何となく身体が火照った夜。皆が寝静まったころに、ふと気付いた状態。  
熱を吐き出すために神殿の階段を昇り、壁際で冷たい床に座り込む。  
履物の上から秘部を指先で触れれば、ぞくりとした刺激に熱を帯びた息が洩れた。  
魔女といえど、身体のつくりは他の人間と変わらぬらしい。  
うっすらと笑みが浮かぶ。  
 
「ん…、く…っ」  
人気のない神殿の上階はいくら声を出しても他者に聞かれることなどない。  
片手の指先で乳首を捏ねながら、逆の指先で膣内をかき混ぜる。  
「っふ、くっ、ぁ…」  
くちゅくちゅと音を立てて指を出しいれると、は、は、と断続的に零れる息が速まっていく。  
目を閉じ快感を得る行為に没頭する。  
 
もう少しで限界に達する、と期待が高まる中。  
ふと、人の気配を感じて瞼を上げると。  
火が灯る杖をもった少女がそこに立ち尽くしていた。  
 
口から心臓が飛び出るかと思った。  
 
「…お手伝い、しましょうか…?」  
開口一番、はずかしそうな口ぶり零れた彼女からの提案。  
本来ならさっさと衣服を正してその場から立ち去るべきなのだろうが。  
達しかけた快感などどこへやら、全身硬直していた私はその言葉に思わず脱力してしまい。  
私はよほど人肌が恋しかったのだろうか。  
それとも、照れたように俯く少女の姿に、不思議と興味でもわいてしまったか。  
唇に笑みを滲ませ、彼女に向けて手を差し伸べた。  
 
 
手伝う、と言った彼女だったが、決して他人の身体に触れなれているわけではないらしい。  
おずおずと舌先を伸ばして、遠慮がちに乳首を舐める様は何だか愛らしい。  
私の秘部へと触れる指も怖々とした動きで、指先を僅かばかり埋める程度だ。  
なので、どうにも笑みが零れてしまう。  
胸に顔を埋める彼女の黒髪を片手でそっと撫ぜながら、小さな声で問う。  
「…それは、んっ…もしかして、焦らしてるのか?」  
「いえ、そんなつもりは…」  
慌てて顔を上げて否定する彼女の頬を片手で捕らえ、上向かせて唇を触れ合わせる。  
一瞬強張る柔らかい唇を舌先でこじ開け、ねっとりと舌を絡めとる。  
私の篭った熱が彼女へと少しでも伝染るように。  
くぐもった彼女の甘い声が耳を掠めると同時、不意に細い指先が私の更に深いところへと侵入してくる。  
「っあ、あ…ん、んんっ…!」  
唇を離して声を洩らすが、すぐに距離を詰められて唇が塞がれる。  
入り込んだ舌の動きを追うと、唾液が混ざり合う卑猥な音が洩れる。  
 
彼女の指先が膣内の一点を掠めると、私の身体がびくりと大きく震えた。  
「…ここ、ですか?ここがユーリアさんの悦いところ、ですか…?」  
見つけた箇所を確認する不安げな問いかけは、決して意地悪心からではないだろうが羞恥に顔が赤くなる。  
こくこくと頷きながら、今の快感を欲しがる私は腰を前後に揺らす。  
「そう、だ…だから、もっと…ん、あっ、ああ…!」  
言い終わるより先に、指をもう一本増やした彼女は執拗にその場所を責める。  
彼女の腕にしがみ付いても唇を閉じていられず。  
その部分を突き上げられるたびに、甘ったるい声が勝手に洩れてしまう。  
 
微かに乱れた息を零す彼女の唇が、声もなく動く。  
『かわいい』と言葉を紡いだ、愛らしい唇。  
はずかしさのあまり、蝋で見えぬ彼女の目を睨んでしまった。  
 
薄暗い神殿の中で、ぴちゃぴちゃと子猫がミルクを舐めるような音が零れる。  
何時の間にか私は床に自分の衣服の敷き、その上に横たわる姿勢となっていた。  
私の足の間に身を置いた彼女は秘所に顔を埋め。  
敏感な部分を舌先で弾かれるたびに、そこから快感が体中に広がる。  
「…っん、あ…っ、は、あ」  
荒い息に紛れて洩れる声を隠せない。  
そこを舐めることに集中してしまうのか、膣内で動く指先が止まってしまうものの。  
思い出したように動きを再開する刺激に不意をつかれ、びくりと身体が跳ねてしまう。  
「…、なぜだ…?」  
このまま快感に身を任せていたい反面、ふと沈黙を埋めたくなり。  
先ほどから胸に沸いていた疑問を口に出す。  
「なぜ…こんなことを、して…くれるんだ…?」  
すると下肢から届いていた緩やかな快感が途絶え、私は息継ぎするように小さく息を吐き出す。  
彼女の気配が動くことに気付き、ゆっくりと目を開くと、思いのほか近くにその相貌があった。  
何か言いたそうな唇が開き、迷うように一度閉じてから、小さな声が落ちてくる。  
「私は…貴女が、その…捕らわれていることを知っていて、でも…ここから離れられなくて…」  
一生懸命に紡ごうとするその言葉に耳を傾けようと、私は口を挟まず片手を伸ばし。  
急かさぬように彼女の頬をそっと手のひらで撫ぜてやる。  
「だけど…私も何かしてあげたくて、でも何もできなくて、このくらいしか思いつかなくて…」  
その言葉に、私は驚きで目を瞬かせた。  
彼女の見えぬ瞳はてっきり『デーモンを殺す者』しか映していないと思っていたのだが。  
ちゃんと、この『魔女』の存在も気にかけてくれていたらしい。  
 
…しかし、何かしてあげたいと導き出した結果がこれ、とは…  
もっと他にあるのではなかろうかと、どこか不器用さを感じて、思わず笑みを浮かべてしまい。  
気にすることはないのだと声をかけようとした時、唐突に彼女の指先が私の奥を突いてきた。  
「っあ!ちょっ、待っ…!あ、っや、あ…っ!」  
しかし彼女の指は留まるどころか、更に指を増やして私の中を犯してくる。  
その細い腕のどこにこんな力が潜んでいるのか、しとどに塗れるそこを指先で貫かれるたび、私の身体が大きく揺さぶられる。  
耐え切れず彼女の頬から手を離し、両手で彼女の身体にしがみ付く。  
「もっと…もっと、ユーリアさんを気持ち良く、してあげたいんです…っ」  
せつなさすら含む彼女の声はちゃんと耳に届くのだが、求めるような指使いに翻弄されて歯止めが効かない。  
腰の奥から迫るような悦楽に腰が浮き、背が仰け反る。  
快感を与えてくれる指が引き抜かれるたび、惜しむようにその指を締め付けてしまう。  
「だ、だめっ、そんな…!んっ、し、したら、っぁ、も、もうっ…!」  
「あ…すご、ユーリアさんの中、すごい…熱くて、締め付けてきて…」  
陶酔したような声を洩らす彼女は、床から浮いた私の腰に片腕を滑らせ、引きつけるように抱き締める。  
私も彼女の背に両手を回し、口付けをせがむように舌を伸ばすと、迎えるようにぬめるそれを絡ませてくれる。  
普段控えめな彼女の姿に似つかない、貪るような口付けを与えてくる。  
「ん!んんっ……っは!…っあ、イっ…!もう、イっちゃ…、あ…あぁぁあっ!」  
息苦しさに思わず唇をずらすと、そこからあふれ出る声を抑えることなど出来ず。  
首筋を反らし、彼女の腕の中で私は絶頂を迎えた。  
 
浅い息遣いを繰り返しながら、達した余韻に浸っていると。  
体内からゆっくりと指先が引き抜かれ、ん、と小さく声が洩れる。  
「…あの、ごめんなさい…大丈夫、ですか?」  
おそるおそるといった声が瞼を閉じた私にそっと投げかけられる…この声の持ち主が、今さっきまで激しく私の身体を揺さぶってくれた少女だとは。  
何となく想像できず、接ぐ息の中で笑みが紛れてしまった。  
呼吸を整えるために一度大きく息を吐き出すと、目を開いて床に肘をつき上体を起こす。  
驚いたように身を起こすその細い腰を逃さぬよう、片腕で捕らえ。  
逆の手で腿の内側を手のひらで撫ぜ上げながら、彼女の長い衣服の裾を引き上げる。  
「あ、だめです、そこは…!」  
制止の声を無視して布地の上から秘所に触れると、じんわりとした熱と湿った感触を知ることができた。  
どうやら彼女も『人間』と同じ身体の持ち主らしい。何となく嬉しくなって、その部分を円を描くように指先で撫ぜる。  
その動きに合わせ、私の両肩に手を置いた彼女がぴくりと震える姿に、一度は収まった情欲がふつりと沸いてくる。  
狼狽気味な声で私の名を呼ぶ少女に、そっと口を開いた。  
「…私も、だ。魔女の力を教えることができるが…それ以外は、なにも持ち合わせてない。  
 …だが私も、貴女に何かしてあげたいとは、思う」  
発言の意図が読めないのだろう、彼女の瞳は見えぬものの、困惑したような表情が見て取れた。  
微かに唇を笑ませて、だから、と更に言葉を続けた。  
「…手伝わせてくれないか…?」  
私の問いを受けて、驚いたように身を竦める姿すら愛らしい。  
迷うように視線を逸らす…まあ、実際にはその目線は見えないのだが、そんな仕草を置いたものの。  
こちらの我侭を叶えてくれるらしい、ゆっくりと唇を寄せてくれた。  
安堵と嬉しさに、私は目を閉じながら自分からも唇を近づけて。  
 
誰かと体温を分け合うという優しい行為に、身を委ねた。  
 
 
 

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