『あ』  
 
 ―――楔の神殿、その上階。俺とユーリアはお互いに絶句した。  
 
 それもそのはず、苦悩の釣針片手に要人に会いに行った俺が見たのは、半裸のユーリアだったのだ。身体を清めていたらしい彼女は  
濡れた布を肩に当てたまま微動だにしなかった。あの特徴的な帽子は床に投げられていて、端正な顔立ちが露わになっている。普段は  
伏し目がちな瞳もまっすぐに俺に向けられていた。ばさりと、かろうじて腰に引っかかっていたボロ布が床に落ちた。  
 細い。白い。一瞬彼女がソウル体になってしまったのかと思う程、その体は儚かった。俺の腕より細い脚線。両手でつかめそうな程  
くびれた腰。たおやかな双丘。真っ赤に染まった顔。これは、うむ!俺は手を合わせて…  
 
「アンバサ」  
 
発火。  
 
 
 
 
 
 
『あ』  
 
 ―――楔の神殿、その上階。私と私の恩人はお互いに絶句した。  
 
 それもそのはず、黒い鎧の男に呼び出され、上階に登った私が見たのは、半裸の彼だったのだ。「ダイスンスン」と血文字を書いたまま  
倒れ伏している男から鎧を奪っていたらしい彼は、捻じれた角が生えた兜をかぶったまま微動だにしなかった。普段纏っている銀色の  
騎士鎧は床に投げられ、筋骨隆々の上半身が露わになっている。がらんと、かろうじて両足を覆っていた具足も下履きごと床に落ちた。  
 厚い。硬い。一瞬彼がソウル体であることを忘れる程、その体は逞しかった。軍馬のような両足。固く引き絞られた腹筋。それ自体  
が鎧のような胸板。(T)な兜。いや、違うんだ、これはその。彼は体をくねらせて…  
 
「いやん」  
 
炎の嵐。  
 
 

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