「初めて来たときも思ったけど……ホントにショボイわね」  
 
爽やかな風、豊かな自然も彼女は興味なかった。  
そこに立つ立派なアトリエも彼女からは『古臭いボロ屋敷』以上の評価を得られない。  
森の魔法使いカドモンのアトリエ……  
「だいったい!…なんでこんなとこ呼びだすかな〜?  
 本来ならミラさんの手料理フルコースでもてなして然るべきなのに!」  
罵りながらも呼び出した主…クラウスの姿を捜す。  
キョロキョロと首を振る度にピンクの長い髪がゆらゆらと揺れる。  
あれから一年が過ぎていたが…  
その成長は彼女の可憐さを増しただけで身体的には何等変わりのない…  
『東天王国第一王女』ミントの姿がそこにあった。  
「この私にイベント終わったヘボい場所に来させるなんて……っ!  
 だいたい上るの大変なんだから、この階段っ!」  
手紙をよこしたクラウスの姿も見つからずイライラして地面を蹴る……  
その振動で目を醒ましたのか?  
「じ、事情があったんだよ……ミント君……」  
「?!……クラウスさん!……ボロボロじゃない!……大丈夫なの?」  
手紙にあった【遺産】のことだけではなく彼の身も案じる。  
が、それも命には別状なさそうだとわかると途端に【遺産】の割合が大きくなる。  
「で!…【遺産】の手掛かりって?…早く!早くっ!」  
きちんと状況を説明したいクラウスだが…ミントの性格はよく知っている。  
そして急がねばならない状況でもある。  
「手掛かりって言うか…そのモノずばりなんだけどね…」  
そう言って鞄から取り出す仕草を…するだけで瞬時に鞄ごと持って行かれた。  
「〜〜♪……じゃあ〜ん♪♪………って!……これって!!」  
ワクワクしながら取り出した…その本には見覚えがあった。  
正確には酷似しているだけで別のモノだとは理解できるが…  
「…ブック・オブ・コスモス!………同じタイプ……同じタイプの【遺産】?!!!」  
手にした本から感じる魔力の波動は紛れもなく本物の【遺産】……  
実の妹から味わされた辛酸も蘇るが…それ以上に期待が、そして警戒心も渦巻く。  
「…で?…これを奪おうってヤツにやられたのね?  
 誰よ!……まかせなさい!…このミント様がフルボッコにしてやるんだから!」  
台詞と共にデュアルハーロウに力が篭りミントの腕を回る。  
思惑どおり状況を伝えることに成功したクラウスは「敵」の名を告げる……  
「………それが………ファンシーメル……なんだ……」  
「な、なんだってーっっ!!」  
どこで覚えたのか妙なリアクションを取りつつも流石に話を聞く体制に入った。  
ミントとしても出来ることなら敵には回したくない人物だったからだ。  
………  
偶然【遺産】を発掘したクラウスはメルに助言を求めたのだが……  
「……これを見た瞬間、即座に破壊されそうになって……」  
本を庇いながら命懸けの逃避行…それが現在も進行していると。  
「…よくもまあ…手紙出す余裕あったわねえ……」  
呆れつつも【遺産】に賭けるクラウスの熱意を改めて思い知る。…そして自身も。  
「『コレ』がそんだけヤバいシロモノってことね…」  
もう絶対に手放すつもりはない。  
デュープリズムとは比較にもならないが…確かな魔力を感じる。  
充分に「世界征服」の役に立つはずだ。…使えさえすればだが。  
あのファンシーメル…大魔法使いが敵となると落ち着いて調べることすら困難…  
リレーのバトンを受け取ったかのように普通なら逃げ回るしかないのだが……  
「よくわかんないけど…コレが使えれば…何とかなるかも!」  
予期していた台詞がミントから聞けてクラウスは自分の使命をまっとうしたと思った。  
「使うためには……本の『所有者』だと………認められない………と………  
 『契約』………するんだ………っ!」  
クラウスはそこまで言って息絶えたように気絶する。  
 
「クラウスさん…安らかに眠って!…必ず世界を征服するからっ!……この私がっ!!」  
 
に゛ゃ〜〜〜〜〜  
 
空から野太い猫の声が……聞き覚えがある。……メルの『ゴロタン』に間違いない。  
「デブ猫だけなら余裕だけど……っ!」  
間違いなくメルも傍まで来ているだろう。もう一刻の猶予もない。  
…とりあえず『本』に名前を書いてはみたが…当然だが発動しない。  
「…なんでよ!…名前書かれた以上!…アンタは私のモノなんだからね!」  
『本』に怒鳴りつけつつ開こうとするが……まるで一枚板のようだ。  
雷雲とネコの声が迫ってくる……  
逃げる選択肢もあるが…追う対象が一般人ではなく『自分』になれば…  
恐らく容赦無し、手加減抜きで攻めてくる…そんな確信があった。  
逃げ切れる自信もない。  
「ちょっと!…時間ないの!…アンタだって破壊されたくないでしょ!」  
地面に叩きつけるが…何の変化もない『本』……  
「ああもう!……この!……この!」  
焦りと苛立ちに任せ思う様、本を踏ん付けるミント……何度めのストンピングだろう?  
「……きゃ?………なに?…………んげ!」  
前触れなく本が輝く。とてつもない閃光に辺りが包まれ何も見えなくなり……  
……光が収まった時にはミントの姿はアトリエから消えていた。  
 
残された『本』の傍らに上空から舞い降りたファンシーメルが立つ。  
「………間に合わなかったか」  
溜め息混じりに言う大魔法使い…  
「まぁ…ミントには『いい薬』になるかも……ね」  
言いつつも『薬』で済む保証など皆無だとも思う。  
だがこうなった以上、何の手助けも出来ない。ただ無事を祈るのみ………  
 
 
「………ん!……に、肉饅頭っ?!!」  
訳のわからない怒声と共にミントは覚醒したが……  
「………ここ…………どこ?………てか、………何?」  
暗雲…と言うより暗黒。深淵の闇。  
そこに浮島のような石版があり、その上にミントはいた。  
石版の付近は何故か明るく見渡せるが…ミント以外何もない。  
あからさまな異空間だとは理解出来ていても何の意味があるのかすらわからない。  
(ま……『本の中』だろけど………ありがちぃ……)  
呆れつつ思いつつ怒鳴ってみる。  
「…ちょっと!……責任者!………出てきなさいよ!  
 …どーせありがちな立体映像とかでバァって現れるんでしょ?…バレてんだから!  
 ………ほら、とっとと!」  
 
闇の彼方から『それ』は急接近……現れた。バァッと言えなくもなく突然に。  
石版にレリーフのような顔が彫られた巨大な物体……問題はその顔。  
丸々と太った頬は脂ぎっており、ところどころに吹き出物の痕がある。  
石版のレリーフなのに掛けている眼鏡が不気味な目を申し訳程度に隠す。  
長くも短くもない髪も不快指数を上げる。  
(……………うわぁ)  
ミントを以ってしても絶句するしかない醜悪さ。  
それが気味の悪い響きを立てる。  
「我が名は…クィーモォータ……エイオンが一人……  
 この『ムック・オブ・パラソル』の作者である……」  
そこまで聞いてミントは…嵐のようにまくし立てた。  
「はあ?……エイオン?……エイオンって凄い魔力あんでしょ?  
 視力くらい何とかなんないの?……なによその眼鏡、ふざけてるの?  
 てゆか!…見た目を何とかしなさいよ!……はいはい、ワロスワロス……その程度ね。  
 わかったから。……元の世界に返してよね!…今すぐ!」  
思いつく限りの罵声を浴びせるが…  
目の前の物体が凄まじい魔力を秘めていることは疑いようがない。  
(腐ってもエイオン……か)  
物体からは見えないようにデュアルハーロウに魔力を込める………が!  
 
「な…なによコレ!」  
 
隠していることなど無意味なほどに光り輝くデュアルハーロウを直に目で確かめる。  
凄まじいまでの魔力の奔流、そして集中。  
驚きのままのミントに…物体は話しかけた。  
「我は…全ての流動を促す存在…無論、魔力も例外ではない……」  
それでもしばらくは沈黙していたミント…  
…が、ニヤリとほくそ笑むと瞬時に攻撃体制を取る。  
「これなら!アンタだって瞬殺滅殺♪…さあ!  
 …破壊されたくなかったら大人しく……私を主と認めなさい♪♪」  
嬉々として脅しにかかるミントに物体は語る。幾分かは残念そうな響きを込めて。  
「…たとえ通常の魔力でも…いや、魔法など使わずとも  
 ただ軽く殴るだけで我は倒せる……汝は元の世界へ帰れる……  
 流動を促す代償として我の存在は酷く脆い………  
 故に我としても汝のような者を『主』とし、この『力』を預けたいのだが………  
 ……それは叶わぬことなのだ……」  
物体の言葉を鵜呑みにするわけではないが…ミントは集中させた魔力を拡散させる。  
(まぁ理屈は通ってるし……敵対する気はなさそうだし……)  
思いつつも、いつでも飛び蹴り→距離を取って魔法をブチ込む準備だけはしておく。  
「ずいぶん物分かりがいいじゃん。…で、なんで叶わないの?  
 アンタも望んでんでしょ?…キモい外見だけど…アンタが望むなら仕方ないわ、  
 このミント様が寛大な心で存分に使ってあげるから♪♪」  
これだけの『力』を与える存在を無下に破壊してしまうのは惜しい。  
物体を信用している訳ではないがミントなりの駆け引きでその真意を引き出す腹なのだ。  
「……簡単なこと………口ではなんと言おうとも……汝は我を拒絶する……  
 その際の僅かな抵抗でも我は封印される……」  
…根拠はないがミントは納得する。そしてゾクリと悪寒が走る。  
「……よーするに……アンタを…受け入れろってこと?  
 んで、ちょっとでも私が抵抗したら…ぜんぶパァ……?」  
ミントの動揺は見てとれるのだろう。物体は頷きつつ肯定の言葉を呟く。  
「察しのよい娘……本当に我が『主』に相応しいが……  
 ……それは叶わぬこと………真に残念だ………」  
「………ぅぐ」  
動揺が葛藤に変わる。最初は俯いているだけだったが歩き回りじたんだを踏み、  
やがてガクリと膝と手を付いて悩み、迷いを体言するミント……。  
(コイツ……絶☆対!やらしいこと……する気だ………  
 けど…この魅力的な私を無理矢理襲ってこないとこから考えると…マジに弱いのかも?  
 なら…ちょっと…ホントにちょっとだけ…さわらしてやって………っ!  
 いや待て待てっ!…絶☆対!ちょっとで済むわけない!…最後までヤられちゃうって!  
 こんなんとヤるなんて絶対っ!ダメ!……ダメったらダメ!  
 だが魔力は欲しい………あああああ…もうっ!!)  
ガンガンと床を叩くミントを見かねてか物体は再び語る。  
「聡明な汝のことだ……我が何を言おうと全ては信じるまい……  
 だが……我が求めるのは流動……肉欲的な物ではない……  
 今、汝が感じている葛藤もまた流動……今の時点でこれほど流れ動くのであれば……  
 あるいは微かに触れるだけで我が『主』となるべき『流動』を示せるやも知れん……」  
ミントは一気に立ち上がりキッとした視線と赤面、そして拳を物体に向ける。  
「いま、触れるってゆったよね?!…やっぱ…えっちいことする気ねっ!!  
 変態!……ロリコン!……死ねぇっ!」  
…かつて経験したことがないほどの大量の魔力の凝縮。  
腕を回るデュアルハーロウは回転を目で追えず巨大な光輪となる。  
………  
物体を標的に強大な魔力を今にも放ちそうな状況………しばしの沈黙。  
 
 
「…………ホントに………ちょっと………さわらせるだけで……いいの?…………」  
 
年齢相応の少女を意識させる恥じらいと弱さを感じさせる囁き……  
魔力を開放し赤面を俯かせるミント……瞳に貯まる涙を見せたくなかったのだ。  
 
「それはわからない。汝の流動次第……我が『力』でも促せぬ領域の流動を示す……  
 それが我が『主』たる条件……  
 ただ、汝の感情の流れは並々ならぬ物なのでそう思ったまで……  
 実際には触れるだけでは済まない可能性も多大にある……  
 汝の精神は高貴して屈強だからな……」  
 
涙が溢れないように目を大きく開けたままミントは思う。  
(魔力欲しさに……カラダを……さわらせるなんて………っ)  
現実味を帯びてくると凄まじい羞恥がミントを苛む。  
物体が言うように高貴な…ミントなりの誇りがあるのだ。  
だが。先程の物体に向けた魔力の壮絶さ……  
ミントがどうしても欲しかったモノ…望んで止まない夢……  
勢いよく顔を上げる。数滴の涙が宙を舞う。そして赤面のまま睨みつけ叫んだ。  
 
「絶っっっ対!!!…ちょっと…さわるだけだからねっ!  
 ちょっとでも変なコトしようとしたら即!殺すっ!…服とか脱がしても殺す!  
 …やっぱ途中で我慢出来なくなっても…やっぱり殺すッ!!  
 ……ちょっと………さわらせて…ダメだったら……百回……殺す………」  
 
最後のほうでは不覚にも涙が零れた。  
物体は慰めるように言葉を返す。  
「全て承知した……試そうとするだけでも汝は偉大だ……  
 汝に殺されるなら満足……汝に所有されることこそ……我が本望………」  
声の響きが収まると物体の後ろから一本の糸のような光が漂う。  
糸は分裂し絡みあい…その太さを増してミントの目前で止まった。  
そのまま触られることを覚悟していたミントは戸惑う。  
「まず……触れてみるといい……いかに脆弱なものか……  
 実感しておけば多少は……心が安らぐだろう……」  
言われるままに触れてみるミント…  
光の触手はちょうどミントの手で包める太さなのでミントは軽く握ってみた。  
(おたま…みたい……)  
恐らくはウィルオーウィプスと似た物質構成なのだろう。  
その気になれば簡単に引き散切れそうだ。そしてミントは問うように警告する。  
「……安心させといて反撃しようとしたら魔法使えなくしても殺すからね?」  
「用心と思慮の深い少女よ……我は促すことは出来ても封ずることなど不可能……  
 触れている今、我が言葉は真実と理解できるだろう?」  
確かに何故か真実だと理解出来る。また光の触手が高揚しているのも理解できる。  
…ミントは思った。  
「さわらせるだけでいいのか?」という問いに物体は「わからない」と答えた。  
もし淫らなこと…触ることを望むなら取り敢えず肯定しておいて触ろうとするだろう。  
…今、ミントに触れさせて安心させようとする行動も信頼に値すると。  
そもそも悪戯目的なら最初に気を失っている時点で襲っているのではないか?  
不気味な外見ではあるが…物体に対してミントは微かながら敬意を感じ…  
その意を行動で示す………  
 
ちゅ………っ  
 
光の触手に軽く唇を当てた。  
…その瞬間に物体に対する敬意は地平の彼方へ吹き飛ぶ。  
触手の先端から…突然に白濁が飛びミントの顔を汚したのだ。  
「………ちょ…………これって……………っ!」  
あわてて離れて顔を拭おうとするミントの両手を触手が封じる。  
物体の背後から瞬時に新しく現れた二本の触手がだ。  
狼狽する隙にさらに二本…両足に絡み付き一気にミントの身体を宙吊りにした。  
自分の手足を目視して拘束を確かめてから物体を睨みつけ……ミントは絶句する。  
 
(な………な………なにコイツ………っ!)  
 
物体の顔は…頬を染めて眼鏡が曇るほどにハァハァと息を荒げている………  
ミントは気絶してしまいそうなほどの空絶な不快感を覚えた。  
 
(ふ、踏み止まれい!……ごくう…ぢゃなくて私っ!!)  
 
踏み止まるのは気絶ではない。  
いくら不気味でも敵を目の前に気絶するような弱さは持ち合わせてない。  
反射的に暴発してしまいそうな魔法に対しての思いだ。  
とにかくすぐにも物体を滅ぼしたい。だが…  
(…ここまで魔力が増幅されるなんて………っ!)  
物体に対する嫌悪感がそのまま具現化したような無尽蔵の魔力……  
この後に及んでミントは迷う。  
(だって!…これ…無敵じゃん!………もったいないっ!)  
この『力』を得る代償……断腸の思い……けど……どうしても迷いが生じる。  
「ウヘ、ウヘへ……ごめんよ………少しでも…触られて恥ずかしくないようにって……  
 頑張ってたんだけど……ハァハァ……  
 でも……さっきの話は本当だから………ハァハァ……」  
不気味な物体の口調が変わる。  
ミントにも何故か理解る。その態度にはすっかり騙されていたわけだが…  
『口調こそ違えど、さっきの話は真実』だと。  
だからこそ攻撃を押し止めてしまうのだ。  
「……だまってさわりなさいよ!………でないと………っ!!」  
羞恥と悔しさ、その両方の意味で赤面しながら顔を物体から背ける。  
(犬に噛まれたとでも思って………っ)  
「ハァハァ……ミントたんが悪いんだよ………だって……………うっ!」  
触りもせずミントの目前でウネウネと蠢く触手の一本から再び白濁が発射される。  
「………やあ!…………っっ!!」  
顔の向きを変えて避けようとするが赤い頬に当たって弾ける。  
変な液体をかけられたことも屈辱的だが名前を呼ばれたことも抜群に嫌悪を感じる。  
(私……名前、言ってないのに!…………っ!)  
…何故こんな物体の話を真実と思えるのかを理解できた。  
触れられると思考を読まれる、読める…物体の思考に嘘はないとミント自身が感じる。  
同様に物体もミントの思考を感知できる…心を覗かれる屈辱……歯を食いしばるミント。  
「ハァハァ…それ以前に名前を書いたでしょ?…僕に……ハァハァ……」  
(……犬に犯されたほうがマシかも………)  
そう思いつつも極限まで耐える決意を堅固にする。  
(ここまで…されたんだから………絶対!…コイツの『力』…戴いてやる!)  
ミントの決意、思念を感じてか。  
動きを封じるだけで様子を伺っていた無数の触手が一斉に襲い掛かってきた!  
「…?!……あ………やあ………やめ…………っ!」  
声を飲み込むミント…抵抗するほどに触手…物体は歓喜を示したからだ。  
まだ漠然とだが…物体の思考が伝わる。知りたくもないが理解できてしまう。  
(…こんな奴を悦ばせたくない!)  
そう思い沈黙して耐える。ゾワゾワと太股や二の腕、お腹を蠢く触手のおぞましさに……  
(くう………私が………こんな雑魚に………?!?!)  
「あ!……やぁ………んぁ!…………っ?!………っ!!」  
触手の愛撫が…お尻や胸に達した時。絶対に出すまいと思っていた声が漏れる。  
ミントも年頃の♀……敏感な所を撫でられては心で拒絶しても本能は反応してしまう……  
だとしてもだ。少し触られただけで声にまで出してしまうなど……  
もともと赤みを帯びていた顔が真っ赤になる。  
こんな奴の愛撫に微塵でも感じてしまった…それを相手は知り下卑た笑いを浮かべている。  
何本かの触手は謎の白濁を撒き散らし狂喜乱舞………  
…もう我慢の限界だった。  
「殺す!……一万と二千回ブチ殺す!」  
言葉と同時に最強魔法を撃ち込む……つもりだった。  
電撃にも近い悪寒が背筋を走る。  
(うそ…………うそ………っ)  
 
「この……!…嘘つき!…魔法を封じたり出来ないって言ったじゃない……っ!」  
 
絶叫。…絶望を表現するようにミントは叫んだ。  
 
泣きたいのを必死に堪えるミント……  
それすらも悟られたのか触手は動きを止めて物体は語る。  
 
「嘘なんかついてないのは伝わるだろ?  
 魔法なんて封じてない…僕にはそんな力は無………  
「うそよ……嘘よ!…嘘つきっ!…………っ!……いやああああっ!」  
無駄と知りつつも動ける範囲で必死に暴れる。  
やはり簡単に散切れるはずの触手は振り解くことすら出来ない。  
それでもジタバタと暴れ続ける。  
(その先を……言われたら…………)  
想像するだけで涙が溢れてきた。  
…触手は無慈悲にミントの四肢を引っ張り大の字に固定する。  
さらにその巨大な顔をミントに近付けてボソボソと台詞を続ける。  
「ミントたんは……本当にお利口さんだねぇ……  
 そう……魔法が使えないのは……使いたくないから!  
 口では殺すとか言っても……ホントは……さわって欲しいんだよね?………」  
「ちが………っ!……違う!……そんなわけ…………?!………っ…ひぁああん……っ」  
一本の触手がわずかな胸の膨らみ…その頂点を軽く突いただけ。  
それなのに否定の言葉を甘い喘ぎで覆してしまう。  
「…………っ!……………っ!」  
もう何も言えない。大粒の涙をポロポロと零すだけ……物体はさらに独白を続ける。  
「恥ずかしくなんて……ないんだよ……魔力の増幅を促すように……  
 ミントたんの『キモチいい』を増幅、促してあげてるんだから……  
 ……さわって欲しくなって……当たり前なんだよ……!」  
理解はしていた。だが改めて言い聞かせられると……憶測を確信に変えられれと……  
(そんな………このままじゃ……………っ!)  
ズクンと全身に震えが走る。これまでで最大の窮地……数刻後の自分の姿を想像して……  
ミントは子どものようにガクガクと震えてイヤイヤと首を振る。  
…物体の呼吸は先程より荒れてない。代わりに視線に鈍い光が宿る。  
……本気だ。  
悪い予想が実現すると確信してしまい…あまりもの恐怖から失禁しそうになる。  
瞬間に物体たちは嘲りや歪んだ愉悦を表す…太股をキツく閉じ尿の漏洩は回避できたが…  
(コイツら………「ら」?…………っ?!)  
「ひあ!……ひゃあああん……っ………やめ………くうぅ………ふぅあ………っ!」  
再開された触手による愛撫弄りに事々しく喘ぎながら…ミントは理解した。  
右の乳房を責める触手は突起を重点的に微細に蠢く。  
左の胸は膨らみ全体を触手で巻くように激しく揉む。  
お尻全体を舐め回すような触手、  
タイツとショーツの上から先端を押し当て尻穴で振動する触手。  
閉じた太股を開こうとする、耳や口に擦りつけてくる…  
触手それぞれに個性があり様々な凌辱が全身の至る所で繰り広げられている。  
(コイツら………たくさんの思念が集まって……っ!?  
 いや!………やだああぁ……っ!!)  
「やああっ!……みないで………みるなあぁ!………ふあぁ………くぅん…………」  
とっくに膣内に貯まり始めていた愛液が許容範囲を越え下着を濡らす感覚。  
おびただしい量だと湿り気が教える。タイツまで染みていることは間違いない。  
物体にそれを見られることは…大勢の人間に視られていることと同じ……  
羞恥が数倍に膨れ上がる。連鎖して性感も刺激を増加するが……  
 
『おいおい…視られると感じるみたいだぜ?w』  
『快感の増幅は最低限に抑えてるのに…元から淫乱なんだねw』  
『すごいHなミントたん……ハァハァ……』  
『…』…『…』…』…』』』………  
 
絡みつく触手の一本一本から思考が伝わる。  
無数の触手がそれぞれ彼らの手であり舌であり男性器なのだ。  
 
「………こんなの………ぁん………こんなの…………っ!  
 いひやああああああぅっ……やらぁ………おねがいだから………ゆるして………っ」  
…もはや哀願するしかない。  
 
その哀願も行為自体の拒絶なのか…行為の「焦らし」に対してなのか…  
ミント自身もわからない。  
確かなことは…物体は次の瞬間にもミントを壮絶な絶頂に追いやることが出来る。  
…なのに敢えてそれをしてこない。  
もちろんこんなヤツらにイかされるなどミントのプライドが許さない。だが…  
身体の快感の激昂を必死に堪えるが…敗北は必至なのだ。  
ならいっそ一気にトドメを……  
そんな心境なのに。物体はそれをも把握しつつミントを弄び続ける。  
完全に遊ばれている。残り一桁のHPで大量の魔物に囲まれているようだ。  
(なのに………キモチいいの………とまならな…いぃ………んっ!)  
羞恥と刺激、屈辱と尿意…あらゆる感覚が性的快楽へ導かれてしまう。  
凄まじい性感の激流に流されるしかない。  
大の字…桀にされたように不安定な空中で身を悶えさせ喘ぎ続ける………  
……  
どれほどの時間、蹂躙されていたのかわからない。  
…ミントの『心』は…もう限界だった。  
 
触手の一本一本が『物体』を構成しているなら全ての触手をイかせれば…  
あるいは開放されるかも……屈辱の絶頂や羞恥の放尿を晒さずに済むかも知れない。  
そんな極少の希望にミントは自ら触手を手で、口で、舌で愛撫した。  
その小さな両の手それぞれに握り扱く。  
目前でぬめる触手に唇を這わす。舌で先端を転がす。躊躇いながらも口に含む。  
そんなミントのたどたどしくも健気な一挙一動に触れられていない触手までも射精した。  
『あ!あ!……ミントたんが……俺のを!……うっ』  
『自分から…おしゃぶりかよ!…ほら、顔にかけてやるぜ!』  
『すごい…ミントたんが…こんなにHに………うっ!』  
屈辱に耐えて…さらなる恥辱を避けるため…必死に奉仕した。  
数え切れないほどに射精させ、ミントの顔や髪、服や身体を白濁が汚している。  
それなのに。触手の数は減っていくどころか増える一方…  
射精させた触手もすぐに回復して再び凌辱を続ける。これではキリがない。  
そして何よりも……ミント自身が……  
(あ……はぁ………しょくしゅ………いっぱい……んくぅ…………っ  
 ………しろいの………せーえき………かけられるだけで………ふぁああ………っ!!)  
奉仕することすら悦びに…快感に結び付き始めた。  
砂の城が波に削られていくように…ミントの純真な心が崩れていく。  
…溶けていく自分自身に溺れてしまうような感覚。  
 
(わた……し………もぅ………もぉ…………)  
 
眠りに転がり堕ちるように…全てを諦めて快感を受け入れようと…  
絶頂…気絶してしまう可能性も高いが…それでもこの淫獄から逃れようとした瞬間。  
…グラリと視界が揺れる。  
手足を拘束していた触手が大きく動きミントの身体を逆さにしたのだ。  
急な体勢の変化が夢心地の快感を疎外する。だがそれは一時的なものだ。  
すぐまた触手の愛撫が、快感が心を蝕む。そしてまた身体を振り回され……  
…意識の崩壊すら許されない。ひたすらに羞恥と快楽を心に刻み込まれる。  
それこそが物体の目論み…わかっていてもどうすることも出来ない。  
身体を揺り動されたことで悲鳴を上げる膀胱も同じだった。  
 
「お……おしっこ………もれちゃう………ぅ………」  
 
…物体には既に知られていようとも絶対に自分からは言葉にしなかった羞恥を囁く。  
触手たちはその小さな声にミントの身体をゆっくりと動かし…  
四つん這いのような体勢で空中に固定する。お尻を高く上げられたポーズが恥ずかしい。  
(いやぁ……こんな姿勢で……おしっこ………出せないょ…………)  
もはや決壊は目前だが…最後の理性が限界を超えてそれを押し留める。  
それも承知の上なのだろう。  
触手はスカートの裾から侵入、腰へ…タイツを一気にめくり降ろした。  
 
「いやあっ!……服は!脱がさないって!…………っ……っ!」  
 
言いながら、そんな約束など既に形骸に過ぎないことに気付くが…それ以上に…  
タイツからショーツへ何本も伸びている愛液の感覚、ショーツに感じる空気の冷たさ…  
どれほどに自分が発情しているか改めて思い知らされて絶句する。  
白く可愛いフリルの付いたお気に入りのショーツを、ぐちゃぐちゃに愛液で濡らし  
物体の目前でよく見えるようにお尻を突き出している事実も…たまらなく恥辱。  
さらに物体の言葉に条件反射で思ってしまったことが己の首を閉める。  
「ウヒ、脱がしてないよ……ずらしただけだから…セーフだよね?」  
(っ!……そんなこと言ったら破るのもアリじゃない…っ!)  
ミントの思考を行動に移す触手…胸に張り付き、これまでとは違う体液を分泌……  
液体が染みていく部分の布が薄くなっていくのが伝わる…  
「……いやあっ!」  
ジャケットもインナーも溶解、ショーツ同様のフリルが可愛い白いブラがあらわになる。  
凄まじい尿意に新たな羞恥……本能のままに理性が断末魔を叫ぶ。  
「みないで………っ  
 ミントの…はずかしいとこ……みないでよぉ…………っ  
 いや、…いやあああああぁあっっ!!………っ!!」  
羞恥のあまり意識が幼児退行したのか?…一人称に自分の名を使い泣きじゃくる。  
それに合わせるかのように触手は「小さい子におしっこさせるポーズ」を強要する。  
「やああっ!…でちゃう!………おしっこ………もれちゃう!……やめてえ!」  
駄々っ子のように大声で恥ずかしいことを喚く。  
なりふり構わないことでほんのわずかだけ尿意を堪えられるのだ。  
しかし触手の責めは続く。  
M字に広げられた股間…愛液まみれのショーツを撫であげてクリトリスをくすぐられる。  
ブラの隙間から侵入した触手は乳首を舐め転がす。  
どちらの触手にも幾人分もの意識が集中している。  
(わらひ……たくしゃんのヒトに……おまんこや……おっぱい………いじられてりゅ?!  
「らめぇ!……ちくび……ぅぁ!……ぁん!……吸わないでぇ…………っ  
 おまんこも……ひぁは!……つつかないでぇ……っ!  
 キモチいい………キモチよすぎるのぉ………っ!  
 あっ!………やっ!………ひぅぅっ!」  
…尿か潮か?…ジュっと一筋の液体がショーツを突き抜き飛沫を上げる。  
『あ〜あ、ダメだこりゃ…自分から「ぱんつ脱がして」ってお願いさせたかったのに…』  
(………やあ…ぱんつ…脱がさないで………)  
『ぱんつに「おもらし」したかったんだろ?…変態ミントちゃんw』  
(………はぅ………おもらし……やああぁ…………っ)  
『じゃあ…ぱんつ脱がしていい?w』  
『ほら、し〜し〜しましょうね?w』  
『イっちまえよ!…その瞬間に快感を最大増幅してやるから!』  
途中からミントは思考を失った。超絶すぎる快感に全意識を奪われたのだ。  
全身を激しく痙攣させながら悶える。  
ブラは片方めくられてピンクのつつましい突起が露出…その羞恥も感じられない。  
ジュ…ジュっと噴く潮に下着越しでも性器がヒクつくのが見てとれる。  
 
「みんと……ミント……イくぅ!……イっちゃ…………っ!!  
 ひぁはあぅ!…ひあああぁああ!……あああああぁああアアアアァア…………っ!!」  
 
ジョロ!……ジョジョ!………シャアアアアアァ…………っ  
 
その絶頂はミントが予期していたものより遥かに高い。  
そしてそれが物体の『力』により数倍も高められる。  
驚愕するほど魔力を増幅した『力』が全てを超越するほどに快感を増幅する。  
津波に呑まれるような、竜巻に飛ばされるような…  
奈落へ堕ちる…そんな感覚の奔流にミントは翻弄される。  
……逆に意識がクリアになっていき状況をより鮮明に把握してしまうほどに………  
 
(わたし……イってるぅ………すごい…………イっちゃってる…………………)  
 
そのクリアな意識さえ超絶頂を味あわせられながら…体感させられながら……  
過酷とまでいえる甘美、歓喜が尽きない今の状況を把握してしまう………  
 
(おしっこ………とまって………ダメ…………  
 超イきながら………おもらしなんて……………っ)  
 
時間の感覚はない。だが放尿した量は既に尋常ではないはず。…それでも止まらない。  
 
(そんなぁ………おしっこまで…………増幅されてりゅ………っ!)  
 
物体の意図も手に取るように理解出来る。  
超絶頂と超失禁…これを重ねることの相乗効果…それすらも増幅されてさらなる高みへ…  
限界を超えて辿り着いたこの精神領域すら快感に浸蝕され始めた。  
 
(わたし……超イきながら……たくしゃん……おもらし…して………  
 ……超キモチよくなってりゅ…………っ  
 ひゃうん………はずかしいぃ………でもぉ……キモチぃぃ…………  
 イってりゅのに………もっとイっちゃう…………ふあぁ………こわい………  
 …こわれちゃう………わらひ…………きゃああ!………ひう!…………っ!!  
 くひゃああああああぁアアアアァアああぁ…………っっ!!)  
一際大きくビクビクと身体を痙攣させる。幼い膨らみの先端、乳首まで震わせて…  
ミントの花芯から水風船を破裂させたかのように愛液と尿が飛散する……  
背筋をのけ反らせて天を仰ぐそのアヘ顔……瞳から涙を、口から唾液を流しながらも……  
それは愛おしいほどに、狂おしいほどに…美しい。  
 
奈落の底から天上の彼方まで一瞬で突き抜けるように……  
絶頂の中でまだ見ぬ領域までミントは駆け抜ける………  
……  
…  
触手は集まり折り重なり光の大地を作る。  
その中でも特にふかふかな部分にミントをそっと寝かせた。  
この空間では時間の概念はないが……  
仮にミントが正常なら体感時間は3時間ほどか?…今のミントに意識があれば…  
その数倍の時間もイきならが放尿していたように思っただろう。  
…長い性行為も終わりを向かえようとしていた。  
拘束から開放されても…だらし無く足を開き、まだチョロチョロと尿を漏らしている。  
光を失った瞳、まだ若干は荒い呼吸……凄まじい時間イっていたのだ。  
余韻もまた凄まじい。降りてくるまでまだまだ時間がかかる…  
その前に眠りに落ちるかも知れない。  
そんなミントを見つめる物体の思念が揺れる。  
 
『イかせすぎちまったかな?』  
『ああ……精神許容量も増幅してたが…あんなにイくとは……』  
『でも…もし無事なら…あと十回くらいヤれば……ホントに僕らの主になれるかも……』  
『確かになw…だが無事に回復したらその瞬間、俺らは殺される罠www』  
『よせよ、最初から殺される覚悟だったろ?』  
『……ああ。しかし死ぬ前にミントたんに挿入したかった……』  
『仕方ねえだろ、俺らみたいなのに挿入れられたらミントたんの快感が損なわれる』  
『ミントたんが望んでなかったからなぁ……』  
『まぁまぁ、無事に意識が戻ることを祈りつつ…さっきの映像で………ハァハァ……』  
『ああ、殺される前に存分にオナろうぜ!』  
 
……そんなやり取りをミントは全て感じていた。  
(あと10回?…勘弁して……)などと思いつつ………  
…最初から殺される覚悟だった……挿入したかったのに自分をイかせる為に堪えた……  
その感情も事実を振り返りながら胸に刻む。  
(目が覚めたら………全員ぶん『ボコボコ』に……………)  
そう思いながら夢の中へ誘われる………………  
 
………………………完  
 

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