ふと、夜中に目を覚ました。  
 真っ先に私の目に入ったのは、部屋の入り口で胡坐を組んでいるガルの姿。  
 傍らには小さな蝋燭が灯してあり、彼の鎧をゆらゆらと照らしている。  
 兜もつけているため、寝ているのか寝ていないのかは判別できない。  
 どちらにしろ、怪しげな物音がすれば彼が飛び起きるということは確か。  
(ガル……)  
 私は心の中で彼の名前を呼んだ。  
 救いの旅を始めてから、もう4年は経つだろうか。  
 当然、ガルとの付き合いもそれと同じになる。  
 実直で、少し不器用だけれどとても優しい人。  
 歳も近く、私が彼に惹かれるのは当然のことだった。  
(ああ……)  
 しかし、私は聖女で彼は騎士……いかに恋慕の情に身を焦がそうと、交わることは決してないだろう。  
 そもそも、彼が私に対してどのような思いを抱いているのかも定かではない。  
 でも、今の関係で私は十分に幸せ。それは確かなことで、これからもそれで構わないと思っている。  
 だけれど――  
(ど、どうしましょう……)  
 恥ずかしながら、身体が火照ってきてしまった。  
 はじめは気温が高いだけかと思っていたけれど、これは違う。  
 こうなるのは初めてではなく、その度に迂闊に彼のことを考えるまいと反省するのだけれど……。  
「……ぅ……」  
 聖女としてあるまじき部分が熱くなり、私は太股をすり合わせた。  
(だめ……だめ……これ以上のことをしては彼にも失礼になってしまいます……)  
 彼は騎士としての態度を一時も崩さず仕えてくれているのだ、私が聖女らしからぬことをするわけにはいかない。  
 私はぎゅっと目をつぶって、顔の前で両の手の指を絡ませるように組んだ。  
 身体が火照って眠れない――前向きに考えれば、彼のことをたくさん考えられる時間があるということ。  
 それにきっと、ただ愛する人を想うだけなら神も許してくださる。  
 いつもそういうことにして、じっと身を強張らせてこんな夜をやり過ごす。  
 
(ああ、永い夜になりそう……)  
 
 私はもう一度彼の姿を見つめて、再び目をつぶった。  
 いつまでも、愛しい従者と共にいられることを願って。  
 

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