「ヒカル?」
「え? は、はいっ。」
回想は唐突に終わりを告げた。
「そろそろ、車の中に戻ろうか? ちょっと冷えてきたしな。」
「そうですね……。」
車の中は、少しひんやりとしていた。先生はエンジンをかけて、ヒーターをONにする。
暖気運転の為、アイドリング音が高くていやに耳に響く。そして、同時に私の緊張も高まっていく。
先生は外を見たまま、何も言わない。私も何も話し出す事も出来ず、沈黙を保っていた。
だが、先生はかすかに頷くと、こちらを見て話し始めた。
「ヒカル、いいか?」
「……はい、何ですか?」
「お前に……、渡したいものがあるんだ。」
そういうと、先生は後部の荷室に手を伸ばして、折り目の無い紙袋を取り出し、私に渡した。
「何ですか? これ。」
「ま、いいから開けてご覧。」
私は不安になりながら、袋を開けてみた。すると、中には、
「これは………セーター?」
中には凄く手触りの良い、高級そうなセーターが入っていた。
「先生、これは?」
「………3年前の約束、覚えているか?」
「…はい。あのサクラ中の屋上での、ですよね?」
「俺はあの時、お前の気持ちに応えられなかった。だから、俺はお前に言った。
もっと成長すると。お前の為に、皆の為に頑張ると。」
先生は、私の目を見つめながら語り始めた。
「俺にとって、この3年間は長かった……色々あったよ。お前がいた頃の3年B組と
負けず劣らずの、問題児が集まったクラスばかり受け持っていたからな。」
「先生、茶化さないで下さい。」
「ん、すまん。」
それから先生は、今まで話してくれなかった、この3年間の苦労について語り始めた。
社会科の先生が校舎に立て篭もって、その対応に追われた事、クラス内でいじめが横行して
みんなで真剣に話し合った事、先生方で姉妹校に行った時に道に迷って一晩明かした事…等等。
それらの話は、私がサクラ中にいた頃に比べても大きなトラブルばかりで、本当に大変だったんだな、と思った。
「でもな、こんだけ色々あってもな、学校って楽しいんだよ。」
「ふふっ、そうですね…。」
「俺はこの3年間で、色々経験も積んだし、自分でも少しは…ほんの少しは成長出来たんじゃないかと思う。
おかげで、来年度は学年主任を任せて貰えるようだしな。」
「本当ですか? 凄いじゃないですか!」
「ありがとう。ヒカルにそう言って貰えたことが、一番嬉しいと思うよ。」
私は、心臓が跳ね上がるのを感じた。
「でも、お前もこの3年間、一生懸命頑張ってきたみたいだな。」
「?」
「見たぞ、高校の全国模試の結果。全国トップ10に入っていたじゃないか。それに、相変わらず学級委員長をやって
クラスの皆をまとめているんだろう? 町内でもお年寄りのアイドルだしな。
近所のおじいちゃんがお前に感謝していたぞ。いつも相手してくれてありがとう……てな。
偉いよ、立派だよ。」
「先生……。」
「確かに、良い成績を取ったり、学級委員長に就いたりする事だけが、そうやって目に見える形だけが、
頑張る証だとは、俺は思わん。だけど、お前は違うだろ? 成績の為とか内申書の為とか、
そんなのの為に頑張ってるんじゃないんだろ? だから、お前は偉いんだ、成長してるんだよ。」
「……。」
私は……。
「だから、それは俺のささやかな誕生日プレゼントだ。結構高かったんだぞ? それに…」
「プレゼントはそれだけなのっ? ……お兄ちゃん。」
「!?」
私は自分のメガネを外し、お下げの紐をゆっくりと解くと、静かに向き直って、はっきりと言った。
「お兄ちゃん。私が頑張ってこれたのは、お兄ちゃんのおかげだよ。」
「ヒカル……。」
「だけど、私、これだけじゃ満足出来ない。できっこないよっ そんなの無理だよ!」
その瞬間、呆然としているお兄ちゃんに向かって、私は抱きついていた。
「お兄ちゃんの……、結論は……、これだけなんですか?」
「ヒカル……?」
「お兄ちゃん……、私じゃ…駄目? お姉ちゃんじゃないと……駄目?」
「!?」
「そう……だよね……私じゃ…んっ!」
一瞬の内に私の唇は、お兄ちゃんの唇で塞がれた。
私は突然の事に驚き、お兄ちゃんの行為に対する嬉しさと、唇同士が重なり合う初めての感覚に、とろけるようだった。
「んっ……んぅっ……うんっ…」
キスは最初のうちは単純に唇を重ね合わせるだけだったが、暫くするとお兄ちゃんは、押し付ける様にしてきた。
その力強さに少しの息苦しさを感じる。
「んふ……ほにいちゃ………んっ!?」
お兄ちゃんは私の唇を強引にこじ開けるかのように、舌端を入れてきた。唇が開き、舌同士が絡み合い、
お互いの粘膜を刺激しあう。その感触は、直接私の脳に響くような感じだった。
「あっ、はっ、んむっ、んはぁっ」
唾液を貪るビチャっという音と、歯がぶつかり合うコツンという音、
そして2つの荒い呼吸音が車内に響き渡り、淫靡な空気を醸し出す。
暫くすると、お兄ちゃんも息苦しさを感じたのか、唇を離した。
二人の唇の間に、透明の架け橋が鈍い光を放って、消えた。
「お兄ちゃん……」
「ヒカル………ごめん。」
「なに、いってるんです……わたし、うれしいんですよ……。」
私はお兄ちゃんの手に自分の指を絡めあい、その目に視線を合わせた。
「ごめんなさい、お姉ちゃんの事を言って。でも、お兄ちゃんがじれったいからだよ……。」
「そうだな、多分、俺、逃げていたのかもしれないな、お前から。」
「え?」
「教師としてか、一人の男としてか、どうお前と接していいか、分からなかったんだ。
俺は迷ってた。だけど……今なら言えるよ。」
お兄ちゃんは私の目を、真摯な眼差しで見つめながら言葉を発した。
「ヒカル、俺、お前の事が好きだ。生徒じゃない、一人の女性として、人間として、お前の事が…好きだ。」
「お兄ちゃん…………、私も、お兄ちゃんの事、大好きです…。」
二人の影が、ひとつになり、倒れこんでゆく…。
「はぁ………っん、んっふっ……」
お兄ちゃんは甘いキスをしながら、指を私の胸に持ってきた。
そして、汗で薄く湿ったシャツ越しに心臓を掴むかの様に力強く、でも、優しく丘を揉みしだく。
「んっっ! はぁ、あぁっ…」
初めて異性に胸を触られる違和感と、何かくすぐったいような快感が私を支配する。
「お兄ちゃん……もっとさわっ……くっ」
すると、お兄ちゃんは唐突に胸から手を離した。
「……え?」
いや、その大きな手は胸よりも、もっとデリケートで鋭敏な感覚を持つ私の………アソコへと動いた。
下着越しに指は緩急をつけて、刺激を与える。
「っっんんっ! あっ、あっ、あはぁっ、ぁはっんはぁっ」
私は熱が浮かされたように、ひたすら声にならない声を発し、時折来る刺激に背中をびくっと痙攣させた。
目をうっすらと開けると、お兄ちゃんも興奮しているのか、息を少し切らしているように見える。
視線を下に下げると、スラックスの前がテントを張ったみたいに膨らんでいるのが、視界に入る。
無意識のうちに、私の手はそこへ伸びてベルトのバックルを外し、スラックスの腰の辺りを引っ張って押し下げた。
すると、お兄ちゃんのぺ………アレが剥き出しになり、大きくそそり立った。
これが……保健体育の時間に習った「勃った」という事なんだろうか?
グロテスクにも見えるが、見ようによってはユーモラスな形かもしれない。
「お兄ちゃん……触っても…いい?」
私は大胆にそんな同意を求めつつも、好奇心が先に立って既に手を触れていた。
「うっ」
「えっ? ここ……痛いの?」
「あっ、いや……違うんだ……その…」
急にしどろもどろになりだしたお兄ちゃんだったが、私は目もくれず体を傾けて、
その雄雄しくそそり立つ物体に顔を近づける。
「お兄ちゃん……男の人のサイズって、こんなに大きいの?」
「!!」
お兄ちゃんの動きが急に止まった…。何かおかしな事を言ってしまったのだろうか?
妙に冷静になりつつも、湧き上がる好奇心は抑えきれず、思わずソレを口に含んだ。
「!!!!っ、お、おいっ、ヒカルっ!」
お兄ちゃんの雄の体臭は、初めはちょっときつかったけど、それが大好きな人のだと思うと、
逆に何でもなくなってします。既に、私は本能のままに動いているのかもしれない。
その命ずるまま、私は口に含んで、先端に舌をそろそろと確かめるように這わせる。
「うっ…あっ……ヒカ…る」
苦しそうなお兄ちゃんの声を聞くと、何故か私も興奮が高まって、アソコも、熱くなってきた様に感じる。
すると、お兄ちゃんも下着を乱暴に降ろし、アソコに顔を埋めて舌を使ってなぶり始めた。
「んんっんっ、ぷはぁっ、ああっ、んぁっ!ああっん」
舌が触れるたび、お腹の筋肉が痙攣を起こしたかのようにビクンビクンと跳ねる。
刺激が強すぎて、痛くて、気持ちが良くて、身体が強張って息が出来ない。
もう、その場には発情期を迎えた雄と雌しかいなかった。
クラスでは優等生として、近所ではお年寄りの話相手として、将棋部では「飛車角のヒカル」として通っている私。
でも、もう、そんな肩書きは、今の私には無意味に等しい。
今、この時は目の前の愛しい男性しか目に入らない。
二人の世界がこのまま永遠に続いてしますんじゃないかって、変な妄想が頭を過ぎる。
私は夢中で目の前の雄の象徴を、口腔の中に収め、僅かに頭を上下させる。
「!んっ」
と、突然、お兄ちゃんは私から身体を離し、後部座席へ行ってシートを倒し、荷台とフラットにした。
強烈な刺激で息を荒げながら、半ば虚脱してそれを見ていると、車に積んであった毛布を敷いてくれた。
「はぁ、はぁんっぐっ、お…、おにい…ちゃん…?」
「………この前遭難した時に、必要だな、って思って買ったんだが……まさか、こう使う事になるとはな。」
「え?」
「ヒカルを、なるべく痛くしたくないんだ。」
私がその言葉の意味を理解するのに、一瞬間が出来た。
そして、理解した瞬間、鼓動が急速に早くなり、顔が火照り、ブルっと身体が震えた。
「やっぱり……、怖いか?」
お兄ちゃんはあくまで優しい。大丈夫……、この人なら……。
私は黙ってお兄ちゃんに近づくと、シャツやら何やらをおもむろに脱がせ始める。
お兄ちゃんは積極的な私に面食らったようだが、真顔になると、同じように私の衣類に手をかけた。
間もなく、私たちはお互いに、生まれたままの姿で向き合っていた。
改めてこうしていると、恥ずかしさで顔が赤くなる。
ふと、私は自分のアソコが何かで濡れているのを感じたが、お兄ちゃんがそっと抱きしめて
ゆっくりと腫れ物に触るかの様に、毛布の上に私を横たえた。
私は、高まる不安と期待とで、胸がいっぱいになった。
お兄ちゃんは私の上にのしかかり、足を広げさせて自分のモノをそっと私のアソコへあてがった。
クチャっという粘着音と硬くて熱いものが触れる感触に、自然と感覚がそこへ集中する。
お兄ちゃんと私………繋がるんだ……。
私が陶然として、お兄ちゃんの顔を見ると、何故か顔は強張っていた。
「お兄……ちゃん? ……どうしたの?」
「ヒカル、いいのか?」
「ん?」
「今なら、まだ、引き返せる。ただの過ちだったって、終わらせる事も出来る。」
「お兄ちゃん……。」
「ヒカル、俺、本当に情けないな。」
私は首を振ると、精一杯の笑顔で言った。
「ありがとう……お兄ちゃん。私に……して……下さい。あなたで、わたしを…」
「ヒカル………いくぞ。」
先端が私の中に入ってきた。
「!!っ、んっっっ! あっ、がっ、いっ、いっっ!」
怒張したモノが入ってくる異物感と、何かが破れそうな痛みに、こらえきれない叫びがこぼれる。
「ヒカルっ」
顔を僅かに歪め、お兄ちゃんは私を見る。
「ひぐ……ぐっ……ん…だ、だいじょう、ぶ…です……」
そのサイズは私が想像していたよりもだいぶ大きくて、痛みは激しいのだが、
それよりもお兄ちゃんが私を貫いてくれた事が嬉しくて、幸福感が私の心を満たしていく。
ゆっくりと、お兄ちゃんは前へと進み、その度に私の体の筋肉が僅かにびくっと痙攣する。
歯を食いしばって私は、自分の身体の反応に耐える。
「ヒカル………。」
お兄ちゃんは慎重に身体を進め、自分自身を私の奥深くに差し込む。
「あ、あはっ、はあっ、はぁぁっ」
気がつくとお兄ちゃんの動きは止まり、私は短く浅い呼吸をしていた。
「おにい、ちゃん……」
「俺たち……繋がったな…。心も、体も。」
そういうと、私の頭を抱え込んで、ぎゅっと抱きしめてくれた。
私も愛しい人の、汗が吹き出た背中にぎゅっと両手でしがみつく。
「お兄ちゃん……暖かいよ……熱いよ……。」
「ああ…俺もだ。お前の中、凄く熱いよ…。」
二人の顔が自然と近づき、唇を軽く合わせる。歯が軽く触れた。
お互いの体を握り締めていた手を離し、その手を相手の指に絡め合い、しっかりと握る。
暫く、ひとつになる初めての感触を無言で味わっていたが、
私は痛みが和らいでくるのを感じると、お兄ちゃんに懇願する。
「もう……大丈夫……だから、う、動いて、くださ…い。おねがい…。」
「ん……。」
お兄ちゃんの体がそれに応じて、静かに、恐る恐る前後に動き始めた。
体は密着させたままで、全体を大きく揺らすように。
私が始めてだから、気を使ってくれているのだと思うが、動くたびにまだ少し痛みが走る。
でも、それよりも、段々と貫かれている所が熱くなって、
よく分からない快感みたいなものをより強く感じるようになった。
「んっ、んっ、んはっ、」
「苦しいか、ヒカル」
耳元で囁く様に、お兄ちゃんは私を気遣う。
「んっ、あっ、ちがう…の。なんか、いたいんじゃないの、お、奥が、あっ熱いの、
お、にいちゃん、声がもれちゃうっ、あっ」
「我慢しなくてもいいよ、お前が喘ぐ姿……俺は見たい。」
「んっ…ぇえ?」
とんでもない事を囁くと、それが合図となって動きが変わった。
ゆっくりと揺らすような緩慢な感じではなく、腰を前後に、直線的にすばやくピストン運動をする。
「あっ、ああっ……んっくっ、んあっ!あはぁっ…ああっ」
奥が今まで以上の勢いで突かれる度、もう私は喘ぐだけの一人の雌になっていた。
「可愛いよ、ヒカルっ」
「おにっ、ちゃんっ、だっ…だめっ! おかしいよ、熱いよっ、…んあぁっ、うぁっ」
息も絶え絶えになって、意識が朦朧としてきたが、お兄ちゃんの手だけはしっかりと握って離さなかった。
お兄ちゃんも汗を飛び散らせてながら、腰を激しく振る。
中のモノはその大きさを保っていたが、びくっと一瞬だけ、引きつるのを感じた。
「お兄ちゃん……、い、いまのは…?」
「ヒカル、ごめんっ、おれ、もう我慢できないっ」
「あっ、ああっ、おに…いちゃんっ、で、出るの?」
「くっ…」
お兄ちゃんの手が折れそうな位強い力で私の手を掴む。私は、手をしっかりと握り返しながら叫んだ。
「出してっ、わ、わたしでっ、くっあ、な…なかにっ、ああっ!」
「ヒっ、ヒカル、だ、駄目だっでるっ!」
お兄ちゃんは射精の瞬間に外に出そうと腰を引いたが、私は一瞬右足を絡めて動きを止め、
握っていた手を自分の方へ引き寄せて、反射的に抵抗した。
「くっ! うぁっ ぐっ、あっ、」
お兄ちゃんの体がびくっびくっと何度も痙攣する。
そのたびに私の中に、お兄ちゃんの精液が注ぎ込まれ、膣内を満たしていく。
「あっ、あっ、んはっ、はぁっ、あっ、んっ…」
お兄ちゃんのモノがびくっと射精する毎に、私は短い喘ぎ声を上げる。
私の中は、お兄ちゃんの……熱い液体で一杯になっていた…。
私は目を閉じて、その感触とお兄ちゃんを受け止められた喜びを感じていた。
お兄ちゃんが射精した後も、数分間そのままの姿勢で私たちは繋がっていた。
息は荒く、車の窓ガラスは外が見えないほど曇ってしまっている。
ふと、目を少しずつ開けると、お兄ちゃんが目を瞑って苦しそうな顔をしていた。
「大丈夫…ですか?」
「……んっ、ああ…中、出しちまった…」
「ごめんなさい…、お兄ちゃんを感じたかった…から。」
「子供…出来たら、ちゃんと責任とるからな、ヒカル。」
「心配しなくても、今日は大丈夫ですよ。ちゃんと安全日の計算、授業で習いましたから。」
「……最近は、そんな事も教えているのか…」
「でも、ありがとう。お兄ちゃん、私、お兄ちゃんから貰ったよ。」
「何を?」
「私の……誕生日プレゼント……。」
そういうと、私はお兄ちゃんにキスをした。時計を見ると、もう12時を廻っていた…。
その後、私たちは、裸のまま横になり抱き合っていたが、さすがに深夜になると
中古車の使い込まれたヒーターでは暖まりが鈍くなってきた。
「お兄ちゃん、ちょっと寒いね…。」
「さっきのセーター、着てみたら?」
「ううん、あれは今度のデートの時の着てきます。今は……あなたの、中で…。」
「ん、分かった。」
お兄ちゃんはそういうと、毛布を寝袋の様に二人の体に巻いた。
「これで、暖かいだろ?」
「うん………………、お兄ちゃん。」
「これからも………、よろしく…、お願いします…。」
「ああ、俺もな。ヒカル…。」
遥か上の満天の星空が、二人を見守るかの様に静かに包んでいた……。