城で助けたオストラヴァを要石まで送ろうと、歩みを進ませる。  
あらかたの敵を倒したと思って油断していた。物陰から現れた赤目の騎士に不意打ちを喰らう。  
デーモンを殺す者と言われる彼女もオストラヴァも大きく吹き飛び、壁に叩きつけられたが慌てて態勢を整え、赤目の騎士と対峙する。  
「全て倒したと思ったのに、どこから湧いてきたのよっ!」  
騎士の剣撃を躱し、槍で渾身の一撃を放つ。重い手応えを感じ、重厚な鎧に身を包んだ騎士は霧の様に消滅した。  
それを見届け、後ろを振り返る。オストラヴァが壁にもたれたまま動かない事に気がつき、慌てて彼のもとへ駆け出す。  
 
「オストラヴァ!大丈夫?ねえ!」  
激しく身体を打ちつけ気を失っているのか、問いかけに応えてくれない。こんな時神の奇跡があれば良いのだが、生憎彼女は魔法や奇跡を習得していない。  
「ごめん、鎧を外すね。酷い怪我がなければいいけど……」  
彼女は気絶しているオストラヴァに声をかけ、兜に手をかけた。金色の髪に陶磁器を思わせるような肌が露わになる。  
思わず見惚れてしまうが、頭を左右に振り作業を続ける。今は怪我の確認が大事だ。  
胸当てを外すと、僅かに衣服から血液が滲み、染みをつくっていた。小袋から草をだし、手で揉み込み脇腹の傷口にあてる。  
呼吸は規則正しく小さな双丘が上下に動き、彼女は安堵の溜息を漏らした。  
……え?胸を凝視すると、男性ではあり得ない膨らみがそこにある。  
自分より小ぶりではあるが、ちゃんとした乳房だ。  
「……ぅ、痛っ」  
「良かった、気がついて。とりあえず手当てをしてるけど、大丈夫?他に痛い場所ある?」  
オストラヴァはいまだに焦点が合わない瞳を彷徨わせる。青い瞳がぼんやりと彼女を捉え、大きく見開く。  
「わあ!な、な……痛たたた……」  
驚き、立ち上がろうと身をよじると激痛が走り、顔を歪める。倒れそうになるオストラヴァを彼女はそっと支えて、謝った。  
「ごめん、勝手な事をして。あの、わざとじゃないよ?不可抗力というか、怪我の確認が必要というか……」  
もごもごと言い訳し、しょんぼりと頭をさげる。脇腹の暖かい感触に気がつき、視線を巡らすと彼女が手を添えて怪我を治療していた事にようやく気がつく。  
「いえ、こちらこそ大きな声を上げてすみませんでした。それに怪我の手当てまでしてくださっているのに……すみません」  
 
沈黙が辺りを包む。言葉をかけたいのだが、どうすれば良いのかわからない。  
「……驚きましたよね?私が男に扮していたなんて」  
その場を取り繕うように笑い、彼女を見る。困った様な表情で固まっていたが、我に返り早口で捲くしたてた。  
「あ、あの、この事誰にも言いませんから。わたし、こう見えても口は堅いんですっ」  
「ぷっ、あははは。では、お願いしますね」  
彼女の動揺っぷりに笑いがこみ上げる。こんな風に笑ったのは久しぶりだ。  
 
ずきんと脇腹が痛み、小さく呻く。少し笑い過ぎたらしく、傷に響き思わず涙で視界が滲む。  
「大丈夫?もしかしたら、骨折しているのかも……少しだけ我慢出来る?」  
「はい。って、何をするんですかっ?ちょっ、ちょっと、止めてください」  
服をたくし上げようと彼女が手をかける。驚き制止しようと手を抑えるが、真剣な顔で怒られてしまった。  
「傷を確認するから、手を離して。わたしは死なない身体だから良いけど、オストラヴァはそうじゃないでしょ?」  
「す、すみません……」  
素直に従い、手を離す。衣服をずり上げ、草を取り除いて脇腹をそっと触る。  
肋骨を撫でるように触れ、少し強めに骨を押す。痛みに顔をしかめるが、我慢出来ない程ではない。  
「良かった、打撲だけみたい。ごめんね?痛かったでしょ?」  
傷口に草をもう一度当て、ずり上げた衣服を元に戻す。ふと包帯代わりになるかと思い、彼女は自身の衣服を破き始めた。  
「ああっ、そこまでしなくても大丈夫です。貴方は女性なんですから、もう少し慎みを持ってください」  
「……オストラヴァだって女性じゃない。別にわたしの肌を見て喜ぶ人なんていないから、大丈夫」  
「そういう問題じゃないんですけど……貴方だってとても美しいです」  
彼女の動きが止まり、赤面してそっぽを向く。  
「嘘つき」  
「嘘じゃありません。……私が男性なら、貴方に結婚を申し込みます」  
 
「ありがとう、でもお世辞はいいよ?」  
酷く寂しそうな表情で、包帯を巻き始めた。傷つけてしまった後悔をよそに、彼女は手際良く作業を終わらせる。  
「これで良しっと。痛みが落ち着くまで休憩しようね。要石まであと少しだから」  
その場を離れようとした彼女を抱きしめる。柔らかな感触が伝わり、埃っぽい匂いとは違う甘い香りが鼻をくすぐる。  
「えーと、オストラヴァ?離してほしいんだけど」  
「嫌です。このまま一緒にいてください」  
駄々っ子のように首を振り、離すまいと強く抱きしめた。早鐘のような鼓動が衣服を通して伝わり、彼女が緊張しているのがわかる。  
 
「確かに私は女性です。でも、貴方の事が好きと言うのは駄目ですか?」  
「だって女性同士だよ?わたしはオストラヴァの事が嫌いじゃないけど……」  
もごもごと口の中で呟き、困惑する。確かに同性愛は世間では良しという風潮はない。  
「大丈夫ですよ。私は男性として育てられましたから、貴方と結婚出来ますよ。さすがに子をもうけるのは出来ないですが」  
強引に彼女を足の間に座らせ、優しく髪を撫でる。大人しくされるがままの彼女は、諦めたのかなすがままだ。  
「はぁ、初めて告白されたのが女性なんて、びっくり。でも……いいの?わたしなんかで。  
もっと良い人いるし、オストラヴァなら選び放題だよ?」  
上目遣いで見つめる瞳は躊躇いがちだ。冗談だと言って欲しいと訴えている。  
「貴方だから良いのです。強くて、優しくて、それに、美しいです。私を助けてくれたあの時、まるでお伽話の英雄かと思いました」  
「大げさだよ。わたしはそんなに強くもないし、きれいでもないよ。でも、嬉しい……ありがとう」  
ここまで褒められるなんて、恥ずかしい。ふとある事を思い出し、オストラヴァに聞いてみた。  
「……オストラヴァ、本当の名前は違うよね?もしよければ、教えてくれる?」  
「ええ、私の名前はアリオナです。デーモンを殺す者、貴方の名前も教えてくれますか?」  
彼女はくすりと笑い、アリオナの耳元で囁いた。  
 
触れ合うだけだったのに、いつしか行為はエスカレートする。髪を撫でていた手は彼女を抱きしめ背中をさする。  
ついばむ様な控えめなキスは舌を絡めた濃厚なキスに変わる。  
甘い声を上げ、小刻みに震える姿はとても可愛らしい。  
「んぅ……あの、痛くないの?無理しちゃだめだから……や、やだぁ、話聞いてよ」  
彼女の言葉に耳を貸さず、首筋に舌を這わせ、服越しに柔らかな胸を弄る。ちょっとした愛撫にも大きく反応し、頬を赤らめて堪えている。  
「聞いてますよ。動くと痛いから、このままでしますね」  
彼女の抗議を受け流し、衣服をたくし上げて少し赤く火照った肌を撫でる。肌はしっとりと汗ばみ、手のひらに吸い付く。  
両手で大きく揉みしだき、先端部分に舌で突く。大きく身体を震わせ、声を押し殺そうと手で口を塞ぐが、くぐもった声が零れた。  
「あっ、は、恥ずかしいから、もう止めて?これ以上されたら……」  
「もっと声を聞かせてください……。好きです……貴方の全てが好きなんです」  
真っ直ぐな瞳が彼女を射抜く。言い訳しようと口を開くが、上手く言葉が見つからない。  
はにかみながら目を瞑り、彼女はアリオナにキスをした。触れ合うだけの優しいキス。  
「もう、怪我しているから、あんまり無茶しないでよ?……わたしも、アリオナが好き」  
 
くちゅくちゅと水音が響き、時折切なげな喘ぎ声が紡がれる。立膝をつき、アリオナの首にすがりつき彼女は眉間に皺を寄せて悶えた。  
蜜は止めどなく零れ、割いた衣服の隙間から滴り落ちる。指は巧みに動き回り、包皮から顔をのぞかせた肉芽に蜜を擦り付け撫でた。  
「あ!そこは、待って……」  
「? どうかしましたか?」  
手を止め、彼女にキスして問いかける。呼吸を整えようと酸素を多く吸い込んだ後、彼女は恥ずかしそうに告白する。  
「気持ちいいと思うけど、刺激が強くて……怖い。だから、優しくて?」  
「ええ、勿論です。怖かったら私に教えてくださいね」  
こくりと頷き、ぎゅっと抱きつく。身体は強張り、小刻みに震えている。  
これでは意味がない。苦笑し、指を綻んだスリットになぞる様に上下に動かす。  
てっきり触ってくると思っていた場所は触れられず、慈しむような愛撫に眩暈がする。じわりと快感が溜まっていく。  
あまりそういう経験のない彼女は戸惑いを口にする。怖い、おかしくなってしまいそうだ、と。  
その度にアリオナは優しく声をかけ、あやす様に背中を撫でる。強張った身体も徐々に緩み、もたれかかる。  
「ぅ……やだ、何かがきちゃう……アリオナ……もう、いいよ。いいからぁ」  
感極まり、涙が零れる。その涙をキスで舐めとり、耳朶を甘く噛み囁く。  
「いきそうですね……大丈夫です。怖くないですから、いってください」  
浅く胎内に指を入れ、襞を擦る。ざらざらとした部分を見つけ、そこを重点的に責め始めた。  
びくりと大きく身体を跳ね上げ言葉にならない嬌声を上げる。ぎちりと指を締め付け、そこだけ違う生き物のように動き出しす。  
「あ、あ、だめ、きちゃう!いやぁ、やだ、やだぁ!」  
痙攣が大きくなり、がくがくと身体を震わせ、すがりつく。親指で肉芽を捉え、圧力をかけて押し付ける。  
「ああああぁ!」  
指が千切れるくらい膣が収縮し、ごぷりと多量の体液が溢れだす。アリオナの指どころか、手までも濡らした。  
 
「……あれ?わたし、気絶したの?」  
アリオナに抱きしめられたまま、ぼんやりと目を開ける。視点は定まらず、ぼんやりとした表情で話しかける。  
呂律が回らず、絶頂の余韻からいまだに戻らないようだ。  
「少しだけ、です。平気ですか?」  
すっかり汗ばみ、肌に貼りついた衣服を緩ませて頬を撫でる。熱でもあるぐらいに体温が高い。  
「うー、ちょっとだめかも。世界が回っていて、ふわふわしてる感じなの」  
「すみません。貴方に無理をさせてしまいました」  
「アリオナは悪くないから、謝らないで。……その、き、気持ち良かったから……」  
語尾がどんどん小さくなり、赤い顔がさらに赤くなる。思わず強く抱きしめるが、脇腹がちくりと痛み動きが止まってしまった。  
「! ごめん。こんな事してる場合じゃなかったよね。今起きるから」  
慌てて上体を起こす。不安そうな顔が目の前に映り、そっと包帯越しに傷に触れる。  
「痛いよね?あまりここにいてもしょうがないから、戻ろう?歩ける?」  
「はい、お陰様でだいぶ良くなりました。ありがとうございます」  
手際良く鎧を身につけ、立ち上がる。いまだに座り込んだ彼女に手を差し出す。  
「怪我が治りましたら、貴方の事を教えてください。もっと色々知りたいのですから……」  
「……お手柔らかにお願いします」  
 
 

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