ガル:おい、今日どうする?
ユルト:バーミヤン行こうぜ。あそこのラーメン、しばらくすると食いたくなるんだ。
ガル:じゃあ、そうするか。俺角煮にしよ。
ガルとユルトは、職場の同僚。大体仕事帰りに、一緒に飯を食う。
二人は飯を食いながら、仕事話に盛り上がる。
ガル:いやー、俺の装備重くてさ。まいっっちゃうよ。しかもプレイヤー
来るごとにあの沼いちいち通らなきゃなならんし。体中から滝のように汗が
出るしさ。アストラエアさん、俺の臭さ分かってるのに何も言わずに顔伏せて
るのがすごく切ない。
ユルト:仕事柄仕方ないとはいえ、それは辛いなあ。でも、あんな美人良く
採用できたよな。ま、俺もあんまり良いポジションとは言えないけど(笑)。
ガル:だよなあ、お前も結構辛そうだもんな。
ユルト:ああ、お前はまだ同僚と話せるだけマシだぜ。俺なんてあんな狭くて
薄暗い檻にプレイヤー来るまで缶詰めだよ。幸い、pspとDS持ち込み許可下り
たから良かったけど。あとさ、落下した時のバンジーはやっぱ慣れないわ。
ガル:ああ、お前も大変だな。高所恐怖症の俺には無理。
・
・
・
ガル:ふう、そろそろ、出るか。
ユルト:ああ
ガル:・・・あれ、やべ、財布もってくるの忘れた!ユルトご免。貸して。
ユルト:ああ、・・・あ。そうだ。俺も、財布持ってくんの忘れた。
この前、プレイヤーに財布パクられてからスタッフルームのロッカーに
入れてたんだ。ヤベー忘れてた。
ガル:どうする。おい。ん?ちょっとあいつ。
ユルト:・・・あいつがどうかした?
ガル:さっきから俺たちのことガンくれてんだよ。ちょっとあいつに
金貸してもらうか。
ユルト:だってお前、全然知らない奴だぜ?そんな簡単に貸してくる
わけ・・・
ガル:大丈夫だって。俺初対面の奴と結構打ち解けるの得意だし。
まあ、ちょっと行って来るわ。
ガルはフル装備のままその男のところに・・・。
すぐに打ち解けたようだった。
ガルとその男がふとユルトの方を見た。
ユルトのことを話しているらしい。
ガル:いやー、まいったよ。あいつお前とちょっと話したいんだってさ。
お前になら貸してやっても良いって。
ユルト:なに?どういうこと?
ガル:あいつお前を一目見て気に入っちゃったみたいなんだ。
ユルト:ちょ・・・。そっち方面かよ!?やべえだろ。
ガル:あいつも手荒な真似はしないっていってるし、な!頼むよ。
次おごるからさ。
結局ユルトは「おごる」の言葉に心が動く。
ユルトがその男の向かいに座る。
すかさずその男はユルトの隣に寄り添うように席を移動する。
ユルト:(声出せないから手のサインで合図)ちょ、こいつやばいって!
ガル!おい。股間まさぐってくるんだけど
男:(ユルトの耳元で)かわいい
ユルト:(全身に鳥肌が走る)
ガル:(ユルトのpspでモンハンに夢中)
ユルトの必死の抵抗も空しく、男がユルトをトイレに引っ張っていく。
ユルト:(股間をつかまれて助けを呼べないから合図で必死に)ガルー。
やべえ、助けて。こいつ見かけによらずすげえ力だ。ガルーーーーーーーー。
ユルトは、後に思った。そんなすぐ打ち解けられるなら、店員を説得
してくれれば良かったのに・・・。
ガル:(おし、ラオシャンロン撃破!あれ?ユルトは?)
気が付くと、ユルトと男の姿が消えていた。
ガル:(ユルトが拉致られた!・・・トイレか!)
ガルがトイレに駆けつける。
ガル:ユルトー。居るのか?返事しろ。
ユルト:ガ・・・ル・・・
一番奥のトイレにユルトが何かを吸い取られたように、便座に力なく
座る。傍らには、丸められたティッシュと3千円が置いてあった。
ガル:ユ、ユルト!!。なにがあった!!!
ユルト:(心無しか燃え尽きたように全身が真っ白になって)け・・つが
・・・
ガル:穴が!?
ユルト:痛い。
ガル:ぶわあ(←涙)
ガルは、他人のためにこれほどまで泣いたのはじいちゃんの葬式
以来だった。
ガル:(俺が・・・俺がモンハンに浮気したばっかりに!!!。大切な
友人の大切なものを奪ってしまった・・・。)
ガル:(たった3千円で!!)
ガル:ユ、ユルト。悪かった!本当に悪かった。俺が目を離したばっかりに。
ユルト:いや、いいんだよ。それより俺、気づいちゃったんだ。世の中には
こんなに楽しいことがあるなんて・・・。
ガル:(ぎゃーーーーーーーーー。)ユ、ユルト。お、落ち着け。な?
お前ちょっと、疲れてんだよ。もう帰ろう。
ユルト:(物欲しそうな目でガルを見る。(相変わらず、フル装備で表情が分からなかった
だが、ガルは確信していた。))
ガルは、非情とは思ったが、身の危険を感じ、ブラムドで一撃を食らわせた。
気絶したユルトを引きずり連れ帰った。
だが、その一撃で、重度の記憶喪失になり、赤子同然になってしまった。
それでも、装備だけはどうしてもはずそうとしなかった。
乳母車にフル装備で乗り、トミカに夢中になる日々がしばらく続いた。
が、なんとか復活した。
その間、ガルは、非常に責任を感じ、懸命に介護に励んだ。
そして今は、元の仕事に戻り、ガルとも仲良くやっている。