任務から戻った神田は、自室へ向う途中でラビに声を掛けられた。  
「おーい、ユウ!」  
「・・・んだよ」  
面倒くさそうに神田が振り返る。  
「お前、今日誕生日だろ?オメデトウ」  
ラビはニヤニヤと含み笑いをしながら神田の肩に手を回すと、楽しそうに言った。  
「ユウが喜ぶプレゼントを用意してやったんさぁ。部屋入ったらきっとビックリするぜお前」  
「はぁ?」  
「ゆっくり楽しんでくれな〜、ユウ。オレに感謝しろよ」  
胡散臭い目つきでこちらを睨む神田の肩をポンポンと叩いて、ラビはのん気にそのまま歩いて行ってしまった。  
「…意味わかんねェ。なんなんだアイツは」  
神田はきびすを返し、廊下の先にある自室へと向かった。  
 
 
一週間ぶりに、自室の扉を開けた途端、神田はギョッとして目を見開いた。  
そして、すぐにラビの言っていた言葉を理解した。  
部屋のベットにリナリーがぽつんと座って待っている。  
それだけではない、何故か彼女は白い布で目隠しをされており、後ろ手で手錠を掛けられていた。  
ぢゃり、と手錠の音が響いた。  
「神田・・・?」  
嬉しそうに声を上げるリナリー。  
「・・・なにやってんだよ。それにその格好は・・・」  
「これ?んっとね・・・ラビが教えてくれたの。普通に待ってるよりこっちが良いって」  
「・・・・・・っ」  
神田は絶句して、言葉を詰まらせると、リナリーの側へ座り彼女をの後ろに目をやる。  
「ホンモノじゃねェかよ、これ・・・」  
リナリーの手錠を見て、神田は呆れて言った。  
「みたい、だね」  
と、リナリー。  
「お前・・・!わかっててこんな格好させられてんじゃねェよ!」  
「だって・・・」  
しゅん、とうなだれるリナリー。  
 
「もう、いい・・・。手錠の鍵は何処だ、持ってんなら出せ」  
「出せないの、あのね・・・」  
「なんだよ?」  
「背中の・・・団服の、中に・・・」  
「団服の、中・・・?」  
オウム返しする神田。  
「背中から鍵を、入れられちゃって・・・・えっと、ラビに・・・ごめん」  
顔を赤らめて、さらに俯くリナリー。  
「あの野郎・・・ッ!」  
頭を抱えるようにかきむしる神田。  
 
「神田、とりあえず目隠し外してもらえない・・?」  
リナリーの言葉にぴたりと手を止め、神田は顔を上げた。  
「・・・駄目だ」  
「でも、見えないと・・・不安だもん・・・」  
「あいつには黙って目隠しされて、俺が居ると不安で外してほしいか?」  
子どもの癇癪のようだと神田は思ったが、言わずにはいられない。  
「・・・だって、こうしたら神田がもっと喜ぶって、言われたんだもの・・・」  
「だからってなぁ・・・!」  
「だって私、今日が神田の誕生日だって、知らなかった!」  
「俺の誕生日ィ?んなもんどうでも・・・」  
「どうでもよくない!」  
目隠ししたまま、リナリーは身を乗りだす。  
「神田は私の誕生日を祝ってくれたのに!プレゼントもくれたのに!私は・・・神田の誕生日すら知らなかった!」  
「言わなかったんだから、当たり前だろ・・・・」  
「私だって、言わなかった。でも神田は知ってたじゃない!」  
「それは・・・」  
口篭もる神田。  
コムイの司令室にこっそり忍び込んで、彼女の履歴書を盗み見たから知っていた。とは言えない。  
「いいんだよ、別に俺の誕生日なんて・・・」  
「良くない・・・!私だって、ちゃんと・・・!あっ」  
リナリーの身体が、ぐらりと傾いだ。  
とっさに支える神田。  
「・・・・わかった」  
ふー、と神田は息をつき、リナリーの身体を抱き寄せ唇を重ねた。  
「・・・ッ!」  
突然のことに身体を固くするリナリーに、神田は言った。  
「あいつの思い通りになるのは癪だが、プレゼントがお前なら、悪くねェ・・・」  
 
するり、と音がした。  
なにも見えないリナリーは、上着のボタンを外され、外気に肌が触れた所でようやく自分の団服が脱がされていることに気付いた。  
「・・・!で、で、でもでも、目隠し・・・・!」  
身じろぎするリナリー。  
だが、神田はその身体を自身の膝の上、腕の中にすっぽりとおさめた。  
「あー?いーだろ別に。それに、手錠を外そうにも鍵はお前の服の中」  
神田は、リナリーの首筋に舌を這わせる。  
「・・・や・・・っ」  
びく、とリナリーの身体が反応する。  
「まァ、したままでもデキるしな」  
「・・・ふ、服はもう脱げてるでしょうッ!か、鍵・・・!」  
ぢゃり、と手錠が鳴る。  
脱げかかった上着は、後ろ手に掛けられた手錠のせいで床に落ちることなく、リナリーの身体を、中途半端に覆っている。  
その姿に、劣情をもよおすなと言う方が、無理だ。  
「・・・外すのめんどくせーし、な」  
「な・・・ッ」  
いつもなら恥かしがって隠す形の良い胸を、思う存分じろじろ眺める神田。  
「・・・でかくなったか?少し・・・」  
「・・・ッ!」  
なんのことかすぐ理解して、カッと頬を染めるリナリー。  
 
「このままヤるぞ?」  
神田の声は低いが、どこかからかうような響きがあった。  
「・・・や、やっぱりラビの言う通りだったんだね・・・」  
「・・・あァ?」  
やわらかなその乳房を、乱暴にもみしだく神田。  
「・・・んッ・・・、か、神田が、こういうプレイが好きだ、って・・・」  
「・・・・・・・・・・・・・・・・」  
あいつに今度会ったら絶対『六幻』の錆にしてやろう、とこっそり誓う神田。  
 
(・・・まァ、それはそれとして)  
 
「・・・だったら、どうだっていうんだ?」  
「え、あッ・・!?」  
神田の指が、濡れ始めたリナリーのそこに触れた。  
「やめるか?」  
神田の指がリナリーの中に侵入する。  
「・・・ッ!」  
震える身体に合わせてぢゃりん!と手錠が鳴る。  
「ほらもう、こんなに濡れてるぞ」  
わざと音を立てて、ナカを掻き回す。  
「ィや、あ・・・ッ」  
リナリーはたまらず嬌声を上げた。  
あぐらをかいた神田の膝の上で、リナリーは足を開いて座らされている。  
閉じることなど、勿論できない。  
「・・・お前、今すげェいやらしい格好だぜ」  
ニヤニヤと、その格好を眺める。  
「や、だ・・・!」  
「感じてるクセに、何言ってんだ」  
乳房の先の蕾を口に含み、舌で転がす。  
侵入した指が、その奥をかき乱し続ける。  
「ぁ、ふゥんッ!」  
リナリーには、その指が、舌が、どこを責めるかわからない。  
なにも見えない。  
 
緊張するリナリーの全身は、いつもより敏感になっていた。  
神田の言う通り、触れられるだけで感じてしまう。  
いや、見られているだけで。  
身体の芯が、疼く。  
「やァ、も・・・はず、して・・・!」  
涙声で懇願するリナリー。  
「どっちをだ?・・まァ、どっちも駄目だけどな」  
クク、と神田は笑う。  
ぢゃりっ  
耳障りな金属音。  
だがそれすら、神田の欲を煽る。  
「ん、くぅ・・・ッ」  
神田の首筋に顔をうずめて、リナリーは下唇をきゅっと噛んだ。  
「・・・我慢するな。声、出せよ。・・・聞かせろ」  
それは、とろけるほどの優しい声で。  
けれど神田の指は、リナリーを責めつづける。  
「ん、あッ、か、神田ぁ・・・ッ」  
「は、奥まで見えてるぜ・・・?」  
「やっ、見ないでぇ・・・ッ」  
「あーあ、トロトロじゃねェか・・・」  
「ん、ンッ、あ、あん!」  
あふれる蜜を弄ぶように、激しく指を出し入れされ、たまらずリナリーは達っした。  
ぢゃりん!とひときわ高く手錠が鳴る。  
 
「・・・ぁ、はあ、はあ、はあ・・・・」  
「・・・リナリー」  
荒い息のリナリーに、ちゅっと合図のようにキスをする神田。  
イかされて敏感になったそこに当てられたモノがなんなのか、目隠しされていてもリナリーにはすぐにわかった。  
「あ、まっ・・・!」  
・・・ぢゃりっ!  
手錠が抗議するように鳴った。  
「ふぁあんッ!」  
奥まで貫かれて、リナリーは腰を浮かせ弓なりに反る。  
「あ、やッ、神田、ンッ、あ、あん、あぁッ・・・!」  
ぢゃ、ぢゃりん!  
神田は緩急をつけて、リナリーを上下に揺さぶる。  
 
ぢゃりッ。  
ぢゃりいんっ!  
 
金属音が、淫らな水音を掻き消す。  
だが間違いなく、神田自身がリナリーの中を蹂躙している。  
「ッく、リナリー・・・ッ」  
神田の荒い息が、リナリーの耳を撫でる。  
「は、あ、ああっ、ん、ふぅ・・・!」  
「っあんま、締めんな、よ・・・」  
ぢゃりんぢゃりん!  
「もォ、やあッ、あ、ああんっ!」  
ぢゃり、ぢゃりりん!  
この戒めが、リナリーにはひどくもどかしい。  
すぐ側に、愛する人がいるのに、なにも見えない。  
抱きつくどころか、その手で触れることも出来ない。  
それなのに。  
 
身体は、いつも以上に感じている。  
 
「ン、あっ、・・・あっ、ふぁ、ぁ、ああッ」  
上気する頬。  
上下に揺れる胸。  
ほんのりピンクに染まる肌。  
嬌声をあげる唇。  
チラチラと覗く白い歯、紅い舌。  
乱れるその様を思う存分、舐めるように、見つめる神田。  
 
白い布で目隠しされたリナリーには、どろどろに溶けて繋がったそこから伝わる快楽と同じくらい感じて、いる。  
その視線を。  
だが、羞恥を感じる間もなく、快感が押し寄せてくる。  
「んっ、あ、ああっ!や、あっ」  
 
ぢゃり、ぢゃり!  
激しい金属音が、部屋に響く。  
 
「あ、ああッ、ダメ・・ぇ、もお・・・!」  
「・・・もう、イきそう、か・・・?」  
色香すら漂う、かすれた神田の声。  
「ッあ、あ、あん、ああッ!」  
激しく突き上げられ、リナリーは快楽に飲まれていった。  
 
「・・・・・神田のいじわる」  
ボタンをとめ終わったリナリーは、じとりと神田を睨む。  
「あ?」  
神田はベットに寝転がって、リナリーが団服を着るその様子をぼんやり見ていた。  
「どうせ外すなら、最初から外してくれればよかったのに・・・」  
「どっちのことだそれは?」  
神田のすぐ其処に無雑作に置かれている、白い布。  
ベットの下には、外れた手錠が投げ出されている。  
「どっちも、よ!」 ぷ、と頬を膨らませるリナリー。  
「うるせェな・・・イイ声で鳴いてたじゃねェかお前」  
「アレは、神田が・・・!神田がああいうのが好きだって言うから・・!」  
「俺が言ったワケじゃねェだろ・・・真に受けやがって馬鹿か」  
「・・・・・だって・・・」  
「・・・まァ、たまにはこういうのもイイかもな」  
神田は上半身を起こし、手を伸ばすとリナリーの髪を撫でた。  
「・・・神田の変態」  
「うるせー」  
「神田・・・」 リナリーはぺたり、と神田の前に座った。  
「・・・なんだよ?」  
「おかえり。お誕生日おめでとう」  
少しはにかむように微笑んで、リナリーは言った。  
「・・・・」  
ぽかん、とその姿を見る神田。  
が、次の瞬間・・・  
グイッ  
「キャッ」  
リナリーの細い腕を引っ張り、自分の腕の中に収め強く抱きしめた。  
「・・・痛いよ・・・神田」  
「あ?聞こえねェ」  
神田はリナリーの顔に掛かっている黒髪を軽くかきあげた。  
そして、まだほんのり蒸気している頬に手をそえると、愛しそうに見詰めて、そっと彼女に口づけた。  
 

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