「リナリー」  
後ろから名前を呼ばれて振り向くと、コムイが何か紙袋を下げて  
手招きしている。  
「いいものもらったんだ」  
「?なぁに兄さん」  
 
小さく首をかしげてちょこちょことコムイへ駆け寄った。  
 
「見て、リナリー絶対似合うよ♪」  
「わ・・・すごい、これどうしたの?」  
紙袋からコムイが取り出したのは、薄い青地に赤い金魚が舞う  
浴衣。  
日本人ではなくとも、黒髪であるリナリーにはよく  
似合うだろう。  
 
「コムリンに日本の文化のデータを記憶させたら作ってくれたんだよ」  
「へぇ、見かけによらず器用なのね、コムリンて。ありがと兄さん♪  
すっごく綺麗な柄!」  
浴衣を受け取りまじまじと眺めるリナリーは、エクソシストであるとはいえ  
16歳の女の子。  
おしゃれに興味があって当然だ。  
普段着も黒の飾り気の無いワンピースを着ているが、  
兄としてはもうすこし可愛らしい服でもいいんじゃないかと  
ひそかに思う。  
 
「着てみたら?」  
「うん!」  
 
リナリーは初めて見る浴衣にしばらくはしゃいでいたが、その一式を手に取り眺めて  
あることに気がついた。  
 
「兄さん、浴衣ってどうやってきるの?」  
「え?どうやってって、前合わせて帯でぐるっと抑えればいいんじゃない?」  
そうなの?と言いかけた所でコムイの机上の電話のベルが鳴り出した。  
「あ、ちょっとごめん」  
「うん」  
 
コムイが電話している間に、もらったばかりでシワ一つないそれを広げてみた。  
あれ。  
身長より長い?  
この白い楕円の板と布の紐はどう使うの?  
 
異文化に対するさまざまな疑問。頭に?のマークを浮かべて唸っていると、  
コムイが慌しく動き始めた。  
「リナリーごめん、少し急用ができたから行って来るよ、帰ってきたら  
浴衣姿みせてね」  
 
「あ、兄さ・・・」  
 
―バタン  
 
これ、着かた分からないよ・・・?  
 
せっかく貰った綺麗な浴衣。  
着ずにしまってしまうのも気が引けるし、リナリーも女の子。  
着てみたい。  
純粋にそう思った。  
 
「どうしよう・・・」  
 
服の上から羽織るだけでも裾を踏んで転んでしまう。  
 
誰か日本の着物に詳しい人は・・・。  
 
しばらく悩んだ末に、ある結論に達した。  
―神田なら知ってるかも!  
 
男だが彼も日本人だ。  
確か今日は任務も無いはずだ。  
 
よし、と浴衣を握り締めて神田の居る部屋へと向かった。  
 
「浴衣を着せてくれ…?!ってお前何言って…」  
神田はあきれて叫ぶ。  
「着せてくれ、じゃなくて、着かたを教えてって言ったんじゃない。  
私はじめてみたからわからなくて」  
リナリーに手渡された浴衣をしみじみと眺めて、ため息をついた。  
 
男に着付けを教わろうとしている目の前の少女の無防備さに。  
そしてもう一つは、  
 
「ったく。じゃぁ取りあえず脱げ」  
予想外の発言にリナリーは目を丸くする。  
「服の上からでいいでしょ?」  
「浴衣ってのは、それ専用の下着とかもあって面倒なんだよ、  
いろいろと」  
 
嘘だ。全くでは無いが。  
 
「そ、そうなの…?」  
 
神田も男。  
しかも密かに惚れている女、だ。  
 
「じゃぁ仕方ないよね、神田後ろ向いてて」  
 
見たくない訳がない。  
 

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