アクマを従えた少女が、残酷な笑みを零す。
彼女がその鋭い爪でリナリーの肌をなぞった。
「安心してよ、こーんな可愛いのに傷なんてつけないからさぁ」
身じろぐ度に左腕に深く打ち込まれた杭が激痛を齎す。
だがそれでも、目の前の光景に抗わないわけにはいかなかった。
「リナリーに何をしたんだ・・・!」
「うるさいなぁ、ちょっと黙って見てなよ。この人形は僕のなんだからァ」
少女はクスクスと笑いながら、薄く化粧の施されたリナリーの顔に頬を寄せ
小さく開かれた唇をペロリと舐めた。
だがリナリーはピクリとも動かない。
まるで本当の人形のように、目には生気がなく、その美しい顔には表情もない。
「ねぇ、エクソシストぉ。お前、この子のこと好きなの?」
「なに・・・?」
突然発せられた、まるでこの場の雰囲気に似つかわしくない単語にアレンは眉をひそめる。
「やっぱそうなんだ?アハハ、じゃあ、お前に絶望をくれてやるよぉ」
そう言うと少女は椅子に座ったままのリナリーの足の上に、向かい合うようにして座った。
そしてアレンとミランダの見ている前で、躊躇いもなくくちづける。
「かーわいいよねぇ、リナリー、だっけぇ?この子。僕、気に入っちゃったよ」
その残酷さなど感じさせぬ少女らしい細い指がリナリーの身体を這う。
「この服も似合ってるっしょ?僕が選んで着せたんだからぁ。
髪も僕が結ってあげたしィ、化粧も僕がしてあげた」
そう言いながらぐっと掌に力を込め、リナリーの乳房を掴む。
服の上からでも分かるほどにいびつな形に歪んだその頂上に唇を寄せ、
カリッと音がしそうなほどに歯を立てる。
リナリーは痛みすら感じないのか、それとも感じていても表現する術を持たないのか。
少女の爪が食い込んだ衣服が引き攣れているのが遠目でも分かる。
「やめろっ!!」
アレンは左腕を引き剥がそうともがいた。
しかし何本もの杭を打ち込まれた左腕は痛みを伝えるばかりで変形もできない。
怒りのままに握り締めた右拳を壁に叩きつける。
ヒッと小さな悲鳴がした方を見ると、ミランダもまた、手を時計に縫いとめられていた。
リナリーと自分を攫った少女の方を見まいと、じっと下を向き震えている。