祭祀場で剣戟の音が鳴り響いてから、半刻が経とうとしていた。二つの影は、片時も止まることなく踊り続ける。  
 かたや、金の軽鎧を纏った女剣士。鎧と同色の髪を振り乱し、研ぎ澄まされた長刀を振るう様は完成された美しさだった。  
 かたや、イカ頭+半裸の黒い変t…ファントム。両手に白くべたつくショーテル(笑)を構え、物理エンジンの限界を超えたくねり具合  
で女の斬撃をかわす様は直視に耐えないおぞましさだった。  
 
「…ッはあッ、はあ…ッ」  
 
 女の劣勢は明らかだった。楔の神殿に帰ろうと要石に触れた瞬間、グリコポーズで再臨した黒いファントムは言わずもがな先の変態だ  
ったのだ。格好と行動の異常性はともかくとして、技量は女のそれを遥かに上回っているらしく、全ての攻撃を的確に捌き、その合間に  
女の美貌を堪能していた。今もまた、女の渾身の一撃を半歩下がるだけの動きで回避し、返す刀を左のショーテルで絡め取ると遠眼鏡を  
取り出して、至近距離から顔を覗きこんでくる。女は最早、押すことも引くこともできず、完全に動きを掌握されていた。  
 
 
【帰りたい…】 評価:0  
 
 もう、いろんな意味で心が折れそうだった。いっそのこと、負けてしまおうか。殺されたところで、肉体を失うだけだ。今更ソウル体  
生活に不便があるわけでもなし、それどころかこの変態にも二度と遭わずに済む。あとは神殿に帰って火防女に膝枕してもらえば全て忘  
れられる気がした。そうだ。そうしよう。長刀を握る力を緩めようとした瞬間―――  
 
『ぉぃ…オい…』  
 
 声が聞こえた。その発生源は無論、眼前の黒いファントムだ。  
 
『オい、生あsi、シッてruカ』  
 
 いかなる業か。この黒いファントムは、歪な発音ではあるが女と同じ言語を操っていた。ていうか、誰が生足だ。軽鎧の裾を手で押さ  
えながらキッと睨みつけると、さも愉快そうに黒いファントムは言葉を続ける。  
 
『―――生身wo溶カすと、服ガ透keて見eルんだze?』  
「………ッ!」  
 
 絶対負けるもんか。負けるもんか…! 涙目で、女は再び長刀を振りかざした。  
 
 
【苦しいです、評価してください】 評価:0  
 
 
おわり  
 

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