未知の世界、など  
本当は存在しないのだ  
 
 
未知なのではなく、ただ  
 
知ろうとしないだけ  
 
 
 
 
 
 
 
「ティッキーの中のノアが、消えた」  
 
 
今は白き肌に、感情の欠落した顔、虚と絶望を湛える瞳を崩れ去った愛しき家族に向ける。  
…今すぐにでもぐしゃぐしゃに泣き出してしまいたい。  
 
 
その気持ちを阻止するかのように、ティキが倒れて歓喜の声をあげる男の得意げな声が耳に入って来た。  
 
 
 
途端  
 
頭に血が上った  
 
 
「チャオジーッ!!」  
 
リナリーの悲鳴が耳に入る。  
宙に浮いた蝋燭をチャオジーの背中に数本突き刺し、同時にアレン達の周りに鋭い方を向ける。  
 
 
「動くな」  
 
緩んだ涙腺に呆気に取られながらも、やっとの思いでティキに近付こうとした。  
 
 
 
………筈だったのに  
 
 
 
ティキの姿が忽然と消えた  
 
 
…それだけではない、段々の目の前に広がる世界が色褪せていく。瞳から涙が零れおちそうになったのかと袖で拭うが、状況は一向に変わらない。  
 
 
遠くの方まで広がる白黒のチェスボード。  
 
 
 
この世界は………  
 
 
 
 
「貴方の術の中です」  
 
耳鳴りと共に聞こえて来たアレンの声。辺りを見渡しても、彼らしき姿はない。  
皆目見当もつかぬこの状況に混乱しているロードに、  
 
「僕の神ノ道化はノアの力をも跳ね返す事が出来ます。…今貴方は僕に向けて技を放った」  
 
アレンは続ける。  
 
「お願いです……ロード。貴方もこの戦争から、退席してください」  
 
 
ロードは唖然とした。  
遠くの方からそう懇願するアレンの声はやがて聞こえなくなり、暗闇の世界に閉じ込められた。  
蜃気楼に似たもので、ロードの視界がボヤける。  
 
 
「どうしよぉ……」  
 
思ってもみなかった展開にポロポロと泣きだしてしまう。いつものどこか勝ち誇った笑みすら浮かべることができず、焦りを隠し切れない。  
 
 
……そんな時。  
 
 
「ロード」  
 
 
聞き慣れた、あのアルト声がりんと響き、耳に入って来た。その声の主は…  
 
 
「ティッキーッ!!?」  
 
シルクハットを外して深々と頭を下げる男、ティキ・ミック卿が目の前に佇んでいた。  
言葉よりも先に体が動き、愛しき者の胸にすっぽりと顔を埋める。  
 
「……どーしよぉ…あんた、ティッキーじゃないのに」  
 
泣きじゃくりながら、ティキに言い続ける。そんな彼女の頭をあの大きい手が、子猫を可愛がるように優しく撫でる。  
 
「自分の術に溺れるなんてェ……どうかしてるよねぇ?」  
…自然と腕の力を弱めていく。  
 
「ずっと僕の傍にいろぉ―…って、本物だったらいいたいよ…」  
 
 
そう言ってロードが顔をあげた途端、ティキがロードの唇を塞いだ。  
 
「……ッ!?」  
 
まさかの展開に驚き目をむくロードを一瞥しながら、ティキの濡れたこじ開け舌が口内を荒らしては、微かに開いた口元から漏れる粘ついた水音。  
 
「う…ぁ………」  
 
掠れた声で目をトロンとさせる様がまたいやらしさをそそる。  
角度を変えながら何度も舐めあげられる感覚は、どこかロードを興奮させた。  
しかし相手が相手だ、幻想の中でこんなことをしてる場合ではない。  
 
 
どんっと胸を押し返して、乱れた呼吸をやっとの思いで整えようとするが、ティキがロードの上に覆いかぶさりそれも不能となる。  
 
「ティッキーィ…、やだ…」  
 
 
ロードの顔はどこか思い詰めた悲壮感に溢れていた。  
再び押し返しを図るが、彼の「快楽」の前で叶う訳がない。腕ごと彼を貫通して終わり。  
こちらからは触れないのに、向こうは触れられるなど、何とも卑劣な技だ。  
 
「…」  
「……ぁ!」  
 
手で直に服を脱がすと、ティキはロードのまだ未発達の胸を強く揉みしだいた。  
 
「ぃ………た…」  
 
あんまりにも強く揉むから、ティキの爪が食い込み、痛々しくも跡を作っていく。  
目尻に涙を浮かべながら必死の抵抗を見せるが、抜け出すことができない。  
 
するりとティキの長い片方の手が下に伸び、太股に滑らせる。ショーツを脱がすこともせず、技を使って一気に中に二三本の指を突っ込んだ。  
 
「ああああ…っ!!」  
「ロード……濡れすぎ」  
 
ぬるりとした蜜と一緒に無理矢理掻き混ぜられて、苦痛の表情を浮かべるロード。  
頭の中心がじんじんと痺れてくるような感覚を覚え、ただ、拒絶の瞳を揺らがせる。  
 
 
そんなことをされるがままになっていたロードが、ふいに気配を感じ横を振り向くと……また、見覚えのある人物の影。  
 
「ッ……ジャスデビ…?」  
 
クロウリーとの対決で滅っした筈の二人が、こうして目の前に存在している。これも幻覚か……?そんな疑問も、淡く消えていく。  
 
急に、今の自分の状況化を思い出し、顔を真っ赤にしながら二人に真実を訴えようとしたが……  
 
「こ、これはっ………ふううぅ…!?」  
 
遠慮なしに口内に突っ込まれた、太いもの。その正体を知ったロードの顔が青ざめる。  
 
「舐めろよ」  
「ひうう……っ!!」  
 
デビットの肉棒だった。  
手で外そうとするが、ジャスデロに押さえ付けられていて、体が思うようにいうことを聞かない。顔を精一杯横に振ることしかできなかった。  
策を考える暇もなく、次々と与えられる苦痛と快感。  
いきなりティキの親指で、敏感な蕾を強く撫で回される。  
 
「ふぁっ……くぅ…!」  
 
ロードの身体が大きく震えあがり、指を突っ込まれたままの秘部からは愛液がとろとろと溢れ出す。  
ただいやらしい水音だけが、静まり返った空間に響く。  
 
そっちに気を取られていると、デビットがロードの頭を掴んで激しく左右に振り始めた。  
口内で擦れる感触がなんとも言えないくらいに気持ち悪くて、ロードは何度も吐き出そうとするが上手くいかない。  
ちらりと上をみやると、デビットはみたこともないような満足げな笑みを浮かばせていた。  
 
「出すぞ」  
 
唐突にデビットから発っせられた言葉を理解する前に、白濁色の液を盛大に噴射されてしまった。  
 
「!?…うぇっ……ゴホゴホッ…」  
 
苦いその液を口の端から生々しく垂らし、呼吸を乱しながら吐き出そうとする。  
 
「もうやめてェ……」  
 
そんな彼女の願いも届かず、ティキは指を外すと、痛々しく立ち上がったモノを容赦なく濡れそぼった秘部に突入させた。  
 
「いやあああああっ!!」  
 
ぬるっとした感触に、ティキのモノの固さが増すのがわかる。  
涙の溜まった瞳を虚ろにさせ、くぅんと喉から声を漏らす。  
 
「やだぁ!抜いてェエ……!!」  
 
そんなロードにお構いなしに、自身を埋めていく。  
 
「…っ流石にキツイよな…」  
「く……あぁッ!!痛いよぉ…!」  
 
痛みで何度も頬をつたう涙。  
初めての証の純血が内股に滑り落ちていく…  
 
暫く行動を示さなかったジャスデロが、いきなりロードの掬座に指をくちゅり、と音を立てながら侵入させた。  
 
「ひあああっ!!?ヤダヤダぁ!そこはっ……」  
 
頑なに拒む穴にもきにせず、慣らそうと突き進めて行く。  
…大分良くなったかと思うと指を引き抜いて、代わりにこちらも自身を埋めた。  
 
「ひぃあああうう!!!……助けてェ!」  
 
身が裂けるような痛みが二カ所同時に襲ってきて、ロードの気はどうかしてしまいそうだった。  
擦りあげられるたび、箇所が熱くなる。痛みは一向に引く気配を見せない上に、ロードの意向はお構いなしだ。  
 
「お願いだよぉ……抜いて、ティッキー……ジャスデロ…つぁっああぁん!!」  
 
なんの迷いも無しに、一人の少女を犯す幻影。自分の術に溺れた彼女の中に吐き出される欲望の塊。びくびくっと痙攣した身体を冷たい地面に放り投げ、ゴポゴポッという腹から鳴る音を耳にする。  
 
 
「あらら……イっちゃった」  
「おい、なんで俺だけヤッてねーんだよ」  
「ひひっ!じゃあ次はデビット」  
 
 
……早く、此処から出して  
 
 
 
そんな願いも届かず、休む間もなく繰り返される行為。笑いながら見下ろしてくるデビットの顔が霞んでくる。  
そして、段々と遠ざかる意識。  
…拒絶という名の逃げ道も閉じられた  
 
 
誰だ、こんな未知の世界を創りあげたのは―――  
 
 
 
 
それが自分であることも忘れ、遠くの地平線と目の前に広がる景色をただただ睨む。  
 
 
 
未知なんじゃない、  
ただ  
 
 
 
 
自分の術すらも  
知ろうとしなかっただけ――――  
 
 
 
 
了  
 
 

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