「エクソシスト様、大丈夫ですか?」  
そう声をかけてくれたのは、水夫さんのキエさんだった。  
「・・・・大丈夫・・・です・・・」  
あんまり大丈夫では無かったが、私は返事を返した。  
「水・・飲みますか?・・」  
そう言って水の入った水筒を取り出したキエさん。  
「あっ・・・・」  
水筒を振ってみて彼は怪訝な顔をした。  
「・・・??」  
「水・・無いみたいです・・・すみません!」  
「大丈夫・・気にしないで・・」  
「確か、この先に井戸があったと思うんで水汲んできます!」  
キエさんとマオサさんは立ち上がって私に言った。  
「でも・・まだAKUMAが回りにいるので・・危ないです!」  
「大丈夫、それにエクソシスト様と言えど、女性が頑張ってるのに私たちが何もお手伝い出来ないのが凄く悔しくて・・少しでも助けになりたいんです。」  
 
「・・ありがとう・・でも気をつけてください・・」  
 
 
キエさんとマオサさんは二人で水を汲みに行った。  
 
 
薄暗い洞窟のような場所に私一人になった。  
外ではまだAKUMAの機械音がしている。  
 
一人でいると怖い・・  
私は何も出来ないから、自分の身さえ守れないから・・出来るだけ気配を消して、呼吸する事さえ躊躇う・・  
 
どうか・・・どうか・・・皆無事で・・・  
両手を胸の前で合わせて祈ることしかできない。  
 
 
「・・あんたは、戦えないの?・・」  
どこからか男の人の声が聴こえて私に問いかけた。  
「えっ?・・」  
バッと体を起こして、辺りを窺う・・・  
暗闇の中、私の座っている場所から遠くない壁から男の人が出てきた。  
「・・・・あなた・・どうして・・・」壁から・・・と言いかけて、ようやく頭が働いてきた。  
「ノアの・・・」  
「そう、当たり! さっき会ってるんだけど・・あんた気失ってたしね・・・んで、あんた戦えないの?」  
そう言って私のイノセンスを見ている。  
私は右手についているタイムレコードを庇うように抱きしめた。  
「・・私を・・殺しにきたのですか・・?・・・」  
「そうだね、あんたのイノセンス、やっかいそうだし・・・」  
「・・・・・・・・」 どうしよう・・助けを呼ぶには、体が上手く動かない・・だけど、アレン君達の無事を確認するまで私は死ねない。  
「ティーズ・・・」  
彼の声に答えるように彼の体から蝶らしきものがたくさん出てきた、その蝶が私のほうにゆっくりと一匹向かって飛んでくる。  
怖くて私は体を引き摺るようにして距離をとる。  
 
「・・・・・・・・・・・・」  
黒くて綺麗な蝶は私のイノセンスの上に羽を休めるよう止まった。  
「・・・あんた・・マヌケだな・・」  
彼はクスクス笑いながら私のほうに歩いてくる。  
「動くなよ、その蝶は俺の命令1つで、あんたを一瞬で殺せるんだから!」  
そんな恐ろしい蝶をだと知らなくて、その台詞に私の頭は真っ白になった・・・  
「・・ふーん・・・貧弱そうだけど・・いい体してんだな・・」  
私の目の前まで来た男はポツリと呟いた。  
そして、その場に座り込み私の顎を彼は左手で掴んだ。  
「あんた目の下に隈できてんな・・血色悪いし・・それじゃあ言い寄る男いないんじゃない?・・」  
「・・・余計なお世話です」  
睨みつけるように見つめて私は言い返した・・ただ怖くて声が震えていたかもしれないけど・・  
「そうだな・・物好きは多いからな・・でも・・」  
薄ら笑いを浮かべて彼は私を見ている。  
「そっか・・エクソシストは神の使徒だもんな、言い寄られても困るか?」  
そう笑いながら彼は呟いた。  
「じゃあ、神様のものに手出したら俺は罰せられちゃうのか?」  
「・・???」  
「まぁ、お前等の神と俺等の神では全然違うからな・・どうかな?試してみようか?」  
薄ら笑いを浮かべたまま彼の顔が近づいてくる。  
顎を掴まれている所為で顔をそらす事も出来ない・・  
「・・んっ!」  
そのまま口を塞がれた・・  
「うっ・・うぅ・・」  
蝶が止まっていない左手で彼の胸をグッと押したが全然ビクともしない。  
ドンドンと胸を叩いてみたが、それでも口づけを止めない。  
彼は私の唇を舌で舐めてこじ開けようとした。  
 
 
「・・・?・・」  
しばらくすると諦めたのか彼の右手が私の団服、胸の心臓の辺りに触れた。  
ズブッ・・と私の団服を透りぬけた。  
嘘だと思った・・最新の団服で耐熱性にも耐寒性にも優れた丈夫な団服だと訊いたのに、まさか透り抜けるなんて・・  
「・・!!・・んっ!」  
怖さの所為か微かに開いた口に彼は舌を入れてきた。  
「んんっ・・うー・・」  
クチュクチュと私の口の中、舌が絡まり唾液の音がしている。  
まるで響いているようで恥ずかしくて私は左手で彼の服を掴んだ。  
彼の右手が私の左の胸を強く掴んだ。  
「んっ・・っ!・・」  
「・・・・痛いか・・」  
ゆっくりと彼は口を離してそう訊いた。  
「・・はぁ・・はぁ・・」  
荒い呼吸をしている私の胸を今度は優しく包むように彼は揉み始めた。  
「・・・ぅ・・んっ・・」  
「体細い割には胸は結構あるんだ・・」  
「ああっ・・やっ・・・っ・・」  
私の顎を掴んでいた左手も胸のほうに移動して両手で団服の上から胸を揉まれて、それを止めようと私は彼の腕を掴んだ・・  
「・・!!・・」  
掴んだはずの私の手は彼の腕を通り抜けた。  
「痛いんだわ・・そんな力無いとは言え、力いっぱい掴まれると!」  
私の手は彼の体に触れる事は出来なくなってしまった。  
「・・い・・やぁ・・・・」  
涙が頬を伝い・・怖くて止まらなかった。  
「いや?・・これから気持ち良くしてやるから・・・」  
彼はニヤニヤと笑いながら私を見ている。  
突き飛ばそうにも触れられなくて、逃げようにも体を掴まれて・・  
 
 
どうして・・私はこの人に触れられないのに・・この人は私に触れるの・・  
 
 

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