「あ、あの……」  
 私は沸騰寸前の頭を働かせて、現状の把握に努めた。  
 ここは、腐れ谷の深奥。その不浄の沼で――私は、あの人に抱きしめられて  
いる。  
「ガル?」  
 声をかけてみると、私の背にまわされた腕に、より一層力が込められた。  
 私は思わず泣きたくなった。嬉しいような、哀しいような。  
 ガルがこんなことをする理由、それは、ソウルを失いすぎたから。  
 私はデーモンではあるけれど、ソウルを能動的に奪うことはできないし、彼が  
望まない限り彼のソウルを奪おうなんて思わない。でも、デモンズソウルの近く  
に長期間居すぎたために、ガルはその魔力に蝕まれていた。あるいは、最近  
デーモンを殺す者がまるで現れなくなったせいで、騎士としての意識を保つこと  
ができなくなってしまったのかもしれない。  
 なんにしても、今やガルの理性はほとんど残っていないのだろう。  
 そんな状態でも――  
「アストラエア様……」  
 抑揚のない声が、私の鼓膜を揺すった。  
 ただでさえ高鳴っていた私の心臓が、さらに鼓動を早める。  
 私はつい、ガルの背に手をまわした。  
「なんですか……?」  
 すると突然ガルの手が私のお尻にのびた。  
「あっ……」  
 ガルの手はそのまま、掴んでみたりさすってみたりという動きを繰り返してい  
る。  
 もう、私は爆発するのではないかと思った。  
 つまり、これは、これは、  
「ガル……」  
 私はそっとガルの兜を取った。  
 そして、微かな理性の光しか見えない――それでも美しい――ガルの瞳を覗  
き込んで、  
「どう、したいのですか……?」  
 そう問いかけてみた。  
 ガルの返答は、  
「……!」  
 口づけ。  
 なにか、身体の芯の方が熱くなった。  
 
 ――ガルが私を求めてくれるのなら、受け容れたい。  
 私のすべてが、そう告げていた。  
 普通、こういった短絡的な欲望はきりがないものなので、きちんと拒絶すべき  
なのだけど、ガルのそれを拒むことなんて、私にはできない。それに、理性が極  
限まで失われて初めて露見したものを短絡的というのは、違和感がある。  
「ん……」  
 少し考えて、押し当てられたガルの唇を、そっと舌でつついてみる。こういうこ  
とはよく分からないけれど、もっとたくさんガルと繋がりたいと思った。するとガ  
ルも、それに応えるように舌を突き出してくれた。わずかに舌先と舌先が触れ  
合うだけで、私は鳥肌が立つほどの快感を覚えた。  
 それで、完全に私の中の何かに火がついてしまった。  
 ガルの舌に自分の舌を思いきりからませると、えもいわれぬ幸福感が私の胸  
に溢れた。  
 そもまま貪るようにガルの唇を、舌を、歯茎を、唾液を求める。  
 もっと深く――もっと深く――。  
 もはや自分のはしたなさすら快楽の糧になり、甘い痺れが私を支配した。  
 一つ分かったのは、私が積極的に求めれば求めるほど、ガルもそれに応じて  
くれるということ。  
 若干受身なその様子を見る限り「私の従者である」という記憶は残っているらし  
い。たぶん、やめてといえばやめるのだろう。そんなこと、言うわけがないけれど。  
 つまりは、そのことでこれが私を私と認識した上での行動であるということが確  
実なものになったのだ。それで、私はいちだんと嬉しくなった。  
 だって、本当はずっと前からこれを求めていたのだから。  
 
 一旦顔を離し、口の端についていた唾液をすすると、じゅるりと卑猥な音が  
鳴った。  
 そんな行為に、私は妙な昂揚感を覚えた。出会ってから今までの間、いつで  
も騎士としての態度を崩さなかったガルが、その欲望と不浄をさらけだしてくれ  
ている。しかも、根底にあるのは私への好意。  
「あぁ……」  
 私はガルがたまらなくいとおしくなり、彼の頬をそっと撫でた。  
「あなたの汚いところ……もっと見せてください」  
 続いてガルに鎧を脱ぐように言ったら、そそくさとそれに応じてくれた。  
 しかし、ガルの逞しい裸体を見た途端、羞恥心が再び沸いてきてしまった。  
 思わず背を向けて、何度か深呼吸する。  
 ――私も裸になったほうが良いのでしょうか。  
「きゃっ!」  
 突然、背後から胸を鷲掴みにされた。  
「ガ、ガル?」  
 ガルは問いに答えることはなく、そのまま私の胸をもみしだきだした。  
「あ……」  
 鎮火しかけていた私の中のくすぶりは、あっさりと再燃した。  
「ふ……ぁ……」  
 少し痛いけれど、私にそれを与えているのがガルの手であることを想うと、快  
感に変換される。  
 どうせ私もよく分からないし、ガルの好きにさせてあげよう。そう考えて、ガル  
に身体を預けた。  
「焦らないでください……私は……ここに居ます……から」  
 ガルにそう言うと、揉み方が優しいものになった。  
 もしかしたら、背を向けたのがいけなかったのかもしれない。  
「大丈夫ですよ……あなたを拒んだりしません……どうぞ好きなだけ……」  
 私はもう一度念を押してから、ガルの左手に左手を重ね、目を瞑った。  
「く……はぁ……」  
 愛撫からもたらされる緩やかな快感とガルの腕の中にあるということが、私の  
思考を蕩けさせる。  
「ガル……大好きですよ」  
 ガルに私の言葉が聞こえているのか分からないけれど気持ちを口にしてみる  
と、なお更私のなかの"女"が昂ぶった。長年聖女をやっていたせいで、未だに  
異性としての好意を口にすることに後ろめたさがあるのも、興奮の材料になっ  
てるような気もする。  
「んぁ……私、変態さんでした……ふふ……」  
 ――でも、おあいこですよね? こんなに胸ばかり揉んで。  
 私は刻々と増してゆく秘部の疼きに身悶えながら、ガルの責めを受け続け  
た。  
「あ……」  
 ふと、腰の辺りに硬いものが触れた。顔がかあっと熱くなる。  
 すると、ガルが唸りだした。  
「う〜……」  
 なんだか犬みたいで、ちょっと可笑しい。  
「もう、良いのですか?」  
 私が聞くと、ガルは返答代わりに私の腰に触れているソレを押し付けてきた。  
「そうですか……分かりました……」  
 私はガルの手をほどいて、服を脱いだ。それを岩場に置いておいて、ガルの  
手を引いて陸の多いところへ移動した。今の私たちだと沼の中でも、あまり関  
係ないのだけれど、陸のほうがいいだろう。  
「えぇと……どうぞ」  
 そう言って、ガルと向き合った。  
「……?」  
 でも、ガルは動かない。  
 もしかして、私だとはっきり認識すると大人しくなってしまうのだろうか。  
「あなたという人は……」  
 嬉しいけれど、今はもう、我慢する必要なんてないのに。  
 
 私はもう一度ガルに背を向けて近くの壁に手をつき、お尻を突き出した。  
「どうぞ、私の純潔を奪ってください……」   
 ――全く、なにからなにまで、犬みたい。でも、強烈に記憶できて良いかもしれ  
ない。相手があなただから、ね。  
 聞いているのかいないのか、ガルは私の腰を両手で掴んだ。  
 私の秘部に、熱くて硬いものが押し付けられる。  
「あ……あ……」  
 圧迫感。つづいて、ガルのソレが肉の間に割り込む感覚。  
 そして――  
「くぅぅ……」  
 ブチン、と何かが破れるような感覚があった。  
 痛い。  
 でもこれが、あなたと一つになるということなら……私は……。  
「うれ……しい……」  
 不意に、涙がこぼれた。痛みなんて、大した問題じゃない。  
 嬉しいから、悲しいから――本当は、ちゃんと思いを伝えたかった。聖女でな  
くなったと思ったら、デーモン。そして、こんなにしてしまって、ごめんなさい。  
 でも、今の私があなたにしてあげられるのは、これだけ。  
「たくさん、気持ちよくなって……ください」  
 たとえ、私を「使う」だけだとしても、それで構わない。  
 キスしてくれた、抱きしめてくれた、女として見てくれている。私はそれだけで、  
十分なのですから。  
 やがてガルのソレが私の一番奥まで達すると、ガルが意味をなすこともない  
惚けた声をあげた。以前のガルからは絶対に聞けないような声。私は無性に  
胸がときめいた。  
「ああ、かわいいひと……」  
 ゆっくりと、ガルのソレが前後に動き始める。  
「あ゛ぁ……」  
 身体の中をえぐられるような痛み。それでも、私の心は感動にうち震えてい  
た。  
 痛みのおかげで、逆にガルが私の中に存在することをありありと感じられる  
からだ。  
「もっ、と……」  
 私は息を深く吐き出しながら、ガルの動きに意識を傾ける。  
 ガルのソレが私の中を行き来する。時に暴力的に激しく、時にゆっくりと。  
 ――きっと、ガルも私の感触を味わってくれているんだ。  
 そう思うと恥ずかしくも嬉しく、下腹の辺りがむずむずとして、ひどく切ない気  
分になった。  
「あぅ……ぅぅっ……」  
 往来が何度も繰り返されるうちに、ガルの動きがスムーズになってきた。  
 それに比例して、私の得る快楽も増していく。  
「ふぁぁ……」  
 ガルが私に腰を打ちつけるたび、淫らな水音が響き、より興奮を煽る。  
「んっ……あっ……」  
 まだ全く痛みがないわけではないけれど、それもひっくるめて、私にはすでに  
快感しかなかった。  
「ガル……ガル……!」  
 ガルのソレがずんずんと奥に突き刺さるたびに、頭の中で火花が散る。  
 ――熱くて硬くて痛くて気持ちよくて、これが全てあなたから与えられるものだ  
なんて、夢みたい。  
「あぅっ……くぅっ……ああっ!」  
 ガルがさらに速度をあげて行く。  
「そうっ……ああっ……いいですっ、いいですっ……!」  
 私はもうわけもわからずに、感じるままの言葉をぶちまけていた。  
 ガルのペースが一気に早まる。  
 本能なのか、それが何を意味するのか分かった。  
 
「ああっ、そのままっ、くだ、さいっ!」  
 ガルはそれに応えるように、ぎりぎりまで腰を引き、一気に私の一番深いとこ  
ろへソレをつきたてた。  
 頭の先まで響く衝撃と同時に、とんでもなく熱いものが私の中に吐き出され  
た。  
 目の前が真っ白になる。  
「あああああああああああ!」  
 ――やがて、景色が色を取り戻す。快感の余韻で頭がくらくらした。  
「はぁ、はぁ……」  
 私は酸素を求めて、口を開閉する。  
 しかし、  
「あ、そんな……」  
 ガルのソレはまるで衰えておらず、抜き去ることすらなく再び動かし始めた。  
「あぁ……すご、い……」  
 私はぞくぞくと背筋を震わせながら、感嘆の声を漏らした。  
「いいですよ……あなたの全ての欲望を、不浄を、私に吐き出して……」  
 
     *     *     *     *     *  
 
 視界が霞がかり、妙な浮遊感が身体を包む。これは……そう、夢からさめた  
ような……。  
 私としたことが寝ていたのか。いつデーモンを殺す者が現れるとも分からんと  
いうのに。  
「……どうしたのですか? 私は、まだ大丈夫ですよ……」  
 アストラエア様のお声だ。無事でよかったが、気をつけねば。  
「ん?」  
 さっきからなんだこの感触は……しっとりもちもち……それに股の辺りが妙に  
……。  
「く、くすぐったいです……!」  
「む。すみません、アスト――うおわあああああああああああああ!?」  
 私はパニックになってあとずさった。  
 裸体。臀部。私と彼女のソコに、白くべたつくなにかと血。  
「……ガル?」  
「あああ、あの、あのこれは!?」  
「え?」  
 アストラエア様はこちらへ向き直った。  
 その表情は驚愕、そして、今にも泣き出しそうなものだった。いや、アストラエ  
ア様はぼろぼろと涙をこぼしはじめた。  
「あの――」  
「ガル……あなた……」  
 アストラエア様は私に駆け寄って、そのまますがりついてきた。  
「よかった……よかった……」  
「ア、アストラエア様?」  
「何も言わないで、しばらくこうさせてください……」  
 私はますますわけがわからず、卒倒しそうになりながら目を泳がせた。  
 頭がマトモに機能しないが、アストラエア様の裸体に反応して固くなるものが  
忌々しい。  
………  
……  
…  
「ソウルにあてられたとはいえ……なんということを……」  
 数少ない清浄な湧き水で身体を清めた後、アストラエア様から一連の出来事  
を聞き、私は頭を抱えた。一応は落ち着きも取り戻した。  
「何をいっているのですか、気にする必要などありません」  
 アストラエア様はそう一喝した。  
「しかし――」  
「こちらを向きなさい」  
 有無をいわせぬときの口調。私はどんな顔をしたものかと思いつつ、アストラ  
エア様のお顔を見た。  
 私を見つめるアストラエア様の瞳は潤んで輝き――そんなことを言っている場  
合ではないのだが――悪魔的な美しさだった。  
「良いですか? 私はもう聖女ではありません、そして……あなたを愛していま  
す」  
 私は時間がとまったかのような感覚に陥った。  
 アストラエア様は尚もその美しい瞳で私を見つめ、続ける。  
「ガル、あなたは……?」  
 切実で、少しだけおそれを含んだ問い。  
「……」  
 騎士として過ごしている間も、アストラエア様に異性としての魅力を感じなかっ  
たわけではない。私が男である以上、それは無理というものだ。しかし、それで  
なにかするということは一度もなかった……今日までは。そして、これからもそ  
のはずだった。だが、彼女が同様な想いを抱えてくださっていて、私が理由はど  
うあれこんなことをしておいて、彼女を突き放すのはあまり酷すぎる。  
「……私も、です」  
 それを聞くと、アストラエア様は艶然とした笑みを浮かべ、私の肩に頭をもた  
れた。  
「でも、不思議ですね……どうして元に戻ったのでしょう」  
 
 私も疑問だった。とりあえず、思い浮かんだのは  
「いわゆる夢魔のような理屈、でしょうか」  
「なるほど……」  
 アストラエア様は納得したように呟いた。しかしどこか、なんでもいいんですけ  
れどね、という雰囲気を漂わせている。それについては、私も同じ気持ちだが。  
「ところでガル」  
「なんでしょう」  
「胸が好きなのですか?」  
 血液が一気に顔にのぼった。  
「何故そのようなことを……」  
「だってあなた、私の胸ばかりいじめて」  
 アストラエア様の声色はどこか愉しげだ。  
 とにかく、そういった趣向がないことを伝えねば。  
「アストラエア様のものであれば、全て好きです」  
 私の言葉を聞いたアストラエア様はくすりと笑った。  
「お上手ですね……」  
「そうとしか言いようがないだけです」  
 アストラエア様は無言で私のペニスに左手を伸ばした。  
 丁度、私の左腕に乳房が押し付けられ、私はドギマギした。  
「あ、あの……」  
「こんなことをする私も好きですか?」  
「え、ええ、それはそうですが……」  
「じゃあ、これはどうですか?」  
 アストラエア様は私の乳首を吸った。  
 思わずびくりと身体が震えた。  
「あの、お戯れは――「……好きみたいですね」  
 気付けば、私のペニスは見事に再起動している。  
「4回」  
 アストラエア様はそういって、自らのへその下辺りに右手をあてた。  
 まるで、そこに大切なものが収められているかのように。  
「4回も私を汚しておいて覚えてないなんて、ずるいですよ」  
 驚愕の事実に私はなんと言えば良いのか分からず、ただ謝った。  
「すみません……」  
 すると、アストラエア様は私を上目遣いで見た。  
「……戯れなんかじゃないです」  
 その声は微かに震えている。  
「ガル……もう一度、ちゃんと、抱いてくださりませんか?」  
 アストラエア様はすがるように言って、再び大粒の涙をこぼした。それを見て、  
私は意を決した。  
「分かりました」  
 ――とはいったものの、どうすればよいのか。  
 こういったことに関してはてんで無知で臆病な私がまごついていると、アストラ  
エア様が  
「もう、うぶな人ですね。あんなことをしておいて」  
 そう笑って、岩場から腰をあげた。  
「そうですね……あちらの平らなところで仰向けになってください」  
 私はアストラエア様が指差した場所へ移動して、仰向けになる。  
 アストラエア様は私の体をまたぐように立ち、頬を染めてはにかんだ。  
「抱いて、といいましたが……今度は、私がいじめてさしあげます……」  
 アストラエア様の豊満ながらも無駄な肉のまるでみあたらない肢体もさること  
ながら、その表情はなんとも淫靡で、私は思わず生唾を飲み込んだ。彼女は  
しゃがみこみ、天に突き立っている私のペニスを秘部へあてがった。  
 ――ああ、その前に、ちゃんと言葉にしよう。  
「アストラエア様」  
 彼女は動きを止めて私を見る。  
「愛しています……ずっと前から、そうでした」  
 アストラエア様はにっこりと微笑んで、私のペニスをゆっくりと飲み込んでいっ  
た。  
 
「うぉ……」  
 その暖かな感覚に、思わず呻く。  
「可愛いお顔……」  
 アストラエア様は私のペニスを根元までくわえ込むと私の上に倒れこみ、首に  
舌を這わせた。私は快感に身を震わせる。  
「ガル……私だけの……」  
 アストラエア様はどこか嗜虐的な声色で呟いて、再び身を起こす。  
「はぁぁ……きもちいい、です……」  
 大きく息をつくアストラエア様。何もせずとも彼女の膣壁はぐねぐねと動き、私  
に強烈な快楽をもたらした。  
「すっかりあなたのモノ、好きになってしまいました……」  
 アストラエア様はどこか気恥ずかしそうに微笑んだ。  
「あなたは、どうですか……?」  
 そういって少し心配げに私をみやるアストラエア様に、私は素直な感想を述べ  
た。  
「私も、とても……」  
「よかった……ではもっと、私を感じてください」  
 アストラエア様は祈りを奉げるときのような表情で、ゆっくりと腰を動かし始め  
た。  
「……く……ふ……」  
 若干声を押し殺している様子。それはそれでいじらしく愛しかったが、少し苦し  
そうに見えた。  
「アストラエア様、我慢なさらずとも……いえ、貴女の声が聞きたい」  
 アストラエア様はいっそう顔を赤くして、小さく「はい」と頷いた。  
「はぁ……ああぁ……ガル……!」  
 声を我慢することをやめたアストラエア様は、動きも大胆なものになった。  
 結合部で愛液を泡立たせながら、腰を打ち付け、円を描き、様々な角度で私  
を責める。  
 比較対象をもたないために、それが普通なのかどうなのかわからなかった  
が、とにかく相手が相手であるし、ものの5分とたたないうちに、私は何度も絶  
頂しかけた。  
「ああ、中でぴくぴくしてます……んぁ……いいんですよ、いつでも吐き出して  
……」  
 アストラエア様はそう仰ったが、私だけいきなり達してしまっては悪い気がし  
て、必死でこらえた。  
「アストラエア様……!」  
 少しでも理性を保とうと、主の名を呼んだ。  
「ガル……ガル……!」  
 どちらからともなく、アストラエア様と指を絡めるように手をつなぐ。  
 アストラエア様は恍惚の表情で腰を振り続け、私も下から突き上げる。  
「きゃうっ!」  
 途中、ペニスがこつんと若干固い部位に当たると、アストラエア様が小さな悲  
鳴を上げた。  
 アストラエア様は動きを止め、瞳を潤ませて私の顔を見る。  
「今の……癖になりそう、です……」  
 なるほど、そうするとアストラエア様が悦んでくださるなら――  
「頑張ります」  
 アストラエア様は軽く噴きだした。  
「なんですかそれ。でも、あなたのそういうところ……本当に可愛い」  
 ――完全にアストラエア様にからかわれているな。  
 だが悪い気はしない、というかむしろ嬉しいような気すらする。  
「では……頑張りなさい、私の従者」  
 アストラエア様は悪戯っぽく笑って、再び動き始めた。心なしかさっきよりも激  
しく。  
 
 私もそれに合わせて"頑張る"ことにした。  
「んっ……そ、そうですっ!」  
 比較的すぐに、コツをつかめた。  
「あっ……っ、あああっ! ……こりこり、して……っ!」  
 私が突き上げるたびに、アストラエア様は悲鳴じみた喘ぎをあげ、体をくねら  
せている。  
「ふあああっ! あうっ! す……すごっ、すぎますっ!」  
 男としてなのか、従者としてなのか、私は彼女のそんな姿に尋常ならぬ悦びを  
感じた。  
 これまで目にしたことのない緩みきった表情、魅惑的に揺れる乳房、肉体を  
打ち付けあう音、体液が混ざり合う音、アストラエア様の愛嬌、ぬくもり、柔らか  
さ――視覚、聴覚、感覚、全てが私を絶頂へと向かわせる。  
「ア、アストラエア様……!」  
「わ、私もっ……! ガルっ……!」  
「くぅぅ……!」  
 私がもはや限界と呻くと、アストラエア様は私のペニスを最も深いところで締  
め付けた。私はたまらず、彼女に欲望をぶちまけた。  
 アストラエア様も獣のような雄叫びをあげる。  
「んあああああああ!」  
 アストラエア様はあごを突き上げて、思い切り秘部を密着させてきた。  
「はぁ……はぁ……」  
 もう4回もこのようなことをしたというわりに、私のペニスは延々と脈打ち精を  
はきだし続け、彼女の膣も、それを全て飲み込もうと――あるいはより貪欲に  
搾り取ろうと――するかのように律動を続けている。収まりきらなかった精が、  
静かに隙間から溢れた。  
「ふぁぁぁ……」  
 先ほどまでの激しい喘ぎとは違った、アストラエア様の感極まったような溜息。  
 そのまま、私の胸に倒れこんできた。私はアストラエア様を受け止めて、彼女  
の背に腕をまわした。  
「わ……まだ硬いですよ……」  
 アストラエア様は驚きと呆れと悦びを含んだような声で呟く。  
 私も不思議だったが、果てた直後の疲労感の後には、むしろ体中に力が満ち  
るような感覚があった。  
「全く、仕方のない人……たくさんしましょうね」  
 アストラエア様にしても、デーモンの身であるからなのか、まだ体力には余裕  
があるようだ。  
 
「でも、もう少しこうしていたいです……いいですか?」  
「もちろん、構いません」  
 私としても、それは望むところだった。  
 己を狂わせかねないほどの快楽も悪くないが、アストラエア様を胸に抱けると  
いう幸福感の方が私には大きい。  
「ありがとう……」  
 アストラエア様はそういうと、私に体重を預けた。  
 それから一時間はそうしていただろうか、アストラエア様はときおり愛を囁  
き、身体をもぞもぞと動かしたり、ところかまわず舐めてみたりしておられる。  
彼女のどんな行動も、愛しくて仕方がなかった。  
 ふと、  
「ガル……あなたの赤ちゃん、欲しかったです……」  
 アストラエア様は、少し寂しげにそうもらした。私は胸を錐でつかれたような心  
持ちがして、彼女を抱く腕に少し力を込めた。  
 アストラエア様が沼の赤子――ソウルの宿った沼の不浄そのものが産まれな  
おしたい、再び愛されたいという願望で形を成し、同時にあらゆるものを憎んで  
いる――をみて複雑な顔をしておられたのが思い出された。  
「ああ、すみません……デーモンとなっても、あなたが愛してくださる……それだ  
けで十分幸せです」  
 答えは出ているし、アストラエア様もとうに理解しておられる。デーモンと人間  
では子供が出来る望みなど一片もない。ゆえに過去形で願望を述べた。という  
より、もしできるのであれば、状況的にこのようなことは慎むべきに違いない。  
 だから――  
「つくりましょう」  
「え?」  
「できるまで、お相手いたします」  
「……いいですね、それ」  
 アストラエア様は儚げに笑って上体を起こし、悪戯っぽく首をかしげた。  
「どれくらいかかると思いますか?」  
「永久に、でしょうか」  
 私が答えると、アストラエア様は私の胸板に口付けし、  
「ふふ、それは……とっても素敵なお話ですね……」  
 そういって妖しく微笑んだ――  
                                         END  
 

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