其の一 「牢」  
事故・・・車で事故を起こした。そこから記憶が曖昧になって  
いる。私の誕生日を祝う為に、家族で旅行に出かける途中の出  
来事。事故の後は、かすかに男の話し声を聞いた程度の記憶し  
か残っていない。目を開ける。そこは牢の中・・・。  
イメージ出来ない光景に動揺する私。病院じゃないし、湿った  
空気には人の活気等感じる事は出来なかった。  
「牢を出るのが先決」不安から来る私の直感。幸い鍵が刺さっ  
たままになっていた為、安易に牢からは脱出出来た。  
牢を出てすぐの所に包装された箱が二つあった。一つは大きく、  
もう一つは小さかった。大きい方を私は開いた。中には服が入  
っていた。ワンピースだった、上半身部分にはフリルが付き、  
スカート部分にもフリルがついていた。色は黒。まるでメイド  
が着るような服だった。私は薄布一枚でいる事に気がついた。  
なしくずし的にこのメイド服を着用した。もう一つの箱は服の  
ポケットにしまい込んだ。「きっと父と母の・・・」と思うと  
不安が一斉に襲い掛かってきた。「ここからでなきゃ!」  
 

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