蛸頭の看守を何体屠っただろう。監獄は、囚人たちの乾いた呻き声で満たされていた。  
彼らを囚らえる者はいなくなったはずなのに、不気味な空気は濃さを増している。  
(…ここにもない、か)  
手に入れた鍵で手当たり次第に牢を開け、とにかく調べる。  
それでも、ライデルが囚われている牢の鍵は見つからない。  
こうなったら、力づくで開けてしまおうか。  
壊す必要はない。男一人が通れる隙間さえ作ればいいのだ。  
短絡的な方法だが、正否を悩んでいる時間はない。できることを試そう。  
 
 
(たしか、こっちの階段を……)  
階段を降りれば、ライデルが囚われている牢はすぐそこだ。  
しかし、通路に入ってすぐ、私は止まった。  
目の前に、一掃したはずの蛸獄史がいたのだ。  
(まずい…!)  
慌てて蛸看守に背を向けるが、スタミナが切れた体はすぐには動かない。  
涼やかで不吉な鈴の音が鳴り、緑色の光が炸裂した。  
「……っ!」  
全身が痺れ、冷たい床へ崩れ落ちる。  
近づいてくる蛸看守の足音を聞きながら、私は意識を失った。  
 
 
手首の痛みで、目が覚めた。  
私は、狭い牢の中で立っていた。  
両腕には鉄の腕輪、それは天井からぶら下がる鎖と繋がっている。  
(捕らわれた、か……)  
肉体を失っても、楔の神殿に囚われた魂は消えない。  
あの場で息絶えれば、ファントムと成って楔の神殿で目覚めることができただろうに。  
どうにも、うまくいかない。  
蛸看守の、ぬめる足音が近づいてくる。蛸看守は私がいる牢の前で止まり、鍵束を取り出した。  
錆びた鉄格子が開き、こちらへ近づいてくる。  
口しかないように見える顔に、にやりと邪悪な笑みが浮かんだ気がした。  
袖から伸びた生臭い触手で、服を剥ぎとろうとする。  
抵抗を試みるも、鉄の鎖がむなしく鳴るだけだった。  
蛸看守が、露わになった乳房にしゃぶりついた。  
「…ひっ…!」  
ゆっくりと、しかし確実にソウルが奪われていく。  
ソウルを失ったことで、デーモンを殺しに来たはずの者は、理性をも失い始めた。  
屈辱の涙に濡れた瞳も、固く閉じていた唇も半開きになり、とろけた表情で天井をぼんやり眺めている。  
蛸看守はおもむろに自分のローブを捲り、反り立つモノを露わにした。  
じっとりと濡れた触手の塊を、獲物の割れ目へと突きたてる。  
 
「あ、あぁあっ?!」  
異質な器官を呑みこんだ肉壺は、悦びに震えた。  
蛸看守の腰が、ゆっくりと動きだす。  
肉壺の奥で蠢く触手と、固い蕾に吸いつく吸盤。  
蜜で濡れた触手の塊が、肉壺を満たすたびに卑猥な音を奏でる。  
監獄に、発狂寸前の喘ぎ声が響いた。  
 
「お願い…中に…」  
蛸看守が、その言葉を理解したのかはわからない。  
ただ、己の欲望のために激しく肉壺を突き上げ、肉壺に大量のソウルを注ぎこんだ。  
「あぁ…っ」  
デーモンを殺す者は満たされ、恍惚の笑みを浮かべた。  
その淫らな表情は徐々に引いていき、絶望に変わった。  
失った分のソウルを得たことで、わずかながらも理性が戻ったのだ。  
しかし、半開きの口から悲鳴は洩れなかった。  
蛸看守の顔から伸びた触手が塞ぐ。与えたソウルを、再び吸い取るために。  
「んっ…ぐぅ…」  
口内と秘部を犯される屈辱と恐怖に、ぼろぼろと涙がこぼれた。  
 
 
 
突然、蛸看守が崩れ落ちた。  
その向こうに、暗いソウルを纏う人影が立っている。  
「ライデル、さん?」  
舌ったらずな声に、人影は答えなかった。  
竿状の武器で鎖を破壊し、床に倒れた蛸看守の獲物だったものに駆け寄る。  
そして、ソウルを奪い尽くすために襲いかかった。  
 
 

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