ボーレタリアの王城は、小国なれど立派な城壁と十分な広さを持つ場所だった。
かつては慣れ親しんだその場所も、オストラヴァを敵とみなす者がはびこる今となっては、その広さが逆に仇となっていた。
長い城壁に巣食った飛竜の炎にはばまれ、目的地である城内への道のりを更に遠いものとさせる。
からくもその炎を潜り抜けることはできたものの、待ち構えていたかのような兵士達に囲まれ。
切り捨てていく兵士達へ祈りの言葉を心中捧げながら、剣を振るう。
…一度、神殿に戻ったほうが得策でしょうか。
最後の一人を地に伏せさせ。息を整えながらオストラヴァは前方を見据える。
見れば空を飛びかう竜の姿。灼熱の刃を向けるに違いない。
炎が届かぬところまで抜けることが叶ったとしても、おそらく今と同じく兵士らに阻まれるだろう。
持っていた回復の道具もいささか心もとない。態勢を整え、確実に進んでいくほうが賢明と思えた。
剣を鞘に納めると、炎を避けて地下へと降りる階段を進んでいく。
明かりが乏しい通路を進む中、オストラヴァはふと異変に気づいた。
王城へ近づく方向ではないにしても、切りかかってくる兵士の気配がない。
それに、通路の端に転がる遺体が生々しすぎる。
霧に包まれてからのこの土地で、動かぬ人間のそれを見ることは珍しくはないのだが。
死体から流れ出た血液は固まりきってすらいない。
…誰かが、ここへ来た…?
静寂が逆に警戒心を煽る。
オストラヴァの手が無意識の動きで剣の柄に伸びる。
呼吸すら慎重になる緊張の中、耳が微かな声をとらえた。
「…んっ…」
押し殺したような声は苦しさすら含まれている。
誰かが囚われているのかと、暗がりの通路から一歩踏み出すと。
そこには、神殿では『デーモンを殺す者』と呼ばれる彼女の姿があった。
自慰にふける彼女の姿が。
「…っく、ふ…う」
床に両膝をついた彼女は、長い衣服の裾をめくりあげて落ちぬよう口に咥え。
露わになった秘所に埋めた指先に出し入れを繰り返している。
逆の手は胸へと伸び、小さな突起を摘まむように慰めていた。
くちゅくちゅと音を立てるそこへ視線を落とす眼差しは潤んでいて、頬には赤みがかかっている。
――ごくり。
思わず生唾を飲み込んでしまった自分に焦り、一歩後退した為に鎧の音が僅か周囲に響く。
それが耳に届いたのだろう、はっ、とした表情で彼女の瞳がオストラヴァの姿を認めること数拍。
「…なに見てんのよこの変態!!!!」
最重量を誇る巨大な槌が、オストラヴァめがけて一直線に飛んできた。
「まじまじ見てるんじゃないわよ!このスケベ!!」
「…………あ、あぶなかった…」
「あっ!なに暗月草で回復してんのよ!それあたしのでしょ!」
「ブラムドをクナイのように投げる女性がどこにいますか!!ってか私の暗月草を勝手にあなたのものにしないでください!
それに、なにやってんですかこんなところで!」
「ど…どこでなにしようがあたしの勝手じゃない!いやらしい目で見てるほうが悪いのよ変態この変態!!」
「変態変態連呼しないでください!と、もうしますかこんなところでやる行為ではないでしょうが!!」
「しかたないじゃない!雑魚の弓兵がうった矢が掠っちゃって、でも掠った程度だからって放置してたら、
実は強い媚薬が塗られていて、我慢できずにここでやることになっちゃったのよっ!!」
「なんという強制エロ設定!!さっさとおっぱじめろという書き手の都合を押し付けられても困ります!!」
「あたしだって困るわよ!!しかもヘタレでよわっちくってへたれでへたれ×10のあんたと!!」
「言うなら省略しないでちゃんと言ってください!よけいに悲しくなります!
私だって願い下げですよ!あなたの相手なんて!」
「なっ…なによ!さっきあたしの姿みて生唾飲み込んだくせに!」
「ままま前レス読み返さないでください!あなたの貧相な身体で欲情するほど落ちぶれてはいません!
ビヨールさんのたくましい胸筋を見ているほうがまだハアハアできます!」
「なあああんですってええええ!」
「ちょ…まってまってドーザーもやめてドーz」
「あっ!」
すてーん
がくり、と彼女の身体が足元から崩れ落ちる。
彼女の手から重量のある武器が零れ落ち、衝撃の音が床を振るわせて響く。
しかしオストラヴァの瞳はそちらに向けられず、床に転倒した彼女の姿に釘付けになる。
伏した彼女の唇からは短い吐息が零れ、額に僅か汗を滲ませながら頬を赤く染めており。
今まで身体の疼きを耐えていたのだろう、自分の身体を両腕で強く抱きしめていた。
「…う、ふうっ…」
噛みしめた唇からは甘さを含んだ声が漏れ。
快感をやりすごすように自分自身を抱きしめる両手で強く衣服を握りしめている。
目を開いた彼女はオストラヴァを睨み上げるが、潤んだ瞳でその威力は半減していた。
「は…早く、どっかいきなさいよっ…」
「どっか、と申しましても…」
彼女の言うとおり、ここはそっとしておくべきなのだろうと…おそらく、自分が邪魔してしまった行為の続きをしたいのだろうと。
そう理解はしているものの、ここへ放置していくことは気が引ける。
先ほど見えた、倒された兵士の姿は彼女の仕業だろう。しかし新たな兵士がこの場所へ来ないとは断言できない。
そうなった時、それはオストラヴァにとってとても面白くないことに思えた。
なぜそう思うのか、明確に説明はできないのだが。
オストラヴァは小さく息を吐き出すと、ゆっくりと一歩を踏み出す。
途中、荷造りのためにだろう置いてあったロープを手に取り、彼女との距離を狭めていく。
「どっかいけって言ったのが聞こえないのっ?って、なに持ってんのよそれ…!」
「そうして差し上げたい気持ちもあるのですが…そうしますと、色々と問題がありまして、その」
「問題ってなによ…ちょ!なに縛ってんの!!」
彼女の身を起させると、手首を後ろ手で括りあげる。
普段ならばオストラヴァの拘束などあっけなく振り解くのだろうが、媚薬が効いているのか身じろぐ抵抗しかできないようだ。
「あなたが暴れて痛い思いをさせたくはありませんので…すみませんが、少し我慢して下さい」
「ふ、ふざけないで!いいかげんにしなさいよねこの馬鹿!のろま!変態!!へんた…、っう…」
床の上に座らせた彼女を背後から抱え込むようにし、片手で腹から胸元へと撫ぜあげると、罵倒を繰り返す声が途切れる。
衣服の上から緩く触るだけで、小さくくぐもった声が漏れた…大分敏感になっているらしい。
抵抗する気配がなくなると、優しく愛撫を繰り返しながら彼女の服を脱がしてしまう。
合わせてオストラヴァは身に着けていた装備を外し、鎧の中に着込んでいた衣服の姿となった。
背後から彼女の首筋へ口づけを落とすと、その肌が熱くなっていることが分かる。
ふくよかな胸とはお世辞にも言えないが、手の中にすっぽりと収まる膨らみは手に馴染むようだ。
まるで彼女の身体ごと抱きしめている感覚になりながら、固くなった乳首を指先で摘まむように弄る。
オストラヴァが膣内へ指を埋める頃には、潤ったそこから流れる淫液が彼女の太腿を塗らす程だった。
「ん、んっ…く、っう…」
きつく閉ざした彼女の唇からは絶えず押し殺したような声が漏れる。
どうやらまだ快楽と理性のはざまで戦っているらしい。
彼女の中をかき混ぜ、時折極小さな突起を指先で捏ねながらオストラヴァは、あの…、と口を開いた。
「声を出したほうが、辛くないのでは…?」
びくりと身体を震わせた彼女は、口を真一文字に結んだまま、ぶんぶんと首を横に振る。
口を開いたら喘ぎ声が出てしまうからだろう。
「このままですと、その…、まるで私が貴女を襲っているように見えないかと…」
実際、半分は襲っているようなものではあるが。
振り返った彼女に案の定無言で睨まれてしまい、思わず苦笑する。
「それに…私は、貴女の声が聞きたい」
「っ!な、なにを言っ…っあ!あっ、やめ、はぁ…や、だめっ…!」
素直な気持ちを口にすると、驚いた彼女が非難の声上げる。
その唇が開くと同時に膣内へ埋める指を更に増やし、指を軽く曲げて弱いところを突いてやる。
ぐちゅぐちゅといやらしい音をわざと立たせて指を動かす。
「あっ、は、あ…ああっ、いやっ…やあ…!」
熱い息と合わせて嫌がる言葉がこぼれるが、すでに喘ぎ声にしか聞こえない。
宙を切なげに見る瞳は涙が滲んでいて、その思考が快楽に染まっているのがわかる。
オストラヴァが与える快感を求めてゆるゆると腰を揺らす。
普段気丈にふるまう彼女が自分の手によって乱れていく様が、オストラヴァにぞくぞくとした興奮をもたらす。
腕の中で彼女が見せる痴態に耐えべく眉を寄せるが、知らず自分の息にも熱がこもっていることに気付かない。
再び彼女の首筋に唇を寄せ、ちゅ、ちゅ、と音を立てて口づけ、ぬらりと舌で舐め上げる。
「あ、あっ、も…もう、だめぇ…っ!」
収縮を繰り返していた彼女の柔らかい壁が指をきつく締め付け。
大きく体を震わせた後、脱力するように背後のオストラヴァへもたれ掛ってきた。
オストラヴァに支えられながら乱れた息を整えていた彼女は、ふと腰あたりに当たる塊に気付いた。
これは何だと問いかけようと僅かに身を捻り振り返ろうとした拍子に、括られた手の指先がそれに触れて目を見開く。
「な…な、なにおっきくさせてんのよ!」
「あ、やっぱり怒ります…?」
なんとも情けない笑みで応えるオストラヴァ。
耐えた努力も空しく、オストラヴァの自身は布地を押し上げるほどに硬くなっていた。
「私の身体なんかじゃ欲情しないとかほざいてたじゃない!」
「そう思ってたんですが…しょせんは私も健康な男子だったと申しますか、意外に予想以上だったと申しますか」
「失礼ね意外ってなによ!」
声を荒げる彼女を片腕で強く抱き、自分の下半身を押し付ける。
とたん口をつぐむ彼女の顔を見ながら、埋めたままの指をそっと動かせる。
「あっ、や…」
顔を逸らされてしまうが、その耳元を追いかけて唇を近づける。
「…駄目、ですか…?ここに…」
一度指を引き抜き、濡れたそこへ視線を落とす。
彼女の目線も同じ場所へ向けられたことを確認してから、再び指先を挿入させていく。
「っ、ふ」
「ここに、これを…欲しくは、ないですか…?」
奥には侵入させず、第2関節までそっとと出し入れさせる。
その小さい動きでも、濡れたそこからはくちゅと粘着質な音が漏れる。
まだ媚薬の効果が続いているのか、それだけの刺激でも薄く開いた彼女の唇から零れる息に少しずつ熱が含まれていく。
せつなげに眉を寄せた彼女がゆっくりと振り返り、その唇が吐息に紛れて小さく言葉を紡いだ。
しかし控えめすぎる声を耳が聞き取れず、はい?と問うように彼女を見る。
責めるような眼差しを向けながらも、彼女はもう一度唇を動かしてくれた。
「暴れたり、しないから…手、ほどいて」
手首を捕えていたロープを解くと、オストラヴァは彼女の手を取り自分の唇へ招く。
跡がついてしまった肌へ舌を這わすと、恥ずかしそうに手を解かれてしまった。
ゆっくりと身を動かす彼女は、向き直るとオストラヴァを背後にあった壁に凭れさせ。
オストラヴァの身体をまたぐと、硬くなった男根を覆っていた布地から取り出し。
指を添え先端を秘所にあてがい、片手をオストラヴァの肩において支えとしながら、ゆっくりと腰を落とす。
「くっ…う、っ…は、あ」
熱い息を吐き出しながら、オストラヴァの猛ったそれを少しずつ飲み込んでいく。
彼女の中は熱く、そして狭い。
奥へと侵入するほどに、滴るほどの淫液が竿を伝っていく。
根元まで咥えこむことができると、俯いた彼女は荒い息を何度も吐き出した。
「…あの、すみません…」
オストラヴァがそっと声をかけると、肩で息をする彼女が顔を上げた。
大変そうな様子にいささか申し訳ない気持ちになりながら、すまなそうな笑みを浮かべる。
「もう、出そうなんですが…」
「はやっ!!ってかまだ入れただけじゃない!早漏か!」
「し…仕方ないでしょう!貴女の中が思っていた以上に気持ちよすぎるから!」
「そんなん言われても困るっ、…あぁあっ!」
彼女の細い腰を両手で掴み、一度大きく引き上げて深く貫く。
達しそうになるのを堪えて幾度も腰を落とさせる。
「私だけ、では…申し訳ないので、一緒にお願い、します」
「ん、なっ!かって、んっ、すぎるっ!あ、あっ!」
非難の声が上がるが、聞こえぬフリをして彼女の身体を揺り動かす。
狭まっていた膣内も柔らかく収縮し、硬くなったオストラヴァの男根を包み込むように締め上げる。
引き抜くたびに惜しむように壁が圧迫し、目もくらむような快感に歯を食いしばる。
先走りの液とあふれ出た淫液が混ざりあい、ぐちゅぐちゅとした卑猥な音すら耳を刺激する。
オストラヴァは凭れていた壁から背を起こすと、揺れる乳房に唇を寄せて先端に吸い付く。
「やっ!そっちも、された、ら…っ、だめ、なる…!」
甘い声で駄目だと訴える彼女は、快感を求めてみずから腰を振る。
口に含めた乳首に僅か歯を立てると、締め付ける圧が増して眉をしかめた。
腰を揺らす動きに合わせ、オストラヴァも下から突き上げて一気に追い上げる。
「は、はっ!も、もう、イっちゃ…イ、くうっ…!」
「…くっ…!」
あられもない声を上げてしがみ付いてくる彼女を抱きしめながら、オストラヴァは膣内の奥へと精を放った。
力が抜けた細い身体を胸元で抱きとめる。
彼女とつながったまま背後の壁に寄りかかり、息を整えながらそっと背を撫でてやる。
目を閉じて彼女の体温と息遣いを静かに感じていると、身を動かす気配に瞼を上げ。
ゆっくり視線を落とすと、丁度こちらを見上げる瞳と目が合った。
伸びあがるように、彼女が唇を寄せてくる。
驚きで目を見開くオストラヴァに、触れるだけの口づけをして。
そっと唇を離した彼女は、うっすらと目元を赤くした上目で睨んできた。
「……ばか…」
ぽつりと。
恥ずかしげに、小さく落ちた非難の言葉。
「!!…ちょ…ちょっとちょっと!なんでまた硬くなってんのよ!」
「その…不意を突かれまして、つい」
「つい、ってなんだついって!つい、で興奮すんな!」
非難の声を上げる彼女をまあまあなどと言いながら宥め。
ゆっくりと背を撫ぜながら、オストラヴァは無言で目を合わせた。
なに?と文句をこぼす彼女も口を閉ざすが、それでも沈黙を保ち瞳を見つめる。
その間も、彼女の中に埋め込んだ男根は硬さを維持したままだ。
赤みを帯びたその顔に焦れるような表情が見え始めると、オストラヴァは彼女の唇に小さく口づける。
ちゅ、と音を立てて離してからも、じ、と彼女の目を見つめ続け。
「……わかった!わかったわよ…もういっかいしたいんでしょ?」
折れてくれたらしい。
オストラヴァは情けなく笑みながら、すみません…、と謝罪する。
彼女を抱く腕に力を込めようとした矢先、だけど!と声が挟まれた。
「今度は、もう少しゆっくりやってよね!べ、べつに…さっきのがイヤって、わけじゃないけどっ」
後半部分は言い難そうにしどろもどろになって、視線まで逸らされてしまう。
ぽかんとした顔になった後。オストラヴァは思わず小さく笑みを吹き出してしまった。
「な、なにがおかしいのよ!」
「いえ、普段からそれくらい素直だったら良いのに…と思ってしまいまして」
失礼な言葉に彼女が声を上げそうになる前に、腕の力をこめて唇をふさいでしまった。
ゆっくり、と…伝えてくれた彼女の希望に応えようと思いながら。