ミランダ・ロットーが落ちていた。  
 
修練場での鍛錬を終えて部屋へ戻る道すがらに力尽きてしまったのだろうか、  
黒の教団の迷路のような施設内、螺旋状にのびる廊下に、ミランダが落ちている。  
いつからここに倒れていたのだろう。面倒な拾い物をしてしまった。  
教団服にイノセンスも携帯しているというのに、なんて無防備な戦闘員。  
細い肢体が冷たい石床に伏して、青白い首筋にはぞっとするほど生気が見られない。  
巡回しているゴーレムが生体反応の異常に気づいていれば医療班に救護されるはずなのだが、  
まさに今倒れたばかりなのか、それともまるで人形のようで感知できなかったのだろうか。  
 
思いを巡らせながら彼女の傍に屈み白い頬に手をのばせば、体温と穏やかな呼気が感じられるので  
どうやら眠っているだけで生命に大事無いようだと判り、ひとまず安堵する。  
悪夢にうなされているかのように眉を顰めて何かに耐える、安らかでも麗しくもないミランダ嬢の寝顔に  
思わず苦笑いしてしまいそうになるのを堪えながら額にかかる髪を外してやる。  
眉間の皺が少しだけ和らぎ、睫毛の淵が濡れて隈が色濃く縁取っているのがよく見えた。  
 
身体を揺すって気づかせてやれば、彼女はふらつきながらもひとりで部屋に戻ると言うだろうが  
過労が高じて地面に横たわるという現状に至ったのであろう、無理に起こすのは酷なこと。  
そう思い、リーバー・ウェンハムは眠りを妨げないようにそっとミランダの身体を抱き上げた。  
「かるっ……」  
意識のない人間は重く感じられるはずなのだが、思うよりも随分と軽く思わず呟く。  
ミランダの手を首にまわさせるようにひっかけて体制を整えるとゆっくりと歩き出すが、  
いくら軽いとはいっても一介の文官に女性を抱えて長い廊下を歩き階段をいくつも経て、  
遠いミランダの部屋まで運びきる自信はない。、  
それにリーバーも徹夜が続いていたので、いい加減休みたいと研究室を抜けてきた身なのだ。  
となると選択肢は他にないように思えた。  
程近い科学班の分室、リーバーの私室と化している仮眠室へとミランダを運び込む。  
 
暗室の中にアルコールや薬品の匂いと電子機器の機械音が響いている。  
 
部屋の奥に備え付けてあるベッドまで彼女を運び、身体を横たわらせ、ブーツを剥ぎ取った。  
ミランダの顔色が悪いので窮屈そうな団服の胸元も少しだけ緩めてやる。  
 
不肖の団員の世話をしているだけなのに、緩慢な動きで触れるたびにミランダが身じろいで、  
まるでセックス前の恥らう少女のようだと、妙な心持ちになってしまう。  
好みの女性像とは程遠い人間も対象としてしまう男の性質は繁殖本能によるものだが、  
ただの介抱に理性的な意識が乱されてしまうのは青年には滅多にないことだった。  
疲れているからだろうか。  
やわらかそうな女性の皮膚に少しだけ邪な気持ちがよぎったのを無理やりに掻き消すように  
ミランダの身体をケットでくるんで、視界から遠ざけるためにもリーバーはそのベットから離れた。  
 
手放して軽くなった腕に相反するようにリーバーの徹夜続きの身体にどっと疲労感が押し寄せる。  
部屋の中央へと数歩よろけながら向かい、ローテーブルの前のソファへと倒れこむように身体を沈めた。  
暗闇にもたつく足に何かが引っかかってしまったようで、がちゃん、と倒れる音がする。  
今の音が彼女の眠りを妨げなかったならいい、と青年は疲れた頭で思いつつ  
ソファの背もたれの向こう側に居るミランダの気配を探りながら目を閉じた。  
 
程なくして意識が途切れそうになったころ、リーバーは強制的に現実に引き戻されることとなる。  
 
向こう側で微かな衣擦れの音とミランダの荒い息遣いが、リーバーの聴覚と、まどろむ意識に入ってきた。  
「やぁ、ん……ん、んっ……」  
もそもぞと身を捩るような気配と、心なしか苦し気な、不規則に乱れた浅い呼吸が耳をつく。  
悪夢に魘されているというよりも、これは、まるで。  
眠気なんてすっとぶ彼女の艶めいた声色から、脳裏に浮かんでくる姿をリーバーは常識的に否定しつつ、  
それならばいったいどういった事態に陥っているのか、と、向こう側の様子を伺うように耳をそばだてた。  
 
ぎし、とベットの軋む乾いた音と、いかにも塞き止められないといった短く、くぐもった女の嬌声。  
「はぁ、ぁっ……ぅん」」  
彼女の乱れた声にリーバーの心臓が刺激される。  
ミランダ嬢はいったいなにを、まさか。  
ぬるい果実酒のような女の匂いが身体中を巡り、腹の下辺りがじわじわとむず痒くなって疼き、  
このまま知らないふりをして眠ることは不可能に近い。  
真っ白になりそうな頭で、リーバーは必死に現状を整理だてて把握しようと努める。  
事実を確認しないことには、いかに対策を立てようともただの妄想に過ぎないのだ、  
と、自分に言い訳をして悟られないように隠れつつソファに沈んでいた身体を半身起こす。、  
そして暗闇に浮かび上がるベッドの方角、背もたれれの向こう側に横たわるミランダの様子を  
気付かれないようにそっと伺うように視線を向けた。  
 
驚いたのは、彼女と目がしっかりと合ってしまったこと。  
それ以上に驚いたのは、予想と常識から懸け離れた事態が目の前で繰り広げられていたこと。  
「なっ、……え?」  
リーバーの喉から酷く情けない声が出る。  
教団施設内であったはずの景色はどこへやら、ミランダのイノセンスが発動しているらしい亜空間に  
時間ごと世界が切り取られたように、黒一面世界に二人と、ソファと、ベットだけが存在していた。  
そして彼女のイノセンスの暴走か、はたまた誤作動なのか、いったいどうしたことか、  
あきらかにミランダの身体がひとまわり小さくなっていた。  
肌が色づいて子供らしさが残るあどけないふっくらとした頬、健康的な肢体と生気ある瞳。  
さっきまで疲労感に倒れていたミランダに比べると十歳以上は若く見える。  
 
ミランダはリーバーを見つめながら、白いシーツの上で団服のタイトスーツのファスナーをくつろげ、  
そこに自分の手を挿し入れながら、もぞもぞと下肢の間で手指を懸命に動かしている。  
スーツが指の形に伸縮していやらしく動き、ミランダのそこは既に湿った色を浮かび上がらせて、  
水気を帯びた、くちゅ、という音が彼女の吐息と混じり合ってやけに生々しく空間に響く。  
恥ずかしそうに頬を赤く染めながら、呆然としているリーバーに向かって彼女が泣きそうな笑顔を向けた。  
「ご、ご主人様、あ、あの」  
リーバーの頭がますます混乱してしまいそうな台詞を少女姿のミランダが呟くのは  
タイムレコードに身体の時間と共に記憶の時間まで巻き戻されてしまっているということであろうか。  
彼女は青年の機嫌を伺うように幼い眼差しを不安そうに曇らせて、たどたどしく言葉をつむぐ。  
「い、やらしい、み、ミランダの中に、ご、ご主人様の、その、……」  
いったいどんな過去に彼女は戻されてるのだろう、垣間見えるそれだけでもうかなり不幸すぎる。  
「ちょ、ちょっと、ストップ」  
リーバーはミランダの棒読み丸出しの言葉を遮るように慌ててソファから立ち上がり、  
ベットに座る彼女のもとへと急ぎ、震えている細い身体を再びケットでぐるぐるとくるんで  
そのまま両腕で少女姿のミランダを包んだ。  
 
「ミス・ミランダ、イノセンスの解除を」  
互いの顔は見えないが、鼻先にある彼女の髪からコロンだろうか果実のような香りがして、  
リーバーは煙草の匂いが移ってしまったら申し訳がない、と、どうでもいいことを思う。  
「かいじょ……?かい……解雇?」  
思案気にひとり言葉を繋いで、腕の中拘束されているミランダの身体が強張った。  
控えめなノックのように少女がリーバーの胸をとんとんと叩いたので、閉じ込めた腕から解放すると  
ぼろぼろと大粒の涙を流しながら、ベットの上、彼女は向き合う青年の白衣を掴む。  
「解雇は、こ、困ります、ちゃんと、言うとおり、せ、せっくす、しますから、仕事を……」  
涙に詰まりながら少女が零す抗議の言葉から、ミランダの愚かしい過去が厭なほど見える。  
盲目的な性格は現在も過去も変わらないようだ、思い込みに苦悩する少女をなだめるように  
リーバーはなるべく穏やかな声をかける。  
「この空間を戻せるのは、君しかいないんです」  
このままではどうにもならない、これは彼女の過去の悪夢に介入しているに過ぎない。  
ミランダの精神状態を検分するにしても、イノセンスをへブラスカに見てもらうにしても  
とにかくまずタイムレコードを解除してもらって現実にもどるよりほか手立てはないのだ。  
 
「わ、わたしが、気味の悪い、不幸女だから、だめ、ですか……」  
少女は色気なく、ぐずぐずと鼻をすすり、しどろもどろになりながらリーバーの顔色を伺う。  
羞恥に染まる頬と熱を帯びた眼差しが濡れて、暗闇にきらきらと光っていた。  
「ミス・ミランダ、落ち着いて」  
青年はミランダの混乱し昂ぶっている精神を鎮めるべく、子供をあやすように彼女の髪を撫でる。  
すると少女は両手でごしごしと目尻をぬぐうと決意したように己の唇を噛み、  
リーバーの白衣の裾を引き、隙をついて青年の懐に入り込んだ。  
 
「おわっ」  
驚き身を硬くした青年を無視して、ミランダは慣れない手つきで彼のアンダーに手をのばし  
ファスナーを開くと手を入れて奥へと、さぐるように動かす。  
「……あの……歯、たてないように、く、く、くわえ、ます、」  
ミランダが涙を堪えた笑みを浮かべながらまたも棒読みで言い、  
リーバーの性器を下着の上からてのひらでやわやわと包み込んで、  
もう片方の手でベルトを緩めて服を脱がそうと試みる。  
ぎこちなく震える少女の手指が、熱く、ただ触れられているだけでも、背中からぞわぞわと  
抑え込んでいた性欲が煽られて立ち昇っていくのをリーバーは自覚した。  
「ミランダ」  
制止しようにも、少女は役目を果たそうと必死で青年の声は届いていないようだった。  
というのもあるが、ミランダの思い込みの勢いを利用して少しだけ流されて進んでしまえば  
彼女との性行為を正当化してしまえるという邪な気持ちが生まれ青年の理性的な部分が鈍っていく。  
敏感に指の感触ひとつひとつが快感への期待をしてしまう。  
 
少女がやっとベルトを緩めボタンを外すと、リーバーは屈んでいる姿勢であったから前は大きく開き  
下着のひっかかりをずらせば窮屈におさえられていたペニスが弾むように外に出る。  
半勃ちのそれに直接、ミランダの細い指が凶器でも取り扱うかのように恐る恐ると触れた。  
「おっきく、……なって、きてます、ね」  
と、ミランダはむくむくと生き物のように動くそれを、不思議そうに見つめる。  
本当になんて不幸でいやらしい少女時代を過ごしてきたのだろう。  
目の前の少女が、青白い顔で空回りしながらも懸命に生きている現在の彼女の姿と重なり、  
変に感慨深い、まるで永い間育んで来た甘美で繊細な愛情だと錯覚してしまいそうだ。  
だから完全に勃起したのかといえば、そうではなく、直接的で変則的な刺激が原因であるのだけれど。  
 
ミランダが不安そうに呟きながら、硬く立ち上がったペニスにやわやわと触れた。  
「こここここれが、本当に、は、入るのかしら」  
握ったり撫でたり、上下左右に動かしたり、薄い筋にそって指を滑らせたりと、  
得体の知れないものを検分するような手つきで扱う。  
不規則に背筋を走る快感に堪らなくなってリーバーは思わずミランダの腕を力強く掴んで制した。  
きつく腕を抑えられたことで、己の失態により諌められたのだと得意のネガティブ判断をしたミランダは  
ごめんなさいと早口で繰り返し、リーバーからわずかに後退って慌てて取り繕う言葉を吐いた。  
「あ、あの、い、言われたとおり、ゆ、指は、は、入りました、よ?」  
手を顔の前でぶんぶんとふり、苦い表情をしつつ無理やりに見当違いで微妙に前向きなコメント。  
先程から、ミランダから飛び出る言葉の破壊力と脱力感が半端無いとリーバーは溜め息を吐く。  
ミランダが何も知らない少女の頃に、言われるがまま身体を差し出していたのは間違いないだろう。  
 
空中にミランダのイノセンスが漂っているのが見える。  
今の状態は、イノセンスによりミランダの時間だけが一時的に巻き戻っているに過ぎない。  
ここでリーバーが何をしようが、彼女の既に二十五歳年分経てきている分の時間、  
彼女を作り上げている過去自体の経験や事実は、完全に不変のものである。どうにもならない。  
それならば、今、言葉を交わしている、触れている、彼女の経験はどこに還るのだろうか。  
「試す……?」  
今、セックスをしたなら、この経験は。  
リーバーは脳裏に浮かぶ欲求に科学班としての義務なのだと理由をつけて  
強引に自分で自分を擁護しながら、少女の小さな身体にかかるケットを剥ぎ床に落とした。  
首を傾げながらも青年の顔色を伺うように見るミランダの瞳は、恐怖の色に揺れている。  
「ミス・ミランダ、……君がイノセンスの発動を止めたなら、俺もやめますから」  
リーバーが掴んでいた少女の腕を引き、腰の下に空いていた手をまわして浮かせるように抱き寄せると、  
青年が押し倒すというかたちで、重なりながら二人は勢い良くベットに倒れこんだ。  
 
リーバーの下で、ひゅ、とミランダが息を飲み込む音がした。  
自分の初体験なんてものを思い出しながら青年はミランダの頬に噛り付き、  
耐えるように眉を寄せて目を閉じる少女の睫毛の先を舌で舐める。  
まさぐるように白い肌の上を手でなぞり、首から鎖骨、肩、胸のきわから背中、肋骨、と  
脱げかけている服を一緒に剥いていけば、足下に服が纏まっているが白いなめらかな肌がほぼ露になる。  
青年の手が柔らかいミランダの皮膚を滑り、ヘソを通過しその下へ向かおうとすると、  
なすがままにされていた少女が息を乱しながら顔を真っ赤に染め、抵抗するように足を閉じた。  
構わずにリーバーは隙間に手を入れて、薄い茂みを割る。  
さっきまでミランダの細い指がうごめいていた形跡、そこはとろとろと、ぬかるんだ熱を保っていた。  
「……自分でして、気持ちよかったのかい?」  
恥じらいに顔を背け、耐えるように身体を強張らせるミランダの耳元に青年は囁きながら、  
ぬるぬるとした割れ目を指の腹で捏ねるように弄んで、ヒダのふちを焦らすように揺らす。  
するとたちまちに少女は息を乱し、逃れたい気持ちを抑えているのか、細い手でシーツを強く掴んだ。  
「んっ、んな、中は、い、痛かったです」  
意地の悪いリーバーの質問に、ミランダは素直なのか脅迫感に促されてなのか悶えつつ答える。  
中は痛い、とういことは、処女の時代の身体に戻っているのだろうか。  
色事に無縁のようなあどけない少女の顔が、羞恥の中の快感に耐えるように歪められている。  
指を執拗に動かせばくちゅくちゅと水気が増して、指先はぬかるみに絡め取られてしまう。  
ヒダの少し上にあるぷっくりとした突起を指の腹でかき混ぜると、ミランダの身体が震えた。  
「あっ、はぁ、……そこ、きっ、きもちい、気持ちいい、です」  
熱に浮かされるようにミランダが喘ぐのを眺めながら、二本の指で愛液ごと絡め乱暴に刺激を与える。  
与えられる快感に躊躇しながらも、快感を探ることに没頭しミランダの腰が指の動きにあわせて揺れた。  
酷くいやらしく扇情的な光景に煽られてリーバーの下半身がますます反応し始める。  
 
男の骨ばった手が執拗にクリトリスを苛めて、少女が腰を動かして感じる場所をこすり付ける。  
とろとろと溶けてしまったかの如く少女のそこはやわらかく解け、蜜があふれ、ふやけてしまった。  
リーバーはたよりない首筋を舐めながら、もう片方の手で少女の発育途中の胸の膨らみに触れる。  
全てが敏感になっているのだろう、白い身体は桃色に熱を帯びて小さな乳首が硬く立ちあがっていた。  
人差し指で陰核を刺激しながら中指でヒダをかきわけて、そのまま指を少女の肉の隙間に滑らせると、  
十分に濡れているから、いとも簡単に第二関節まで飲み込まれる。  
「やっ」  
急な異物感に驚いたようにミランダの身体がびくりと跳ねた。  
追い討ちを掛けるようにリーバーはミランダの胸の蕾を舌先で揺らして、軽く歯を立て齧り、  
下では中指で乱暴に掻き混ぜながら、押し広げるようにくにくにと揺らして解すように嬲る。  
そして人差し指もぬかるみの奥へと入れようとあわさる肉の隙間へとゆっくり埋めて行く。  
少女時代に戻っているため、与えられる刺激が強く初めての感覚に身体がついていけないのだろう、  
抵抗するようにミランダが青年の胸を押すが、その手は青年に制止され捕らえられてしまった。  
少女が縋るように青年を見上げれば、青年もミランダを見ていたようでしっかりと視線が交じり合う。  
「触って?」  
少女の手を逃がさないように包み、下腹部へと導く。  
すると、ミランダの傷ひとつ無いなめらかな手が戸惑いがちに青年のペニスを握った。  
男女の違いを確かめ合うように互いの性器に手を滑らせる、それだけで興奮は高められていく。  
重なり合って、息遣いが肌にかかるほど触れ合い、体温と匂いが混ざり、心地よい。  
 
少女の窮屈な陰部へ二本目の指も根元まで埋めて、奥でばらばらと動かし抜き差しを繰り返す。  
ぐちゅぐちゅとミランダの愛液があわ立っていやらしく音を立てた。  
ミランダもすべすべとする青年の硬く立ち上がる性器を握ったり、ゆるゆるとさすっているが、  
リーバーの動きに翻弄されて何度も動きが止まってしまう。  
それはそれで気持ち良く、煽られるものだが。  
「痛いかい?」  
指を折り曲げ角度を変え少女の中を解しつつ、涙を浮かべて顔を歪める少女の額に額を寄せ、  
リーバーは鼻をすりよせて表情を伺うように様子を見る。  
「……うぁ、じんじん、して、ます」  
笑おうとしたのか、苦しくて泣いているのか、微妙な表情でミランダが答えた。  
幼い面立ちの中にやはり現在のミランダの憂いのある表情が重なって見える。  
リーバーは指を抜くと、姿勢を起こして、横たわるミランダの顔の前に濡れてふやける指を差し出し  
その指で彼女のくちびるをなぞり、とろとろだね、と揶揄して笑ってみせた。  
自分の淫らさを見せ付けられてミランダが気まずそうに眉を寄せる。  
 
青年は指に残る潤う女の香りを舐め取ると、また少女に覆いかぶさり額を寄せる。  
ふわふわとした髪がベットに散って、小さな身体はリーバーの影にすっぽりと隠れていた。  
互いの吐息が肌を湿らせる程に迫るのをミランダは緊張した面持ちで受け、成り行きを待っている。  
過去も現在も泣き虫で、ネガティブで、それでも懸命な人間、ミランダ。  
迷いと不安と期待を孕んだ幼い眼差しを向ける少女の引き結ばれたくちびるを  
リーバーは僅かに触れるだけ、ついばむように、そっと塞ぐ。  
目を閉じて、くちびるでくちびるを噛む、短いキスを繰り返す。  
 
しばらくして、降りてくる青年の顔から少しだけあごを引いてミランダが逃れた。  
やんわりと制されて目を開くと、ミランダが僅かに嬉しそうな声色で、ふぁーすと、きっすです、と呟くので  
ただの口付けへの、甘く滑稽な感想に、リーバーは眩暈がするような心持ちになった。  
過去は、もう過ぎ去っているから変わらない、ミランダのはじめての相手はリーバーではないのに。  
 
くちびるのぎりぎり触れ合う距離で唐突に、  
「舐めて」  
と、リーバーが少女の手に触れているだけのペニスを、腿にこすりつけるように腰を動かして言う。  
青年の声色が冷ややかに感じられて、一瞬、意図を測れずミランダは戸惑って表情を固くする。  
「……え?……あ、あぁ、ご、ごめんなさい」  
条件反射のようにミランダが身を竦めた。  
リーバーが起き上がるのと同時に混乱するミランダも体勢を起こされ、腕を引かれる。  
あぐらをかいた青年の股間の前に手を導かれると、自然と頭が下がり、ペニスの目の前に身体が傾いた。  
「……え、っと」  
どうすれば良いのかいまいちわからない、といった様子で、それでも要望に応えようと  
硬くなった根元を細い指で支えながら、彼女は口元をそっとペニスに寄せる。  
舌をのばし、亀頭をひとなめすると、青年の腹の筋肉がひきつるように揺れるのが見えたので  
ミランダは動揺し、自分の行為を不安に思い、事の善し悪しを確認するようにリーバーを見上げた。  
「……ミランダ、口で咥えて、手も、使って」  
うっすらと肌を湿らせる汗に髪が張り付いている、青年はそれを外してやりながら続きを促す。  
「は、はい」  
従順に頷いて、少女姿のミランダは小さい口を開ける。  
 
舌先で突っ張る薄い皮膚を濡らし、歯があたらないように口いっぱいにペニスを頬張った。  
ミランダの口内の舌のざらつきや頬の粘膜質なうねりがリーバーの敏感な場所を柔らかく包んで、  
背筋を這いずりまわるような快感がぞわぞわと広がる。  
たどたどしく手で袋を揉み、根元から刷り上げるように扱きながら質量を増すペニスを咥え、  
色づいたやわらかなくちびるの弾力が亀頭の淵を包み込み、舌の根が擦るように先走りを舐めた。  
「……ん、舌、もっと動かして、吸って」  
単純に快感で、青年が腰を揺らすと喉の奥に先が当たり、「んう、う」と、少女の苦しそうな声が漏れる。  
ミランダは唾液を口の端から零し、どろどろにペニスを汚しながら懸命に咥えこみ、  
言われるがままに舌で筋をたどりカリをなぞって、ちゅ、と皮膚を吸った。  
それを追うように手で下から上に扱いて皮を亀頭まで引きあげるように包み、息継ぎをしてから  
先端を湧き上がる液体ごと口を窄めてちゅぷちゅぷと卑猥な音を立てて吸い上げる。  
「いいよ、ああ……」  
快感を探ることに没頭し、気持ちがよすぎて思わずリーバーは息を吐いた。  
 
少女のぬるく柔らかい口の中で性器をめいっぱいに膨張させ、快楽を追うように腰を緩く揺らす。  
ミランダもいやらしいことをしている自覚があり、その背徳的な構図に興奮しているのだろう、  
もじもじと足を動かして未知なる欲求に耐えるようにしながらもシーツを濡らしていた。  
咥えながら感じている、それを悪いことだと思っているような悲しげな表情をする少女姿のミランダの髪を、  
リーバーは奥まで咥えている彼女の邪魔にならないように、そっと優しく撫でる。  
「ミランダ」  
もう十分だと声をかけて顔をあげるよう促した。  
ミランダが口からペニスを放した途端、陰茎が反り返ってミランダの頬にあたり、  
驚いたのか先走り交じりの唾液が器官に入ってしまったのか、けほけほと少女がむせ、激しく咳き込んだ。  
色気も淫蕩な雰囲気もない。  
むしろ、咥えている途中に咳をされたら、確実に歯が食い込んでいただろうと苦く思いながら  
リーバーは少女の背中をさすって落ち着くのを待ってやる。  
ごごごご、ごめんなさい、とミランダは自分の失態に酷く動揺して、また涙を零す。  
 
理解し難い苛立ちに任せて、無理をさせてしまっただろうかと青年は内省する。  
過去の姿、過去の記憶でありながら、目の前にいるミランダは今、同じ時を過ごしているけれど  
時間が還ったら、今あったことは、彼女のいつに還るのだろうか。  
何故、どうして、ミランダとセックスしてしまっているのだろうか。  
イノセンスが解けたら不可解な心理も解けるのだろうか。  
「……ごめん、おいで」  
それらすべて、考えることを放棄してリーバーは笑った。  
 
息を整える少女の涙が止まないうちに、膝もとにあった邪魔な服を引っ張り脱がせ裸にすると、  
向き合うように身体を起こして、胡坐をかく青年の膝の上にミランダを座らせる。  
バランスを崩しかけてリーバーの腕を白衣ごと縋るように掴むが、少女は青年の胸に鼻を打ち付けた。  
「あ、ああああの?」  
落ち着かない様子で言葉を濁すミランダの華奢な腰を引き寄せて、逃がさないように腕をまわした。  
怖いのだろう、白衣を掴む手が震えていて緊張が伝わってくる。  
胸に顔を埋めて、怯えて動けないでいる彼女の頭の上にリーバーは顎をのせ  
からかうように白々しく明るい口調でミランダに問うた。  
「えっと、さっきの、何だっけ?……いやらしい?ミランダの中に?俺の?何です?」  
膝の上に座るミランダの秘部に青年の熱いペニスがぴったりと触れている。  
支えている薄い腰から尻の窪みへと手を滑らせ、少女の敏感になっている陰核を指で引っ掻いた。  
「ひゃっ、う……い、じわる」  
言葉と行為に羞恥心を煽られて、ミランダが恨めしそうにリーバーを見上げた。  
 
視線がしっかりと合って、ミランダはいまさらながら青年の顔を認識する。  
何かを思い出せそうな気がするも、青年の誘惑に意識が連れて行かれてしまう。  
自分に向けられるには勘違いしてしまいそうな程、優艶に、青年がミランダの額に口付けたから。  
 
「本当に入るかどうか、ミランダが試してごらん」  
リーバーが少女の両脇腹に手を添えて抱え上げ、誘導するように腰を浮かせる。  
身体を持ちあげられたことでミランダの手は白衣から離れて青年の肩に移動した。  
「え、で、でも」  
本当にそれが自分の中に入るのか、確かにそう思ったが。  
心臓が破裂してしまうのではないかと思うほど胸がざわめいて、ミランダの頭の中は真っ白になる。  
「手伝うよ、ミス・ミランダ」  
そう言ってリーバーがミランダの揃えられた足を崩し、片方の足を腕に引っ掛けて下から腰を支える。  
すると恥ずかしいほどに少女の足は開かれてしまった。  
薄い陰毛までとろとろに濡れて、ぷっくりと立ち上がる突起と赤味を帯びた二枚の花弁が  
ひくひくと物欲しそうに動くのが露になって卑猥さが増す。  
「や、そんな」  
いやらしい体勢に赤面し、ミランダは逃げ出したくて仕方ないはずなのに、反して身体は欲情していた。  
ぬかるんだミランダの内側はリーバーを受け入れることを期待して濡れてはうごめいてしまう。  
 
「ほら、腰おろして」  
促すように足を引き大きく股を開かせ、少女の潤んだ裂け目にリーバーは肉棒をあてがった。  
ミランダは観念したように息を呑む。  
そしておずおずと己の震える手で自分の秘部のヒダを指でずらすように開くと、  
ペニスの先を中指と薬指でずれないように引っ掛けながら、ゆっくりゆっくりと身体を沈める。  
ぬぷ、とぬかるみが掻き分けられて、ペニスの先がヒダの重なりを押し退けて進んでいく。  
しかし、十分に濡れているものの指よりも断然太い熱は、ミランダの中でさらに質量を増して  
少女の狭い陰部の、抵抗するかのような収縮に押し返されてしまう。  
「っつ……ううう」  
リーバーが腰を揺らして、少しだけ探るように突き上げるとミランダが短く呻き、身体が強張った。  
絶え間なく身体を走る刺激に、自分の体重を支えるのが辛いのだろうミランダの足が震えて、  
堪えているものの、負荷がかかることで少しづつミランダの身体は落ちてペニスが奥に沈んでいく。  
ミランダの中が熱をはらんで、リーバーの先端をやわらかく圧迫する。  
 
じんじんと擦れる皮膚が火傷してしまったかのようで、はやく鎮めたい衝動に追い立てられてしまう。  
「あ、うぅ、か、硬くて、い、いや」  
青年の苦しいほどの異物感にミランダが音をあげる。  
顔をぐしゃぐしゃにしてミランダがリーバーの首筋にしがみつき、身体が下がらないように繋ぎとめた。  
鼻水まで出ている少女の努力を称えるように青年は抱き返しながらも、下半身は淫楽を早急に追っていく。  
「ミランダ、ちから、抜いて」  
躊躇するミランダのうねりの中、焦らされるように中途半端に与えられている快感がもどかしく、  
たまらずにリーバーは昂ぶる疼きを抜けるぎりぎりのところまで引く。  
そして一呼吸後に、いっきに腰を打ちつけた。  
 
皮膚のぶつかりあう音、淫猥な粘液の絡まる音、  
処女膜の裂けた色、こすれあう感覚、  
その衝撃に引き攣ったミランダの喉の鳴る音。  
 
貫いた瞬間呼吸が止まり、ミランダが「うう」と、声にならない苦しそうな声で繰り返し呻いた。  
出血はほんの僅かだった。  
根元まですべて埋め焦らされていた疼きが満たされたはずが、  
またすぐに疼きだしてしまうペニスの貪欲な渇きを、リーバーは息を深く吐きひとまず抑え、  
肩を震わせて痛みに耐えるように呼吸を乱して泣く少女の肌をあやすように撫でる。  
尻をまさぐり、繋がりあっている結合部分を確かめるように指でなぞると  
硬く立ち上がったペニスが柔らかい女の割れ目に確かにしっかりと呑み込まれていた。  
ねちねちとしたどちらのものともわからない粘液のせいで、やけに些細な動きも身体に響き  
呼吸する互いの肺の微動でさえ伝達されて感じてしまう。  
ミランダが青年の胸に顔をうずめ、強い力でしがみ付いているから、二人に隙間はほとんど無い。  
リーバーはペニスを動かさないように力を抜いて、少女の腰を撫で続けながら、  
どうせならば、くっついている部分から彼女の痛みが感染ればいいのに、と柄にも無いことを思った。  
 
ミランダが懐に額をくっつけて、いやいやをするように首を横に振りしゃくりあげながら  
「ちょ、と、もう、やめたい、です」  
と残酷なほど素直に泣いた。それほどに苦痛なのか。  
その申し出を肯定も否定も相槌もしないで、リーバーはミランダを抱えたままゆっくりと身体を揺らす。  
突きあげるような刺激的な動きではない、ゆりかごのようにゆったりと。  
「ん、うう」  
ミランダが泣きながら熱い息を吐く。  
微かに性器がこすれあう、それはまるで落ち着かせるように撫で、癒す、それほどに微かな揺れ。  
ベットのスプリングが、ぎし、と軋み、痺れた生殖器がぬかるみの中で熱く触れ合う。  
リーバーの陰茎の動きにあわせてひくひくとミランダの陰部は反応してペニスに絡みつく。  
これが恋人ならば、愛の言葉を囁いて慰めるものなのだろうけれど。  
と、そんなことを一瞬でも考えてしまい、リーバーはなんて浅はかなのだろうと一人自嘲気味に笑った。  
 
繋がっている部分から少女の感覚がなんとなく伝わってくるような気はするものの、  
青年からは少女の髪と微熱に色づいた肢体が見えるだけで表情は知れない。  
亜空間は温度も無いはずなのに、身体が熱いからだろうか、やけに空気が冷ややかに思えた。  
もっとぴったりとくっつくように彼女の髪に鼻先をうずめて、目を閉じながらゆらゆらと身体を揺らす。  
くちゅ、と擦れる箇所の粘膜が融解して溶け合っていく感覚がして、下腹部がさらにじんわりと熱くなる。  
「あぁ、んん、奥、あ、熱い」  
たまらないといった声をあげミランダがリーバーの腰の動きにあわせて、身体を揺らし始めた。  
もじもじとした淀むような動きで腰を回転させ、粘液で絡まるリーバーのペニスをひきずりまわす。  
「へ、変、やだぁ、あ、あっ、ん」  
青年にしがみ付いていた手を緩めて僅かに身体を起こし、ミランダが青白い顔を上げ、  
痛みの涙も乾かないままに、逃げ出すどころか薄い尻を緩慢に振り、甘い息を漏らす。  
「や、こ、こわい」  
少女の震える声が、感じているのに感じていることを認めたくなくいのだろう、否定する言葉を選ぶ。  
心と身体の感覚の均衡が取れないことに戸惑い、自分が信じられないのか、  
ミランダは唇を結んで、あふれ出してしまいそうな声を押し殺し、縋るようにリーバーを見た。  
 
自分以上に目の前の男のほうが信じられない癖に。  
なんて、一瞬過ぎった卑屈な想いを呑み込んでリーバーは情けなく眉を下げて笑った。  
「隙間があるから不安になるんだよ」  
そういうことにしよう。  
そして繋がった部分が抜けてしまわないように、ミランダの足を抱え腰を支えながら身体を倒した。  
 
身体の下にミランダを閉じ込めて、状況を理解できず呆けているミランダのくちびるを塞ぐ。  
口許に喰らいつきながら、少女のふとももを引きずるように腰を併せて身体ごと揺さぶり、  
ぬちゃぬちゃと卑猥な音をたてながら身体を抱きしめた。  
「ん、んんっ」  
少女の鼻から抜ける声も息も苦しそうに乱れている。  
 
息継ぎをしようと少女がくちびるを開いたところで噛み付いて塞ぎ、舌を挿し入れる。  
歯列を舐め、角度を変えながらお互いの舌と唾液を絡め合い、  
くちびるも、繋がっている箇所もどろどろにして隙間を埋めるような動きで触れる。  
上り詰める快感を追うように腰の動きを速め、奥までえぐるように抜き差しを繰り返す。  
昂ぶりがミランダの子宮を突くと、押された肉はきゅうきゅうとペニスを締め付けてまとわりついてくる。  
「ふっ、ぅ」  
熱に溺れ情欲に呑み込まれて息を漏らすミランダそのものを表すようないやらしさで  
ミランダの内側がペニスを欲しがるように蠢いて呑み込んだ。  
 
酸素を求めて顔を離すと、とろみがかった唾液が糸を引き、それが引力に負けて落下する。  
青年が顔を覗くと、潤んだミランダの瞳にはリーバーが映っていた。  
 
自由になった上半身で足を持ち直し少女の足を開き、さらに深くを突くような角度で  
ペニスの先をふちまで滑らせてはミランダの中へ力強く捻り込んだ。  
汗ばんだ肌を叩きつける音が響くほどに、腰の動きを勢いをつけ大きくグラインドさせる。  
「い、奥、いいっ、ん、あぁっ」  
絶え間なく擦られて、容赦なく最奥まで突き上げられるたびにミランダがうわ言のような嬌声をあげた。  
痛みとは違う、切なさが凝縮して弾けるようななんともいえない感覚に意識が持っていかれてしまう。  
ただただ追い詰められていく仕打ちを味わうように眼を閉じると瞼の裏がちかちか揺れた。  
「はぁ、あっ、あ」  
息を乱しながら隙間無く触れ合う全ての感触から快感を受け互いに求め合う。  
 
今にも気を抜くと破裂してしまいそうなほどに硬く熱を孕んだペニスを、なんとか保って攻め立てていたが、  
心地よい弾力とぬかるみにリーバーの自我はもう欲求に勝てそうにもなかった。  
再度深くミランダの奥へペニスを沈めると、ねっとりと大きく突き上げるような動きから一変して  
リーバーは身体の疼きが望むままに律動を速め、激しく小刻みに腰を打ちつけはじめる。  
のぼりつめるような感覚を逃がさないように、とりこぼさないように、  
速く、速く、何度も、何度も、ミランダのなかをぐちゃぐちゃと掻き混ぜた。  
「あっ、あ、り、り、ば、さっ」  
涙を零しながらミランダが青年の背中を掻き抱き、もはや抑えることもままならないほどに  
きれぎれに甲高い声をあげ、つま先を伸ばすように身を硬くする。  
身悶えする少女を受け止め包み込むようににリーバーが抱き返す。  
が、今、彼女が名前を呼んだのだと、僅かな理性が認識して、心臓が激しく撥ねた。  
その瞬間に目の前のミランダの肌の色がいっそう白く透明に光り、  
淫行に耽る彼女の身体が、リーバーに抱かれながら徐々に大人に戻っていく様子が視界の隅に映る。  
 
小ぶりだった乳房が青年の胸を圧すほどにたわわに実り、動きにあわせて上下に揺れ、  
抜き挿しをする淫らな部分までも、絡みつく肉壁が、厚く、濃厚になっていく感覚が強くなる。  
ますます勢いは止まるわけもなく、衝動のまま腰を打ちつけるが濃密な収縮にさらに激しく締め付けられて  
リーバーの背筋が戦慄き、震え、膨張したペニスが耐えかねて激しく脈を打った。  
「うわ、ごめん、も」  
外へ抜こうという意識はあったもののそれを遂行できずに、  
リーバーの痙攣する陰茎からびくんびくんと勢いよくミランダの中へと白濁した熱が注がれる。  
青年の腕の中でミランダも絶頂に達したのだろう、細い身体が身震いをした。  
 
 
射精した疲労感と虚脱感に耐えながら、呼吸を整え、組み敷いているミランダの表情を伺う。  
薄い白い皮膚が火照り、隈に縁取られた閉じた睫毛が息にあわせて震えていた。  
頼りない細い首、ノアとの戦いで負ったという深い傷が著しい手、  
顔つき身体つきに子供らしい丸みが無くなり、女性の色香が漂う艶かしい肢体がすらりと伸びている。  
少女ではない、リーバーの知っている、いつものミランダ・ロットー嬢だ。  
「ミス・ミランダ、ごめん、中に……」  
今自分はどんな表情をしているのだろう、今さら鏡なんて見たくもないけれど。  
さっきまでの少女の姿で過ごした時間はいったい現在の彼女の中でどう還っているのか、  
ミランダの反応から汲み取ろうと意識すればするほど、変に不安になるのは何故だろう。  
 
イノセンス能力を発動していたことで精神を疲弊させている上に激しいセックス行為をしていた激動に、  
身体はもう限界に近いのであろう、ミランダは苦しそうに息を乱してぐったりと目を伏せている。  
だから。だから?  
それは恋人ならばおかしくもないのだけれど、恋人ではないし、  
ましてや悪夢から覚めた今が好事なのだからこの関係はまさに夢と消えるはずで、そうすべきで、  
イノセンスの奇行による事態であるから後は科学班として一件を扱えばいいのであって  
これ以上ミランダに深入りしては面倒になるだけであるのに、余韻に浮かされてしまったのだろう、  
リーバーは彼女の口許にそっと唇を寄せた。  
屈んで身体を寄せたからふっくらとした乳房が汗ばんで青年の白衣越しに熱と心音が伝い、  
未だ繋がっている下肢の色濃い茂みが揺れ、ゆるんだリーバーの陰茎が受け入れられたまま波打つ。  
くちびるでくちびるをついばむ短いキスを繰り返す。  
彼女の身体の負担になってしまっている繋がっていた身体を、腰をゆっくりと退き、引き抜くと、  
ぬぷりと鈍い水気のある音とともにペニスが外へと弾かれた。  
そしてくちびるを離す。  
 
 
近い距離で目が合った。  
 
ほら、面倒なことになっている、と早くも後悔してしまいそうになるような、  
驚いたような戸惑っている表情で、ミランダが頬を薄紅色に染めてリーバーの顔を凝視している。  
「い、いま、あの……お、思って、ました」  
ミランダが熱に魘される病者のように目を曇らせて、どもりながら理解し難い感想を述べる。  
「き、キス、して、ほしい、……って、それで……」  
自分で言っておきながらすぐ己の浅ましさに羞恥して、リーバーの訝しげな視線から逃れるように  
ミランダは両手で顔を覆い、ご、ご、ごめんなさいと消え入りそうな涙声で呟く。  
キスがしたいと願ったら、叶った、それだけのことを少女のように恥らって言う。  
 
面倒なことに巻き込まれるなんていうのは、いまさらだとリーバーは思い直す。  
だったら最初から、ミランダを拾わなければよかったのだ。  
選択肢などいくらでもあったのだ、ここまでに至る過程には。  
 
「そ、それで……」  
青年が黙っているから、ミランダが言いかけていた言葉の続きを弱弱しく搾り出す。  
リーバーの返事が欲しいのではなく、伝えたいだけなのだろう。  
ミランダの痛々しい手が、ごしごしと瞼をこすって滲む視界を拭き取ろうとしているが、  
それでも抑えきることができない涙が目の際から落ちていた。  
「き、きっと、イノセンスも、私の、願いを……」  
泣いては困らせるだけだとわかっているから、ミランダが微笑もうと努力して不自然に顔を歪ませる。  
疲労が色濃く、心労まで重なって、今にも失神してしまうのではと思えるほどか細い声。  
今の体勢が重苦しいのだろうと考え、リーバーは覆いかぶさっていた身体を起こすために  
ミランダから身を離そうとした、が、白衣の端を彼女に掴まれて反射的に動きを止めてしまう。  
「あの頃の、わたしを……」  
ミランダは宙に記憶を思い描いているかのように二人の間の空白を眺めながら  
はじめから最後までのすべての記憶を辿り切り取るように言葉にのせる。  
「……だから……あの……あの……」  
白衣を掴んだ手は酷く弱い力で、たちまちに外れてシーツに沈んでしまった。  
身体中の力が抜けてしまったようにまどろみ、それでもミランダは懸命に伝えようとしている。  
昏睡に落ちる寸前のミランダのくちびるが零した、微かに聞こえた囁き。  
「……うれし、かったの」  
それは、本当に小さな、大気に溶けるような声だった。  
 
勘違いでも構わないけれど、彼女が白衣を掴んだのはきっと。  
リーバーは朦朧とする彼女の頬を撫で、隙間を埋めるようにミランダを腕の中に閉じ込める。  
それが正解であったのかどうかは、わからないけれど。  
「ミス・ミランダ、一緒に眠っても?」  
返事などいらないと思いながら掛けた問いかけに、ミランダのかすかな寝息が応えるように耳に届く。  
ぴったりとくっついて互いの体温と匂いが混じり合い、満たされている心持ちになる。  
 
 
目の前に転がる幾つもの選択肢の中からひとつを選んで、ミランダの髪に顔を埋め目を閉じた。  
ミランダを見習って意味なんて考えるよりも思い浮かぶそれに従うそれだけだった。  
 
悪夢から連れてきた彼女とまた夢を見るのも悪くはない。  
過去から連れて還った彼女と今を過ごすのも悪くはない。  
 
 
結局のところ面倒なことも嫌いではない。  
 
そう、それだけのことだった。  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
あいまいにおしまい  
 
 

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