「キャハハハハハハハハッ」
上下左右、すべてが市松模様の空間で、少女の笑い声が甲高く響く。
「ちっくしょ…」
気が狂いそうだ。と、ラビは思った。歩いても走ってもどこにも行けない、周囲を囲む壁にさえ一向に近付ける気配が無い。
時折見せられる幻覚に、心が疲弊していくのを感じた。
「ねぇブックマン、楽しいでしょぉー?」
「…あぁ。楽しませてもらってるさ」
口角をつり上げて、精一杯の虚勢で自己を守る。
今はただそれしか出来ない自分が歯痒い。
(考えろ、ここから出るんさ)
ラビの脳内で、今までの記録がぐるぐると巡る。
(なにかヒントは…)
「ねぇ、こんなのはどう?」
ふいに聞こえたロードの声に、ラビの思考は分断される。
また幻覚が始まるのか。次は誰が殺されねばならないのだろうか。
ゆっくりと辺りが靄に包まれて、前方に人影が映し出される。
短いけれど艶のある黒髪。ほっそりとした、だけど女性らしい丸みのあるしなやかな肢体。もう随分と見慣れた魅力ある姿。
「リナリー」
そっとその名前を呟くと、目の前に立つ『リナリー』はにこりと笑って、おもむろに衣服に手をかける。
「な…っ!?」
黒いベアトップを脱ぐと、柔らかな乳房が重力に従って揺れた。
「ラビ……」
『リナリー』は露出した自らの胸に手を添えると、ゆっくりと刺激を与え始める。
薄桃色の突起を摘んでくにくにと動かすと、その頬が赤らんで、華奢な身体がわずかに震え、感じているのだとわかる。
「ん…ふ、ぁ…」
熱っぽい息が『リナリー』の唇から漏れて、ラビはその光景から目を逸らすことが出来なかった。
左手で乳首への愛撫を続けながら、『リナリー』の右手が下半身へと伸びる。
ちょうど秘部の辺りであろう箇所を着衣の上から擦って、堪えきれなくなったのか床に膝をついた。
「は…ぁんっ、ラビぃ…っ」
割れ目の形に沿うように指を押し当て、恍惚とした表情を見せる。
やがて荒く息を吐きながら今度はショートパンツに手をかけ、下着ごと引き下ろした。薄く毛の生えた恥丘が露わになった。
座りこみ、もどかしげにパンツを脱ぎ去るとそのまま脚をラビに向かって開き、見せつけるように秘部に直に指を這わせる。
「あっ…!」
くちくちと、濡れた音がやけに大きく響いている気がした。
膣口の辺りを押すように弄ると、中からとろりと愛液が溢れ出す、そんな様子まで手に取るように見えてラビはだんだんと理性が麻痺している気がした。
『リナリー』は愛液をたっぷりと指に絡め、ぷっくりと腫れているクリトリスに擦りつける。
「ひぁっ、ん、ふぁ…!」
身体がびくびくと震え、それでも指を止めない。ぬめる指から逃げる肉芽を、逃がさないとばかりに指は追いかけて弄ぶ。
「あっ…く、ひぅっ、はぁ……んっ、あぁっ!」
(違う)
『リナリー』の食指が膣へと動き、その中へと沈んでいく。
「ふあぁ…っ、あっ、ラビ、ラビぃ……!」
(これは、リナリーじゃない)
指が律動を始める。
膣内から愛液が掻き出されて、床へと垂れ落ちた。
「あっ、はぁっ、んっ、んぅ…っ」
(違う!)
ラビはきつく目を瞑る。
これ以上、目の前の光景を見ていたくなかった。
「フフッ」
笑い声と、頬に触れた掌の感触に、ラビはゆっくりと眼を開いた。
「どうだったぁー?」
いつの間にかあの幻覚は消えていて、目の前にはロード、恐らく本人が立っている。
腕を伸ばし、背伸びをして頬に当てられた手は、まるで慈愛に満ちたもののようでどこか滑稽だった。
「…最悪、だった」
泣きそうだった。いっそ泣いているのかもしれない。
ラビは自分に嫌悪していた。幻覚だと分かっていて、それでも目を逸らすことが、ラビは出来なかった。
仲間の痴態に、自分は。
「でも、欲情したんでしょぉー?」
ぎくりと、ラビの心臓が痛んだ。
「勃ってるよぉ?」
頬から離した手で、ロードはラビの股間を撫で擦る。
確かにそこは勃起していて、ロードからのゆるりとした刺激にひくりとわなないた。
「…っ!やめ……っ」
ラビの制止を聞かず、ロードは膝立ちになりラビのズボンのジッパーを摘み引き下ろす。
ラビの逸物が、ぶるりと振るえながらロードの眼前に姿を現した。
「あはっ、結構大きいんだねぇ」
普通の少女ならば恐れさえ抱きそうなグロテスクなそれを、ロードは臆することもなく手に取り、ゆっくりと扱き始める。
「なっ…!?」
「フフ、気持ちいい?」
小さな手が、ラビのペニスを包んで上下する。
しっかりと、だけど痛くない程度に強く握られ、随分と馴れた手付きにラビは快感と疑問を覚えるが、ロードは敵なのだ。こんなこと。
「っあ、やめ…!」
「あ、濡れてきたぁ」
だんだんと速度を上げて扱くロードの指に、ペニスの先端から先走りが滲みだす。それに対してロードは無邪気な笑顔を見せ、ちゅっ、と軽い音をたててラビのペニスに口付けた。
ラビは驚き離させようと押しやるが、
どこにそんな力があるのかロードは全く離れず、ペニスの先端やカリ首にキスを繰り返す。むしろ、自分に押しやる気が無いのだろうか。
ロードはラビの先走りでほんのり濡れた唇から真っ赤な舌を出し、大好きなキャンディーかアイスでも舐めるようにペニスをねっとりとねぶる。
「んん…、ふ、変な味ぃ…」
生温かい舌が丹念にラビのペニスを舐めあげる。まるで親猫が子猫に施すようなそれは確かに気持ち良くて、だけどどこかもどかしくて、ラビは身動ぎした。
戦うべき相手である少女からのこの行為を、もはや受け入れてしまっている自分がまるで馬鹿のようだった。ましてや、もっとして欲しいなどと。
「足りない?」
ロードの唇が、まるでラビの思考を読み取ったかのように動く。
「いいよぉ。もっとヨくしてあげる」
そしてロードの唇は弧を描き、そのままラビのペニスを咥えこむ。
半分ほど口に含んだあたりで、入りきらなくなったのか少し動きを止め、足りない分を指で補いながら動かし始めた。
「んぅ…ふ、んっ、ん……」
ロードの口内で、舌がペニスに押し当てるように絡みつき、まるでそれ自身が意思を持っているかのごとく動く。
すぼめた口の中は少しきつく、頬の肉がペニスを圧迫するのがまるで膣内のようで興奮した。
「んんっ、ふ…ぅ、ん、は…びくびくしてるぅ……」
ロードの指がさらに下へと動き、転がすようにして睾丸を揉む。びくりと背筋が強張って、一気に快感が増した。
「く、あ……」
ラビの漏らした吐息にロードは満足げに目を細め、喉奥まで使いさらに深くペニスを呑みこんだ。やはり苦しいのかロードの目尻には涙が滲むが、それでも止めようとはせず頭を上下させる。
やわやわと睾丸を揉みしだかれると、押し出されるように射精感が近付いた。
「っく、ぅ、も…俺…!」
ロードの頭に添えられていただけのラビの手が、急に力を込めてロードの頭を押さえつける。
「んくっ!?ん、はっ、んぅ!んぅっ、んっ!」
そのままラビの腰がロードの顔に打ち付けられ、ロードは苦しげな呻きを漏らす。
だがラビは腰を止めず、ただひたすらに快楽を追う。
「うぁっ、は、出るっ」
「んぅっ!」
ラビのペニスが強く脈打って、ロードの口内にどろりとした精液を吐き出した。口内からペニスを引き抜くと、最後に二度脈打ち、ロードの顔面が白濁にまみれた。