて幾筋かのスリットの一本にへばりつき、あたりを見回します。すると、ドアのすぐ側にある椅子に腰掛けた緑の制服の京さんと、深い青のガクランを着た(あのユカイな髪型から察するに)一乗寺がロッカーに背を向けて座っているではないですか。  
 しかも!一乗寺がこともあろうに京さんの腕を握っているのです。  
 私はカッと頭に血が上って、ロッカーのドアをぶち破ろうとしました。  
 が、結局しませんでした。  
 というか出来ませんでした。  
 京さんが一乗寺の腕を引っ張り、その胸で大いに泣き始めたから。  
 一乗寺はさすがというべきか、憎たらしくもと言うべきか、動じる事も無く当たり前のようにそれを許して京さんの求めるように彼女の背に回しました。  
 その手が腰に回ってるよーなハレンチな所業だったら、私も大見得を切って飛び出せたのですが、腹立たしくも一応あいつは紳士を気取っているのでそーゆー事はしませんでした。  
 完璧です。  
 私の出来ない、完璧をやってのけているのです。  
 不思議と腹は立ちません。セピア色とオレンジ色、それから藤色を混ぜた様な色で埋め尽くされている教室はとてもきれいで、その片隅に長身の京さんが背を丸めて姿勢の妙にいい一乗寺の胸の中にいるという画面はとても絵になっていました。  
 まるでちょっと小洒落た絵葉書のように。  
 「……デジモンのみんなと別れるのは辛いね」  
 一乗寺が微動だにしないまま、視線をどこか遠くに彷徨わせながらぽつりぽつりと言いました。  
 「でも泉先輩の意見に僕は非の打ち所が見つからなかったな」  
 京さんの啜り上げる音は続いています。  
 「寂しいけど……とても寂しいけど……僕は賛成に入れたよ。  
 永遠のお別れじゃない。僕は信じてる。きっとまた会う為に、僕は……頑張るよ。この世界で」  
 一乗寺の方が我々デジモンに依存しているだろうに。  
 ――――――本当は、この立派なセリフを京さんの口から聞いて、わたしは喜ばねばならなかったのでしょう。ですが、実際は一乗寺の震える無理した声で聞いて、京さんは聞き分けなく泣いていて……ほっとしました。  
 あの芋虫の事をちっとも笑えません。  
 ですから目を閉じました。  
 その後の事に。  
 
 顔を上げて。  
 一乗寺が京さんの肩を少し自分の体から離し、照り差し込む夕日のせいか、それともふさぎ込んで泣き続けていたせいかで赤く染まった京さ  
んの顔を手で拭い、震える彼女をもう一度(今度は抱き合う格好で)抱き直しました。  
 少し驚いた顔で京さんは彼の肩越しに教室の外と一乗寺の背中を見ていましたが、琴の弦が震えるようにまた声をあげて泣きました。  
 私はもうたまらないほど胸がシクシクと痛むのに目を逸らす事が出来ません。こんなに居た堪れない気持ちは恐らくもう一生感じる事は無い  
はずです。  
 「ごめんねぇ、制服びしょびしょにしちゃってごめんねぇ……でも止まらないのよぅ」  
 京さんの一乗寺の背中に回された手が、深い青の制服の二箇所をしっかりと握っています。もう離れることが出来ないかのように。その格好  
は私にとって恐ろしく滑稽なのに、物悲しくて溜息が出ました。  
 「いいよ。京さんの涙、全部吸えちゃうなら嬉しい」  
 ぎゅっと、二人がもう一度力を込めて抱き合いました。それはまるで、歓喜天のような神々しさと秘密の匂いが混じった淫靡と清廉の入り乱  
れる光景なのです。  
 そこに一体なんぴとが介入することを許されるでしょうか。  
 でもいたのです、このキヨラカでコッパズカシイ青春の一ページを踏み散らかす輩が。  
 ガタガタガタ!  
 それは私でした。気付くと爪を引っ掛けて無理やり止っていたロッカーの凹凸から落ちていたのです。不恰好にロッカーの底にへばり付き、  
上から降ってくる体操着や辞書、社会科の便覧なんかが私の身動きを約束してくれました。負の方向に。  
 「ピピモン!」  
 いつものあの声が、大雑把で調子乗りで移り気な、繊細で優しくて可愛らしいあの声が、私の名を呼びながら近づいてくるのです。  
 すぐにもロッカーのドアが開いて私は違反荷物(この学校では学習教材を学校に置きっ放しにする事が禁じられているのです)の谷から助け  
出されました。  
 「……おはようございます。もう会議とやらは終わりましたか?」  
 私はうたた寝をしてついうっかり寝返りで大惨事になった間抜けのふりをしました。ぬいぐるみの真似と並んで私の得意分野です。  
 「〜〜〜〜っ!う、う、うわぁ〜ん!聞いてよピピモンー!」  
 たまりかねた様に京さんが私を抱きしめてまた大声で泣きました。  
 「い、い、泉先輩が!あたしに内緒でデジタルゲート閉じるプログラム作ってたのよーっ!」  
 わかります。今みたいな反応すると光子郎さんも思ったんでしょうね。抱き潰されながら心の中でだけ返事をしました。  
 「だ、だから、光子郎さんも別に好きで閉じようってわけじゃ……」  
 一乗寺が真の抜けたフォローを繰り返すのを私は冷めた横目で見ていました。京さんは我々デジモンと離れることより、光子郎さんが自分を  
仲間はずれにしたことが悲しいんですよ。聞いてりゃ分かるでしょうが。……それとも、分かっててその態度なんですかね。  
 「み、み、みやこさん!苦しいです!謹聴!謹聴!詳しい説明を求めます!」  
 羽をばたばた動かして私は寝耳に水と、間抜けのふりを続けます。  
 ふと一乗寺と目が合って確信しました。  
 こいつとこいつのパートナーとはやっぱり仲良くなれないし、こいつは敵だと。  
 ……だって全部知ってないと、私を睨んだりはしないでしょう?  
 
 
 「ホークモンは潔癖過ぎるんだよ」  
 「てゆっか、京を好き過ぎ?」  
 「単に融通が利かないだけだぎゃ」  
 「私には賢に嫉妬してるだけと見えるけど」  
 混乱と錯乱を極める子供たちの動揺を緩和するため、一旦デジタルワールドに戻った新世代のパートナーデジモンが一堂に会して私を詰ります。……うすうす予想はしてましたがここまで露骨とは……。  
 「でもさ、そのままじっと見てたらやっぱアレだよなっチューとかしたよなっ絶対!」  
 「更生してもデジモンカイザー……ってカンジ?」  
 「睨んだのは“見てたな〜”“邪魔したな〜”ってことだぎゃ」  
 ブイモン、パタモン、アルマジモンが口々に勝手な事を言いながらケラケラ笑っています。連中は事の次第を面白おかしく推測して他人事の悩みを解体するのが好きなようで、ただ一匹そんなことには興味なさそうなテイルモンが耳打ちのように私に述べました。  
 「ホークモンは少し大人になるべきね。デジモンが子供達の足枷になってどうするの?」  
 「……そういうのはあの虫に言って欲しいものです。  
 デジタルゲートをリアルワールドからロックしたところで、どうせD3ならこじ開けられるんでしょう?一乗寺ならこっそり開けちゃうんじゃないんですか。彼のD3は特別製みたいですし」  
 「……光子郎は再度開くのは最低でもリアルワールドのデジモンに関する法律が整備・施行されてからって言い切ってたわ」  
 三匹とは少し離れた我々二匹がぼそぼそと会話をしているのを、パタモンがちらりちらりと見ていましたが特に何を言う風でもないので、我々も特にリアクションはしません。  
 「……永遠に開かない可能性もある、と」  
 「あの抜け目の無い光子郎がD3の機能を制限せずに放っておくとは思えないし、デジタルワールドに不安要素を招きかねない可能性を潰さない理由が無い」  
 テイルモンは先代のパートナーデジモンの中でも一際異質です。その理由を聞いて知ってはいますが、想像を絶する体験に裏打ちされた冷静で硬質な思考回路は、時に彼女を一人にします。……我々の仲間内でさえ。  
 「人を独り占めなんか出来ない。……特にあたしたちデジモンにはね」  
 正直、ジョグレス相手の私でさえ時々彼女を見失う事があるのです。憂いと自制に満ちたテイルモンの瞳をどう評すればいいのか、未だ私には解りかねます。  
 「私やパタモンは……パタモンもまたややこしいんだけど……別れるのはこれが最初じゃないからまだ楽なのかしらね。  
 ……信じて待ちましょう、あの子達がこの世界を変えてくれるまで。会えるわよ、きっとまたいつか」  
 珍しくテイルモンが笑ってそう言いました。私はそんな貴重な現象にさえただハイと事務的に返事をしただけで彼女の顔すら見ません。  
 何故ならば彼女の心配が的外れでしかも大局的なものだったからです。  
 どちらかと言えば、あの熱心に井戸端会議をしている三匹の方が私の心情に近い話をしていました。  
 「そう言えば」  
 パタモンが急に声を上げてブイモンに尋ねました。少しこちらの様子を窺いながら。  
 「ワームモンって何処まで行ったの?ずいぶん遅いけど」  
 「あいつ賢と京にくっついてコンビニ行ったまま。こっち来てないぜ」  
 「あのナリで外に出るたぁ豪傑だぎゃ」  
 「……芋虫のぬいぐるみもってコンビニに来る中学生ってやだなぁ」  
 
 機動性の高さを買われて私がデジタルゲートに突き飛ばされ(こんなひどいことするのは見当がつくでしょう。そう、全員です)、椅子の背もたれにようやく着地してしぶしぶ飛び立とうとしたとたん、足下であのダミ声がしました。  
 「おい」  
 「……む……ワームモンですか」  
 急に名前を呼ばれてついうっかり陰で呼び慣れているあだ名をこぼしそうになったのではありません。  
 「また虫って言おうとした」  
 「気のせいでしょう」  
 二人きりになるとわざとそう呼び違えるのです。そうでもしないとこの虫は馴れ馴れしく話し掛けてくるもんですから。  
 「京を探してるんだろう?」  
 「……正確に言えば、あなたと一乗寺もですがね」  
 ふうん、とワームモンが含みのある返事をして、賢ちゃんと京はみんなの居る視聴覚室に行っててここにはまだ来ないよと言いました。  
 「じゃああなた以外集まってますからDWに来て下さい。これからの事を相談するんです」  
 業務連絡を伝えるのも忌々しいと、私がモニターに映るデジタルゲートの方向に体の向きを変えます。  
 「いくよ。――――――賢ちゃんにはもう京がいるからね」  
 ふん、と鼻(?)を鳴らしてワームモンが私の止まっている椅子によじ登りました。  
 「……どういう意味ですか?」  
 飛び立ちばなを挫かれた私が翼をもう一度仕舞い、目は合わせずに尋ねました。  
 「京には賢ちゃんがいる、ここにいたってガッカリするだけってことだよ」  
 「――――――意味が分かりません」  
 決して目を合わせようとしない私達、窓から差し込む夕日の残滓、肌寒い空気が10月の始まりを告げています。  
 「もう僕たちだけがあの子達にとって特別ってんじゃないんだ。  
 ……解ってるんだろ?僕達パートナーデジモンは子供達の何処に向けたらいいのか分からない愛情の焦点でしかないのさ。あの子達が自分の愛情の使い方を知って、自分にも人にも振り分けられるようになった。  
 つまり取り残された僕たちは素直に引き下がるしか術は無いってわけ」  
 光子郎さんがこの時期を選んだ意味を慮るのは簡単です。  
 夏休みも中間考査も終えて全員の精神状態と生活サイクルが一番安定しているからに違いありません。そしてこれから校外学習や運動会、文化祭と気を紛らわすにはもってこいの大きな学校行事を控えているのです。これ以上ないタイミングと言えましょう。  
 子供達にとっては。  
 では光子郎さん、我々デジモンは……特に長く封印されていた我々古代種はどうすればいいのでしょうか。その人と出会うためだけに眠っていた我々は、大好きなパートナーと離れてDWで一体どう生きていけばいいのですか。  
 「……あなたもパートナーと同じで意気地が無いんですね」  
 「賢ちゃんの事を侮辱する気か?」  
 虫がいきり立ちもせず、穏やかな声で返しました。  
 「愛情の練習相手?彼氏持ち?……望む所です。私は何があっても側に居る事を諦めませんよ。パートナーと一緒でしつこいですから」  
 「……しつこいって……せめて粘り強いとか言えよ」  
 「物分かりのいいあなたのパートナーと違って、京さんが案外粘着質なのは皆さんご存知です。……光子郎さんもね」  
 「賢ちゃんが諦めがいいなんて思うなよ」  
 私以上の物知り顔でにやりと笑い、彼は独り言を呟くように早口で言いました。  
 「賢ちゃんは執念深いんだ、良くも悪くも」  
 
 学校のチャイムが視聴覚室のスピーカーから深く遠く響いていました。  
 もうここでこのチャイムに一喜一憂する事もなくなるのでしょう。  
 「ホークモンは」  
 「なんですか」  
 「僕をDWに迎えにきたんじゃなかったのか?」  
 「行きたければどうぞご自由に。私はここで京さんを待ちます」  
 隣りでわざとらしい溜息が聞こえて、少し間を置き「同族嫌悪も甚だしいな」と呟き声が聞こえましたが聞こえないフリをしました。  
 分かっていますよ。私とあなたは同じなんでしょうね。パートナーが好きで好きで、後はどうでもいいんです。何にも興味が無い。だから私は一乗寺が嫌いだし、光子郎さんが妬ましくて仕方が無い。  
 でもそれも終わりです。  
 もうあの黄色のロッカーに収まる事は無いんですから。  
 意地でもここに留まる気はあります。もしも叶うなら是が非でも、どんな卑怯な事をしてでも、自分勝手と罵られようと、リアルワールドに残ろうとも出来ます。  
 でも多分私はそーゆー事はしないでしょう。何故なら、私がヒステリーを起こして困るのは誰あろう京さんだからです。大好きな光子郎さんから小言を言われるでしょう、心を許した一乗寺に長々と説得されるかもしれません。それが我慢ならないのです。  
 「何故神様は別れなど作られたのでしょうか、残酷です」  
 一人間の抜けたことを口から滑らせてはっと気が付いた時にはもう遅かりし、でした。  
 「ブイモンなら――――――もう一度逢うため、なんてクサく答えるな。多分」  
 「……現実主義のアルマジモンだったら『別れが無きゃみんな団子で暮らさなきゃならなくなって狭めーだぎゃ』ですかね」  
 「テイルモンとパタモンのコンビは、そうだな。『ばかじゃないの?』の一言で終わり」  
 くくく、と二匹で忍び笑いをしました。不思議とワームモンの物知り顔を憎たらしいとは思いません。  
 「あなたは?……あなたならなんと答えますか?」  
 私にしては珍しく彼に意見を求めました。彼にとってもそれは奇妙で不意を突かれた事だったのでしょう、呆気に取られてしばらく口を開きませんでした。しかし考え事をしていた振りを上手にして、彼は答えました。  
 「……愛の形の一つ?」  
 で、肝心のキミはセンチメンタルに答えを求めるだけ?ワームモンが“デジモン”の悪い声を出して冷やかすように言いました。  
 「私にとって別れとは、黄色のロッカーです」  
 「……その心は?」  
 「私を隠す砦であり、私と彼女の分岐点であり、閉じられ開かれるべき扉であり、光を垣間見る暗黒です」  
 「――――――詩人だね」  
 ワームモンの優しげな声に居心地の悪いものを感じながら、私は深呼吸をしました。自分の心の中の整理を、まさかこの虫に手伝ってもらう羽目になるとは思いもよりませんでしたから。  
 「さて、僕はDWに行くけど」  
 キミはどうする。ついに椅子から机、机からモニターの前まで辿り着いたワームモンがちらりと私を振り返り、礼儀のように言いました。  
 「行きますよ。……なにせ私はあなたを迎えに行って来いって連中に蹴り出されたんですから」  
 

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