満月の晩  
雲がほとんどなく、満月の光で部屋は十分明るい  
 
リナリーはベッドの中で急に喉の渇きを感じて目を覚ました  
目の前には自分と同じ位の髪の長さの男の寝顔がある  
目を瞑って安らかな寝息を立てている姿は、普段毒舌を吐いて  
すぐに手が出る姿とは簡単に結びつかない  
神田ユウ  
同じエクソシストで、子供の頃から一緒に育った大事な仲間で  
リナリーの大事な恋人  
 
サラサラとした神田の髪を少しだけ手に取り、愛しさを込めて  
口付けをした後、側にあったシャツを素肌に直接羽織り、起こさないよう  
気を付けながらベッドからするりと降りた  
 
ベッドサイドのテーブルには情事に至る前まで飲んでいたワインが  
ボトルに半分程残っていた  
だが、いまいち飲む気にならなかったので他の飲み物を探す事にする  
 
「うーんと・・飲み物はどこにあるのかな?」  
神田の部屋へ来た事は何度かあるが、泊まったのは今日が初めてだった  
だからいまいち勝手が分からず、部屋の中をキョロキョロと見回していたら  
部屋の隅に備え付けられた本棚に目が止まった  
 
「あれ?なんか瓶が下の方に置いてある」  
飲み物かもしれないと近寄って瓶を見てみる  
近くで見てみると10本以上あり、半分は封を切ってあるけど半分は  
埃をかぶっている状態だった  
幸い本棚の近くには大きな窓があり、満月の光で瓶のラベルの文字を  
判別できる  
とりあえず近くにあった瓶を手に取り月光にかざしてみる  
 
「何これ・・・?えーとつき・・ひかり?  
あ、月光か」  
多分日本酒だ  
「こっちは、んーとra.prince」  
これはワイン・・・かな  
「これはかみ・・神仙酒」  
故郷の中国酒だ  
それから先もずらずらと出てくる酒瓶にリナリーは少々驚いていた  
「これ全部お酒・・・・?」  
しかも銘柄は日本酒から中国酒、ワインにウイスキー等何でもある  
 
・・そう言えばさっきも一人でワイン1本以上飲んでたっけ  
神田の意外な一面を見た気がして嬉しい反面、酒瓶の多さに少し  
心配になった  
 
一度さりげなく注意した方がいいかな  
リナリーは考えていたら不意に後ろから抱きしめられた  
 
「夜中に人のモンあさって何やってんだよ」  
言いながらリナリーの首筋に音を立ててキスをする  
「神田・・ッ 別にあさってた訳じゃ・・・ あ・・・」  
神田は右腕でリナリーの顔を後ろに向けてキスを仕掛けて来ながら左腕でリナリーの左の乳房をまさぐってくる  
口では神田の舌を差し入れられ、口内をまんべんなく味わわれながら巧みに左腕では胸を丹念に愛撫されリナリーの身体はいやおう無しに  
高められて行く  
神田はそうしてリナリーの身体が十分に感じて来ているのを確認した後  
不意に行為をやめた  
「・・・・・?」  
リナリーは急に神田が手を離したので不安に思い、先ほどの行為の名残のまま潤んだ眼で神田を振り返った  
「で、何をしていたのか正直に話せ」  
「え?ただ喉が渇いていたから飲み物探していただけだよ」  
「・・・まさか俺のお宝コレクションを飲んだのか?」  
「飲んでないよ  ねえ、お酒以外なんかないの?」  
「あー・・・・・ねえ・・・な!」  
「きゃ・・・!!」  
不意にリナリーの身体は抱き上げられてベッドへ運ばれて行った  
いわゆるお姫様抱っこというやつだ  
「確か酒のつまみに林檎が持って来てあっただろ あれで我慢しろ」  
そう言いながらリナリーをベッドに下ろし、神田はテーブルに置いてあった林檎と果物ナイフを手にしてスイスイと剥き始める  
リナリーは神田の器用に動く手を見ながらボンヤリとなんか手慣れてるなあ・・などと考えていた  
「ほらよ」  
ボーッとしてたらいつの間にか剥き終ったらしい  
剥いた林檎1/4をそのまま渡される  
「あ・・・ありがとう」  
なにげなく1口齧ってよく見たら兎さんに剥いてある  
「あっ・・・・あはははは!!」  
「何がおかしい」  
笑われるとは思っていなかったのだろう  
神田は軽く睨みつけてくる  
「だって、まさか兎さんに剥いてくれるとは思わなくって」  
「お前昔林檎は兎じゃなきゃ嫌だとか駄々こねただろう  
お陰で俺の得意技になったんだよ」  
「そうだったけ・・・・?ゴメン覚えてない」  
「ま、いいけど。 早く食えよ」  
言いながら自分も口に放り込む  
リナリーが食べ終わるのを待って神田はベッドに潜り込んできた  
そのままリナリーが羽織っていたシャツを脱がせにかかる  
「・・・早速?」  
リナリーの呟きには答えず身体を夢中でまさぐっている姿はなんだか可愛い  
そっと神田の背中に手を回して耳元で囁く  
「優しくしてね」  
それに応えるように神田は小鳥がついばむような軽いキスを何度も落とす  
 
そして、満月の光が朝日に変わる頃二人は再び眠りに落ちていた  
 
                              了  
 
 
 
 

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