卒業式が終わり僕は3Bの教室に居た
さっきまでの賑やかさが嘘のように静まり返っている教室
1年間過ごしてきた教室はなんだかなつかしいような新しいような時間が過ぎている
一人一人の机に触れ1年間の事を眼を瞑り思い浮かべる
やはり1番最初に思い浮かんだのは中島ヒカル…彼女のことであった
桐谷…チハル…ヒカル…美咲 次々と思い浮かんでは通り過ぎてゆく
ヒカルはあれから気丈に過ごしていたが本当に立ち直れているのだろうか…
僕がチハルの死から立ち直るのには6年の歳月がかかった
彼女はまだ15歳そんなに簡単にあの呪縛が乗り越えられているとは思えない
僕は結局チハルもヒカルも救えてないのだろうか
1度考え出すと後悔と無力感が僕の中に漂う眼からは熱い想いの欠片があふれていく
広沢「先生…?」
急に背中の向こうから声が流れてくる。大丈夫だ背中からなら涙は見えて無かったはずだ
僕は涙を上着の袖で拭き振り返る ピーンとした空気が一瞬にして消え去っていく
松本「どうしたんですか?広沢先生」
広沢「先生…教室で何をしておられたんですか?」
松本「3Bの生徒達のことを考えてました…」
広沢先生は僕の答えを聞くと
広沢「教頭先生が呼んで居ますよ」
とだけ言って教室を後にした。気をつかってくれたのだろう
僕は最後に教壇に立ち教室を眺め回してから教室を後にした
コンコン
校長室のドアをノックして
「失礼しますお呼びでしょうか?」
中に入ると教頭と小須田先生が待っていた
教頭「君 遅いよもう少し早く来れんかったのかね」
小須田「そのとうりです社会人として人を待たせるのは礼儀に欠ける配慮ですよ」
いつもようなお小言を早速言い渡される
松本「何の御用でしょうか校長」
教頭は来年度から校長に出世することが内定で決まっている
教頭「君 君 まだ気が早いよ」
しかし教頭の顔はにやけている
小須田「来年度は校長には違いないですからね田沼校長」
教頭の顔はにやけきっているしばらく小須田のおべっかが続いている
一区きりすぎて教頭が話しをはじめた
教頭「そんなことより君 これからどうするつもりかね」
唐突に言われて少しの困惑はあったが、元々考えていたことを話そうとした時
教頭「まさかまた以前の様に塾の講師をするとか言わんだろうね」
図星だった
教頭「いかん、いかんよ君 君にはまたこの学校に戻ってきてもらわないと
いかんのだから遊んでいてもらっては困るよ」
しかし、急にそんなことを言われても他の学校に行こうにもあてはまるでない
松本「教頭しかし!」
教頭「わかっている行く当てもないのであろう?」
松本「……」
教頭は校長の机から一通の封書を取り出した
教頭「これは君の推薦状だ中学ではないがある私立高の教師になってもらう」
いきなりの提案に僕は混乱した
松本「し、私立高?」
教頭「これは校長から君に用意されていたものだ」
松本「校長の…」
小須田「流石時期校長用意が早いですなー」
小須田はこの意味がわかってないようだ
教頭「行ってくれるね松本君」
初めて名前で呼ばれてとまどってしまったが力一杯に僕は答えた
松本「はい!」
時は過ぎて4月8日
ある私立高に僕は推薦状を持っていきそこに在籍することがきまった僕は
新1年生の担任を早速言い渡された
新しい学校新しい生活の始まりに僕は期待と不安を抱えている
一応大人の僕でさえこうなのだから新入生たちはより大きいだろう
入学式が始まり僕は新任の挨拶と担任の挨拶をかねて壇上で自己紹介をする
生徒達のざわめきが何故か心地いい
入学式が終わり僕の受け持つ教室に向かう。
ざわめく教室に入り教壇に立ち教室を眺める そこには見知った顔が2人ほどいた
どうやら白石雪也はべつのクラスのようだ
「初めまして今日から君達の担任になる松本満天だ」
見知った顔の男子生徒の方は椅子から立ち上がって驚いている
見知った顔の女子生徒の方は両手を口にあて絶句しているようだ
松本「これから1年よろしくたのむ」
僕の挨拶が終わると生徒達はよろしくお願いしますと声をそろえて挨拶する
衝撃が収まったのかよろしくの挨拶より数段大きな声で僕を呼ぶ声がする。
太陽・ヒカル「先生!」
こうして僕の新しい1年は始まっていった・・・・