頬にやわらかい感触。甘い香りが漂った気がした。  
覆われた左目の。僕の見えない側からの。不意打ちだよ、こんなの。  
「じゃあね!」  
くるりと髪をなびかせて、目の前から遠退いていく。  
「リナリー!」  
とっさに手が動いていた。  
僕の知らないうちに、僕の手はリナリーの腕を掴んで、逃がさないように。  
「・・・アレンくん?」  
ちょっとびっくりしたようにリナリーが言う。  
でもきっと僕のほうが、もっと驚いてた。  
「あっ!ごめん・・・っ」  
ぱっと手を離す。僕はなにを・・・。  
「あ、あの・・・」  
言葉が続かない。何も出てこない。  
自然と頬に手をのばしていた。  
やわらかい、やわらかい感触が、すぐにも消えていきそうで。  
頭の中が、さっきのキスでいっぱいになる。忘れたくないんだ。  
「アレンくん・・・」  
リナリーがもう一度ベッドに腰を下ろす。  
「・・・・・・おこった?」  
かすかな声。僕をのぞきこむ瞳に不安の色。  
「そんなことっ・・・」  
反射的にそう答えて、続けられる言葉はこれしかない。  
「あるはずないよ・・・?」  
「・・・っよかったぁ」  
満面の笑みがこぼれる。本当に嬉しそうに笑ってくれるから、僕も嬉しくなってようやく心が緩む。  
くすくすと笑うリナリーと、笑顔を交し合う。  
 
本当は、嬉しかったんだって伝えようと思ったその時だった。  
「・・・アレンくん、キス、したいな」  
穏やかな空気が再び緊張の色に染まる。  
僕は答えることも、拒むこともできないでただリナリーをみつめていた。  
近付いてくるリナリーに、僕のほうが身を固めてしまうと、左目のガーゼ越しに鈍く触れられた感覚。  
期待・・・確かに「キス」の言葉に期待してた自分がいて、恥ずかしく思う気持ちと、傷に触れられたことへの動揺が走る。  
「ごめんね・・・」  
僕の頬に手を添えて、リナリーが目の前で呟いたのは謝罪の言葉。どうして。君が僕に謝るの。  
「アレンくん、こんなに怪我して。一人でたくさん傷ついて。ミランダも守ってくれて、私のことも助けてくれた・・・」  
違う。先に倒れたのは僕で。そのせいで傷ついたのは君で。不甲斐ないのは僕のほうで。  
「左目・・・酷い目に遭ったって聞いて。でも、治るんだって聞いたときにね、嬉しかったの。  
 でも、それって、・・・再生してるって、普通じゃない、んだよね・・・。  
 人ならざる力で。なんで、アレンくんはそんなものを背負わないとならないんだろうって・・・。  
 でもやっぱり、治ってくれるのは嬉しくて・・・なんか、勝手にいろいろ言って、ごめんね・・・」  
どうして、そんなにも僕を思ってくれるんだろう。  
そんな泣きそうな顔しないで?僕の為に、どうして君が傷つくことがあろう。  
「いいんですよ・・・?リナリーがそんな風に気に病む必要は・・・ないです。  
 だって、僕のほうこそ、何も守れなくて、傷つけてしまった。リナリーのことも。  
 それに、僕はこの左目と共に生きていくことを決めたんです。だから、大丈夫・・・」  
なにを言えば、不安じゃなくなる?君が笑っていないことのほうが、今の僕にとってはずっと不安なのに。  
「リナリーが、無事でよかった。目が醒めてくれてよかった、安心したんです。  
 僕よりもずっと目覚めなかったくせに、ね。それなのに僕のことばかり心配してくれて。  
 ・・・そんな風に僕の為に思ってくれて、嬉しい。・・・ありがとう」  
僕は微笑んでかえす。リナリーはその大きな瞳に、僕をまっすぐに映している。  
「アレンくんが、今、ここにいてくれてよかった」  
やっと、笑ってくれたと思うと、ゆっくりと腕を回されて僕はリナリーに抱きしめられた。  
 
ドクン!  
・・・思い出す。あの空間。ロードに抱きつかれて、人間だと告げられた、あの・・・。  
『お前らヘボとは違うんだよぉ』  
ドッ!!  
左目・・・に・・・・・・  
 
違う!  
目の前の壁。白いシーツ。窓から注ぐ、光。  
僕を包み込むのは、あたたかなリナリーの身体。  
リナリーの鼓動。  
僕とは全然違う、柔らかい身体。  
「・・・・・・リナリー」  
静かに腕を伸ばして、僕も抱きかえす。  
なんて、細い身体。  
人の温もり、確かに存在することを示すその厚み、自分のものじゃない鼓動、呼吸。  
抱き合うことが、誰かとこれほどに近くなれることが、こんなにも心に響くなんて、僕は知らなかった。  
「僕も、リナリーが無事で、ここにいてくれて、よかった」  
少し腕をゆるめて顔を向き合うと、リナリーはにっこりと微笑んでくれた。  
どちらからともなく寄り合って、今度こそ、くちびるとくちびるが触れ合う。  
信じられないくらいやわらかくて、それはわずかな時間だったけど、今度はもう消えてしまいそうだとは思わなかった。  
一瞬みつめあって、それから目を閉じてもう一度触れ合う。  
「ん・・・・・・」  
互いにほんの少しだけ食みあった。  
乾いていたくちびるが、しっとりとした。  
「リナリー・・・やわらかい。あたたかいね」  
肩の感触ですら丸みを帯びていて、男の身体とは違うんだと思った。  
リナリーは僕の背に手を回して感触を確認するように移動させた。  
巻かれた包帯の感触が途切れたところで、手がとまる。  
 
「アレンくん」  
リナリーが僕の右手を捕らえて導く。それは、リナリーの左胸へと。  
「・・・っリナリー?」  
初めて触れた女性の胸は、今まで感じたことがない類いのやわらかさで。  
力を込めてみたいと思う気持ちと、そんなことをしたら壊れてしまいそうと思う緊張とが僕の指をこわばらせた。  
「私はいま、ここにいるの」  
今度はリナリーが僕の左胸に、それは心臓の上に、手をのばした。  
「アレンくんも、・・・いまここにいる」  
僕の右手から、リナリーの鼓動が伝わる。  
トク、トク、トク・・・と少しはやめの、規則正しいリズム。  
ミランダさんの時計が僕を助けてくれて、リナリーを奪い返したあの時。  
この鼓動を僕は確認した。  
「人形」なんて言われて、恐かった。  
リナリーの命が失われて、あの身体が本当にただの人形になってしまっていたとしたら・・・そんな最悪の思考に囚われもした。  
あの時の、リナリーの右手から感じ取った鼓動の安心感・・・その鼓動が今まで続いていて、響いている。  
「この、一緒にいる時間を、大切にしたいの。アレンくんの鼓動が感じられる時を。  
 エクソシストとして、死ぬわけにはいかないって思ってるけど・・・それでもどうなるかはわからないから」  
窓から光が差し込んで、リナリーのほほえみを彩る。  
「だから、私・・・私のこと、アレンくん知っていてほしい。見ていてほしい。  
 一緒にいられる間に、私のこと残しておきたい、・・・全部」  
それって、つまり・・・  
「私も・・・アレンくんのこと、知りたいと思うの」  
僕は鼓動を感じていた右手に、かすかな力を込めて、問う。  
「いいの?」  
「うん・・・」  
とつぶやいて、リナリーは小さくうなづいた。  
 
少しずつ右手を沈めてみると、僕が込めた力に合わせてその胸のかたちが変化する。  
柔らかな弾力が、力を抜くとそれを元に戻して、僕はふわりふわりと軽く、弾むように何度も触れた。  
「・・・アレンくん、瞳、とじて?」  
え?と僕が一瞬、呆気に取られてしまったので、はやく!と言わんばかりにリナリーの腕が僕をつっぱねた。  
「は、はい!」  
右目も閉じてしまうと、シュルっと衣擦れの音が耳に届いた。  
息が、詰まる。  
普段は気にすることもない音なのに、今は他に音を発するものもなく、僕の神経はいやおうなく耳へと集中する。  
布と布が擦りあう音がするたびに、見えない光景を想像して全身がざわついた。  
「・・・・・・いいよ」  
小さく、僕の闇を解除する言葉が発せられた。  
白い光に浮かびあがるリナリーの姿。  
両手で胸元を隠して、長い黒髪はその輪郭に沿って流れ落ちる。  
白いワンピースの部屋着は床上に溜まってそのかたちをとどめておらず、今もリナリーを覆うのは下半身の下着だけ。  
「・・・リナリー」  
そっと、前で閉じられた腕を掴まえる。  
「あ、あかるいからっ、やっぱり、はずかしい・・・な」  
僕はリナリーの手にキスを落とす。  
「見せて?」  
捕らえた腕は抵抗なく開かれた。  
初めは、直視していいものかと戸惑ったけれど、細い身体に、震える胸に目を奪われる。  
「綺麗だ・・・」  
自然につぶやいてた。  
 
「アレンくんみたいに、怪我、負ったりしなかったから・・・ありがとう」  
確かに、そういう意味でも綺麗な身体なんだけど。僕はクスリと笑った。  
「そういう意味じゃなくて、ね」  
今度は僕がリナリーの胸元に手を伸ばす。  
「今は半分しか見えないから。視界が狭くて・・・残念だな。もっと、リナリーのこと見たいのに」  
だから、触れて感じたい。  
ついに、じかにリナリーの肌に手が届く。ぴくっとリナリーの身体が反応した。  
布越しよりもっともっとやわらかな胸。なめらかな肌の感触。  
隔てるものがなくなって、吸い付くみたいに完全に触れ合うことができる。  
右手でさっきみたいに触れていると、てのひらに異質の手触りを感じた。  
そこは胸の頂上で存在を主張している。  
「んっ・・・ん」  
指で触れてみるとリナリーがわずかに身を引いた。  
「あっ・・・痛い、ですか?」  
「え、や・・・ちがう、けどっ」  
言葉を詰まらせながらリナリーはそう答えた。  
なら、触っていてもいいだろうか。僕は再びその尖りをころがすように指を動かした。  
「・・・っ、・・・んっ」  
そうするとリナリーが反応して、それで僕はますますそんな様子が見たいと思う。  
自分のうちのこんな感情を、僕は今まで知らなかった。  
「リナリー、気持ちいいですか?」  
つい問うてしまった。それでも本当にいいのかどうか、不安に思う気持ちを掻き消したかったから。  
「・・・へ、へいき・・・っだから、・・・きかないで?」  
信じれば、いいんだね?君の身体を。  
まだ多少の痛みが残る左手をリナリーの背中にまわして、その肌を楽しむ。  
空いたもう片方の胸には、・・・口を寄せたい。  
 
顔を近づけて、さっきのキスみたいにそっとくちびるで食む。  
「あっ・・・」  
高い声が短く響いた。その声に後押しされて舌で触れてみる。  
びくびくとリナリーが背を丸めた。同じくらい、僕の舌にも甘美な痺れが拡がる。  
スッと背中の手を滑らせると、今度は丸まった背が弓なりに返る。  
僕が何かするたびに変化する身体が嬉しい。  
左手をうろうろと這わせて、腕に辿り着いたときに、そこが少し冷えているのに気が付いた。  
「寒いですか、リナリー?」  
はっとしてそう言いながら顔を上げると潤んだ瞳と目があった。  
上気した頬、少し上がった息、切なげな表情に、僕の心も切なくなる。  
「・・・え?ううん、だいじょうぶだよ・・・?」  
僕が見上げ、リナリーが見下ろす位置にいて、黒髪がぱらぱらと降り注ぐ。  
僕は両手でリナリーの肩を掴み、  
「ちょっとすみません」  
と、リナリーを押し倒した。  
「きゃ・・・」  
長い髪がシーツへと、波紋が広がるように中心から流れて広がった。  
ベットに黒と白のコントラストが映える。  
「このほうが、背中、あったかいですよね」  
あれ、リナリーが固まった。  
「あっアレン・・・くん、その・・・ごめ、あ、怪我してるのに・・・私、なんか、すごいこと・・・」  
僕に倒されて、慌ててるみたいだ。先に誘ってきたのはどっちだっけ?  
 
「アレンくん、身体・・・」  
「もう、平気です」  
「うそ」  
「・・・ほとんど、平気です」  
パシッと胸元の包帯が覆っている辺りを叩かれた。  
「ホントねっ?」  
ちょっと怒ったように言うリナリーが、すごくかわいい。  
でもリナリーばかりを露わにしていることに罪悪感。  
僕がこのシャツを脱げば、身体を覆う包帯がリナリーを悲しませるだろうか。  
だけど僕だってもっとリナリーに触れたいし、リナリーにも直接触れてほしいと願う。  
意を決して衣服を取り払う。ところどころに包帯が巻きついててなんだか申し訳ないけど。  
「もっと、近くにいってもいいですか?もっと、触れ合いたい」  
リナリーの頬に手を添えると、僕をみつめて腕をまわしてくれた。  
包帯の途切れた隙間をぬって、リナリーの手が直接触れられる僕の身体を求める。  
僕もリナリーの全身に手を滑らせ、キスを落とす。  
いつしかあの美しい脚に触れていた手をだんだん上に、その脚の付け根に進め、やがて下着で覆われた部分で手を留まらせる。  
もうあちこちに触れられているのに、さすがにここは気が引けるのか、リナリーがこわばる。  
「取ってしまって、いい?」  
そう訊ねると、少しの間があった。  
「・・・アレンくんの、そうやっていちいち訊くの・・・、はずかしいんだって・・・」  
否定しないのなら肯定ってこと。僕は僕で、確かめなきゃ不安に思ってしまう気持ちもあるんだけど。  
ならその言葉に従って、最後の砦を取り払う。  
 
リナリーの全てが露わになって、僕は息を呑む。  
薄い茂みへと侵入するとリナリーの脚が閉じるように力が加わったけれど、指を進める余裕はまだ残されていた。  
恐る恐る進んでいくと、ぬるっと水っぽい感触がした。  
「やぁっ」  
僕は辿り着いたようだ。そこは随分あたたかくて、蜜のせいで幾らでも指が滑る。この蜜は、その為の反応。  
探るように何度も往復させていると、次第にリナリーの脚の力が抜けてきた。  
「・・・ぁ・・・ふ・・・、やっあ・・・」  
吐息に声が混じる。全身も、ほんのりと色味が増してきてる。  
僕を濡らす蜜によってなめらかに滑る、やわらかい花唇が堪らなく気持ちいい。  
探る指を深く深くしていくと、僕を飲み込んでいく箇所に辿り着いた。リナリーの中心、見つけた。  
「は・・・そこ・・・・・・っ」  
徐々にリナリーの中へと沈み込む。そこはやわらかく僕の指を包み込んで、ずいぶん狭いと思った。  
「痛い、ですか?」  
またも訊いてしまうと、ふるふるとリナリーは首を振った。  
中でちょっと曲げてみると、びくっとリナリーの腰がはねる。  
「ぃ・・・あっ、ア、レンく・・・っ」  
中をあちこち探ってみると、リナリーが途切れ途切れに声をあげた。  
溢れる蜜が増して、僕にイイって伝えてくれる。  
いったん引き抜いて指を滑らせた瞬間に、別のトコロを掠めたみたいで。  
「ぁあっ!」  
反射的にリナリーがあげた声が思いのほか高い。さっき一瞬触れたのは・・・  
「ここ?気持ちいいですか、リナリー?」  
花唇のそばの芽を捕らえて、今度はわざと問いただしてみた。  
「や・・・ぁああ・・・・・・」  
敏感なそこに触れられて、全身を震わせながらリナリーの手が移動する。それは、僕自身へと伸びてきて。  
リナリーの指が、存在を主張する僕自身をそっと撫でる。一気に震えが走った。  
「っ!!」  
「・・・アレンくん、気持ちいい?ねぇ、感じる?」  
大きな瞳が、僕を見上げて答えを待っている。言葉にするのには、確かにちょっと戸惑いがあって。  
「気持ちいい、ですよ・・・っ」  
振り絞るように答えたから、リナリーはくすくすと笑った。  
わかったから、どんな気持ちかは。でも、君が触れたせいで、僕自身もかなり限界かも。  
 
僕はリナリーの膝を割って身体を割り込ませる。そのまま僕自身をその場所へと当てた。  
「あっ・・・」  
「ん・・・リナリー」  
先端に触れたやわらかな感触に震えた。ゆっくりと沈めていく。  
「んん・・・は、ぁ・・・いっ・・・あぁ・・・・・・!」  
リナリー、震えてる。少し苦しそうで僕は不安に思うけど、でも僕のほうはもうとどまることはできない気がする。  
やわらかくあたたかな内壁に締め付けられるこの未知なる感覚は、甘く痺れて痛いくらいに僕に響く。  
もっと深く、全て包み込まれてしまいたい。  
「リナリー・・・っだいじょうぶ、ですか?」  
声を掛けて気遣うふりをしたところで、圧し進める腰は止まらないけど。  
「んっ、く・・・ふぁ・・・や、この、ままっ・・・きて?」  
潤んだ瞳から今にも涙をこぼしそうにして、それでも僕を受け入れてくれると言う。  
堪らなくなって、リナリーを掻き抱いてこれ以上ないくらいに二人の隙間を埋めた。  
「全部っ・・・いったよ?」  
その頃には僕にまわされたリナリーの腕に、ずいぶん力がこもっていて。  
「う・・・んっ、そのっまま・・・、ちょっと・・・ま・・・って?」  
リナリーは、やっぱり辛いんだろうか。本能的に動いてみたいと思う衝動を抑えて、様子をうかがう。  
内側は時折ぴくんと僕を締め付けてくる。不定期なその動きが、次第に回数を増す。変化してきたみたい・・・?  
ゆっくりと引き抜いてみると、内壁が絡みつくようにうごめいて、ますます僕を煽った。  
「あっあ・・・アレンく、んっ」  
リナリーが僕を呼ぶ。  
 
もう止まらないから。僕が突き上げるたびにリナリーは声を上げる。  
背に回した手が僕の包帯を掴んで、きちんと巻きつけたそれの流れを崩した。  
「はっ、や、んん・・・あっ!ぁ、ああぁ・・・だ、だめ・・・っやぁっ!んあああっ」  
背中を浮き上がらせて、リナリーの全身がこわばる。  
「んっく!」  
同時に内側がきつく締め付けてきたから、達しそうになって僕はあわてて引き抜いた。  
そのまま吐きだして、リナリーに白い飛沫が散る。  
身体に力が入らなくてリナリーのそばに横たわると、そっと頭を寄せられた。  
瞳を赤らめて、リナリーが微笑む。  
でも、リナリーのおなかの上を、僕が放ったものが汚していて・・・。  
「す、すみませんっ、こ、これ・・・」  
「平気。あとできれいにしてくれる?」  
こういうのってなんだかすごく照れくさい。  
「アレンくんの包帯は、私がきれいになおしてあげる」  
リナリーは人差し指をたてて、僕の口元に運ぶ。  
「これは二人の、ヒミツだものね?」  
窓から降り注ぐ光のせいだけじゃなくて。リナリーの笑顔がまぶしい。  
あんまり、かわいいことしないでほしい・・・そう思いながら僕はリナリーのその手にキスをした。  
 

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