「ねぇミランダ?」
「なぁに、リナリーちゃん?」
「今夜私の部屋にお泊りしない? たまには女の子同士でパジャマパーティーしようよ♪」
――今思えば、その時すでに自分は甘い罠に捕らえられていたのかもしれない……
鏡の中をぼんやりと見つめながらミランダは考えた。そこには薄いサテンのガウンをまとった自分と
黒いレースのベビードールを纏ったリナリーが映っている。
遡ること数分前、湯上りの二人はピカピカの肌を光らせて笑いあいながらリナリーの部屋へと戻って
きた。二人が身動きするたびに、リナリーの髪からはバラの香りが、ミランダの髪からはラベンダーの
良い香りが立ち昇り、温まった肌は内に真珠を閉じ込めたように輝いている。
眠る前に肌の手入れをしようとミランダがリナリーの鏡台の前に座ると、その背後にリナリーが歩み
寄ってきた。
「ミランダ、私にブラッシングさせて?」
「え、ええ… いいわよ」
ミランダの柔らかい巻き毛が大好きなのだと、つぶやきながらリナリーは丁寧にミランダの髪をくし
けずる。
ブラシが頭皮を擦る感覚にうっとりと目を細めていたミランダは、次の瞬間小さな叫び声を上げた。
不意に首筋に押し当てられた柔らかく熱い感触に驚いて、目を開くと鏡に映っていたのは、髪を持ち
上げて自分のうなじにキスをするリナリーの姿だった。
「なっ… リナリ、ちゃ…」
驚いて目を見開いたミランダの耳元でリナリーがヒソヒソと囁く。
「ミランダの肌…とってもキレイね」
リナリーの細い指がミランダの首筋を滑り降りて、鎖骨の形を確かめるように往復する。
桃色の舌先をちょろりと覗かせて、うなじを舐め上げるとミランダの耳朶を唇に挟んで吸い上げた。
「あ… や、あ……」
「キレイな肌をもっと見せて」
耳朶をくわえたまま含み声で囁くと、リナリーはミランダの肩からガウンを滑り落とす。
丸く白い乳房が露になった。こんもりとした乳房にはうっすらと静脈が青く走っている。
その豊かな乳房を下から持ち上げるようにして、リナリーはゆっくりと揉みはじめた。
何が起こっているのか把握しきれぬまま、ミランダは呆然と鏡の中を見つめていた。
頭の中には霧がかかったようにぼんやりとして、下腹の奥から何か熱いものがじわじわと
こみあげてくるのを感じる。
「ステキ… おっぱいもキレイね」
「あ… リ、ナリ… ちゃん?」
柔らかく揉まれるうちに先端がこりこりと硬くしこってくる。リナリーはその尖りを
注意深く避けるように、その周囲を撫でさすってはまた揉みこむ。
「ハッ… ハァッ……」
ミランダの呼吸が荒くなると、それを待ちかねていたかのようにリナリーはミランダの
顎をすくい、自分の唇をミランダのそれに重ねた。
ミツバチの針みたいに尖らせた舌を忙しなくミランダの咥内に出し入れしながら、リナリーは
ミランダのガウンを腰下まではだけてしまう。
身を屈めて口付けを交わしながら、リナリーは右手をミランダの太腿へと伸ばす。
左手はミランダの乳房を握ったまま、相変わらず頂点の尖りの周りをそっと愛撫している。
その器用なリナリーの攻撃に最早なすすべもなく、ミランダは脱力して足を自ら開いた。
唇を離して、くるりとミランダの前に回りこんだリナリーは、ミランダの内腿を爪の先端で
こすりながら口を開いた。
「ミランダって可愛いのね……」
「リナリ… ちゃん……」
ゆっくりと内腿を撫で上げ、ふっくらと盛り上がった丘の外側も爪の先で撫で上げては
撫で下ろす。じわじわとほころび始めたミランダの秘所、その一番敏感な部分に触れそうで
触れないリナリーの指先は、ミランダの体内の熱をあおるばかりだった。
「ね、ミランダのここ、少し濡れてきたみたい…」
「あん……」
「ほら、自分で分かる?」
言いながらリナリーは下着の脇から指をもぐりこませて、潤み始めたミランダの秘裂を
そっとなぞった。
「ぅぁ……」
「フフ…、熱くなってる…」
「やぁっ……」
自分でも気付かぬうちにミランダは腰を少し持ち上げていた。と、リナリーは不意に
ミランダから身体を離し、近くにあるベッドに歩み寄ると、腰を下ろす。
「あ… リッ、リナリ… ちゃん……」
思わず頼りなげな声を上げたミランダを、リナリーは少し意地悪な笑みを浮かべて見つめる。
「ミランダばっかりダメよ。次は私の番」
「え……?」
「ほらぁ、自分で脱いでこっちに来て。そしてキスしてちょうだい」
にこにこと笑顔で言ったリナリーは、身をくねらせてレースのベビードールをあっさり脱ぎ去った。
はちきれそうな乳房がまろびでて白く輝く。リナリーはショーツを身につけてはいなかった。
引き締まったウェストラインの下には黒く艶やかな茂みがランプの灯りを怪しく照り返している。
リナリーはミランダの視線を捕らえたまま、膝をたてるとゆっくりとそれを左右に開く。
それから細い指先を秘部に添えると、秘裂を開いて見せた。漆黒の茂みに包まれた内部には赤い
肉が見え、その場所が潤いをたたえているのがはっきりと見える。そこがキラキラと灯りを反射して
輝いた瞬間、ミランダは軽い眩暈に襲われて思わず目を閉じた。
目を閉じたまま手をぐいと引かれ、リナリーの上に倒れ込む。目を開けるとリナリーの顔がすぐ
目の前にあった。リナリーの頬は上気し、瞳はキラキラと輝いている。
「さ、キスして。ミランダ」
リナリーの言葉に、催眠術にかかったようにミランダは顔を上げ、そっと唇を重ねた。もちろん舌
を使うなどという器用な真似がミランダに出来るはずもなく、それは不器用なキスだったが、
リナリーは喉の奥で満足げに呻いたかと思うと、再びミランダの乳房に両手を伸ばした。
「ぁっぁっぁっぁっ……」
きれぎれの喘ぎ声が室内に響いている。リナリーが時間をかけてミランダの身体を愛撫しているのだ。
ゆっくりと乳房を揉みながら、今度は敏感な乳首をも口に含んで丁寧に攻める。ただしその愛撫は
あくまでも優しくソフトなもので、ミランダに鋭い快感を与えるまでにはいたらないようだった。
すでに全裸になっているミランダの肌の表面には霧をふきつけたような汗が浮いている。
それに絡みつく、やはり全裸のリナリーの身体もうっすらと汗を浮き出させ、艶やかに光っていた。
「ねぇ、ミランダ? 答えて」
「――な、なぁに… リナ、リちゃん」
「ミランダもこうやって… 自分でしたりするの?」
言いながら、リナリーの細い指先がミランダのクリトリスを外側からそっと摘んだ。その途端、
ミランダの脊椎を鋭い快感が走り抜けて、ミランダは思い切り腰を反らせて息を呑んだ。
「やっ! ぁ…やぁ… そんな…こと」
「あら? 自分ではしないの? じゃあ誰かにしてもらってるの?」
「いっ… いいえ…… いいえ……」
荒く呼吸しながら首をふったミランダを、リナリーはさらに質問攻めにする。
「じゃ、ミランダってこういうの初めて?」
「ぁッ… んん……」
がくがくと頷いたミランダにリナリーは嬉しそうな顔で微笑んだ。
「ごめんね、ミランダ。初めてが好きな相手じゃなくて」
言いながら、ミランダのヴァギナに指をそろりと挿しいれる。
「ゃぁっ……」
「でも、女の子同士もいいものよ」
ゆっくり、ゆっくりと指を抜き差ししながら、リナリーは実に楽しげに言葉を続ける。
「私は男の人も好きだけど、女の子も大好き……」
「あぁっ…!」
リナリーの指がいい所にあたったのか、ミランダが大きな声を上げた。
「でも、やっぱり男の人の方が好きかな……」
「じゃ… じゃあ、リナリーちゃんはこういう事、いつもしてるの?」
息も絶え絶えになりながら、ミランダはリナリーに問い掛ける。
「いつもって訳じゃないけど…。そうね、兄さんの目を盗んでしたりするわ」
リナリーはミランダの膣内から指を抜くと、その指をペロリと舐めて笑った。
「だっ… 誰と?」
「色々よ。――例えば、アレン君。それからラビ」
「まぁ…」
「でも若い子は案外ダメね。リーバー班長はステキよ…それからマリ――」
「――!!」
途端に息を呑んで青ざめたミランダの顔を、意味ありげに見守りながらリナリーは
笑い声を上げた。
「冗談、冗談よ。マリとはなんでもないから安心して」
「わっ… 私そういうつもりじゃ……」
恥ずかしそうに裸体をくねらせるミランダの身体越しに手を伸ばすと、リナリーは
サイドテーブルの引き出しをあけた。
「ね、ミランダ? マリとセックスしたいならちゃんと予行演習しておかなきゃ」
「よこう、えんしゅう?」
「だってあの身体よ。立派な道具の持ち主にきまってるじゃない?」
言いながらリナリーが引き出しから取り出したものを見て、ミランダの目が驚きに大きく
見開かれた。
取り出されたのは二本の大きなディルドだった。
黒と白のディルドはよく見ると形や大きさが微妙に違うが、どちらも大きいことには変わりない。
男性自身を模ったその玩具を眼にするのも初めてのことで、直視できず顔を赤くしたミランダを
リナリーはぎゅっと抱き締めると耳元で再び、かわいいと囁いた。
「黒いのと白いの、ミランダはどっちがいい?」
ミランダの耳朶をちゅっと吸い上げながらリナリーは聞く。
「ふぁ… や、どっちなんて… そんな……」
「じゃ、私が代わりに選んであげるね……」
優しく囁きながら、リナリーは両手のディルドを振ってみせた。
「そうね… マリはきっと雁高だって気がするの。だから…こっちの黒い方」
言いながらリナリーはミランダの頬を黒いグロテスクな代物で撫で上げた。
「かりだか……?」
「フフ… ミランダは心配しなくても大丈夫。私の言うとおりにすればいいよ」
不安げにつぶやいたミランダを、クスクスと笑いながらリナリーは押し倒し、
軽くキスした後、自らの身体をくるりと回した。ミランダの足元の方に頭を置いて
横になった形で、平たく言うと、二人はつまり69の体勢になったということだ。
「ほら、握って…。 自分の中に入れるのよ」
甘く囁きながらミランダの右手にディルドを押し付ける。ミランダはぎこちなくそれを
受け取ったが、ぶるぶると手が震えるせいで今にも取り落としてしまいそうだった。
「やっ… こんな大きいの… 入るわけないわ……」
泣き声を上げるミランダの秘所にリナリーはゆっくりと顔を近づけた。
「大丈夫よ。こんなに熱く濡れて……」
舌を伸ばしてミランダの入り口をつつくように舐める。
「あっ ああっ……」
「中だってこんなに蕩けてる……」
言いながら、自分の手をミランダの右手に添えて、ディルドをそっと入り口まで導いた。
「むっ、無理よ……」
「無理じゃないわ… ほら、見てて」
欲望に濡れた声で囁いたリナリーは、ミランダの目の前でゆっくりと自分の足を開いた。
左手の人差し指と中指でくぱりと自らの秘裂を割ると、蜜を湛えた入り口に白いディルドを
あてがう。
「あっ… はぁ、ん……」
甘い声を上げて目をつぶったリナリーの秘所にミランダの目は釘付けになっていた。
男根を模した玩具はひどく精巧に出来ていて、亀頭から裏筋、太い血管まで浮き出ている。
その男根がゆっくりとリナリーのそこに飲み込まれていくのだ。 リナリーの花弁は
ヒクヒクと柔らかく蠢いて男根を自ら咀嚼するように飲んでいく。ミランダがかたずを飲んで
見守るうちに、いつの間にか根元まですっぽりと埋まっていた。
「あ……」
思わず驚愕の声を漏らしたミランダの指を掴むと、リナリーは飲み込んだその場所に導き、
埋め込まれた周辺に触れさせた。触れさせた指をそのままにして、リナリーはゆっくりと
ディルドを抜き差しし始めた。
「す、すごいわ……」
ごくり、とミランダの喉が鳴った。
「あっ あっ あっ あう、んん」
リナリーも耐え切れない喘ぎを漏らしながら、徐々に抜き差しを激しくする。
ミランダの指は溢れ出した蜜にまみれ、薄い花弁越しに、硬い玩具がリナリーの
秘所を容赦なくいたぶる感覚が生々しく伝わってくる。
不意にリナリーがディルドのスイッチを入れ、モーターが回転する音にミランダは
驚きの叫びを上げると手を放した。
「あっくぅっ、 うっ うぁあああああーーーーん!」
高い声を上げてのけぞったリナリーの花弁が複雑に収縮したかと思うと
リナリーはガクリと脱力し、花弁のふちからはトロリと蜜がこぼれだした。
「リッ、リナ、リナリーちゃんっ! だっ 大丈夫?」
青ざめて叫んだミランダの顔を、薄目を開けて見たリナリーがにこりと微笑む。
「ええ、大丈夫… 今度は… ミランダの番よ…… ううん、一緒に」
くわえこんだディルドがリナリーの膣の不規則な収縮にあわせてピクピクと動いている。
リナリーはその玩具を自らの中に突きたてたまま、もう一つの玩具を手に取りミランダの
太腿に手を伸ばした。
「やっ! やぁっ!」
「ほら、目をつぶって」
「むっ 無理よ、無理よ。リナリーちゃん」
「ダメ、目を瞑ってこれをマリのだと思いなさい」
両腿を固く閉じて抵抗していたミランダがその言葉にピタリと動きを止める。
「マリのは、きっともっと大きいわよ。 つまり、これぐらい受け入れられなくちゃ彼とセックス
できないってことよ」
「そっ… そんなぁ……」
リナリーの指が自分の秘所を割り開く感触に、抵抗を諦めてミランダは目を閉じた。
虹色に光を反射する黒い茂みには長くしなやかな白いペニスが。
チョコレート色の柔らかな茂みには雁の張り出した太く黒いペニスが。
飲み込まれ、突き立てられては、柔らかなひだをモーターの回転でかき回す。
汗を浮かべて、桃色に光る肌を絡ませあって、丸い乳房を弾ませて。
二つの艶かしい肢体は一晩中揺れていた。
ここは黒の教団本部。女子専用フロアのとある一室。
秘められた情事を、遠く離れた場所から聞き取る聴力を持つ男が一人だけ存在することも。
その男が自分の名前を呼ばれる度に身悶えしていることも。
二人の喘ぎ声と、粘着質な水音に、彼自身の分身を滾らせていることも。
それはこの際無関係だったりするのだった。
<了>