「ミス・ミランダ。自室に戻って休まれてはいかがですか」  
 
修練場から部屋への道すがら。  
白い頬を濡らして俯きながら、ミランダはおぼつかない足取りで石造りの床を歩く。  
イノセンスのシンクロ率をあげるために、数日間眠らずに力を解放していたので  
酷く身体が重く、随分と疲労して体力は極限に低下しているよう感じられた。  
しかしそれに相反して精神はふつふつと昂ぶって、声をあげずにはいられない。  
自分への苛立ちが血液の如く体中に巡って沸騰してしまったようで、爆発しそうだ。  
「ああ……どうして!どうして、うまくいかないのかしら!」  
最上級に迷惑な独り言といえるだろう。  
言いながら、激情に身体がついていかずに足がもつれてよろめいたりしている。  
瞳を勝手に涙が濡らしてこぼれるので、拭うのも、はじめからあきらめてしまっていた。  
「わたしなんかには、やっぱり、無理なのよ……」  
朝焼けなのか、夕焼けなのか、格子の窓から橙の色が降り注いでいるが、  
空の景色も踏み締める足許も、涙に滲んでいる視界にはモザイクの様にしか見えない。  
這うように歩く自分の足音が、薄暗い廊下に徹夜の後遺症か耳障りなほど響いている。  
「でも、アレンくんたちに、……ありがとうって言われて、嬉しかったんだもの」  
よくもまあ、毎日失敗して自己嫌悪して落ち込んでいるのに、その心の支えだけで  
逃げ出さずに、あきらめないでいられるものだと思う。  
しかし、それ以上に、教団の人々はミランダを見捨てずにいてくれている。  
そう、想いが逡巡すると、今度は幸せにな気持ちになって益々気分が高揚してしまう。  
「頑張ろう……やっぱり、寝るのやめるわ!もうちょっと、頑張ってみますから!」  
そう機嫌良く禍々しい笑顔で、一人決意を高らかに宣言してみせた。  
ふらふらと身体を揺らし、ミランダは泣きながら、ふふふ、と繰り返し笑う。  
ナチュラルハイ。高揚感が疲労感を上回って、嬉しそうに涙をぽろぽろこぼしながら、  
ミランダは修練場へと戻ろうと踵を返し、来た道を戻り始めた。  
 
二、三歩よろけて進むと、朝焼けなのか夕焼けかなのか、その橙色にぶつかって止まる。  
「わ、ご、ごめんなさい!」  
条件反射で謝罪をしながら、まさか光にぶつかるわけはないとミランダは袖で涙を拭いた。  
焼けた空のような茜色のを受けた青年が、呆れ果てた笑顔を携えて立っていた。  
 
「ミス・ミランダ、寝た方がいいって」  
ふらつく身体をなんとかまっすぐ立て、そ青年に向き合おうとミランダは顔をあげる。  
それは黒の教団本部、科学班の班長、リーバー・ウェンハムだった。  
いつから見られていたのだろう、ミランダはレディとしての振る舞い以前に常識的な  
振る舞いを忘れていたと気付き、こんな暗くて不幸で不安定で不気味な女と知れたら  
すぐさまこの場で解雇されてしまうのでは、と考えてぞっとする。  
羞恥心と解雇への恐怖に混乱しながら、ミランダは痩せた手をぶんぶんとふり、  
会話とはいえない切れ切れの言葉でリーバーに答えた。  
「嬉しくて、眠れないもの、だって、みんなの、役にたてるかもしれないんです。  
わたしなんかを、見捨てないでいてくれるなんて、嬉しくて、ああ、もう、死にそうだわ!」  
ネガティブな人間の精一杯の前向きな感情表現はもはや喜劇のよう。  
「死ぬ気で、死なないように、頑張ります!だから、クビに、しないで……!」  
祈るように両手を胸の前に組んで、夢をみる少女の様に彼女は幸福そうに泣いていた。  
「酔っ払いみたいだな、ミランダ嬢」  
目の前の青年の顔が歪んだのはミランダの瞳が涙でぼやけたせいか、それとも。  
 
突然、手を引かれたかと思うと、ミランダの身体がふわりと浮いた。  
目の前にリーバーの顔と高い天井と橙色の光が見える。  
どうやら抱き上げられたようで、その青年は人を一人抱えているとは思えないほどに  
しっかりとした足取りで歩き出していた。  
「どこ、行くの?」  
「部屋」  
彼女の言葉にリーバーは短く答えて、こころなしか早足に進んでいく。  
「お、おろして、お、追い出さないで」  
視界がぐるぐるとまわり、挫かれた高揚感が背筋から抜けしまうような気がして  
ミランダは途切れ途切れになりながらも、自分を奮い立たせるべく言葉を懸命に絞る。  
「わたし、修練場に戻るから、リーバーさん、わたしは」  
瞬きをすると、涙が次から次に滲むので、ミランダはいい加減自分をうんざり思いつつ  
弱々しく自嘲気味に笑いながら、言葉の羅列を続けていく。  
「だって、アレンくんに、約束したのよ……だから」  
だから、眠らなくてもまだ、と言葉を言いかけた。  
 
言いかけたのだが、それから先に続く言葉をミランダは紡ぐ事ができなかった。  
 
ゴチッ!という鈍い音とともに額に強い痛みが走り、ミランダは思わず目をギュッと瞑る。  
あの紳士が暴力行為に及ぶほどに怨恨を持たれてしまったのかと、全身が凍りつき  
衝撃的な展開に一瞬息を呑むが、激痛はそれきりだった。  
それ以上の暴行はないとわかるとミランダは泣きながら目を開ける。  
 
身体を掬うように抱えられていて、すぐ目の前に見える青年の額も赤く腫れており、  
ミランダは自分が駄目な人間である事は嫌と言うほど分かっているつもりだったが  
それにしてもあんまりな仕打ちだろうと恨めしく思いながらリーバーに視線を向ける。  
「……ず、頭突きするなんて、ひどいわ」  
理不尽な仕打ちに、痛いと唸り涙ながら異議を申し立てた。  
「ごめ、いや、ち、ちがう!!!!!」  
額を抑えながら言った彼女の抗議は、リーバーの思いがけない咆哮に打ち消された。  
普段の陽気で穏やかな気のいい青年から考えられないほどの大きな声。  
こんなにも大きな声で怒鳴らせてしまった。  
それほどに自分が不快な思いをさせたのかとミランダは深く傷心し、またクビなのね、と  
続く言葉に何の期待も持てるはずもなく、涙を滲ませて青年の言葉の続きを待った。  
「……すまない、頭突きは、ちょっと事故で」  
荒い語気が、情けなさを含んだ苦笑いと反省を込めたような複雑な弱い呟きになり、  
青年が、抱えるミランダを覗き込むようにして、顔が触れてしまうほどに再び近づく。  
リーバーの顔が降りてくるので、ミランダはまた頭突きをされてしまうのかと  
捉えられた身体を強張らせ、再び額へと来るだろう衝撃を覚悟し目を瞑った。  
 
「こう、したんだよ、ミランダ」  
額をやさしくすりよせて、ミランダの唇にリーバーはそっと唇をかさねた。  
ちゅ、と軽くついばんですぐに離す。  
 
一瞬の柔らかくて暖かい口付けを受け、ミランダは驚いて目を見開いた。  
リーバーの曖昧な表情の意味がミランダに理解できるはずもない。  
そしてミランダの思考回路は良くも悪くも常識に囚われていないと言える。  
 
数秒の沈黙の後、ミランダ嬢がくすくすと笑いながら間の抜けた声で  
「……こども以外にもおやすみのキスをするんですね」  
と言いリーバーを見上げ、あ、教団は家族みたいなものだから、  
そっか、そういうものなのね、と勝手に納得した様子でうんうんと頷いた。  
 
リーバーは女のふんわりとした表情を作り出す色素の薄い頬をぼんやりと眺めながら、  
ああ、この女性は人間を心から信じているのであろうという分析をする。  
それは憶測や推測に過ぎず、興味のささくれのようなもので、真実ではないけれど。  
嘘みたいに盲目的なミランダ・ロットーに、少し苛々して心がざわめいたが、  
人の好い笑みを返しながら、抱きかかえる女の唇をリーバーはもう一度塞いだ。  
それが思っていたよりも暖かくて、期待や予想が外れたような妙な心持ちがした。  
「オレも徹夜続きなんすよ、ベットで、眠りましょう?」  
穏やかな優しいリーバーの声に、ビクリとミランダの身体が跳ねてがくりとズレる。  
「あんたは、休むことを、疎かにしすぎてる」  
その身体を抱えなおして、リーバーは細い廊下を再び歩き出した。  
 
意味よりも、今の自分の表情を知りたい。どんな顔をしているのだろう。  
 
その足取りに揺られながら、淀んでいく茜空を見てミランダは今が夕刻であることを知る。  
橙色が、夜を引き摺りながら空に溶けるまで、あともう少し。  
 
カーテンが閉められた灯りもない真っ暗な部屋に連れられ、扉に鍵がかかる音が響く。  
するとすぐにミランダは青年の腕の中から解放され、身体を仰向けに倒された。  
「り、リーバーさん?わ、わたし、まだ」  
暗闇に目が慣れず様子がわからないが、ミランダの部屋でないことは確かだ。  
男性的な香りがかすかにするので恐らくここは青年の自室で、そして背中を受け止めた  
弾力に、今、投げ出されたのはベッドの上なのだろうと考えた。  
「イノセンスを、だから、しゅ、修練場に」  
人に必要とされることが生きる望みだからそれが途絶えないよう頑張らせて欲しい、  
睡眠の足りていない痛む頭で、ミランダは言葉を探す。  
端から見て、ミランダはもう、悪夢にうなされているようにしか見えない。  
 
青年が寝台に乗り上げたため、ギシ、と部屋にスプリングの軋む音が響いた。  
「眠れないっつーなら、オレが眠らせてあげます」  
ミランダの上からリーバーの穏やかで陽気な声が降る。  
「え?え、え、え、永眠はちょっと、困るわ」  
ただならない雰囲気から逃れたい一心に、ミランダはできるだけの力をこめ、  
足で下を蹴るようにして後ろに退がろうとしたが、  
上から腕を押さえられたことでかなわず、身じろいだだけに終わった。  
「はは、それはオレだって困る。そうじゃなくて」  
ミランダの鈍さに笑いながら、リーバーは彼女の胸元のファスナーに手をかける。  
暗闇の中、涙を孕んでやけにきらきらとしたミランダの瞳の中にある、  
いまにもあふれてこぼれてしまいそうな雫をリーバーは舌で舐め取った。  
「セックスで気持ちよく落としてあげますよ」  
頬、こめかみ、耳と、みじかい口付けをしながら、リーバーはからかう様に笑った。  
鈍感であったり卑屈であったりする人間は、あまり好きなタイプではない。  
修練場から泣きながらよたよたと去るミランダの細いシルエットに、  
頼りない女だと舌打ちをしてしまいそうな程苛々して罵ってやりたくなる気さえしていた。  
しかしリーバーのその感情は、嫌悪というよりはむしろ、羨望に近かったのだと思う。  
「……これは、仕事?」  
ミランダの細い指が持ち上がり、震えもせずしっかりとリーバーの頬に触れた。  
深い色を持つ女の髪と瞳は暗闇に溶けて、色づいた唇、白い頬と首筋が浮いている。  
もっと緊張したって興奮したっていいだろうに、リーバーの精神は静かなものだった。  
ミランダの言葉を奪うような真似はせず、それでいて手を休める事もしない、  
腕を引き団服の袖を引っ張り脱がせ、シャツのボタンを片手で器用に外していく。  
「せ、セックスを、しないと、クビなんですか?」  
外気に肌がさらされていくので震えてしまいそうになりながら、羞恥に頬を染め、  
ミランダはリーバーの瞳を覗きこんで真意を伺うように尋ねる。  
向けられた視線に、リーバーは、なんて不幸な女なのだろうと同情したくなった。  
過去に、そういったことがあったのだろう。  
「いや……クビになんてなんないよ。ま、逃がさないけど」  
まるで悪役のようだと自分の振る舞いを可笑しく思いながら、女の上に被さり  
露になった細い首筋に鼻をよせリーバーは彼女の頸を優しく噛んだ。  
 
「や、り、リーバーさん」  
ミランダの肩が震え、彼女の小さな手がリーバーの胸を抵抗するように押した。  
細く、薄い、力ないその手には、まったくといってリーバーを止める威力はない。  
何度も白い皮膚にキスを落としながら、くちびるを甘く噛んで、舌でなぞり  
耳朶を揺らして、そっと息を吐きながら囁いた。  
「……大丈夫だから、眠ることを忘れないで。ミス・ミランダ」  
ミランダは、涙が流れるのはどうしてだったかしらと意識の隅で思いながら、  
途方もなく優しい言葉に、勘違いをしてしまいそうだと思う。なんて慈愛。  
自意識過剰もはなはだしいとミランダは自分の思い上がりを懸命に抑える。  
「わからないわ」  
わからない。心から。ミランダは消え入りそうな声で呟いた。  
圧し掛かる肢体は息苦しいほどなのに男の表情は不釣合いに穏やかで  
心臓の音だって速過ぎて壊れたメトロノームか秒針かって思うほどだけれど、  
どちらの心音か、どちらの呼吸か、わからない。  
 
白く細い彼女の指が青年の髪を?み、乱暴に引いてその青年の額に口付けをした。  
それはスタートの合図のようだった。  
 
リーバーはミランダに深く口付ける。  
口を喰らい付くように塞ぎながら、女の身体の輪郭を手で確かめるようになぞっていく。  
「……っん、はぁ」  
息継ぎに薄くひらいた隙に、舌を入れ、さぐるように歯列を舐め、口内をかき回し  
舌を絡ませながら、何度も角度を変える。  
ミランダは短い呼吸をしながら、リーバーの背に手をまわし、彼の服をつかんだ。  
お互いの唾液が馴染んで、擦れ合う舌の先がじんじんと痺れてくる。  
薄いスリップの下からリーバーが手を滑り込ませミランダの胸の膨らみにふれると、  
彼女の身体がびくりと揺れた。  
「や、んっ……」  
手のひらにしっとりとやわらかく馴染んで、力を少し加え手を窄めると  
細い体とは思えないほど、なかなかに素晴らしい弾力を持っていた。  
 
ひさびさに感じた女のやわらかさに、どっぷりと甘えて縋り付きたい気持ちになる。  
「服、破ったら、だめ、だよなぁ……?」  
冗談に本音を混ぜて、もどかしそうにリーバーの手がミランダの服を脱がしにかかる。  
「……あっ、あの、わたしだけ、裸になるのはちょっと……」  
顔を真っ赤にしながらミランダが男の下で呟き、リーバーの手をやんわりと制した。  
身体を起こし、向き合って、ミランダは青年の顎や首に触れるだけのキスをしながら、  
まず、男の着ている白衣の肩をずらし、後ろに落とす。  
「……せ、せっきょくてきデスネ」  
意外な展開にリーバーは思わず乙女のごとく頬を染めて恥らう。  
「い、いじわる、言わないで」  
それ以上にミランダの手がぎこちなく震え、微かにふれる肌が熱く羞恥に耐えている。  
向き合って、頭ひとつぶん下から、背伸びするように顎にキスっていうのが、いい。  
なんか、いい。ピンポイントに、好き。リーバー的ストライク。  
 
キスをして、お互いに服を剥がし合いながら、痴態を見せ付けあう。  
乾いた喉を潤そうと水を求めるような、例えるならそんな感じ。  
 
乳房を撫でながら、胸に吸い付いて桜色の突起を舌で転がすとミランダが小鳥の様に鳴き、  
執拗に舐めつけて嬲れば、かたくぷっくりと立ち上がっていく。  
肌を撫で、手指は、わき腹から臍をなぞり下降して、茂みをわり、指が辿り着いた。  
「や、そこは」  
腰をくねらせ腿を閉じて手がそこにのびるのを彼女が阻もうとするが、痩せた女の太腿は  
隙間が空いており、簡単にリーバーの指がはミランダの秘部を探り当てた。  
割れ目にそって指でなぞり、くるくると淫核を掻き混ぜる。  
「やわらかいな、というか、濡れてるね」  
陰部はじんわりと湿っており、指でぐちゃぐちゃに撫でればくちゅくちゅと  
水気を帯びたいやらしい音がして、ねっとりと蜜がこぼれていく。  
理性の及ばない部分。身体は、リーバーを受け入れる準備をしている。  
「んっ、あ、あ、やだ……」  
熱に侵されたように上せた声を漏らし、身体に力が入らないのであろう  
潤んだ目を半分伏せながらミランダは頭を男の肩に預けて愛撫に耐えるように皮膚を噛む。  
 
ぬるぬると柔らかく滑る肉の重なりに、蜜を絡めた指をゆっくりと潜らせて行く。  
ミランダが逃げるように腰を浮かせたのを、リーバーがもう一方の腕で捕まえて  
引き寄せると彼女が苦しそうにくぐもった息を吐いた。  
指で内側をほぐすようにくにくにと動かしてミランダを乱しながら、指を一本から二本、  
二本から三本にしたころには、彼女のそこはたっぷりと濡れ自ずから指を飲み込んでいく。  
引き抜いて、青年はそれをミランダに見えるように掲げてみせた。  
「ほら、とろとろ」  
彼の指はふやけて、ミランダの蜜でてらてらといやらしく光を帯びていた。  
これみよがしにその指を舐めればミランダは絶望した人間のような表情をして  
耳まで真っ赤に燃やしリーバーを恨めしそうに睨んでくる。  
すえた味と女の匂いがして、彼女の態度にも、情欲がかきたてられた。  
おそらくは、きっとミランダも。  
「やだ、ばか。あ、いや、ばかじゃないです、けど、あの、ええと」  
気が動転したのだろう、ミランダは両手で顔を覆いながらぶつぶつと呟く。  
シーツが彼女のかたちに乱れて、いい眺めだった。  
「いいって、ミランダ」  
リーバーは情交に飲み込まれていくミランダの可愛らしい反応を愉しみながら、  
その表情を塞ぐ彼女の手の甲や頬や髪に、ちゅ、ちゅ、と悪戯に口付けを落としていった。  
手指で彼女の性器に繰り返し刺激を与えながら、自分の昂ぶりを彼女の腿に押し付ける。  
「ふ、あ、あっ」  
刺激に身震いをして、ミランダはリーバーの身体にしがみついた。  
徹夜続きの自分によくもまだ体力が残っていると、男の引き締まった肌を掻き抱く。  
リーバーの下半身は既に熱がたまり過ぎて、かたく勃ちあがっており  
やわらかな女の肌を滑るほどますます敏感になって、先から、つ、と粘液が溢れていく。  
「……挿れ、て、いい?」  
ミランダの顔を覗き込むようにしてリーバーは言いながら、返事をもなく待たず  
両手で腰を支えるようにして引き押し倒し、腿のつけねに苦しく膨張したペニスを添えた。  
「え?う、は、はい」  
思考が追いつかないのか呆けた声をあげ、ミランダが不安そうに眉を寄せて彼を見上げた。  
触れる前からずっと彼女の深い色をした瞳は濡れていたと思う。  
泣き虫ミランダ。  
 
「っじゃ合意の上で、お邪魔します」  
安心させようと思ったけれど、きっと、苦笑いになってしまった。  
リーバーは覆いかぶさるようにして、ミランダの唇を塞ぎながら中に腰を進めていく。  
腰を揺らしながら、濡れた膣をペニスで掻き分けるように奥へ奥へとめり込ませる。  
「ひあっ、はぁ……っぅう」  
ミランダの首が仰け反り、身体を強張らせて身震いした。  
リーバーの真剣な眼差しが怖くて息ができないような錯覚に陥って、泣き喚きたくなる。  
 
ぬるぬるとしたミランダの中の弾力が、異物を押し返そうとリーバーのペニスを拒み  
きちきちとした圧迫感に、快感と焦らされる期待感とが加わって苦しい。  
「ちょ、ミランダ、リキまないで」  
ごめん、と思いながら、リーバーはミランダの腰を力を込めて両手で引いて、  
早急に楽になりたくて、一気に勢いよく強引に奥までペニスを打ちつけた。  
「ふぁ!!い、っん……!」  
短く喘いで、痛みにミランダの目からぽろぽろと涙がこぼれる。  
じんわりと体温が混ざり合って、皮膚の重なり合う感触や、匂い、温度、湿度。  
全てが敏感に感じ取れ、漣の様に快感に繋がっていく。  
挿入し、受け入れられた昂ぶりに、ミランダの肉の波が、ねっとりと絡み付いて  
「あっ、たけーです、気持ち、いい」  
リーバーが距離がゼロになったミランダの身体を感慨深げに囁きながら抱きしめる。  
やっと酸素が巡るような心持ちに、ミランダが深く息を吐き、細い腕で応えるように  
男の広い背中に腕をまわした。  
何か気の利いたことを言わなくては、と変に胸がざわめいてしまう。  
しかし快感か焦燥か逆上せか疲労か眠気か、意識が朦朧としてミランダは  
「ど、うも、……あの、…し、死にそうです」と呟いて白い頬を歪めた。  
クマに縁取られた目を滲ませながら、弱々しい握力をふりしぼって  
また、細い腕で髪を?み引き寄せ、リーバーの額に口付けを贈る。  
すぐにミランダの手はシーツに落ちて、力なく沈む。  
「……動くよ?」  
ミランダの言葉と行為に白くなりそうな意識を抑えて、青年は微笑み、  
不本意な頭突きの痕跡、赤くなってしまった額に、返す様にリーバーは唇を落とした。  
 
力を使い果たしたかのような女の細い腰を支えながら、それでも繋がった部分は  
抱き合うように熱く蠢いてリーバーを捉えて放さない。  
抜けないように腰をゆるゆると引き、また奥へと突き挿れる。  
ミランダの様子を伺いながらリーバーは律動を繰り返し、肌を擦り合わせていく。  
ぐちゃぐちゃと濡れて潤んだ女性器の弾力がリーバーを包み絡みつき、  
神経が追い詰められて、動かないと何かを逃してしまうように感ぜられて、  
ミランダの柔らかい肢体を浮かせて、奥へ奥へと幾度も腰を揺らし捻じ込んだ。  
「はぁっ……っ、ん、ん」  
呼吸を乱して、リーバーが動くたびにミランダが涙を含んだ嬌声を吐き出す。  
リーバーが暴れるのに併せて腕が振るえ、頭が揺さぶられる。  
ミランダの意識が目の前のリーバーだけで埋め尽くされ、強制的に近い快感に襲われて、  
羞恥心さえも手放してしまいそうに思う。  
「もっ、と……んっ……!」  
もっとおてやわらかにしてくれないと困る、と言いたいのに、  
青年の塊に身体を埋められるたびにミランダは乱れ喘いでいるから言葉にならない。  
リーバーにしてみれば、手加減してるんじゃないわよアホくらいの衝撃的な科白となる。  
「う、わ」  
エロイ。精神か心臓に何か刺さったような気がする。  
リーバーの背中にぞわぞわと戦慄が走って、鳥肌が立つ。  
 
律動を速め身体ごとぶつける勢いで、乱暴にリーバーはミランダの身体を突いた。  
何度も、何度も、繰り返し、それしか手段がない様な心になっていく。  
性器を埋める身体がぶつかり合う音、こすれあって混じり合う精液の泡立つ音、  
そしてリーバーの荒い息とミランダが耐える様に漏らす呻き声が部屋に響き渡る。  
「ひぁ……!ぁあっ!……っは……ん!」  
ひくひくとミランダの性器が男の酷い仕打ちに抵抗してきつく締まった。  
リーバーはのぼりつめる感覚に集中する。  
溶けてしまいそうなほどやわやわとした女の肉に抱かれながら、小刻みに腰を撃って  
快感をひとつ残らず搾り取るべく、逃がさないように急激に追いつめる。  
苦しいくらいの交わりあう淫蕩さに堪えかねてリーバーの身体が震えた。  
 
「っ、……出、ごめん」  
細いミランダの身体を抱き寄せて、汗ばんだ皮膚が馴染むのを心地よく思いながら  
気付いたときには既に限度を超え、溢れ、リーバーは女の内膣に白濁の欲望を吐精する。  
ペニスがどくりどくりとうわずって、どろどろと精液はミランダに全て注がれた。  
「やばいよなあ……うわ、どうしよ、なんで、オレ……」  
いつもは、もっと、もつんだけど。と自己嫌悪と倦怠感に飲み込まれてしまいそうになる。  
性欲を満たした身体に思い出したように疲労感や睡眠欲が襲い掛かり、  
このまま起き上がりたくない、起き上がるのも面倒に思う。  
そうもいかないので、リーバーは気持ちを奮い立たせながら、  
まずミランダの身体からゆっくりと性器を引き抜いた。  
つぷりと弾かれるように追い出されて、妙な気分になって苦く笑った。  
「ミランダ?」  
されるがまま静かに、ぐったりと横たわる彼女に声をかける。が、反応がない。  
やさしくしたつもりだが、強姦と言われれば間違いなくその通り。  
最悪の事態を思い描き、焦って飛び上がるようにリーバーは彼女の顔を覗きこんだ。  
 
彼女は穏やかな寝息をたてて眠っている。  
 
「……眠れたんなら、良かったよ……」  
安堵の溜め息混じりにリーバーは呟き、安らかな寝顔をぼんやりと眺める。  
明日から、きっとミランダは科学班班長を避けて生きるのだろうな、と他人事の様に思う。  
彼女はきっと、後悔して悩んで、ぐずぐずと引き摺って、きっと自分を責めて泣く。  
ごめんな、と思いながらも笑ってしまう。本当に落ちた。なんて無防備な寝顔。  
何故ミランダを連れ込んだのかリーバーは自分でもよくわからない。  
「休むのを疎かにしないでくれよ、ミランダ」  
その、クマと涙に濡れた瞳を、閉じてあげたかった。それだけかもしれない。  
悪いけれど起きた時の反応が楽しみだと考えながら、毛布を手繰り寄せミランダにかける。  
そこにリーバーも潜り込み、彼女を包み込むように向きうようにして抱きしめて、  
夜を共に越えるべく、ゆっくりと目を閉じた。  
 
「おやすみミランダ、どうか良い夢を」  
 

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