「さ………よぅく見て。わたしの目を………」  
 
ルサルカの大きな瞳が、影に縫い繕われた少女を覗き込んだ。  
ぱっちりとしていて、睫が長くて、綺麗な目だと思っていた。そう、この日までは。  
今、自分を映すその一対の眼球は、美しい色をしながらも、酷く冷たい。  
暗く淀んだ印象さえも覚えるそれは、瞳孔を僅かに動かしながら、  
「忘れていた何か」を自分の中からずるりと、引っ張り出そうとしていた。  
 
「あ、あああ、ああ…」  
 
思い出したくない。思い出させないで――――――でも、何を?  
香純は、ルサルカの青い目に映りこんだ自身に問いかけた。  
ゆっくりと、ゆっくりと、浮き上がってくる。花開いていく。  
その花の中心に、自分が忘れていた、知りたくもない記憶がある事を、香純は本能的に悟っていた。  
そして――――――  
 
「あ、ああ、あああ………ああああああ!」  
 
眼前に、赤い花が咲いた。ああ、これは血の色だ、と頭の中ではやけに冷静に呟く自分がいる。  
フラッシュバック。香純は、あの日の夜の事を思い出していた。  
あの忌まわしき「首狩り事件」の終幕。公園で起こった禍々しき惨劇。  
足元に呆気なく転がる死も、肉も、骨も、血の色さえも、鮮明に。  
記憶の断片でしかないというのに、香純にとってそれは、  
今自分の目の前で繰り広げられている恐怖劇のように感じられた。  
逃げ出そうともがく。けれども、紐状に伸びた影は身動きを取れば取るほどにきつく体を締め上げ、  
呼吸すらも奪われそうな感覚に陥った。  
 
「嘘ッ…こんなの嘘…イヤッ、嫌ぁっ…、嫌ぁぁぁぁぁぁぁ!!」  
 
屋上一帯に悲鳴が高らかに響き渡り、そして消えた。  
大きく見開かれた目には、既に絶望の色だけが映るのみで、  
このまま息を、心臓を止めてしまえたら、と心底思った。――――しかし。  
 
「あ、う、あぁ…ッ………」  
「ダーメ。カスミ、今、気を失いそうだったでしょ?させないよ、そんな事。  
 可哀相なカスミちゃんと、私…まだまだ遊びたいんだもの」  
「ルサ……ルカぁ…っ……」  
 
こんなの嫌。こんなの酷い。こんなのってない。  
今、目の前にある真実全てを受け入れる事も出来ず、香純はただただ目を見開いて、  
ぽろぽろと大粒の涙を零してみせた。  
明るくて皆の人気者だったルサルカ。彼女は、学校の皆を殺そうとしている殺人犯…だと思っていた。  
でも、本当は違った。…いや、確かに彼女からは得体の知れない「何か」を感じる。  
しかし、今現在頭の中を占めているのは、そんな事ではなくて。  
 
(蓮――――…っ…)  
 
―――ごめん、ごめんね。結局また、あんたに庇われてた。守られてた。  
絶望の色に染まりかけた心の片隅で、小さく呟く。  
自分が、首狩り魔だったのだ。  
沢山の人を殺し、目茶苦茶に解体し、そして何も気付かず悠々と生きていたのだ。  
きっと、蓮は知っていたのだろう――――知っていて、守ってくれていたのだ。  
真実を目の当たりにして壊れてしまわないように。  
その事実に辿り着いた途端に降り注いだのは、悔恨でもなく嬉々でもなく、やはり何度目かの絶望に過ぎなかった。  
 
零れ落ちた涙が頬を伝って、コンクリートに染みを作っていく。  
しかし、それを目の当たりにする事は無かった…ずるり、と蠢くように影がそれを覆い隠したからだ。  
何の影かなど、考えるまでもなかった。  
香純はびくりと肩を震わせて、妖艶な笑みを浮かべる少女を見上げた。  
 
「可哀相なカスミ…」  
 
ねっとりと絡みつくような、甘い囁き。しかし、その表情も声色も、可哀相と思っているとは到底考えられなかった。  
それも本人は承知しているらしい。  
くすくす、と笑いながら、ルサルカは香純の目線に合わせる様に、しゃがみ込んで言った。  
 
「辛かった?苦しかった?そうだよね、だって知らないうちに人を殺してたんだもの…。  
 しかも、大好きな幼馴染のレンにまで知られちゃってたなんて。凄く…可哀相」  
「…や……来な、いで」  
「でもね、大丈夫………私、カスミの事大好きよ?だって、カスミ可愛いんだもの。  
 だから、心配しないで」  
 
的を射ないルサルカの言葉が、殊更に香純の恐怖と不安を煽り立てた。  
それに反応するかのように、香純を拘束していた影が、きゅっと軽く彼女の体を締める。  
再び、ルサルカの青い瞳が、カスミを大きく映し込んだ。  
 
「――――何も考えられないように、ドロドロに溶かしてあげるから」  
 
ずるりと、再び影が動き出したのを、香純は全身で感じていた。  
 
「や…っ……嫌ぁ!」  
「ふふっ…。ホント、カスミって大好き。そういう表情とか、凄く好きよ」  
「ひいぃっ!」  
 
ずっ、ずっ、と黒い触手状の影が、ゆっくりと香純の体を制服の上から撫で上げた。  
今まで体感した事の無い、奇妙な動きだった。  
全身を擽られている感覚。そこに更に嫌悪感がプラスされて、体はおぞましさで戦慄いた。  
首を、足を、腕を、胸を、背中を、そして水色の下着に覆われた秘部を、  
黒い色をした影が、生き物の動きで這って行く。  
 
「嫌ぁぁぁっ」  
 
先ほどのように、影が制服の下に潜り込んで、揉みしだくように乳房を覆う。  
先端で突起を舐め上げるように弄り、胴は円を描くように、ふっくらとした双頭の膨らみを拘束した。  
強く絞られた乳房が、影の動きでぷるりと震える。  
その感触に、香純は生理的嫌悪から、「ひぃ」とまた一つ声にならない声を上げる。  
嫌で嫌で仕方がない。しかし、やはり体は素直に反応を示さずにはいられないようだった。  
しつこく影が乳首を弄る度に、固さが増して、勃ち上がっていくのがわかる。  
びくびくと体を震わせながらも、香純は一生懸命に目を逸らせてみせた。  
 
「あれぇ?カスミ、知らん振りしちゃうの?…それって、もっとして、って事?」  
「ちが―――――んひぃっ!?」  
「んふふっ、やーっぱり…ここも、もっと弄って欲しいんだよね?」  
「嫌…!」  
 
ルサルカが笑みを浮かべた途端に、影の二本がずるりと香純の腹を辿り、スカートを捲り上げた。  
水色の下着が更に露わになり、影は隙間からするりと簡単に侵入する。  
先ほどの続き、と言わんばかりに、影の一本はその細い先端で、花弁を下から上に舐め上げてみせた。  
 
「ひっ!やっ!」  
 
そして、もう一本は襞と入口を交互になぞる。  
 
「やぁぁっ」  
 
乳房、乳首、花弁、襞、入口――――5箇所を同時に嬲られて、香純の体にぞくぞくとした電気が駆け抜けた。  
今、自分の体は得体の知れない影に弄(まさぐ)られ、蹂躙されている。  
その事実が嫌で嫌で仕方がないはずだというのに、全身は拒否するどころか、  
段々と解されて開かされていくように、力が抜けていくような感覚だった。  
 
下着の下の二本の影が、段々と溢れ出す香純の蜜を帯びていく。  
その為か、擦り合う動作と合わせて、辺りには「くちゅ、くちゅっ」という水音が聞こえ始めた。  
 
「あは…カスミ、濡れちゃってるの?やっぱり気持ち良いんじゃない…素直になったら?」  
「違っ…あ、んぁぁっ」  
「うーん…イジメ足りないのかな?」  
「!?」  
 
小首を傾げるルサルカが瞳に映ったと同時に、ルサルカの足元から影が更に三本伸びてくる。  
香純はひゅっと息を飲んだ。ぐにぐにとうねるような動きを見せる影。  
それが、彼女の左足を螺旋状に伝って、下着に纏わりついたからだ―――――。  
 
「嫌ぁっ!きもちわるい…っ…!」  
「キモチイイの間違いでしょ?」  
「ひ……」  
 
水色の下着の下を潜り、影はするりと香純のショーツを引っ張るように持ち上げる。  
まるで、遊んでいるようにも見えた。強く引っ張ったり、時には緩めたりと、  
影が力を加減する度に、香純の柔らかい尻や腿の肉へと紐状になった布が食い込んでいく。  
そして―――――とうとう、彼女の下肢を包んでいたそれは、本当の意味で「ただの布」へと成り果てた。  
 
ピッ、ビリィィィィッ!  
「きゃあああぁっ!?」  
 
影が無理矢理に下着を引っ張ると、それはいとも簡単に破れ、地面へと落ちた。  
香純は露わになった自分の秘部を隠そうと躍起になって手足を動かすが、  
それは別の影の抑制によって意味が成される事は無い。  
手は頭上で纏め上げられ、足は二本の触手によって開かされ、蜜にまみれた花弁と入口が夜風に晒される。  
それを間近で見ていたルサルカは、高揚する感覚を理性で抑えながら、  
我慢しきれないと言わんばかりに、ニタァと笑って、小さく舌なめずりをした。  
 
「本当…ぞくぞくする…。カスミ、処女だよね?  
 私、『そういうの』って凄く大好き…好きな人がいる女の子が、恐怖に打ち震えながら目の前で…」  
「ルサ、ル…」  
「目の前で……絶望しながら犯されるのって―――――…!」  
 
頬を紅潮させながら、ルサルカはまるで絶頂に達する時のように、ぶるりと体を震わせた。  
嬉しくて嬉しくて堪らない。全身でそれを伝えるかのように。  
しかし、その一方で香純には、絶望以外の何も訪れはしない。  
ルサルカの口走った一言で、これから「何」が自分を襲うのか悟ったからだ。  
香純は、自分の顔の丁度横で頭を擡げていた影を見て、酷く狼狽した。  
 
「やだ……嫌あぁぁぁっ!はな…放してぇっ」  
「ふふっ……あははははっ」  
「ルサルカぁっ!こんなの…こんなの、やめてよっ!放して、放してぇっ」  
「ふふ、私、そういうのもだーいすき。そうやって抵抗して、抵抗して、もがいて、足掻いて…  
 最後に『もう逃げ道なんてないんだ』って絶望した時の顔とか、凄く―――ゾクゾクしちゃう」  
 
そう言って、ルサルカは五歩、香純から遠ざかった。  
まるで、自分は被害被りたくないと言わんばかりの、とどのつまりは避難活動。  
赤い髪が、風に靡いて僅かにフェンスを掠る。  
その鉄網に白い指を絡ませながら、ルサルカは妖艶に笑んで言った。  
 
「心配しないで。見捨てたりなんてしないわ。  
 ちゃあんと最後まで見ててあげる。絶望して、イカされて、諦めて溶かされちゃうまで…私が見ててあげるからね、カスミ」  
「あ…あぁぁ………」  
「だから、ちゃあんと…楽しませてね」  
 
そう言って、ルサルカはゆっくりと手を持ち上げて、その細い指をパチンと鳴らしてみせた。  
 
ルサルカの足元から香純のいる場所までは、異常な程に影が伸びていた。  
まるで、香純自身がすっぽりと包まれてしまうような錯覚を覚える程にそれは大きく、  
そこから触手状の影がいくつも手を伸ばしてくる。  
まず、邪魔と言わんばかりに、スカーフが外された。  
そして、下着のように破り捨ててしまおうと考えたのか、影の一つが制服の袖をくいくいと引っ張るが、  
冬服の素材故か、うまく亀裂が走る事は無い。  
すると、早々に諦めたのか――――今度は制服の裾を鎖骨の下あたりまで無理矢理に捲り上げ、  
拘束された乳房を夜風に晒し出した。  
 
「ひぃっ……」  
 
再び、幾つもの影が同時に動き始める。  
先ほど入口をたっぷりと撫で上げていた影が、するりと這い上がって  
ピンと勃ち上がった乳房の先端に、自分の頭を擦りつけ始めた。  
香純の蜜にたっぷりまみれたその影は、突起に愛液を塗り込むように、丁寧に舐め上げ、愛撫していく。  
こりこりと色々な方向へと撫で回す度に、香純はぴくんぴくんと全身を痙攣させた。  
 
「嫌っ…い、あぁ、んぁっ…!!」  
 
そして、何も乳房を弄り回すのは、突起で遊ぶその一つだけでは無い。  
乳房の形をくっきりと見せるようにして締め上げていた影も、ずるり、ずるりと振動を与えながら、  
また別の影がぷるぷると両乳房を突き回す。  
ただ、胸を愛撫されているだけだというのに、香純は頭がぼうっと霞んでいくような感覚を悟った。  
 
「ひぃ、い、んんっ…あぁ」  
 
香純は、自分を弄る影が、ただの柔らかい棒状の「何か」だと感じていた。  
言うならば、骨の無い指。もしくは、伸縮自在の魚肉ソーセージにも似たその感触。  
撫で回し、擦り付け、縛り上げ―――要は、それだけ耐え続けていれば、終わりが来るのだと信じていた。  
…だが。  
 
「ひ―――――……!?」  
 
ちゅぱ、と まるで赤ん坊が指を吸うような音と共に、香純の頭の中に電撃が走る。  
そう…吸ったのだ。何かが、自分の乳首を。  
その「何か」など考えるまでも無かったが、香純は決して認めたくは無かった。  
それを認めてしまったならば、自分にこれから降りかかるであろう行為の数々に耐えうる自信が、  
決して無かったからだ――――――。  
 
ちゅ、じゅっ、ちゅぅぅぅぅぅっ  
 
「んあぁぁぁぁぁっ!」  
 
影に勢い良く乳首にキスされ、吸い上げられ、香純は耐え切れず嬌声を上げた。  
愛液は夜風でとうに乾いてしまっているはずなのに、まるで唾液を絡ませたような粘着質の「何か」が、  
吸い上げられる際に突起に纏わりついたのを香純は感じ取る。  
影から分泌された、謎の液体。それはだらだらと、ぱっくりと開いた影の先端からだらしなく零れ落ち、  
香純の乳房を伝って腹まで零れ落ちた。  
 
「嫌ぁっ…やめてええ!」  
 
拒絶したところで、事態は何一つ変化しなかった。  
それどころか、その態度が余計にルサルカに火をつけたのか、彼女が笑みを濃くする度に、  
香純に施される影の動きが強く、激しくなっていく。  
突起に吸い付いていた影も、強弱付けて振動を与え始め、しっかりと拘束された彼女の体の中で、  
二つの膨らみだけがやけに激しく動かされていた。  
 
何も、影は乳房だけに纏わりついているわけではない。  
香純の下半身に集まっていたいくつもの影は、まるで「お預け」をくらったように、  
耐えられないと言わんばかりにぶるぶると震えて「良し」を待つ。  
突起や乳房への愛撫で、気付けば蕾はしっかりと愛液を溢れさせていた。  
それを早く味わいたいと、影は頭を直前まで近付けて、自身を痙攣させる。  
それに気がついたのか、遠巻きに眺めていたルサルカは、ふっと一つ笑みを浮かべて、  
合図のように何かを一つ、呟いた。――――すると。  
 
――――じゅるっ、じゅるるるっ、ちゅぅぅぅっ  
「!?ひっ…やぁぁぁぁんっ、あぁ、あああああ――――っ!!」  
 
頭の中が、一瞬の内に白くなるのを感じた。  
突然の刺激に、香純はびくんびくんと一際大きく体を痙攣させて、背を仰け反らせる。  
何の前触れも無く施された絶頂に、香純は呆然と虚空を見上げていた。  
 
その間にも、香純の秘部には何本もの影が群がっていた。  
どれもこれもが乳首に纏わりついていた影のように口をぱっくりと開けて、  
襞や入口に溢れていた愛液を飲み干そうと、今も強い力で吸い上げ続けている。  
その度に、数秒置きに自分の体がしなり、震えるのを香純は悟っていた。  
それと同時に、何度も頭の中に白い光がスパークする。  
狂いそうな快楽と、強制的に駆け上がらせられる絶頂に、香純は口の端から唾液を零しながら、  
抑える事も出来ずに何度も声を上げた。  
 
「ひいぃぃぃっ!嫌あぁっ!やだぁっ…これやだあぁぁぁっ!はぁんっ」  
「ふふっ…気持ちいい?その子達…。中に入れたら、もーっと気持ち良いわよ?」  
「やっ……!やだぁぁっ!そんなのっ、無理ぃぃっ」  
 
そして、愛液の量が物足りなくなったのか、群がっていた中の影の一つが、  
するりと僅かに動いてみせた。擡げた頭の先にあるのは、ピンと姿を見せていた、小さな芽。  
影は知っていた。どうすれば人間の雌に手っ取り早く凄まじいまでの快感を与え、  
蜜壷から蜜をもっと溢れさせる事が出来るかを。  
先ほどのように影はその口を開け―――――――  
 
「ひぃあぁぁぁぁぁぁっ!!」  
 
唾液のように口から粘液を滴らせながら、その芽に強く吸い付いた。  
 
白い喉が思い切り反らされて、香純の半開きの口から声にならない声が上がる。  
息もままならない刺激。感覚。自分が上を向いているのか下を向いているのかすらもわからない。  
噛み付くように吸われたその部分は、女にとっての急所の一つと言っても過言でないかもしれない。  
鍛えようにも鍛えられない、柔らかな襞と薄い皮に包まれた肉芽。  
それが今、一本の影によって掻き分けられ、無理矢理に剥かれ、舐め上げるように吸われ続けている。  
先ほどの、触手の群れに施された快楽などの比では無かった。  
虚空を見つめながら、荒い呼吸の中で香純は自分の行く先が真っ暗である事を知る。  
あの、理性の箍など存在はしない、有り得ない動きをする触手達。  
あれらが、自分の「中」を求めたなら――――自分はきっと戻って来る事が出来ないところまで壊れてしまうだろうと。  
そう考えると、物凄い勢いで恐怖の渦が全身をかき乱し始めた。  
 
―――怖い。あんなのに、これ以上触られたら。入ってこられたら、死んでしまう。  
 
質量の問題ではない。精神そのものが、あの黒い影に侵され、犯される予感。  
それが香純の恐怖を更に煽り立て、危険の二文字を強調していく。  
逃げなくちゃ。逃げなくちゃいけない。  
もがいて、もがいて、香純は無理矢理に影の拘束を解こうとするが、  
やはり動けば動くほどにその呪縛は強くなり、影達の愛撫は激しくなる一方だった。  
 
「往生際が悪いわよう?カスミちゃん…」  
「ルサルカぁっ!お願いだから―――お願いだから、助けて!許してぇ!」  
「ん?んんっ?許す?―――何言ってるの、カスミってば。  
 私、カスミに対して怒ってるわけでも、カスミに『許さなきゃいけない』何かをされたわけでもないわよ?  
 言ったじゃない、私。カスミの事大好きって。  
 怖い事も、辛い事も、何も考えなくて良いようにしてあげるって――――」  
 
ルサルカは笑みを浮かべてそう言うだけで、その足を香純のもとへと運ぶわけでは決してなかった。  
寧ろ、もっとやれといわんばかりに、彼女の指が緩やかに空気を切り裂き、踊る。  
その仕草はまるで、音楽に合わせて指揮棒を振っているようでもある。  
その音楽は―――――  
 
――――じゅるるっ、じゅうっ、ちゅうぅぅっ!  
 
「んん――――ッ!!」  
「あははっ!イイ顔…凄く好きよ、ゾクゾクしちゃった…。  
 もっともっと、その顔見せてね。涎垂れ流して、びくびく体震わせて、絶頂しちゃえ…」  
「ひいっ、ひいぃぃぃぃっ!」  
 
イッてもイッても繰り返される愛撫、吸引。もう息も出来ない位に飛び続けているのに、  
まだ愛液は枯れない上に、絶頂に果ては見えない。  
こうなると、最早影にイカされているのか、何もせずともイキっぱなし状態になっているのか、  
香純自身わからなくなっていた。ただ、頭の中が段々と快楽に漬け込まれ、真っ白になっていく感覚だけが、  
じわじわと襲ってくる。それがまた、僅かとなった香純の理性に恐怖を与えていた。  
 
ふと――――香純の虚ろな目に、ルサルカの姿が映りこんだ。  
額から幾筋も流れる汗が瞼を伝って目に入るが、その痛みにも最早鈍感になっていた。  
赤い髪の少女。その足元から、また影が伸びてくる。今までの影とは明らかに胴回りが違う、  
ルサルカによって意図的に作り出された、「儀式」の為の存在。  
香純は光を失いかけていた目を、途端に大きく見開いた。  
その太い影が、今から自分に「何」をするか、悟ってしまったからだ――――。  
 
「いや……」  
「うーん?どうしたのー、カスミ?」  
「嫌…いやぁ………っ…」  
 
涙で目が霞む。体が恐怖で震え、整った表情が苦痛と泣き顔に歪む。  
ずるり、ずるりと太い影はコンクリートを這いながら、ゆっくり香純の足元を目指して進んでくる。  
逃げようと香純は足を必死に動かすが、別の影によって開かされた足は、閉じる事すらも許されず、  
そんな風に足掻いている間に、とうとう影の「主」は、香純の真下へと辿り着いた。  
 
壊される。殺される。先ほどまでの行為ですら、ギリギリのところで理性を繋ぎとめていたというのに、  
あんなものが自分を貫くような事があれば――――――確実に、自分を失ってしまう。  
危惧しながらも、それを阻む術を香純は持ち合わせていなかった。  
「主」が来た事を切欠に、香純の秘部を覆い隠すように愛液を啜っていた群れも、  
肉芽を玩んでいた一本の影も、すうっとその体を引き、香純を拘束する影紐の一つになる。  
くぱあっと露わになった、愛液と影の粘液で濡れた割れ目に頬擦りするように、  
頭を持ち上げた太い影は、音を立ててその胴を入口へと擦り付け始めた。  
 
「ひゃああぁぁぁぁ―――――!?」  
 
スパーク。今度は、まるで反射するかのように、瞬間的に白い光が落ちてきた。  
その太さを別にしたならば、見た目は先ほどの影達と何ら代わり映えしない、その影。  
しかし、与えられる快感は明らかに、異常だった。  
つるりとした姿形でありながら、皮膚に触れた途端に、ぷつぷつとした突起のような感触がわかる。  
それが擦りつけられているのだから、さながら柔らかいブラシで入口を撫でられている感覚に近かった。  
これが、中に入ったならば―――――  
 
(ああ――――どうしてぇ……?)  
 
香純は、その瞬間を想像して、嫌悪するどころか奥底から愛液を染み出させた事を自覚した。  
本当に一瞬、その快楽を予感し、願ってしまったのだ。  
不可侵である、自らの神聖な奥。そこに、あの突起が入り込んで、その体を擦り付けたなら――――。  
 
先ほどの影の愛撫が前戯を表すのであれば、その行為は成功であると言えた。  
未だどんな男にも許される事の無かった体は、度重なる快楽の施しによって、  
確実に押し開かれ、調教され、はしたなく花が咲こうとしている。  
そう自覚してしまうと、後はもう堕ちて行くのみだった。  
あんなにも抵抗していた腕や足は、すっかりと影の成すがままとなり、  
紅潮した頬に、僅かな恍惚を含ませながら、香純は「主」の動きをごくりと喉を鳴らして見つめていた。  
 
存分にその身を擦り付けた影は、香純の愛液にまみれた頭を擡げて、自らを香純の割れ目から離す。  
しかし、それは行為の中断ではなく、言わば続行の合図。  
影はそっと頭を入口へと押し付け、ぶるりと一つその身を震わせて、僅かに香純の中へと自らを潜り込ませた。  
 
「!あ、あぁっ…あぁぁぁ…!?」  
 
まだ先端しか入っていないというのに、その奇妙な感覚に香純は身悶えた。  
無理矢理に開かされる痛みに、全身が硬直する。  
それを解きほぐすように、拘束している影が手を、足を、首を、乳房を撫でてくる為に、  
香純は痛みとも快感とも言えない感覚に囚われて、息を止める。  
その間にもずっ、ずっ、とお構いなしに「主」が香純の奥を目指して、その身を震わせながら動いていく。  
その動きがまたバイブのようで、びくんびくんと体を震わせながら、  
香純は呆然と、意味の無い声を上げ続けた。  
 
「あ…あぁあっ…ぶ、ぶるぶる、してるっ…!わた、わたしの中でぇっ…  
 影が、ぶるぶるってぇっ……!」  
「ふふっ…気持ち良いでしょ?処女なのに、カスミってば淫乱だったのね。  
 傷みよりも快楽が勝っちゃうなんて…素質、あるんじゃない?」  
「ああぁぁんっ!だ、だめぇっ、乳首噛まな、んぁぁぁっ!」  
「…聞こえてない、か」  
 
言葉で煽ってみれども、ルサルカの声は既に香純に届かない状況に突入しているようであった。  
目の前の快楽に浮かされ、犯され、自分を割り開く影だけに全ての神経が集中している。  
その影は、ルサルカの命令一つでどのようにも動くというのに――――。  
しかし、ルサルカは拗ねたような表情を見せながらも、どこか楽しそうだった。  
少しずつ、少しずつ、自分の思う通りの展開になってきている。  
――――大好きな大好きな、可愛いカスミ。可哀相なお姫様。  
明るくて元気で、皆に愛される純粋なこの娘を、どこまで壊せるのか。  
壊した先に、どんな彼女が残るのか。  
そして、そんな彼女の残り滓を、その幼馴染に突きつけたなら―――――  
それだけが今のルサルカを突き動かすたった一つの興味であり、  
つまりは、今、この場面においては、当初の目的など既にどうでも良くなり始めていた。  
 
 

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