ディナーはまだ前菜という所なのに、フィオナは食が中々、進まないようだった。  
「ふう」  
ため息をつくフィオナ。体が眠りからまだ目覚めていないのか、どこか気だるい。  
「・・・お嬢様。お口に合いませんか」  
「いいえ。ただ、食欲が無くって」  
傍らに給仕のダニエラが表情も変えずに立っているので、フィオナは落ち着かず、スプ  
ーンでスープ皿をかき回しているだけだった。  
 
「ごめんなさい。もう、結構です」  
やたらと燭台ばかりが目立つ大きなテーブルを離れ、フィオナは自室へ向かう事にした。  
その姿をダニエラは瞬きもせず、じっと見送っている。  
 
「あら、あなたは・・・」  
「ワン」  
自室に戻ると、先ほど中庭でワイヤに体を絡め取られていた犬がいた。きちんと座り、ま  
るでフィオナを待っていたかのようである。  
「いい子ね。私を待っててくれたの?」  
「ワン」  
拾った首輪にヒューイとあるので、フィオナは彼をそう呼ぶ事にした。この得体の知れぬ  
城に幽閉されたも同然の身ゆえ、ヒューイの存在はきっと彼女の慰みとなるに違いない。  
 
「ねえ、あなた・・・お腹すいてない?」  
フィオナはそう言うと、先ほどの夕食時に出たパンとバターを懐から取り出した。ダニエラ  
に見られながらの食事が進まなかったので、後で部屋で食べようと思い、それらを持ち帰  
っていたのである。  
 
「クゥ〜ン・・・(意訳・嫌な予感)」  
ヒューイは空腹かどうかを訊ねながら、黒いショーツをいそいそと脱ぎ始めるフィオナを見  
て、なんだかおかしな事になったと思った。すると、やはりというかフィオナは下半身だけ  
裸になるとベッドに這い上がり、  
「おいで、ヒューイ」  
と言いつつ、陰部にバターを塗り始めたのである。  
 
「ワン!(意訳・やっぱりなあ・・・)」  
右スティックを下に入れられたので逆らう訳にもいかず、ベッドへ飛び乗るヒューイ。西洋  
では愛犬家が多いせいか、こういったシチュエーションが、ままあるという。  
「GO!ヒューイ!」  
右スティックが上に入れられると、両足をMの字に開いたフィオナの股間にヒューイが鼻  
を突っ込んだ。どちらかといえばバターというより、チーズに近い香りが彼の鼻の粘膜を  
刺激する。  
「ああ・・・グッドボーイ・・・」  
ヒューイの舌は温かく、かつ滑らかだった。まるで温められた生肉で、陰部をねぶられて  
いる気がする。フィオナは自らの指でクリトリスの皮を剥き、そこにもバターを塗った。  
 
「ああ・・・恥ずかしいけど、たまらないわ」  
もっとも敏感な肉真珠にヒューイの舌が這わされると、フィオナは目をしばたかせ、低い  
ため息を漏らした。彼女を慕ってやって来た犬は忠実で、かつ技巧者だったのだ。  
 
「ワン!(意訳・ええか、ここがええのんか!)」  
「グッドボーイ・・・おお、素晴らしいわ。あなた、良く分かってるわね」  
次第に興が乗ってきたフィオナは四つん這いになると、淫らに腰をグラインドさせた。そし  
て、尻の穴の周りにもバターを塗りたくるのである。  
「私、ここがすごく感じるの。お願い、マイボーイ」  
フィオナは中指を立て、小さなすぼまりをマッサージし始めた。虫も殺さぬ顔をしておきな  
がら、その実、彼女は後穴もいける女なのである。  
 
「その逞しいあなた自身で、私のいけないお尻を辱めてちょうだい」  
「ワワン!(意訳・親元離れて、何やってるかわかりゃしないな。まったく、女ってやつは)」  
ヒューイがフィオナの腰に前足を乗せ、下半身を密着させた。なんとヒューイは彼女の肌  
を傷つけぬよう、前足に靴下を履いている。さすがに好奇心が旺盛で、利巧なだけはあ  
った。  
「ワオ〜ン・・・(意訳・バターでケツの穴がぬるぬるだぜ。おっと、バター以外にもぬめる  
モンが垂れてるな。へっへっ)」  
「おお・・・入って来たわ・・・」  
毛袋から出されたヒューイの男根が、アヌスへ少しずつ埋められていくと、フィオナは舌  
なめずりをして、人と犬の垣根を越えた浅ましい行為に耽溺していった。  
 
暖炉の火がフィオナとヒューイの姿を照らしていた。時計はすでに深夜の二時を指して  
いる。  
「素晴らしかったわ、ヒューイ」  
「ワン(意訳・まあ、喜んで貰えて何よりだな)」  
フィオナは素肌にシーツを巻いただけの格好で、ベッドに横たわっていた。その隣にはヒ  
ューイがガウンを着て、ブランデーを飲む姿がある。しかも後ろ足を組み、前足はグラス  
を持っているではないか。パッと見でいうと、何だか不倫関係にある中年男と若い女のよ  
うである。  
 
「アイテム合成は何かの嫌がらせかしら・・・どう思う?ヒューイ」  
「ワン(意訳・ブレスオブファイア5あたりから、なんだかおかしくなってきたな。ゲーム性  
を無理矢理ひねり出そうとしているような気がする)」  
ヒューイはブランデーを一口含むと、遠い目で言うのだ。  
「ワン、ワ〜ン(意訳・カオスレギオン・・・俺的には面白かったのだが、いかんせんプレイ  
ヤーが三国無双に慣れすぎてて、爽快感がないとかぬかしやがる。あれは、そういうモン  
じゃないんだ)」  
「分かるわ」  
フィオナの手がヒューイの前足を包む。優しくしてあげたい。そう言うかのように。  
 
「ワワン!ワン!(意訳・ラジコン操作を採用しなかったのは、バイオユーザーへの嫌が  
らせじゃないんだ!それを言ったら、エクスターミネーションは・・・)」  
激昂するヒューイの口にフィオナが人差し指を当てた。そして──  
 
「追っかけシーンが無かったら、尺が短いっていうのは・・・内緒にしておきましょうよ」  
そう言って、シーツを自分の身から剥ぐフィオナ。さらけ出された肌のあちこちには、ヒュ  
ーイが甘噛みしたような跡がいくつもあった。  
 
「ワン・・・(意訳・いい加減、タレント使うのやめてくれないかな)」  
「そうね・・・あと、アンケート葉書もあった方がいいわね」  
「ワン、ワン(意訳・それとモンハン、箱で出してくれりゃ良かったのにな。せっかくオンラ  
インが容易いんだから・・・ファンタシースターみたいに、ハード越えて遊べたら楽しかっ  
たろうに)」  
ヒューイがフィオナの体に覆い被さっていく。まだ毛袋から出された男根は力が漲って  
おり、幾度でも情交に挑めそうだった。  
「犬のアソコって、中で膨らむのね。あれがたまらないわ」  
「ワオン・・・(意訳・何度でも味あわせてやるさ。そら、尻を出しな、フィオナ)」  
「ああ、また・・・」  
 
この古城で生き抜くために、フィオナは冷たい夜をヒューイと共に越えていく。もう、一人  
じゃない。フィオナは自分を抱きしめる優しき獣に心をときめかせると、またもや自ら尻  
を高く掲げ、誘うように笑うのであった。  
 
おわり  
 

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