ここは まねきねこ商店街  
お昼時を少しすぎたばかりの すがすがしい午後のひと時…  
 
「だぁああーっはっはっはっは〜!!!」  
にぎやかではあるが、鬱陶しさを感じさせない街の一角に  
不似合いな下品な笑い声が轟く。  
声の主はビン底眼鏡にタラコ唇、趣味の悪い紫色のハッピを羽織っている。  
成金不動産のクマキン社長だ。なにやら大事そうに桐の箱を抱えている。  
 
「やっぱり、俺様ぐらいになると 茶碗一つとっても高級品じゃないといけねぇよなあ!  
骨董屋のおやじは使わないで飾っとけなんて言ってたけど  
俺様がそんなみみっちい真似するかってんだ!そこらの貧乏人と一緒にすんなよなぁ!!」  
 
誰からも聞かれてないのに、大声で独り言を言う。  
クマキンの趣味は、とにかく高級な物を買いあさることだ。  
もっとも コレクションのほとんどは 高いだけで使い道のないものばかりなのだが…  
どうやら あの桐の箱の中身は骨董価値のある茶碗のようだ。  
それを自慢したくてしたくてしょうがないのだろう。  
 
しかし 通行人や店の従業員たちは、羨ましがるどころか馬鹿にしきった眼でクマキンを見ている。  
そんなことには全く気付かないクマキンは ご機嫌な足取りで自分の店への帰路をたどっていく。  
 
 
一方その頃…  
 
「みゃみゃ〜!!こんないいお天気の日には家でじっとしてるなんてもったいないみゃ!!  
運動好きの血が騒ぐみゃ〜!とりあえず、商店街を10週位してこようかみゃ!?」  
 
その叫び声が終わるか終わらないかのうちに 巨大ダコの看板の店から赤毛の女の子が飛び出してきた。  
商店街に唯一の魚屋さんを若干10歳にして一人で切り盛りする  
その子の名前は ミ・ケ・キャラット。通称みけ。  
竹を割ったような性格で、作り物じゃない本物の明るさは見ているだけで元気を貰える。  
でも、暴走っぷりが激しいのが玉にキズ。今だって 短いスカートを気にもせずに全力疾走している。  
女の子なんだから、そうゆうことにも気を向けようよ…  
だって 少々男の子っぽいところもあるけど、動き回って満足そうにしている笑顔は   
間違いなく美少女そのものなのだから…  
 
だが…  
 
この明るく屈託のない少女の運命は 今まさに狂おうとしていた。  
 
「みゃみゃみゃ〜!!!風みゃ!私は風になるみゃあぁぁ!!」  
全く勢いを衰えさせないまま、商店街4週目に入ろうとするみけ。  
そんなみけの事を、みんな暖かな眼で見守っている。やはりみけは誰からも愛されているようだ。  
「まだまだみゃ〜!!!!・・・みゃあっ!?」  
 
みけが突然悲鳴をあげる。  
彼女の目に曲がり角を曲がってくるクマキンの姿が見えたからだ。  
「どいて どいてみゃああぁぁぁぁ!!!!」  
みけの大声にようやくクマキンが気付いた。  
「何だ…?・・・うっ!?‥うわぁぁあああっ!!!」  
 
 
クマキンの持っていた桐の箱が宙を舞う。  
そして…  
 
「いたたたみゃ…」  
クマキンとぶつかり体格差の違いで大きくふっとばされたみけは  
したたかに腰をぶつけてしまった。  
「あのぉ‥クマキンさん すまないみゃ…大丈夫だった…」  
 
「あああぁぁっつ!?!?!?」  
クマキンがいきなり悲鳴のような声をあげたので、みけの方がびっくりしてしまった。  
「おまぇぇえ!!どうしてくれるんだ!?俺様の茶碗が粉々じゃねえかっ!!」  
見ると 確かに砕け散った陶器の欠片があたりに散らばっている。  
「ご‥ごめんなさいみゃ!申し訳ないみゃ!  
その茶碗はみけが責任をもって弁償させてもらうみゃ」  
みけは心の底から頭を下げた。でじこ達からクマキンは悪党だと聞いていたけど  
この場合 みけが100%悪い。  
それに、壊れたものが茶碗くらいで良かった…  
と、目玉が飛び出るような額を知らないみけはそう思っていた。  
「ふざけんじゃねえ!!てめえみたいなガキに払える金じゃあねんだよっ!!」  
クマキンが怒鳴る。そして、電卓に値段を表示させ、みけに見せた。  
「いち…じゅう…ひゃく…せん…まん…じゅうまん…ひゃくまん‥」  
みけは まだまだゼロの桁の続く電卓を見て、ようやく事の重大さに気付いた。  
「どうだ?払えねえんだろ?じゃあどうする?どうするよ!?」  
さっきまで怒っていたクマキンだが、今はみけを追い詰めて嬉嬉としているように見える。  
 
とうとう みけはポロポロ泣き出してしまう。  
やっぱり、子供には出来る事と出来ない事がある。  
でも、いざ出来ない事があった時に頼りになる両親がみけのそばにはいないのだ。  
「おい。もういいじゃないか。みけちゃんを許してやれよ」  
商店街の面子がクマキンに向かって非難を浴びせる。  
「うるせぇな!!そんなに言うならお前らが変わりに弁償するか!?」  
反論をしたクマキンが さっきの電卓を持った腕を今度はみんなに見えるように突き出す。  
そこに並んでいたゼロの数は 一般常識からかけ離れた多額のものだった。  
すっかり勢いの衰えた商店街の人々は  
みけに申し訳なさそうにしながらも 次第にその場から散っていった。  
こういう事に一時の善意で首を突っ込んで  
自分や家族の暮らしをめちゃくちゃにする訳にはいかない。  
彼らを責めることなんて誰にもできないのだ。  
 
そして とうとうその場には、みけとクマキンだけが残された。  
 
そこにでじこが通りかかった。  
「みけ、何でないてるにょ?」  
でじこはちらりとクマキンを見た。  
「みけを泣かせたにょ! 目からビーム!!!」  
クマキンはでじこの目からビームを受けどこかに逃げた。  
 
ここでクマキンが誰もが予想したであろう)w台詞を言った。  
「しょおがねえなぁ!俺様は言っても始らないことを  
いつまでもグジグジ言うのは好きじゃねぇ。  
ふふふっ…その小便臭い身体で勘弁してやるよ」  
クマキンがセクハラオヤジの本性丸出しでみけの肩に腕をまわす。  
ところが…  
「だめみゃっ!!それだけは絶対にできないみゃ!!こんなこと言えた立場じゃないのは分かってるけど   
それだけは絶対しちゃいけないって母ちゃんから言われてるんだみゃ!!!」  
みけの目の色が変わる。  
クマキンは少し圧倒されてニ、三歩後ずさりした。  
「で‥できないって おまえ‥責任取るって‥言ったじゃないか…」  
情けないことに さっきまでの勢いはすっかり衰えている。  
「それ以外の事だったら何でも聞くみゃ!!  
だから…だからお願いだみゃぁあああああ!!!!」  
みけが必死になってクマキンをポカポカ叩く。  
「いてててて…!分かった!分かったよ!!  
身体を差し出せとは言わねぇよ!!」  
そう言うとみけは ようやく少し落ち着いた。  
(ったく‥なんてガキだ…でも他にこいつの出来そうなことといったら…)  
・・・その時 クマキンの頭にいいアイディアが閃いた。  
タラコ唇をニヤリと歪めてみけの方を見る。  
「おまえ、さっき何でもするって言ったよな」  
「みゃ!船乗りに二言はないみゃ!」  
しめたとばかりにクマキンがほくそ笑む。  
 
「それじゃあなぁ…お前のそのオヤジ趣味にストライクな  
制服をブルセラショップに売っぱらって貰おうか!!!」  
 
「ブルセラショップ…かみゃ?」  
みけはどこかで聞き覚えのある店名の記憶をたどっていた。  
「ああっ!思い出したみゃ!」  
 
まねきねこ商店街にも一応メインストリートというものがある。 おもちゃんや刈巣魔があるのがそのあたりだ。  
そのメインストリートから少し外れた寂しい路地裏にポツンと  
「ブルセラショップ」と書かれた看板の、怪しい店がある事をみけは思い出したのだった。  
しかし何の店かは分からなかったし、あんころ堂のじっちゃとばっちゃからは  
絶対に近づいてはいけないと言われていた。  
「私の服を売るって…ブルセラショップっていうのは古着屋さんなのかみゃ?」  
なにも知らないみけは間の抜けた質問をする。  
「まあ 大よそ似て非なるものと言っておきますけど←憂鈴ちゃんゴメン  
おまえ いっつも同じ服着てるよなぁ?匂いもさぞかし…」  
そう言ってクマキンはみけの制服の襟元あたりに鼻を近づける。  
「みゃ!?何してるみゃ!?」  
赤くなるみけ。だがクマキンは気にも留めなかった。  
 
クマキンはしばらく制服の匂いを嗅いだ後不思議そうに首をひねった。  
「おかしいなぁ…大して匂いなんかしやしねえ…おい!どういう事だ!?」  
「だって みけ達は同じ服を何着も持ってるみゃ。  
大人の都合であまり違う服は着れないけど、洗濯はこまめにやってるみゃ!」  
誇らしげに話すみけ。だがクマキンにしてみれば腹立たしくてしょうがなかった。  
「洗濯だぁ…?そんなことしたら意味ねえだろーがっ!!  
おまえの汗とシミとプラスαが染み付いてなきゃ価値が下がるんだぞ!!」  
キョトンとするみけ。  
「なっ‥何でみゃ?綺麗な方が価値があるんじゃないのかみゃ?  
って言うより みけの服なんかじゃ弁償代には遠く及ばないと思うみゃ〜」  
みけはそのままうな垂れてしまう。  
「なぁに その価値を上げるためには  
お前の汗とシミとプラスαをしっかりと染み込ませればいいのさ」  
 
????だから なんでそうなるみゃ?訳分からんみゃ????  
 
「よし!!決めたっ!!今日から2週間 お前はずっとその服を着ていろ。  
毎日運動しまくって汗を沢山流せ!!体動かすの好きなんだろ?  
そして 風呂には絶対入っちゃいけねえ。分かったな!!」  
 
 
 
 

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