泣いている声が聞こえる・・すすり泣く声が聞こえる・・・。  
生物が生存を許されない場所とだけ言っておく・・そこに白髪の少年が蹲っている・・。  
蹲って涙を流している。  
 
幼い少女が尋ねる。  
 
「どうしたの?アレン・・。」  
 
彼は弱い人間ではない・・  
寧ろずっと強い人間だ・・・人である限り決して勝つことができないもの・・  
それに彼は負けた・・・  
 
泣き崩れる彼はその問いには答えない・・・そのまま倒れて意識を失った・・。  
意識を失っている彼を幼い少女は連れていく・・。  
 
「アレンゲット〜♪」  
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
 
ここはどこだ?くすぐったい・・・首のあたりを柔らかいひどく湿った何かが駆け巡っている・・舌か?これは・・。  
 
「アレンおはよ〜♪」  
 
目を開けるとそこには少女の顔・・・ロード!?  
ロードは舌を僕の首筋に這わせながら僕の顔を見上げて僕に笑いかけた。  
 
「ロード!?」  
 
「キャハハハハ!」  
 
彼女の笑顔は胸の内を温かくはしない・・冷たい血液が心臓に集まっていくように感じる・・。  
やめろ!お前は怖い!僕に触るな!お前に触られているところが冷たく死んでいく・・。  
 
僕はロードを突き放すと一番遠い壁に逃れた、「わっ!」とだけ言い倒れたが何のダメージもなかったようで  
起き上がる・・。  
 
「何で泣いてたの?」  
 
子供が親に尋ねるような口調でロードは言った。  
 
「・・・お前には関係ない!」  
 
「辛いことがあったならボクが慰めてあげるよ〜♪アレン好きだから。」  
 
ここは牢屋かな?周りに鉄骨が大量に建てられて暗い・・だめだ・・おそらくロードの能力で作られた部屋・・・  
もう出られな・・・?出られない?なぜそんな風に思う?いつから僕はそんなに諦めが早くなったんだ。  
僕は確かにロードを怖いと思っていた、だが今までは恐怖に耐え戦えたはず。  
 
僕の体は震え、動かない・・ロードが近づいてくる、僕は逃げようとするが腰が抜けて動かない。  
 
なぜ僕はこんなに脅えているんだ?  
なぜ・・・・・  
 
「どうしたの〜アレン。」  
 
恐ろしさの余り目を閉じることもできず敵に脅え涙を流す・・いつから僕はこんなにも臆病になった?  
 
なぜ涙が止まらない・・。  
 
「不思議でしょ?力がみなぎってこないって言うかさ・・・心が弱くなった感じ?  
千年公に習ったんだ新しい魔術、この魔術はね対象者の精神力を吸い取って・・・」  
 
ロードが何か言っている・・何言っているか全然わからない、涙で視界がぼやける、自分がどこにいるかわからない。  
突然、僕の唇に柔らかい感触、湿ったロードの舌が僕の口の中に入ってきた。  
何だろう胸の奥が何かに侵食されていく・・自分の内側を破壊されたような感覚。  
視界が闇におおわれていく・・・・・。  
 
視界が完全に闇におおわれる前に僕は確かに見た、見たんだ自分を  
あれは完全に僕だ、髪は黒いが間違いなく僕だ!  
もう・・何もかもどうでもいい・・・。  
この後何が起こったのかは彼が語ってくれるだろう・・・。  
僕はもう寝るよ、おやすみ・・後は任せたよ黒い僕・・・。  
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
 
黒の教団本部  
 
慌ただしく職員たちは急いでみんなある場所を目指していた、その中にエクソシストリナリー・リーもいた。  
 
「リーバーさん、アレン君が見つかったって本当?」  
 
「ああ・・山奥で一人倒れているところを発見されたらしい・・。」  
 
アレンは任務の途中行方不明になっていた仲間たちは皆彼の無事を祈り、心配していたのだ。  
その消息がつかめ今彼は帰ってきた・・・。  
 
「アレン君・・良かった・・。」  
 
アレンは意識がないようだが大した傷もなくファインダーたちによって運び込まれてきた。  
リナリーは涙を流して喜んだ、彼を発見し、ここまで運んできたファインダーたちはリナリーに近づいた。  
 
「我々が発見した時はもうすでに意識がありませんでした、長い間放置されていたようで衣服はボロボロで  
それでも生きていたようなので病院に連れて行きました、結局意識は戻りませんでした、もう何日も意識は戻っていません。」  
 
コムイが応対する。  
 
「わかった、君たちもご苦労だったね、それぞれ部屋に戻って休んでくれ。」  
 
ファインダーたちは「はい。」と一礼してそれぞれ部屋に戻る。  
他の人たちでアレンを医務室へ運ぶ。  
 
「兄さん、アレン君は目を覚ます?」  
 
「・・この段階では何とも言えない、ずっと目を覚まさない可能性もある、話を聞く限りおそらく脳に強いダメージがあった  
んだろう・・・ずっと目を覚まさないかもしれない・・。」  
 
コムイの科学者としての言葉にリナリーは眉をよせつらそうだ・・。  
コムイは次は兄としても言葉を懸け妹を気遣うが効果があったようには思えない。  
辛そうに眉をよせ祈るように目を閉じる。  
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
 
リナリーは医務室でアレンの眠っているベットの傍らでイスに座り、アレンの寝顔を見守っている。  
すやすやと寝息を立てている、その顔はまるで子供のよう(子供だが)。  
 
かわいい・・・  
 
彼女は実は彼に恋心を抱いていた、彼と共に時間を過ごすにつれ強くなっていった感情、  
その感情が抑えられなくなり、彼に告白した、「アレン君が好き。」そう言った。  
だが・・彼は「考える時間をください。」と言い、次の日彼は彼女のことをふった。  
 
ふられちゃったんだよね・・あたし・・。  
 
ふられるとは思っていなかった、この子も同じ気持ちだともっていたし、自惚れていると思われるかもしれないが  
容姿にだってそれなりに自信はあった。  
 
アレン君、あたしの何が気に入らなかったのかな・・。  
 
黒の教団に属する多くの男が彼女に憧れを抱いていた、そんな彼女の心を射止めたアレンは多くの男の嫉妬を買った。  
コムイも敵に回すと思われたが多くの人間の予想を裏切り彼は彼女をふったのだ。  
彼女の彼を見る瞳を見る限り、気持ちはまだ変わってないようだ。  
リナリーの視線が彼の唇にとまる、腰をあげ顔を近づける。  
手が汗ばむ、と息が荒くなり鼓動が速くなる。  
後ろめたい気持ちに後ろ髪ひかれるつつも、彼の顔はどんどん近づいてくる。  
アレンの寝顔を瞼に焼き付け目を閉じる。  
 
アレン君・・・  
 
「はい、残念♪」  
 
突然聞こえた楽しそうな声に、全細胞が悲鳴を上げる。  
心臓が喉から飛び出そうなほど。  
 
振り返ればそこにはニコニコラビ、仏頂面神田、鼻血クロウリー、赤面ミランダ、興味津津科学班面々、  
狂人コムイ、オールスターキャスト  
アレンの寝顔に夢中で背後の気配に気づかなかった。  
 
顔に血液が集まり、火が出そうだ。  
 
「・・・・・!」  
 
唇まで数ミリといったところで襟首を婦長に掴まれている。  
 
「寝てるとこ襲ってもらえるなんて、アレンのやつうらやましいさー。」  
「・・・・。」「しゅっ淑女が・・そそそんなこといかんである・・・。」「リナリーちゃん・・・。」  
「がやがやぐちぐちぐちわいのわいの!!」「リナリーリナリーがーー!!」  
 
「病室では静かに全員出て行きなさい!!」  
 
全員出て行った、リナリーは名残惜しそうに、ドアが閉じるギリギリまでアレンの顔を見続けた。  
 
左目の傷がなくなってる・・・  
 
ドアが閉じる直前に思った事はそんなとこ。  
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
 
夢を見た、暗い部屋でアレン君とロードが二人きり。  
アレンは寝ている、泣いていたんだ・・頬に涙の跡がある。  
 
ロード・・アレン君に何する気?  
 
ロードはアレン君の頬をなでると彼の唇に自分のそれを重ねた頬がもごもご動く  
舌を入れてるんだ・・・。  
 
やめて・・やめて・・・  
 
服を脱がせ始めた、団服を脱がせ隙間からのぞく彼の胸板に舌を這わせて・・。  
自分の下半身で彼のズボンを何度も擦る。  
 
やめて・・・・。  
 
そんなに嫌?  
 
えっ・・・・!  
 
声が聞こえたほうにスクリーン映像が向く。  
そこにはあたしがいた・・髪が白い・・けどあたしだ・・・。  
不敵な笑みを浮かべたまま口を動かしていないのに声が聞こえるという事はあたしの頭に直に話しかけているということ。  
 
好きな男が他の女に侵食されているのが見るに堪えない?  
ふふふ・・随分勝手ねあなた・・・。  
 
もう一人のあたしの言葉に何か言う前に粘着質な音が聞こえた。  
ロードがアレン君に跨って腰を上下に動かして二人の結合部から粘着質な音が聞こえてくる。  
 
いやいやいややめて・・・。  
 
それでも彼は目を覚まさない、ときどき苦しそうにううんと唸るだけ・・。  
 
ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ  
 
しばらくするとロードの腰の動きは止まり、アレン君の体小刻みに震える。  
ロードはアレン君の体に倒れた、荒く息をしているのが分かる肩が上下に動いている。  
 
・・・・?  
 
アレン君が起き上がった、ロードがずり落ちる、見える・・アレン君とロードはつながったままだ。  
 
びりびりびりいいい  
 
電気が走る音がした、アレン君の周りに電光が見える、彼の白い髪が生え際からどんどん黒くなっていく  
そして完全に髪が黒くなると血走った眼でロードを睨みつける。  
ロードの表情が変わった「アレンどうしたの?」そう言いたそうな顔だ。  
アレン君はロードの肩をつかんで床に組み伏せると、腰を動かし始めた・・  
時間がたつごとにその動きは速くなっていく・・ロードは首を振ってよがる  
そして動きが止まり、アレン君はロードから離れたロードの秘部からからどろっと薄い白濁色の粘液が零れる。  
ロードは相当驚いたようで、目を見開き、舌を出してよだれをたらし、その視線はぐるぐると  
目を回しているようにも見える、そしてそのままアレン君を残して煙のように消えた。  
アレン君の髪の色は元に戻っていた、もう一度もう一人のあたしのほうを見ると彼女は今度は口を動かして  
何か言っている・・でもよく聞こえない・・・・。  
 
あ・・・・を・・・・くえ  
 
私の夢が終わった。  
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・  
 
アレンは眠っている、スヤスヤと眠っている、いい夢を見ているのだろうか、その寝顔は幸せそうだ。  
 
「う・・ううん。」  
 
その幸せは突然終わる苦しそうな声をあげた。  
 
「ぐうううああ・・。」  
 
彼の体が白い光に包まれた。  
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
 
「我々の今の現状はもはや戦争に勝つのは絶望的ともいえる・・・。」  
 
大広間でコムイは団員全員の前で重々しくそう言い放った・・。  
参加人数は全員合わせても100人いるかどうか、科学者も数人、ファインダー数十人、、エクソシスト5名、生活管理班もいる  
怪我をして意識を失っているアレンを除いて全員参加しているようだ。  
現在エクソシストは、アレン、リナリー、ラビ、神田、ミランダ、クロウリーしかいない、  
元帥は全員戦死、ブックマンもチャオジーもマリーも戦死した。  
ファインダーも数多く死亡し、彼らの棺がコムイの背後に並べられている。  
リナリーは話を聞きながら泣いていた、ファインダーも死んでいった仲間たちを思い悲しみに暮れている。  
ラビ、神田は無表情で話を聞き、クロウリーは泣きじゃくるミランダに肩を貸していた。  
 
「おそらく・・伯爵はもうすでに決め手にかかっている、各支部からの連絡も途絶え、バチカンも滅びた今我々にはもう  
打つ手がない・・。」  
 
ヴァチカンももうすでに伯爵によって滅ぼされていた、コムイは全員解散し暗黒の三日間が訪れるまで  
家族と共に時間を過ごすように言った。  
 
「嫌です、死んでいった仲間たちに申し訳が立たない!」「隊長たちは何のために犠牲になったんですか!?」  
 
みんな口々に語る、コムイだってこんなことは言いたくない、だが最後まで戦うにもエクソシストも少数  
その一人で長期任務から命からがら帰ってきたアレンはいまだに目を覚まさない、ハートは結局見つからず、  
援護してくれる組織ももうない、戦い続けるよりも最後の時を家族と過ごしたほうが彼らにとって幸せなのではないか  
と考えたのだ、だが全員戦いをやめる気はないようだ。「最後まで戦おう兄さん・・。」最後にリナリー、がコムイに言った。  
 
「もしここで戦うのをやめたら、これまで命を捨ててまで戦った人たちの命を踏みにじることになる・・。」  
 
そんな時広間に入口の奥から足音が聞こえてきた、足音のするほうへ全員振り返る。  
リナリーは入口へ走った、足音の主は一人しかいない、この場にいないのはアレンだけなのだから  
アレン君が目を覚ました、そう思いリナリーは走る。  
入口から現れたアレンの姿にリナリーの足が止まる。  
 
「ア・・レン君・・・!?」  
 
リナリーはアレンの姿を見て驚いた、なぜなら今の彼の姿は今までの彼から大きく変化していたからである。  
アレンは自分の姿を見て驚くリナリーに少し怪訝そうな顔をむける。  
 
「どうかした?」  
 
他の団員達も彼の姿には驚いた。  
精悍な顔つき 髪は茶色 左目の傷はなくなり、背はリナリーと同じほどだったのが今は彼女より頭一つ分高い  
180センチほどになっている。  
まるで彼の願いをかなえたような姿だ、童顔で、髪が白く、呪われていて、小柄なのが彼の悩みだったのだから・・。  
 
「アレン君・・・どうしたの?」  
 
「それは俺が聞いたのに・・。」  
 
声も低い・・もう少し高い声をしていたはず、それに何より・・俺?・・。  
 
「みんな集まってどうしたの?お祭り?」  
 
何とも場違いな質問、こんな重く暗い祭りがあってたまるか・・。  
 
「会議・・。」  
 
「全員集まって会議か・・起きたら誰もいないから何かと思えば・・・ふぁぁ・・。」  
 
アレンは口の前に手をかざし欠伸した、その様子にファインダーの一人が腹を立てた。  
 
「何だよその態度!この様子を見てわからないのか!?みんな死んじまったんだよ!!」  
 
彼は身振り手振りで怒りを指し示す、だがアレンの目は全く興味がなさそうだ・・。  
コムイの後ろにある多くの棺にも興味を抱かない、その様子に付き合いの長いエクソシストたちは  
アレンがどうしたのか疑問に思う、以前の彼ならそんなことはしない一緒に泣きわしなくても、悲しみにくれる人の怒りに触れる  
様な事は決してしない人間だったからだ、むしろそういうのは神田のキャラ・・。  
 
「あ、そう・・。」  
 
アレンはもうこの場所に用はないとでも言いたげに彼はその場を去る。  
一体どうしたの?口にできない疑問を胸にリナリーは彼の背中を見送る。  
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・  
 
数日後、黒の教団は新たな活動を開始した。  
彼らの今任務は被害にあった町の人々の救出とまだ被害の出ていない町や村の人々の避難、警報、  
大きな町はもうほとんど全滅しており、生き残りがいてもみんな瀕死の重傷、残っているのは小さな村  
アレンとリナリー、神田はそれぞれ違う村に赴き村人に避難を呼びかけていた。  
 
リナリーは人々を案内し教団指定の元オセアニア支部の地下室に避難させていた、みんな傷だらけで  
ここまで来るのに何度もアクマに襲われたのだ。  
 
地下室に入るともうすでに何十人もの人々が自分たちの荷物を広げ、生活管理班から食事を受け取っていた。  
しかも全員無傷。  
 
おかしいな・・。  
 
リナリーの疑問は当然だ他の二人は距離から考えて自分より先に到着するなど考えられないのだ。  
アクマから守りながら人々をここまで誘導するのは並大抵のことではない、自分もかなり急いでここまで来たのに  
自分より先に誰かがここまで人を誘導してくるなど・・どうやっても・・。  
そんな疑問が脳裏をかすめていると、リナリーの前に突然アレンが現れた。  
 
「!?」  
 
本当に突然そこにいなかったのに、フッと現れたのだ。  
 
「これはこれはお久しぶり、遅かったな・・。」  
 
不敵な笑みを浮かべて、突然現れた自分に驚き尻もちをついた人物を見下ろすアレン。  
そのアレンを縮んだ瞳孔に映すリナリー、前に読んだはやりのSF小説に出てきた単語を思い出す。  
 
「テレポーテーション?」  
 
SF小説に出てくる近未来の移動手段、それを聞きアレンはたいそう不快そうだ。  
 
「そんなちんけなものと一緒にするな、テレポーテーションは分子分解を利用した高速移動だが  
俺のはワームホールを利用した瞬間移動だ・・だから壁だって通り抜けられる、こんな人数ここまで運ぶには  
何の苦労もない・・。」  
 
アレンは手を広げて自分がここまで運んだ人々を指し示す。  
 
「そんなことできるなんて何で言わなかったの・・・。」  
 
「言ったら仕事が増えるじゃないか。」  
 
そんな当たり前のことを聞くんじゃないと言いたげだ。  
 
「ずい分怪我してるな・・。」  
 
この場合ずいぶんとは怪我の程度はなく怪我してる人数だ。  
 
「全員治してやる・・。」  
 
パーン  
 
アレンが両手をたたくと辺りが青白い光に包まれ、視界が戻ると擦り傷だらけだった人の肌はきれいに治り、  
足の骨を骨折していて人に支えてもらっていた人は自分で歩けるようになっていた、皆一様に喜んでいる・・。  
 
「こんな事まで・・。」  
 
この力があったからアレンが運んできた人々は無傷だったのだ、リナリーはアレンの能力に驚きが隠せない、  
両手をたたいた時に見えたが、左手が肌色・・普通の人間の手だった、本当にいったい何があった?  
アレンに直してもらった人々はみなアレンに感謝の言葉を述べるがアレンは無視してどこかへ行った。  
 
「アレン君・・。」  
 
リナリーは誰に言うわけでもなくアレンの名を呟く・・。  
 
しばらくして、ラビが帰ってきた、ラビはどうやらアクマに襲われなかったようで村人も彼もほとんど傷を負わずに  
ここまで戻ってこれた、だが神田が戻ってくると彼は傷だらけで右腕をなくしていた。  
リナリーは神田に駆け寄る。  
 
「神田!大丈夫!」  
 
「おい!ユウ、どうしたその傷!?」  
 
よく見れば後ろに村人の姿はない、どうやら彼は村人も守れなかったようだ。  
 
神田は息も絶え絶えに腕を押さえて倒れた、抑えた手の隙間から血がにじみ出る、根元を縛って  
出血を抑えているみたいが、あまり効果があるようには思えない、だらだらと血が流れ続ける。  
神田はラビに肩を貸してもらい立ち上がる。  
 
「とりあえず、応急処置するさ・・。」  
 
リナリーは思い出したように振り返ると辺りに声を響かせて、アレンを呼んだ。  
アレン君に治してもらおう、彼がどうしてそんなことできるようになったか疑問だけれど  
これほどうれしいことはないことに今さらながら気づいた、ミランダのその場しのぎの修復と違い  
完全に治してしまえるなら、この先誰がどんな傷を負おうと大丈夫ということだ。  
 
「アレン君!アレン君!出て来て!」  
 
ビリッ  
 
発雷、リナリーの前で放電現象が起こり、雷の中心に周りから粒が蛇のようにうねうねと動いて集まる  
その粒は人の形をなし、色が付け加えられて、アレンの顔になった、徐々に首、胸、腕と顔の中心から  
どんどんでき上ってくる。  
 
「何?」  
 
下半身がまだ粒の状態で話すので、ラビと神田は驚いている、まわりにまだアレンになっていない粒はまわり  
にまだとぐろを巻いている、リナリーは今さら驚かずそのまま話した。  
 
「お願いアレン君、神田が負傷したの、治してあげて。」  
 
「治す?アレン、そんな事できるようになったのか?」  
 
アレンはラビの疑問には答えず、リナリーに返答。  
 
「やだ。」  
 
「えっ・・。」  
 
答えは却下、その答えに動揺する、リナリーは顔を青くした。  
 
 

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