「にょ〜、ちょっと狭いけど、まあまあかにょ。」
お風呂場に入って中を一瞥するなり、でじこは呟いた。
「ひとんちのお風呂でよく言うみゃ。」
後ろから声がかかる、みけだ。
でじこは今みけの所にとまりに来ていた。やっさんのせいでお風呂が壊れたのが主な原因だ。銭湯へ行くお金もなく、男二人+ゲマは今日はいいやなどと言っていたが、でじこが駄々をこねて結局こうなったのだ。
「にょ〜、お湯はちょっと熱いにょ。」
浴槽に手を突っ込んでかき回しながらでじこが言う。文句を言われようが全然意に介さないあたりが彼女らしい。
「そうかみゃ?みけはそれで普通だと思うみゃ。」
言いながら洗面器でお湯をすくなって自分にざばっとかける、次いでお湯をぱちゃぱちゃやってるでじこの背中にもかけた。
「ぅにょ〜!?あちゃちゃちゃっ!熱いにょ!!でじこを殺す気かにょ!?」
「そんなに熱いかみゃ〜?」
飛び上がるでじこを不思議そうに見つめてからみけは浴槽に体を沈めた。
「ふみゃ〜、いい気持ちみゃ。」
「よくそんな熱いのに入れるにょ〜。」
でじこが風呂のふちにひざで立ちしてあきれとも賞賛ともつかない言葉を送ってくる。
「熱くなきゃ、お風呂に入った気がしないみゃ。」
でじこに答えながら、みけの視線はでじこの顔を見ていなかった。
視線の先は首の下でおなかの上、つまり胸だ。
うさだほどは大きくないが、それでも傍から見てそれと分かるくらいには膨らんでいる。
「でじこは入らないのかみゃ?」
話し掛けるもどうにも胸が気になってそちらのほうにちらちら目をやる。
「うぅ…みけが入った後で水でも足すにょ……」
返答を聞きながら視線を自分の胸に戻し、内心ため息をつく。
微かに膨らんできてはいるが、今の所それ以上の成長の兆しは見られなかった。
でじこの胸に再び視線を走らせ、やはりため息をつく。どう比べても自分のほうが小さいようだ。
「さっきからどこ見てるにょ。というか、人の胸見てため息つくとはいい度胸にょ。」
勘違いしたでじこがちょっと不機嫌な表情になる。
「ち、ちがうみゃ、その……」
不機嫌になったことよりも見てたのを気づかれてたことにみけは慌てた。
「ただ単にみけより大きいなあと思っただけみゃ!」
言い訳を探そうとしたが、慌てたついでに既に本心までしゃべってしまっていた。
「大きい…かにょ?」
言われてでじこが自分の胸にぺたぺたと触る。
「そんなこと言われたのは初めてだにょ。言われてみればみけより大きいにょ。」
不思議そうに言いながらも、最後の一言がさらりとみけの胸をえぐる。
「でも、意外にょ〜。みけでもそういうことも気にするのかにょ。」
言葉の端に引っかかるものを感じはするが、でじこ相手にいちいち突っかかるのは完全に無駄であることをみけは知っていた。そもそもでじこはあれで普通のつもりなのだ。
「みゃ〜、でじこもりんなも成長してるからみゃ〜。最近気になってるんだみゃ。なにか秘訣があるのかみゃ?」
「秘訣…そんなこといわれてもにょ……」
でじこはちょっと考えるようなしぐさをし、みけの視線に気づいて少し赤くなった。
「ちょ、ちょっとどこみてるにょ!?」
「あ、ごめんみゃ。」
でじこにぺこりと謝り、ちょっとした沈黙が流れる。
「でも、みけだけ大きくならないのは嫌みゃ。本当になんか方法知らないかみゃ?」
「う〜ん………そう言われてもにょ〜。」
みけのいつになく真剣な態度にでじこが考え込んだ。
「知らないかみゃ…。」
みけはがっくりと肩を落とした。
「そう言えば……ひとつ聞いた方法があるにょ。」
でじこの声にみけが顔を上げる。
「誰かに揉んでもらうと大きくなるらしいとか聞いたことがあるにょ。」
「ほんとかみゃ!!?」
みけは身を乗り出してほとんどぶつかりそうなくらいでじこに顔を近づけた。
「ぜひやってほしいみゃ!おねがいするみゃ!」
「わ、わかったにょ…。」
冗談であったにもかかわらず、みけのあまりの勢いに知らぬ間にでじこは首を縦に振っていた。
「じゃあお願いするみゃ。」
そう言うと、浴槽に中腰になってでじこのほうに胸を突き出す。
「…んにょ〜。」
でじこはちょっと不満そうではあったがみけがあまりに乗り気なのと思わず承諾してしまったので仕方なしに自分の手をみけの胸の上に乗せる。
「それじゃ、やるにょ。」
でじこがみけのわずかに膨らんだ胸を両手でつかんでゆっくりもみだした。だいたい肩もみの要領だ。
「どんな感じかにょ?」
でじこがみけに聞く。
「わかんないみゃ。ちょっと変な感じがするだけみゃ。」
「そうかにょ。まぁ、しばらくしたら何か効いてくるかもしれないにょ。」
もみもみとでじこの手がみけの胸のところで動く。
『なんか生き物みたいみゃ』その手を見ながらみけはそう思った。
規則正しく動いてるかと思えば、揉み方が変わったり、わずかに場所をずらしてみたり、大きくもないみけの胸の上でうねっている。
みけはいつしかその変な生き物に見入っていた。
ぼーっとしているみけの顔に徐々に赤みがさしてきた。が、二人ともそれに気づかない。
「みけ、どうかにょ?」
「…ん、あぁ、よくわからないみゃ…」
「そうかにょ。力でも足りないのかにょ?」
みけのどこかぼーっとした答えを聞きながら、勝手に推測してでじこは揉む力を少しづつ増していく。
「…どうかにょ。」
「……なんか…わからない、みゃ…」
みけのぼーっとした返事はだんだん意識がとろんとしてきたことに原因があるのだが、でじこはいいかげんに返事していると解釈したのか不機嫌顔になった。
「ちゃんと返事してくれないなら、こうにょ。」
みけの胸のてっぺんをきゅっとつまむ。
「みゃぁっ!」
みけが驚いて声を上げた。
「な、なにするみゃ!」
振り返った顔が赤いのは恐らく恥ずかしさのためだけではないだろう。
「ちゃんと返事をしてほしいにょ。」
「わ、悪かったみゃ。」
みけが謝ったので、でじこは再び揉む作業をしようとしてふと気づいた。
さっきつまんだ胸の反対側、そのてっぺんに桜色の突起がぴんと立っている。
「みけ、ひょっとして気持ちいいかにょ?」
思わぬことを突然言われ、みけは言葉に詰まった。
「………な、何言ってるみゃ…!そんなわけないみゃ!」
慌てて否定する。しかし、でじこはなにかたくらんだとき特有の含みのある笑みを見せる。
「そうかにょ?」
「ひみゃっ!」
でじこの手がみけのぴんと立った突起を無造作につまんだ。
「でも、立ってるみたいだにょ。」
「そっ、そんなはずないみゃっ!でじこやめるみゃっ!」
またしても思わぬことを言われて、みけは恥ずかしさで真っ赤になった。
「じゃぁ、気のせいかにょ。」
でじこは言いながらつまんだそれをぐりぐりと転がす。
「ぁあ…ぅ…ん、でじこっ……やめ…」
「ふふ…きこえないにょ〜。」
面白いくらいにみけが反応するのを見て、でじこのなかの嗜虐心とかそういった類のものが頭をもたげてくる。
「さてさて、こっちも立ってるにょ〜。」
ぐりぐりぐりっと反対側の突起もいっしょに転がす。
「みゃぁっ!あ……あふぅ……みゃ……くぅ……や、やめるみゃぁっ……」
「みけって結構感じやすいんだにょ〜、知らなかったにょ。」
「そんなこと、ないみゃっ!」
「そうかにょ?じゃあ試してみるにょ。」
囁きながら、今度はみけの胸の突起につんつんと人指し指を軽く当てる。
「みゃ…ぅ、やめてみゃっ…、んく……」
「ふふ、効いてるみたいだにょ。これはどうにょ。」
押し当てた指でぐりぐりと押し込むように苛める。
「…ん…くぅぅ…はっ……、へ、へんなことはやめるみゃっ!……き、気持ちいいわけ、ないみゃ……」
「変なことってこんなことかにょ?」
でじこはちろっと舌を出すとみけの胸の突起の先端をぺろっと舐めた。
「みゃぁっ!…で、でじこっ、やめてみゃっ!」
「気持ちいいかにょ?」
でじこの問いに、またみけは口篭もった。
「ん〜、それじゃ、舐めちゃうにょ。」
きゅっと、みけの胸の突起にキスをし、口先に含んだまま何度かちろっと舌を当てる。
「ふぅぅっ…!、んみゃぁ……あぅ、やめて……みゃ…、全然…っ!気持ちよくなんてっ、ないみゃっ…」
でじこは答える代わりにみけのを甘噛みして先端を舐めた。舐めながらきゅっと吸う。
「ひみゃぁぁっ!んみゃぁぅっ!…ふぅぅぁぁぁ……!くぅ…ぅんぅ…」
敏感になっている先端を責められ、みけはこらえきれずに声を上げる。
でじこはその様子を見ながらなんども舌を往復させ執拗に責めた。
「でじこっ…わかったみゃっ!気持ちいいみゃっ…だからっ…ふぁっ…」
眼の端に涙を浮かべながら見つめるその顔はいつも見る顔とはまったく違うが、同姓のでじこにさえとても魅力的だった。
だが、それは逆にでじこの嗜虐心を大いに煽った。責めはとまらず、それどころか激しさを増す。
「ぁふっ…はぁぁっ……ふみゃぁ……ほ、ほんとにぃっ…やめ…やめて…みゃ」
みけの懇願も怪しい興奮に駆られた今のでじこには届かない。
「みゃっ……ふみゃっ……くふっ……あふっ……くぁぁ……」
「ほんとに胸だけでイっちゃうかにょ?」
みけのほうが、なにか言おうとはするものの口を開くとただの喘ぎに化けてしまっていた。
「ふふ、限界かにょ?」
口を離して聞いてから最後の人押しとばかりに舐め上げた。
「はぁっ、んんみゃ……ふぅぅぅ……ぁ……ふ、ふみゃぁっ……」
大きな声を上げたりはしなかったもののびくびくとみけの体が震えた。
「いっちゃったかにょ。ここだけでいっちゃうなんてそんなに気持ちいのかにょ?」
尋ねながらもでじこはいまだ高ぶりが収まらない様子で自身の硬くなっているそれに手を伸ばし、自分でぎゅっと思いっきり抓る。
「はぅ、…ん…んん。」
あまりの快感に声を漏らすが指は止まらず二度、三度と繰り返す。
「ん…ふぅっ……!」
数回目ででじこは達し、震えるような吐息をついた。
「…はぁ、はぁ、はぁ、…あたしもいっちゃったにょ………。」
誰にとはなく呟く。
「みけ…、ごめんにょ…。」
達したことで奇妙な興奮から開放されたのか、でじこがみけに謝った。
「でじこ、ひどいみゃ。」
俯いたまま泣いているようにも見えたのででじこは大いに慌てた。
「ほ、本当にごめんにょ。えと、そんなつもりはなくて、その。」
どうにか言うべき事を混乱した頭で探す。
「あ、む、胸は心配する必要はないにょ、うさだもでじこくらいの年にはみけくらいの大きさとか言ってたし……ってでじこは一体何を言って…」
「ホントかみゃ!?」
「ひゃぁぁっ!!?」
みけにドアップで迫られてでじこはきれいに後ろにひっくりこけた。
「み、みみ、みけ!し、心臓によくないにょ。」
「そんな事はどうでも言いみゃ!さっきの本当かみゃ?」
さっき落ち込んでいるように見えたのは目の錯覚だったのか、元気いっぱいのいつものみけだった。
「本人に聞いたから間違いないにょ。……それはそうと、何でそんなにこだわるのかにょ?」
でじこは半分あきれ、半分安堵しながら気になってたことを聞いてみた。
「胸の小さい大人になるなってとうちゃんから言われてるんだみゃ!」
「にょ?胸の小さい?」
でじこが疑問符を浮かべる。
「みけは約束したんだみゃ!だから絶対果たさなきゃならないみゃ!」
「ひょっとして、胸が狭い…かにょ?」
「そうだったかもしれないみゃ、でも約束は約束みゃ!」
それって全然意味が違う、そういっても聞きそうになかったので言わずにほっておくことにする。と、
「あ、ここが開いているゲマ。」
声がして窓が開き、何かが入ってきた。
見なれた黄色い丸い物体、でじこのお目付け役のゲマだ。
恐らくはでじこを迎えに入ったもののドアも開かず誰も出ないので窓から侵入を試みたのだろう。
入ってきて、眼窩に広がる光景に完全に凍りつく。
「いやぁ、ま、間違ったゲマ。慣れない家はこれだから参ったものゲマねぇ。どうも失礼したゲマ。」
「さりげなくを装ってもだめにょ!目からビームっ!!」
「ゲマぁぁっ!!」
招き猫商店街の夜の空に、星がひとつ追加で増えた。