「ただいまあー、伯爵ー、ティッキー!」
ロードが学校帰りに帰宅してきた。背にはランドセル。左手に見慣れない小袋を持っていた。
「オや、お帰りなサイ。ロード」
伯爵はロッキングチェアを揺らしながら、編物に励んでいる。
「おぅ、お帰り、ロード、て何だ?その左手に持ってる物は?」
ティキはまた寄り道とはまだまだ子供だなぁと、穏やかな笑顔で尋ねた。
「ああ、これね、パチパチキャンディーっつーんだあ」
ロードは小袋をひらひらとなびかせながら掲げた。
するとティキは驚いたように感銘を受けた。
「おお!知ってるぞ、それ。懐かしいなあ。クルトンみたいなのがパチパチと鳴って、口の中が痛いというか、
何とも言えない刺激がクセになってたなあ」
「ふ〜ん、でもよく分かんないや。こういうの初めてだし」
「あ、そうダ。二人共、ちょっと話がありマス」
伯爵は編物する手を休めないまま二人に告げた。
ロードはティキの隣にちょこんと座り、小袋をいそいそと開封している。
「さっきティキの内通者に不穏な動きが出たの事デス」
ロードは小袋から取り出した大きいうずまきキャンディーに感動している。
「我々を裏切るつもりかは知りませんけド」
ロードはキャンディーを口に含み、舌で嬉しそうに味わうが、すぐにはっと気付いた。
「まあ、我々の事が知られるのは後々面倒になりそうデス」
ロードは小袋の中にティキの言う通り溢れ出そうなほど、
いっぱい盛られていたクルトンみたいなものにキャンディーを埋めた。
「・・・デリートですか?」
ティキは真剣な面向きで伯爵に尋ねる。
「まあ、すぐにとは言いませン。ただ出来るだけネ」
ロードがキャンディーを取り出すと、唾液により付着されたクルトンがキャンディーに程よく飾られていた。
そして、ロードはそれを口へと運ぶ。
「我輩がそいつのアクマを製造できる余裕が持てる時がいいですヨ。忙しい時に殺しちゃっても・・・」
パチッ。
「あっ!」
伯爵の言葉はロードの小さな鳴き声により、中断されたと言っても過言ではない。
パチパチィッ。
「あああぅあぁ・・・」
ロードは口の中でクルトンからの未知なる刺激に戸惑いを見せていた。それに伴いみるみるうちに赤面していく。
しかも目がとろけてきて、小さな身体を刺激に伴いくねらせている。
パチパチパチパチ!
「ひあああん!ひああぅぅ、あああ、はあああ!」
「・・・・・」
「・・・・・」
伯爵とティキは涎が垂れそうなほどぽっかり口を開いて、
パチパチキャンディーを口に含みながら、一人身悶えるロードを眺めていた。
パチパチパチパチパチバチバチッ!!
「あはあああぅ、んあああ、ああ、あああああ・・・!!」
ロードが自分でも驚くほどの甲高く甘い悲鳴を部屋中に轟かせた後、
ロードは壁に背をもたれて少し荒い息遣いをしていた。
「はあはあ・・・あれ、どうしたのお?二人して」
ロードがパチパチキャンディーの刺激に酔った後に目に映ったのは、
赤面しながら前傾姿勢を保つ伯爵とティキの姿だった。
「・・・いや、何でもない・・・」
終わり。